【大塚角満のゲームを語る】第11回 『クロノ・トリガー』25周年!!

25周年を迎えて

3月11日は……日本人は決して忘れることができない東日本大震災の日だ。
 
あれから、もう9年——。
 
当時、俺が何をしていたのかについては……他のところで書いてしまったので、ここでは割愛。あえて、3月11日にまつわる別のことを書きたいと思う。
 
いまをさかのぼること1995年3月11日。25年前の今日、いまだ語り継がれる伝説的なRPGが産声を上げた。そのRPGの名は、
 
『クロノ・トリガー』
 
スクウェア(当時。現在のスクウェア・エニックス)から発売されたスーパーファミコン用ソフトで、2019年4月に週刊ファミ通が行った“平成のゲーム 最高の1本”というアンケートで堂々の1位を獲得したタイトルである。
 

 
じつはこの『クロノ・トリガー』、個人的に非常に思い出が深い。先のアンケートでこのゲームが1位を獲得したと聞いた瞬間、まるで死ぬ間際のように走馬灯が脳裏を駆け巡るレベルでな。
 
そんな『クロノ・トリガー』が、生誕25周年を迎えた。そこで今回は、“俺と『クロノ・トリガー』”の思い出話に付き合ってもらおうと思う。
 

初めて攻略を担当したタイトル

1995年1月、俺はファミ通に入って半年が経過したばかりの新米編集者だった。それでも、じょじょに仕事には慣れてきていて、連載の担当(プレゼントやクイズコーナーといった、誰でもできるコーナーだったけどw)や特集記事も割り振られるようになり、ようやくゲーム誌での仕事にワクワクを感じ始めたころだったと思う。
 
そんなある日、当時の班長が「会議やるよ~」と面倒臭そうに言って、部下の編集者数人を会議室に集めた。この班長ってのが、いまでも呪いの藁人形を打ち付けてやりたいと思うくらい意地悪極まりなかった人で、俺は許されるなら一生、顔を合わせたくないと思っていた。でも……会議となれば仕方がない。
 
俺はキリキリと痛む胃を押さえながら会議室に入り、なるべく班長の視界に入らないよう末席に腰を掛けた。とはいえ、班とは言っても4人1組くらいだったので、イヤでも頭数に入ってしまうんだけどさ。
 
しかし、いつもは心の底からつまらなそうな顔をしている班長なのだが、その日は少しおかしかった。つねに血色の悪かった顔に赤みが差し、なんと……うっすらと微笑みまで浮かべているではないか。その様子を見て、俺は震え上がった。
 
(ぜぜぜ、絶対によくないことが起こるぞ……!!!)
 
俺はこの瞬間、ファミ通に入ったことを心の底から後悔していたと思う。
 
でも、そんな班長の口から出た言葉はあまりにも意外なものだった。まるで少女のように目をキラキラとさせつつ(女性だったのです)、ふだんより1オクターブ高い声でつぎのように言ったのだ。
 
「ねぇ、みんな、『クロノ・トリガー』って知ってるよね?」
 
伏していたはずの目に班長の目線が潜り込んできた感覚があったので、俺は仕方なく赤べこのように首肯した。
 
「は、はい、もちろん……。スクウェアの、期待の新作の……」
 
班長は顔を輝かせる。
 
「そうだよ!! 大塚!! さすがだね!!」
 
班長にホメられたのは、このときが最初で最後だった気がする。
 
そして班長は目を(☆ ☆)←こんな感じにしたまま、この会議の核心を語ったのだ。
 
「なんと!! 我が班が『クロノ・トリガー』の攻略を担当することになりました~~~!! やったね!! 大塚、うれしいよね!?」
 
そう、班長はこういったRPGが大好きだったのである。ここで「うれしい」と言わないと後で面倒なことになると思い、脊髄反射で俺は応えた。「う、うれひい、です、はい……」。こうして俺は、2ヵ月後に発売される期待のRPGの攻略を担当することになったのでありました。
 

『クロノ・トリガー』の影響

とはいえ、俺は当時から攻略向きの人間ではなく、取材やらインタビューやらがやりたいジャーナリスト志向が強かったので、期待度MAXのRPGとは言ってもかなり憂鬱だった。編集部の仲間から、
 
「『クロノ・トリガー』をイチ早くやれるなんて、最高じゃん!!」
 
なんて言われても、
 
「攻略とか……やりたくないし……」
 
と、ただただ暗くこぼすだけ。班長から開発中のROMをもらっても、心が晴れることはなかった。
 
……そう、スーパーファミコンの電源を入れるまでは。
 
「とりあえず1回、エンディングまでやらなきゃな……」
 
しぶしぶソフトを起動し、遊び始めること……10時間超。ようやく画面から顔を上げたときには、すっかり夜も更けていた。俺は紅潮した顔を隠そうともせず、まわりに数名残っていた仲間に興奮の口調で言ったのである。
 
「『クロノ・トリガー』……めちゃくちゃおもしれえ!! 攻略班最高ッ!!!www」
 
そう、『クロノ・トリガー』はおもしろかったのだ。それも、抜群に。とてつもなく!! 俺はこのときに初めて、
 
「ファミ通に入れて、本当によかったwww」
 
そう思ったと記憶している。
 

25年ぶりのゲーム

そんな、思い出のゲームである『クロノ・トリガー』の発売から25年が経ったと聞き、思わず↓コレを買ってしまいました。
 


 
そう!! スマホアプリ版の『クロノ・トリガー』!!
 
うわあ……! 『クロノ・トリガー』って最初のスーパーファミコン版のあと、プレイステーション、ニンテンドーDS、バーチャルコンソール、Steamなどでも展開されて、2018年にはiOSとAndroid版も発売されていたんだよなー。
 
「いつか、やり直したい!!」
 
って考えていたんだけど……25周年のこのタイミングが最良なんじゃないかと思い、このたびiOS版を購入した次第だ。
 
『クロノ・トリガー』をプレイするのは、本当に25年ぶり。あれからいろいろな人生経験を積み、立場も変わったいま遊んだらどんな風景が目の前に広がるだろうか……? そんなドキドキと高揚感を抱えた状態で遊んでみようと思います。
 

大塚角満(おおつか・かどまん)
 
1971年9月17日生まれ。元週刊ファミ通副編集長、ファミ通コンテンツ企画編集部編集長。在職中からゲームエッセイを精力的に執筆する“サラリーマン作家”として活動し、2017年に独立。現在、ファミ通Appにて“大塚角満の熱血パズドラ部!”、ゲームエッセイブログ“角満GAMES”など複数の連載をこなしつつ、ゲームのシナリオや世界観設定も担当している。著書に『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』シリーズ、『折れてたまるか!』シリーズなど多数。株式会社アクアミュール代表。

(c) 1995,2018, SQUARE ENIX CO.,LTD.ALL Rights Reserved.
Illustration:(c) 1995 BIRD STUDIO / SHUEISHA
Story and Screenplay:(c) 1995,2008 ARMOR PROJECT / SQUARE ENIX

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