〈オトナゲーム〉『The Last of Us Part II』発売記念!! ローカライズチーム特別インタビュー:ゲーム内容編

※この記事には18歳以上のみが対象のゲーム情報が含まれています。対象年齢に満たない方には、プレイをお控えいただく表現が含まれたゲームであることをご理解いただき、記事閲覧の可否を決定ください。
 

 
2020年6月19日に、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)から発売されたプレイステーション4用ソフト『The Last of Us Part II』がイイ!!
 
映像も、ストーリーも、ゲーム全体のクオリティーも……まさに“集大成に向かうPS4用ソフトの代表!”って感じで、ゲームファンの心に刺さりまくっているのである!!
 
そこで今回は、開発会社・ノーティードッグと密なやり取りをしつつ日本版の制作を行った、SIEのローカライズプロデューサー・石立大介さん、八巻里沙さん、ローカライズ担当の谷口新菜さん、大島陸さんにじっくりとお話を伺った。
 
かな~~~り分厚いインタビューになったので、“ゲーム内容編”“ローカライズ編”の2本立てでお届けいたします!!
 
まずは……ゲーム内容編から!!
 

<石立大介さん>
 
海外ゲームの日本語版プロデューサー。
<八巻里沙さん>
 
SIEローカライズプロデューサー。
<谷口新菜さん>
 
SIEローカライズスペシャリスト。
<大島陸さん>
 
SIEローカライズスタッフ。

 

九死に一生からの……

――『The Last of Us Part II』、話題作というだけあって、すでにいろいろなメディアにインタビューやレビュー記事が掲載されております。その最後方から、我々コロコロオンラインも参戦させていただくという……(おずおず)。
谷口:いえいえ、遠慮なさらず!(笑) ローカライズについて詳しくお話するのは、これが初めてですし!
 
――え! ありがとうございます! ではインタビューに入る前に、ちょっとだけ自分語りをさせていただきたいのですが。
石立:はい。なんでしょうか?
 
――本当はもっと早くインタビューをさせていただきたかったのですが、じつは……私が3月中旬に新型コロナウイルスに感染してしまい、一時は重症化してしまい、ICUに入っていたんです。
一同:!!!!!!!!!
 
※ちなみに、今回のインタビューはリモートで行っております。
 
――おかげさまですっかり良くなったのですが、最近、このインタビューに合わせて『The Last of Us』の1作目を改めてプレイしたんです。
 

▲大学キャンパス「あれってサル?」大学構内でサルを見つける2人
『The Last of Us』より

八巻:えええ……! それはまた……心に響きそうな。
 
――まさにその通りで、以前プレイしたときとはまったく違う心情で、最後まで駆け抜けました。……という、人様とは異なる目線で1作目をプレイしたばかりなので、質問にも熱がこもってしまうかもしれません! という前提をお話したかったのです。
石立:わかりました! 何なりとお聞きください!
 
――では……1作目は、愛にたどり着くジョエルとエリーの絆の物語だったと思うのですが、改めて、『II』のテーマは何になるのでしょうか?
石立:ノーティードッグの面々が強調しているのは“憎しみ”なんですが、じつは根っこにあるのは前作と同じ“愛”というテーマです。ただ、『II』は前提条件として“あるひどい出来事”があり、これをもとに、“自分の愛する人が傷つけられた場合、その愛は人をどこに連れて行くのか?”、“やはり復讐しようと思うのか?”という心情を描いているので、当初は“憎しみ”を強調していたんです。
 

▲『The Last of Us Part II』より

――愛を描くために、憎しみも浮き彫りにする感じ?
石立:開発メンバーが、よく言っていましたよ。「愛のないところに、憎しみはない」って。そういうこともひっくるめて、“愛”というテーマは変わらないと思います。
 
――では、『II』の開発に至るまでの流れをお聞かせください。
石立:順番にお話しますと、まず前作の開発が終わった段階で、ディレクターのニール・ドラックマンは『II』の構想を持っていました。前作の発売後に『Left Behind -残されたもの-』という追加エピソードが配信されましたが、この段階ですでに、『II』の内容も考えていたそうです。
 

