パイオニア新妄想紀行 vol.13 ~相手の土地に干渉せよ!~

By まつがん

1. 黒単の没落・バーンの隆盛とMOCS

 前回の記事から1ヶ月が経過し、パイオニアのメタゲームはかなり様変わりした。
 
 特に黒単の没落とバーンの隆盛は顕著であり、それ以外のデッキたちもこの事象に合わせてそれぞれメタゲーム内における相対的なポジションの上昇・下降を果たした。
 
 また、24名しか参加できない上に4回戦しかないとはいえ、パイオニアの数少ないプレミアイベントであるMOCSも開催され、Magic Onlineのトップオブトップのプレイヤーたちが行ったデッキ選択は、パイオニア環境におけるメタゲームをより明確に見えやすくする結果となった。
 
 では、それを踏まえて現環境はどのようなメタゲームとなっているのか。
 
・Tier1
緑単信心
ルールスバーン
スゥルタイ再生
オーラ(白黒/白緑)
ニヴミゼット再誕
・Tier2
スパイ
ジェスカイルーカファイヤーズ
4色オムナス
・Tier3
ロータスストーム
ティムール再生
黒単吸血鬼
エスパーヨーリオン
 
 あらゆるデッキに対してメインから理不尽な押しつけが可能な緑単信心が、アグロ・コンボ・コントロールのすべてに対抗できるデッキとして頂点に返り咲いた。
 
 それ以外のデッキの顔ぶれは基本的には先月から変わっていないが、メタ上位が押しつけとコントロールに二極化した結果、中途半端なコンセプトのデッキはデッキパワーが足りずほぼ一掃されつつあるのが現状と言える。
 

『サンプルデッキ:緑単信心(Michael Jacob MOCS優勝)』

枚数 カード名(メインボード)
15 《森》
2 《ハシェプのオアシス》
4 《ニクスの祭殿、ニクソス》
4 《ラノワールのエルフ》
4 《エルフの神秘家》
4 《炎樹族の使者》
4 《大食のハイドラ》
2 《ラノワールの幻想家》
2 《長老ガーガロス》
4 《ニッサの誓い》
4 《狼柳の安息所》
4 《大いなる創造者、カーン》
4 《アーク弓のレインジャー、ビビアン》
3 《世界を揺るがす者、ニッサ》
枚数 カード名(サイドボード)
1 《石とぐろの海蛇》
1 《漁る軟泥》
1 《新緑の機械巨人》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
1 《ダークスティールの城塞》
1 《トーモッドの墓所》
1 《墓掘りの檻》
1 《真髄の針》
1 《減衰球》
1 《キランの真意号》
1 《連結面晶体構造》
1 《護法の宝珠》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《王神の立像》
1 《グレートヘンジ》

 

 
ほとんどの単純なアグロが克服され、単体除去を詰め込むことに対して環境的な優位が保てなくなった結果、最強の1マナマナクリーチャーデッキがのびのびと活躍できるメタゲームとなった。
 
 《大いなる創造者、カーン》と《アーク弓のレインジャー、ビビアン》の能力でアクセスできる15種類のサイドボードは実質15種類のアーキタイプに対して致命的な解答を用意できるのと同義であり、先手3ターン目のプレインズウォーカーの着地に対してそもそも対抗しづらいこともあって、今後も盤石なデッキであり続けることが予想される。
 

『サンプルデッキ:ルールスバーン (Oliver Tiu MOCS4位)』

枚数 カード名(メインボード)
7 《山》
4 《聖なる鋳造所》
4 《感動的な眺望所》
4 《戦場の鍛冶場》
4 《ギトゥの溶岩走り》
4 《僧院の速槍》
4 《損魂魔道士》
1 《むら気な猛導獣》
4 《ヴィーアシーノの紅蓮術師》
4 《大歓楽の幻霊》
4 《乱撃斬》
1 《ショック》
4 《ボロスの魔除け》
3 《稲妻の一撃》
4 《舞台照らし》
4 《魔術師の稲妻》
枚数 カード名(サイドボード)
4 《灼熱の血》
4 《岩への繋ぎ止め》
4 《乱動する渦》
2 《魂標ランタン》
1 《夢の巣のルールス》(相棒)

 

 
 『ゼンディカーの夜明け』以前から存在していたアーキタイプであり、実際メインボードでその恩恵はほとんど見られないが、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や《創造の座、オムナス》もある環境でそれでもバーンというアーキタイプがいまだに成立しているのはサイドボードの《乱動する渦》の獲得が最も大きな要因と言える。
 

▲《乱動する渦》

 緑単信心の台頭で一時期ほどの勢いはなくなってきつつはあるものの、デッキパワーの担保のためにマナベースとライフ水準を犠牲にしたような雑多なデッキに対してはやはり無類の強さを誇る。黒単に代わるパイオニアのアグロデッキの代表として、メタ上位を譲ることはしばらくなさそうだ。
 

『サンプルデッキ:ロータスストーム (Bryant_Cook チャレンジ優勝)』

枚数 カード名(メインボード)
4 《睡蓮の原野》
4 《植物の聖域》
4 《ヤヴィマヤの沿岸》
4 《神秘の神殿》
4 《演劇の舞台》
1 《爆発域》
4 《樹上の草食獣》
3 《遵法長、バラル》
3 《願いのフェイ》
4 《砂時計の侍臣》
4 《見えざる糸》
4 《巧みな軍略》
4 《森の占術》
4 《バーラ・ゲドの復活》
1 《首謀者の収得》
4 《熟読》
4 《時を越えた探索》
枚数 カード名(サイドボード)
2 《変容するケラトプス》
2 《パルン、ニヴ=ミゼット》
2 《萎れ》
1 《虚空の罠》
1 《神々の憤怒》
1 《思考のひずみ》
1 《副陽の接近》
1 《深淵への覗き込み》
1 《高山の月》
1 《トーモッドの墓所》
1 《全知》
1 《精霊龍、ウギン》

