TOP ニュース 【『moon』パッケージ版発売記念】元スクウェア社員が一風変わったゲームをつくり続ける理由<後編>
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【『moon』パッケージ版発売記念】元スクウェア社員が一風変わったゲームをつくり続ける理由<後編>

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伝説のゲーム作品が、23年越しにパッケージ版で移植を迎える——作品の名は『moon』(ムーン)!! 2019年10月に、満を持してNintendo Switchに移植され、ダウンロード版が販売されていたが、この度、豪華特典付き初回限定パッケージ版が2020年10月25日に発売されることが決定!!!!
 
これを記念して、コロコロオンラインでは当時の開発メーカー・ラブデリックの中心メンバーだったゲームディレクター・木村祥朗さんとイラストレーター・倉島一幸さん(※いずれも現在はオニオンゲームスに所属)にインタビューを実施。
 
今回の記事では移植版『moon』の開発を手掛け、2012年の会社立ち上げ以来、一風変わった作品でゲームファンを夢中にさせている“オニオンゲームス”のことを中心に聞いたぞ! 二人は、月の向こうに何を見る……?
 


 
<木村祥朗(きむら・よしろう)>ゲームデザイナー、オニオンゲームス代表。スクウェアで『ロマンシング サ・ガ』シリーズの開発に携わる。退社後は、ラブデリックで『moon』を制作。その後、『チュウリップ』『王様物語』などを経て、2012年にオニオンゲームスを設立。現在に至る。

 
<倉島一幸さん(くらしま・かずゆき)>ゲームグラフィックデザイナー・イラストレーター、オニオンゲームス所属。スクウェアで『半熟英雄』シリーズ、『ライブ・ア・ライブ』『スーパーマリオRPG』などの開発に携わる。退社後は、ラブデリックで『moon』『UFO -A day in the life-』を制作。その後、『もぎたてチンクルのばら色ルッピーランド』『王様物語』などを経て、オニオンゲームスに所属。現在に至る。

 
<オニオンゲームスとは!?>
木村さん・倉島さんらを中心に立ち上げられたインディーゲームメーカーだ!! これまでに『勇者ヤマダくん』『Million Onion Hotel』『BLACK BIRD』を発売。10月にはNintendo Switchソフト『moon』のパッケージ版を発売するぞ!!

 
※インタビュー前編はコチラ
 

インディーゲームとの出会いがすべてを変えた

——『moon』を開発したラブデリックが解散したあとも、お二人は数々のゲームタイトルに携わってきました! そして、2012年には木村さん自らが代表取締役を務めるオニオンゲームスを立ち上げ、『勇者ヤマダくん』『Million Onion Hotel(ミリオンオニオンホテル)』『BLACK BIRD(ブラックバード)』など、独創的な作品をいくつも発表しています。いずれもロールプレイング、パズル、シューティングと異なるジャンルのゲームであることが印象的です。経済活動としての意味合いはもちろんとして、そのアグレッシブな創作活動の原動力はどこから来ているのでしょうか。
 
(木村さんを見て、ぼそっと)原動力おじさん。

 ……でもこれ、すごい難しい質問だな。どうして、そういう原動力があるのかですよね。おれだって、やる気ないときはあるしな。

 
やる気がないときもあるけど、やっぱり、おもしろいことをいっぱい思い付いてはメモしてるよ。

 
アイデアはいっぱいある。……なんだろね。短い人生、やりたいと思うことをやり切らないと、どうせ死ぬしみたいなところがあって。40代前半で「自分でもう一度やろう」と決意した背景が関係していると思うんだけど。

 
——当時のことについて教えてください!!
 
その頃、ゲーム業界にいても「ああ、自分の好きなゲームをつくるのはもう無理だ」みたいに感じることがあったんです。たとえば、フェイスブックやスマホのソーシャルゲームが流行ったりしたときに、今のゲーム業界で僕が何か企画を通すのは無理だなと思って。でも、そんなときに、インディーゲームに出会うわけです。

 
——シンプルに言うと、小規模体制で開発するゲームのことですね!
 
きっかけは、2012年のIGF(=インディーズゲームフェスティバル)でした。サンフランシスコには、GDC(=ゲームデベロッパーズカンファレンス)というイベントのために来ていたのですが、メキシコの友人が「会場のあっちでIGFがやっているから見に行こう」と誘ってくれたんです。

会場に入ると、だれがつくったのかもわからない世界中のおもしろいゲームが、次から次へと大きなスクリーンに映し出されて。そのときの衝撃といったらすごかった。神様に「お前はこれを見ろ」と言われているようにすら感じました。

 
——どういったタイトルのゲームが出展されていたんでしょうか!?
 
