ドブフクロウのMtGブレイキングアカデミー vol.54 ~スゥルタイの台頭~

By ドブフクロウ
みなさんこんにちは。MtGライターのドブフクロウです。
 
先週末にはプレイヤーズツアーファイナルを含む多くの競技イベントの中止が告知されました。こうした時勢なのでやむなしではありますが、プレイヤーズツアーファイナルも中止されるというのは寂しいものです(※ソースはこちら/リンク先は外部サイト)。
 
ですが、嬉しいニュースもありました。なんと、『ゼンディカー』の対抗色フェッチランドが新たな『Secret Lair』で収録されるそうな!

従来の『Secret Lair Drop』シリーズとは異なり、こちらの商品はWizards of the Coastの直売ではなく、全世界のカードショップで数量限定で販売されるそうな。各ショップには多くても10点程度しか流通されないらしいので、かなりレアなグッズになりそうです。
 
さて、オフラインのイベントは減っていますが、オンラインのマジックはむしろますます熱気を増しているようです。スタンダードでは、青緑系デッキの新たな亜種もメタゲームに躍り出ました。
 

Standard Preliminary #12106073

この連載が始まってから1年と少し。もう何度となくご紹介してきたデッキカラーの一つが青緑という組み合わせ……すなわちシミックカラーです。この色の組み合わせ、この1年くらいの間ずっと強かったしね……。

▲《ハイドロイド混成体》
▲《世界を揺るがす者、ニッサ》

この2枚の組み合わせは、まさにシミックカラーの強さを体現するものです。
 
元々、青という色は対戦相手のカードを奪ったり、大量のカードをドローしたりといったゲームをコントロールする能力に優れたカードが多いのですが、そうしたカードは往々にしてマナコストも重く設定されているものです。緑はそんな青の強力な呪文を唱えるためのマナ加速が得意なので、実はけっこう相性のいい組み合わせなんですよね。
 
ただし、弱点としてどちらの色もクリーチャー除去ができないという点があります。2色以上の色の組み合わせでクリーチャーを除去できないのは青緑の組み合わせのみなので、爆発力はあるけどなんとなく不器用というカラーリングでもあります。しかし、現在のシミックカラーのデッキは上記の2枚の組み合わせに代表されるように、不器用さ以上に爆発力の方が目立ち、メリットがデメリットを上回っている状態と言えます。
 
そんなわけでシミックは強いというお話なんですが、もしもそんなシミックカラーのデッキが「クリーチャーを除去できない」という弱点までをも克服したらどうなるでしょう? 答えはこんなデッキリストになります。
 

スゥルタイランプ(使用者:OompaLoompa選手)
枚数 カード名(メインボード)
1 《戦慄衆の将軍、リリアナ》
3 《世界を揺るがす者、ニッサ》
1 《伝承の収集者、タミヨウ》
1 《ゴルガリの女王、ヴラスカ》
1 《半真実の神託者、アトリス》
4 《ハイドロイド混成体》
2 《虐殺少女》
1 《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
3 《戦争の犠牲》
4 《思考消去》
2 《霊気の疾風》
2 《成長のらせん》
4 《暴君の嘲笑》
4 《繁殖池》
4 《寓話の小道》
3 《森》
3 《島》
4 《草むした墓》
1 《沼》
2 《欺瞞の神殿》
2 《疾病の神殿》
4 《湿った墓》
枚数 カード名(サイドボード)
2 《霊気の疾風》
1 《戦争の犠牲》
1 《軽蔑的な一撃》
2 《見栄え損ない》
2 《強迫》
2 《永遠神の投入》
3 《神秘の論争》
2 《煤の儀式》

 

こちらはシミック(青緑)にを足したスゥルタイ(青緑黒)カラーのデッキです。さきほどシミックカラーはクリーチャー除去が苦手と書きましたが、それなら足すべきはクリーチャー除去を最も得意とする色である黒ですよね。実際、このカラーリングもマジックの歴史的に結構人気のある色の組み合わせです。
 
こちらのスゥルタイランプは全体的に重いカードが多く採用されており、ミラーマッチやミッドレンジとの対戦で強く出れるような調整がなされています。序盤を耐えて中盤以降にアドバンテージを稼ぎ、各種フィニッシャーで一気に巻き返すデッキですね。

▲《半真実の神託者、アトリス》

そんな中盤を支える1枚として最近注目されているのがこの《半真実の神託者、アトリス》。戦場に出たとき、「プチ《偏った幸運》」が誘発するクリーチャーで、地味ながら着実にアドバンテージを得ることのできるクリーチャーです。本体も4マナ3/2威迫とギリギリ及第点のサイズなので、少しずつライフを削ったり、いざとなればブロッカーに回したりと無駄になることがありません。

▲《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》

また、他にも『テーロス還魂記』の新カードである《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》も採用されています。4マナ6/6という強烈なサイズに格闘能力を持ち、ボードコントロール力はピカイチです。ダメージを受けるたびにサイズダウンしてしまうというデメリットもありますが、「脱出」能力を持っているため死んでしまっても再利用が容易で、繰り返し使える除去のような使い方が可能です。

▲《戦争の犠牲》
▲《虐殺少女》

以前より黒緑系のデッキのサイドボードなどによく利用されていた《戦争の犠牲》もこのデッキではメインボードから採用されています。1対2~3交換もたびたび発生するインパクトのあるカードで、消耗戦に持ち込むためにもってこいです。
 
《戦争の犠牲》自体は横並びしている相手には弱いという弱点はありますが、そうした相手には《虐殺少女》が刺さります。各カードの弱点を埋めるようなカードが無数に散らされているのがこのデッキの最大の特徴で、どのようなデッキ相手でも絶対的な不利に陥ることが少ないのが強みと言えます。
 
ただし、ミラーマッチに強い構成になっている分、アグロ耐性は若干下がっているようにも思えます。もしも今後このデッキが流行るようなら、再び赤単アグロが環境のトップに返り咲くこともあるかもしれません。いよいよ『テーロス還魂記』環境の末期に差し掛かっていますが、まだまだこの先も変化がありそうですね。
 
※画像はマジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイトより引用しました。引用元URL:https://mtg-jp.com/reading/publicity/0033881/
 

 

ライター:ドブフクロウ

青春時代のほぼ全てをテキストサイトやゲーム系サイトを徘徊することに費やしていた根暗ライター。人間としての軽薄さに定評があり、親しい間柄では「空っぽ」というあだ名で呼ばれることもある。
MtGプレイヤーとしての腕前は自他ともに認めるヘッポコだが、青春時代に (いろいろなものを犠牲にして) 培ったMtG知識量は他の追随を許さない。

 

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