【大塚角満のゲームを語る】第19回 ゲーム紹介記事の思い出!!


 

記名原稿の意味

現在、コロコロオンライン誌上で、“今年のGWはゲームウィーク!”と題した特集を展開している。
 

 
編集部在籍ライターがおすすめゲームを紹介する……というじつにシンプルでわかりやすい企画で、俺も何本も記事を寄稿しているんだけど、改めて、
 
「ゲーム記事の原点は、こういう切り口なんだよな」
 
と思い知ったわ。そのゲームのことを好きで好きでタマラナイ人が、ときに熱く、ときに恥ずかしげもなく、ときに中二っぽく、
 
「このゲームは、本当にスゴいんだよ!!!」
 
ってことを熱量たっぷりにプレゼンする記事……。
 
「そこまで言われたら……ちょっとやってみようかな」
 
なんて読者に思わせ、その背中を押すことができるのは、もっともありきたりなこんな記事なんだよなー。
 
そんなことを考えていたら、まだペーペーのゲーム記者だったころを思い出したので、ちょっとその話に付き合っていただこうかな。
 

まだペーペーだったころの思い出

俺が入ったばかりのころのファミ通には、毎週必ず“ゲームインプレッション”という記事が掲載されていた。
 
中身は、前述の“今年のGWはゲームウィーク!”とまったく同じで、在籍ライター(と言っても、当時のファミ通は内部スタッフがすべての記事を書いていたんだけど)がお気に入りのゲームを自分の文体で紹介する……というもの。
 
ゲームの選別も、文体も、レイアウトも、内容もライターにおまかせだったので、たったの1ページ(約3000文字)のわりに精神的な工数は小さくなかった。
 
……いや、ぶっちゃけその記事の編集担当に声を掛けられることを、ほとんどのスタッフが忌み嫌っていたと思う。週刊誌だから締切はキツいし、
 
「自由に書いていいよ」
 
と言われるわりに、デスクや副編からズタズタに赤(修正)を入れられることも少なくなかったからな(苦笑)。
 
でも、俺はこの記事が回ってくることは嫌いじゃなかった。むしろ、ウェルカムだったかもしれない。
 
というのも、当時のファミ通で記名原稿を書けたのはクロスレビューの担当者と編集長くらいだったし、俺が所属していたニュースチームは個性と主張を殺してナンボの記者稼業。
 
でも、俺はもともとモノ書き志望で、いつか自分の単行本を作りたい……という野望も抱いていたので、記名原稿が書けるインプレッションは格好の勉強材料だった。なので、編集担当がライターを捜しているときは積極的に、
 
「あ! 俺、書きますよ!!」
 
と手を上げていたのである。
 
そして、2回、3回とインプレッションの記事を書いているうち、当時週刊ファミ通の副編集長をしていた水間さん(“水ピン”の名前で現在も活躍中)が、俺がチェックに出した原稿を手にして席にやってきたことがあった。
 
「なぁ、大塚さぁ~~~」
 
甲高い声を間延びさせながら、水間さんは俺の隣の席に腰を掛けた。その瞬間、イヤな予感が脳裏を駆け巡る。
 
(あ……! インプレの原稿だ! 今回、ちょっと調子に乗って書いちまったんだよな……。怒られるぞコレ!!)
 
身を縮めながら、俺は返事をした。
 
「は、はひ……」
 
すると水間さんは俺の目を見ず、原稿をペラペラをめくりながら、まったく予想していなかったことをのたまったのだ。
 
「俺さぁ~~……大塚の原稿のファンかもwww めっちゃおもろいwww もう毎週書いてよ~~~www」
 
自分の原稿の“ファン”と言われたのは、間違いなくこのときが初めてだ。水間さんはまったく覚えていないと思うけど、俺は今回のような特集を作るたび、20数年前のあのときを思い出すのである。
 
熱の入った記名の原稿は、読者の心を動かすと同時に、書いた本人の背中も押してくれるのかもしれない。
 
そんなことを、思いましたとさ。
 

大塚角満(おおつか・かどまん)

1971年9月17日生まれ。元週刊ファミ通副編集長、ファミ通コンテンツ企画編集部編集長。在職中からゲームエッセイを精力的に執筆する“サラリーマン作家”として活動し、2017年に独立。現在、ファミ通Appにて“大塚角満の熱血パズドラ部!”、ゲームエッセイブログ“角満GAMES”など複数の連載をこなしつつ、ゲームのシナリオや世界観設定も担当している。著書に『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』シリーズ、『折れてたまるか!』シリーズなど多数。株式会社アクアミュール代表。

©Spike Chunsoft Co., Ltd. All Rights Reserved.

バックナンバーは次のページをチェック!