『Spelunky(スペランキー)』とかだったかなー。そこで、インディーでは世界中のみんなが、フリーダムでおもしろいゲームをガンガンつくっていると知り、「ああ、どうして自分はあちら側の世界にいないんだろう」と。

自分も日本に帰って、こんな風にゲームをつくりたいと思いました。どうやって商売するかはまだイメージできないけど、自由にゲームをつくりたい、自分たちがおもしろいと思うゲームをみんながおもしろがる——そんなシンプルな考えに立ち返ったんです。

 
——そこから、オニオンゲームスの立ち上げに至るわけですね……!
 
『勇者ヤマダくん』『Million Onion Hotel』『BLACK BIRD』は、その頃に企画を立ち上げて完成させたものです。質問の答えに戻ると、つまり、自由に生きてみようと。そういう努力をしようと思ったところにあるのかなと。
 
よく、雄大な自然を目の当たりにすると、自然と涙が出てくるというじゃないですか。僕の場合は、IGFのスクリーンを見て、それと同じような感動があったんです。「どうしてお前は、子どもの頃のように好き勝手にゲームをつくらないんだ」「売れそう・売れなさそうというマーケティングに縛られずに、自由に発明すればいいじゃん」という思いが、数々のインディーゲームを見て脳裏をよぎったんです。

 

オニオンゲームス 全ゲームカタログ

4.『BLACK BIRD』
ある日、街角で命を失った哀れな少女が、不気味な “黒い鳥”に生まれ変わり、自らの王国を滅ぼす。ゴシックな音楽と世界観のステージを、“災い”となって突き進め!! 一癖も二癖もある動きの敵キャラを、いかに攻略するかがポイントだ! 公式サウンドトラックも発売中!!
 
https://oniongames.jp/blackbird/

 

本意じゃないものをつくって売れないほうが悲しい

——木村さんは、かつてスクウェア(現スクウェア・エニックス)という超メジャーなゲームメーカーで働いていましたよね。……その、メインロードを外れるのって怖くないですか?
 
どうですかね。でも、一番怖いのは「こうすれば売れるんじゃないか」「ああすれば売れるんじゃないか」という気持ちに引きずられて、本意じゃないものをつくって売れなかったときです。そのほうが、よっぽど悲しいですよ。
 
オニオンゲームスを立ち上げた当時は、「国内で大ヒットはしないかもしれないけれど、日本だけじゃなくて世界中の人に各国300本ずつ売れればどうかな」という考え方でした。変なゲームが好きな人って、世界中に一定数いるんですよ。実際、『Million Onion Hotel』の販売本数は半分が日本、半分が海外でした。
 
国内だけじゃなくて、世界を相手にすれば、僕らのようなサブカルみたいな人たちでもね(笑)、生き残れるんだっていう手応えがありました。

 
——倉島さんは、その頃の木村さんの様子をどのように見ていましたか?
 
盛り上がってるなーっていうのは漠然とわかりました。落ち込むこともありますけれど、基本的にアグレッシブですからね。

 
あと優しいよね(と、取材中盤の倉島さんを気遣い水を手渡す)。

 
あと優しい(笑)。すごいパワフルなおっちゃんですよ。

 

オニオンゲームス 全ゲームカタログ

5.『MonAmour』
近日リリース予定。木村氏曰く「おじさんが即死する“チュウゲーム”」。主人公のおじさんが画面右端にいる少女にチュウをすればゴールなのだが、なんと初回プレイのゲームオーバー率は99%だとか……。同ゲームは『moon』内で遊べる「ジンギスカン」というゲームがベースになっており、ボタンを押す強弱で主人公が上下に激しく揺れながら横移動をする。当時は激ムズなゲームバランスによってプレイヤーが悲鳴を上げていたが、今作は「いいジンギスカン」になっているとのこと。

 

初めてのゲーム制作は中学1年生!

——すみません、少し話が戻るんですが、木村さんは子どもの頃からゲームをつくっていたんですか!?
 
僕がゲームをつくり始めたのは中学1年生の頃です。頑張ってお金を貯めて、パソコンをゲットして。もっと言えば、電気屋さんの店頭に商品として置かれているパソコンをいじって、ゲームをつくれるようになってから買いました。

 
そんなことが可能なのかっていう(笑)。

 
昔はおおらかな時代だったから(笑)。電気屋も子どもがなんかやってるな〜と思いながら、見守ってくれていたんだと思う。

 
——どんなゲームをつくっていたんですか!?
 