▲『Left Behind -残されたもの-』より

――そんなに早くから……! 正直『The Last of Us』は1話完結だと思っていたので、意外です。
石立:おもしろいエピソードがあります。前作が発売されてから半年ほど経ったとき、あるゲームアワードを受賞して、ニールはエリー役のアシュレー・ジョンソンさんとともにロンドンに行ったんですね。で、授賞式の前にパブで飲んでいたそうなんですが、そこでアシュレーにいきなり、「こんなことを考えているんだけど……」と『II』の構想を話したんだそうです。それがあまりにもエモーショナル(情感的)な内容だったがためにアシュレーが泣いてしまい、まわりから「あいつ、女を泣かせているぞ!」と冷たい目で見られたんだとか(笑)。
 
――へー!!(笑) そんなことが! いやでも、それほど前から『II』について考えられていたんですね。
石立:当時、すでに骨格はできていたようですね。おっしゃる通り前作も物語は完結している……というか、プレイヤーに解釈をゆだねるエンディングになっているんですけど、そこに残してきた置き土産……つまり前作では解決されていない問題もあるので、『II』で回収したい……という気持ちもあったんでしょう。
 
――そういう意味ではやはり、前作を遊んでから『II』をプレイしたほうがいい?
石立:『II』から始められても、深く、重く、それでいてちょっとホッとするような、非常に情感的な物語を堪能できると思います。でも前作を遊ばれていれば、まるで大河ドラマを見ているかのような感慨と、「あぁ……そうか……」と思わず声が漏れるような情景に出会えると思います。
 
――大河ドラマ、か……。
石立:でも物語を作る上で、ニールは、「ものすごい葛藤があった」と言っていました。それは、ジョエルとエリーに対する感情が、とても深いから。これはプレイヤーも同じで、「前作の物語の後、ふたりには幸せに暮らしていてほしい」、「これ以上、ジョエルとエリーの苦しむ姿は見たくない」という声がたくさん届いていたんです。
 

▲『The Last of Us Part II』より

――僕も前作を終えたばかりなので、すごくわかります。
石立:でも、ニールは乗り切ったようです。「ふたりに対する自分の愛の証明は、“彼らの物語を、真摯に描き切ることだ”」と。“ジョエルとエリーはその後、何の苦難もなく平和に暮らしました”なんていう甘い夢物語に浸るんじゃなく、あの世界の現実と向き合って最後まで表現する道を選んだわけです。
 
谷口:その話、私も初めて聞きました。葛藤があったことはひしひしと伝わってきていましたけど……そういうことだったんだ。
 
――個人的には、前作のラストでプレイヤーに判断をゆだねられたと思ったので、その結末というか、地続きの物語を『II』で見られるのは楽しみですね。
八巻:そこは、存分に堪能していただけると思います。
 
――僕が前作を遊んで印象に残っているのが、キャラどうしの絆が深まっていくシーン。エリーが口笛を吹けるようになった場面とか。『II』においても、そんなシーンは用意されているんでしょうか?
石立:……話過ぎるとネタバレになっちゃいそうなので、ご自身で確認されるのがいちばんいいかなと(笑)。
 
――あ、確かに(笑)。
八巻:ひとつお話するとしたら、“ディーナ”というエリーの親友とのやり取りですかね。エリーは彼女に対して友だち以上の感情も抱いているので、そのふたりの甘酸っぱい青春グラフィティは感じてもらえるんじゃないかな、と……。まあ世界観的に、そんな甘ったるいことは言っていられないかもしれないんですけど(苦笑)。
 

▲エリーとディーナ『The Last of Us Part II』より

谷口:それ以上は……言えないかな! いいシーンはたくさんあるんでお話したいんですけど、すべてがネタバレにつながるので(笑)。
 
――物語性の強い作品は、総じてそうなりますよねー。
谷口:『The Last of Us Part II』は、とくにそうです。これまで関わった作品で、最高レベルかもしれないですね。
 
――前作もそうでしたけど、『The Last of Us』は長編映画を観ているような感覚を覚えさせる作品ですよね。観終わったあと、お酒を飲みながらあーでもないこーでもないと検証し合うのにピッタリというか(笑)。
谷口:まさにそれです!! 『II』を終えたら、リモートでもいいので語り合いたいです(笑)。

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