コロコロオンライン超特集!! 山際眞晃プロデューサーに聞く 『Bloodborne(ブラッドボーン)』開発秘話!!


 

紡がれるダークファンタジーの深淵とは

初代プレイステーションの時代からハードを支え続ける黄金タッグ“フロム・ソフトウェア×ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)”より生まれた、圧倒的世界観を誇るダークファンタジーがある。
 
それが、山際眞晃さんがプロデューサーを務める大作、『Bloodborne(ブラッドボーン)』だ。
 

 
プレイステーション®4だからこそ実現できた、グラフィック、システム、そして『Bloodborne(ブラッドボーン)』の世界そのもの。果たしてどんな過程を踏んで、このゲームは完成に至ったのか? じっくりと話を聞きました!
 

プレイステーション4だからできたこと

――いきなり個人的なことになるのですが、人生で初めて、我を忘れるほどやり込んだゲームが『ブラッドボーン』でした。
 
だ、大丈夫ですか?
 
――ヤーナム市街に2週間くらい籠っていたと思います……(苦笑)。でも、フロム・ソフトウェアさんのゲームを遊ぶのは『ブラッドボーン』が初めてで、最初は「コレ……無理かも」と思ったんですけど、気が付いたらドップリとハマり込んでいました。
 
ありがとうございます。
 
――そこで、まずは『ブラッドボーン』の開発の経緯から教えていただきたいのですが。
 
わかりました。まだ“プレイステーション 4”という名前すらなかった時代なのですが、社内で「新しいハードが出る」という通達があったんですね。僕が所属しているのはSIEでソフトを作る、いわゆるファースト・パーティーの部署ですので、その新ハードを牽引するようなタイトルを作ることが至上命題として存在します。そこで、フロム・ソフトウェアさんに声を掛けさせてもらったときも、まずは“フロム・ソフトウェアのファンが納得できるストレートなゲーム性と骨太なアクションの実現”を大前提しつつ、「新ハードならではのタイトルを作りませんか?」と、お願いしたと思います。
 

 
――はい
 
そこを出発点にディスカッションを重ね、アイデアを固めていって『ブラッドボーン』に到達した……というのが、大まかな経緯となります。
 
――第1報が出た当時は、『Demon’s Souls』(※フロム・ソフトウェアの、プレイステーション®️3用超骨太アクションRPG)の続編なんじゃ……と言われることも多かったと思いますが、開発サイドにそういう気持ちはあったのでしょうか?
 
まずはそこに固執せず、フラットに“プレイステーション 4をより活かしたタイトルを作るにはどうすればいいか”を考えていった結果、『ブラッドボーン』のような世界観のほうがプレイステーション 4のパワーを活かせるよね、という流れになりました。そういう意味では、すごく“自然”だったと思います。
 
――その“プレイステーション4らしさ”というのは、具体的にどのあたりに出ているのでしょうか?
 
ひと口に“らしさ”と言っても、なかなか難しいじゃないですか。開発初期のころはスペックがすべて決まっていたわけではなく、プレイステーション4の特徴のひとつである“SHARE”機能(※ネットワークを通じて、個人が撮影した動画やスクリーンショットを他の人と共有できる機能。ゲームプレイ動画の生配信などもできる)も公開されていませんでしたし。
 
――はい、わかります。
 
そんな中、宮崎さん(※『ブラッドボーン』のディレクターであり、フロム・ソフトウェアの代表を務める宮崎英高さん)から、「このマシンパワーを活かして、“情報量の多い世界観を作ろう”」というアイデアが出てきました。
 
――情報量……ですか。
 
具体的に言うと、ヤーナムの街にある柵が1本1本違う方向に曲がっていたり、樹木が妙な出で立ちをしていたり、また建物の外壁の凹凸も不均一だったり。すごく細かなデザインが効いているところがあるんです。このような、その場にいるだけで恐怖や不安を感じさせる雰囲気って、あえて均一じゃない作りにすることで増幅されることがあると思います。造形ひとつひとつの作り込みってマシンパワーが必要になるので、「じゃあ、その方向で作ってみましょう」ということになりました。
 

 
――その結果、生まれた世界観が……。
 
ゴシックあるいはヴィクトリア、ホラーという雰囲気が合うんじゃないかと固まっていって、どんどん陰惨な方向に進んでいきました(笑)。そういう意味では、『ブラッドボーン』の世界観そのものが“プレイステーション 4だからこそできた”と言えると思います。
 
――それを象徴するダンジョン、エリアって、山際さん的にはどれになりますか?
 
最初に作ったのが“聖堂街”で、とくに聖堂街の上層の絵作りから始めていったので、そこがもっとも“『ブラッドボーン』らしい場所”と言えるんじゃないでしょうか。
 
――あー、わかります!
 
徐々に聖堂街ができていく様子は忘れられないですし、僕としても思い入れが深いですね。
 

 
――その世界観について、さらに掘り下げさせてください。『ブラッドボーン』はプレイステーション4のタイトルの中でも極めて特殊というか、特異な世界観を持っています。これが生まれた経緯を改めて聞かせてください。とくに、クトゥルフ神話をモチーフにされているところとか、過去のゲームにはほとんどなかったと思うのですが。
 
クトゥルフに関しては、完全に宮崎さんの趣味だと思うんですけどね(笑)。クトゥルフなども含めて、“宮崎さんの中にあったもの”が出たのが『ブラッドボーン』の世界観だと言えます。ただ、僕は宮崎さんの知識にはまったく追いついていなかったので、最初の打ち合わせから“みんな知っている”という前提で話が進むので焦りました(苦笑)。あとで宮崎さんに、「ラヴクラフト全集の、コレとコレは絶対に読んで!」と言われ、まずはそれを全力で読み込みました。
 
――僕はクトゥルフについてまったく知らず、『ブラッドボーン』を遊ぶうちに興味を覚えてハマった人間です。クトゥルフを題材にしたボードゲームを買ってしまったり……(笑)。
 
わかります(笑)。ゲーム業界的にも機運が高まりましたよね。ただ、プロモーションとしてはあまりクトゥルフを前面に出すとネタバレになるので、微妙に匂わせる程度にとどめました。
 
――そのへん、匙加減が難しいところですね。
 
そうなんです。はっきりとは出したくないけど、不穏な雰囲気は感じて欲しいという、落としどころを探すのがたいへんでした。
 
――プロモーションでの情報出しは、どう決めていったのですか?
 
もちろん、ロードマップを作って、ここではこの絵を、このタイミングでは動画を、と決めていったのですが、今回はグローバルでの展開だったので、海外のチームとも密に情報を取り扱う必要がありました。「このシーンは北米、ここは先に日本で出しましょう」とか。
 
――海外でも期待されていたタイトルですから、そのへんは慎重にやらなければいけないポイントですね。
 
まさにその通りで、情報出しについては相当きめ細かく決めていったと思います。
 

次のページへ!!(1/4)