たとえば「歩け歩けゲーム」っていう、棒が蛇みたいに動いていく単純なゲームです。

 
トロン的な。

 
トロンって言えばかっこいいけど、僕のは本当に棒がただ伸びるだけだったからなぁ。

 
——まさか中学1年生でゲームをつくっていたとは……初耳でした。
 
おれも知りませんでした。

 
——ええっ、木村さんの盟友・倉島さんもご存知ないエピソードなんですか!? あの、お二人がこれだけ長く一緒に活動しているのは、何か通じ合う部分があるからだと思うのですが、よろしければ教えていただけませんか? 改めて話すのも恥ずかしいかもしれませんが……。
 
恥ずかしすぎるよ(笑)

 
でも、ずっと一緒というわけじゃないんですよ。『moon』のあとは離れていますから。

 
moonとその後ちょこっと。若い時に一緒にいたのは2、3年くらいだよね。その後も『王様物語』とか、いろいろやっては離れ、やっては離れ……。オニオンゲームスになってからは、ずっと一緒にいますね。

 
——聞くのも野暮なお話でした(笑)。ところで、現役コロコロ読者の「なりたい職業アンケート」では、ゲームクリエイターが人気なのですが、ゲームクリエイターを目指す子どもにアドバイスがあれば教えてください!!
 
つくればいいんじゃないの?

 
そうですね。

 
とにかくつくることですよ。今はパソコンさえあれば、Unity(※ゲーム開発ツール)は無料だし、Unityの使い方だってインターネットで調べられる。むしろ、小学生でゲームをつくっている子って、いっぱいいるんじゃないかな。今は昔と違って、なんでもできますから。大人になる前につくって、売っちゃえばいいんだよ。
 
友だち相手に無料で遊んでもらうんでもいいしね。つくって、感想を聞いて、またつくっての繰り返しでさ。試せばいいじゃん、って思います。

 
それをまた自分で実況してもいいし。

 
やってみたら楽しいと思うけどなー。やればいいだけ!

 
——アドバイスありがとうございます! お二人にとって、ゲームづくりの魅力とは、どんなところでしょうか!?
 
僕は前から一貫して変わらないんですけど、チームで何かつくっているときに、隣にいる人を笑わせたり驚かせたり、まずはチーム内でウケを取りたいんです。それでリアクションがあると楽しいですし。ゲームづくりって、そういうものの積み重ねじゃないでしょうか。お客さんに届く前に、まず近くにいる人に楽しんでもらうよろこびというか。

 
——あぁ、それは出版・WEBの世界も同じように思います! 木村さんはいかがですか?
 
やりがいねぇ〜。やりがいかぁ。うーん…………(長考)。まあ、なんだろな。みんな幸せになりたいでしょ、生きてて。で、幸せになる方法の一つとして、お酒を飲んだりとか、好きなアニメをみるとか、自分がただ受け入れることで得られる快感っていっぱいあると思うんです。
 
でも、僕は、何かを地道につくったり、チームで何かを成し遂げるっていうよろこびのほうが、確実に自分たちの気持ちを高揚させて幸せになれる。そして、それでお金を稼げるっていうのはすごいいいことで、そういうループが続くと、生きている甲斐(かい)があるなと思えるんです。
 
若いときは、その価値が同じくらいのものに見えていたんだけど、今は、「酒を飲むよりゲームをつくる」。いや、お酒は飲むんだけどね(笑)。すべての力をものづくりに注いで、完成させるっていうことを考えています。

 
——おぉ……! 今、自分が『moon』の酒場で話を聞いているような感覚になりました(涙)。最後に、オニオンゲームスとしての今後の展望を教えてください!!
 
10月に『moon』のパッケージ版が出るでしょう。本当はその流れで「新作RPGを作り始めます」って言い切れば盛り上がるんだろうけど。言わないです。つくらないといけないと思うと、つくれないし。創作がいやになるし。今はパッケ関連の制作が終わったら真っ白な状態にもどりたい感じですね。だから何をつくるのか、今はまったくわかりません(笑)。
 
とりあえず、今度、『Mon Amour(モナムール)』という、小説で言うと短編のようなゲームが出るので、それを楽しみにしてもらえればと。チューする即死ゲームです。すぐ死んでもおもしろいですよ(笑)。

 
——楽しみに待っています!! この記事をきっかけにオニオンゲームスを知った人には、記事内の「オニオンゲームス 全ゲームカタログ」で、何を遊ぼうかワクワクしてもらえればと思います。そして、10月には『moon PREMIUM EDITION』が発売ですから。本日はありがとうございました!!
 

▲「最後にコロコロっぽいポーズをしたほうがいいかな?」とお二人。おもしろすぎるぜ!!!!
 
※『moon PREMIUM EDITION』の詳細は下記リンクから確認しよう!! 予約締切日は各サイトによって異なるので、早めに予約しておこう!!
https://oniongames.jp/moon/premium
 
※コロコロオンラインの『moon』紹介記事はコチラ
https://corocoro.jp/108647/
 
 

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