 

 
 スパイがコンボの1番手となり、《減衰球》よりも墓地対策が優先されるようになった中で、密かにバージョンアップしてメタゲームの間隙を縫いながらも活躍する息の長いコンボデッキがこのロータスストームである。
 
 ヴィンテージの名手であるBryant_Cookがメインから《深淵への覗き込み》を抜いて《遵法長、バラル》を採用した形で優勝したことは、環境に大きなインパクトを与えた。
 

▲《遵法長、バラル》

 ……というような環境の動きは今回も一切無視して、例によってクソデッキを作っていくことにしよう。

2. パーティーカンパニー

 『ゼンディカーの夜明け』で登場した新たなキーワードの中で、構築フォーマットにおいてはほとんど見向きもされていないものが存在した。
 

▲《タジュールの模範》

 「パーティー」
 
 「ウィザード」「戦士」「クレリック」「ならず者」という4つのクリーチャータイプで構成され、これらを揃えるごとにボーナスが生まれるというそのコンセプトは、ただでさえ4体ものクリーチャーを並べる必要がある上に種族を散らさなければならないというその難易度の高さから、どちらかといえば構築ではなくリミテッド向きの能力とされていた。
 
 だが、だからこそ挑戦する価値がある。誰もが予想しないところにこそ、クソデッキの可能性は眠っているのだ。
 
 問題は、パーティーの恩恵をどのように受けるか……すなわち、出力部分にある。
 
 どのようなクリーチャーの組み合わせでパーティーを達成しようとそれ自体には何ら意味はなく、パーティーが揃うことのボーナスを定義するカードによってデッキの強さが決まるのだ。
 
 しかし、パーティー関連のカードで構築レベルのカードなど存在するのだろうか。
 
 そう思いながら私は『ゼンディカーの夜明け』のカードリストと睨み合い、そしてついに、唯一構築でも通用しうるコンセプトを見出したのだ。
 
 そう、すなわち。
 

▲《切望の報奨》
▲《集合した中隊》

 《切望の報奨》でライブラリーから《集合した中隊》を唱えたら最強では???🤔🤔🤔
 
 《切望の報奨》はフルパーティーが揃っているとわずか1マナで4マナ以下のカードをライブラリーから探してきて直接唱えられる、ヴィンテージもかくやというスペックの呪文に変貌する。
 
 これにより、パイオニアでも随一のパワーカードである《集合した中隊》を実質8枚搭載できるようになるのだ。
 
 もちろん《集合した中隊》がパワーカードなのはそこから出してくるクリーチャーもまた強力であるというのが理由として大きいところ、パーティーの制約を受けたクリーチャー陣では《集合した中隊》のパワーが必然的にダウンしてしまうのは否めないところではある。
 
 だが、そこはパイオニアという広大なカードプールのことである。パーティーを揃えつつ綺麗なマナカーブを形成できるというようなクリーチャーのラインナップを厳選すれば、デッキパワーを落とさずに済むに違いない。
 

▲《フェアリーの悪党》
▲《夜市の見張り》

 まずはパーティーを構成する4種族の中でも最もアグロ向きな「ならず者」。《フェアリーの悪党》は、《集合した中隊》を連打するこのデッキでは2体目・3体目を探し出すことも容易だ。
 
 一方、《夜市の見張り》は一見あまりに貧弱すぎるようにも思われるが、《バネ葉の太鼓》とのプチコンボでライフを詰められるので、後述のカードと合わせてライフを攻めるコンセプトに噛み合っている。

▲《エルフの開墾者》
▲《変わり谷》

 メジャーな種族とはいえ意外にプレイアブルなカードが少ない「戦士」からは《エルフの開墾者》をピックアップ。土地シナジーも特にないデッキなのに一体なぜ?と思われるかもしれないが、パーティーデッキに必要不可欠な《変わり谷》をサーチしてこれるので、実質これ1体でパーティー2体分を供給できる点がありがたい。
 

▲《マラキールの血僧侶》
▲《異端の癒し手、リリアナ》

 防御向きであるため最難関とも言える「クレリック」からは、《マラキールの血僧侶》を採用。フルパーティーなら2マナ4点ドレインと《アスフォデルの灰色商人》もびっくりのパフォーマンスを誇る。
 
 また、《異端の癒し手、リリアナ》はこのデッキでは貴重な2/3絆魂というコンバット性能の高いサイズを持つと同時に、墓地に落ちた《マラキールの血僧侶》を再利用できるのが地味にありがたい。
 

▲《ヴリンの神童、ジェイス》
▲《返済代理人》

 最後に「ウィザード」からは、やはり《集合した中隊》デッキでは外せない《ヴリンの神童、ジェイス》が登板。
 
 また、滅多に見ないカードだが《返済代理人》は、相手の除去をかわしつつ《フェアリーの悪党》や《マラキールの血僧侶》の登場時能力を使いまわせるいぶし銀の性能だ。
 
 というわけで、できあがったのがこちらの「パーティーカンパニー」だ!
 

『パーティーカンパニー』

枚数 カード名(メインボード)
4 《マナの合流点》
4 《花盛りの湿地》
4 《植物の聖域》
2 《コイロスの洞窟》
2 《ヤヴィマヤの沿岸》
1 《変わり谷》
4 《フェアリーの悪党》
4 《夜市の見張り》
4 《エルフの開墾者》
4 《ヴリンの神童、ジェイス》
4 《マラキールの血僧侶》
3 《タジュールの模範》
2 《返済代理人》
3 《異端の癒し手、リリアナ》
3 《拘留代理人》
4 《集合した中隊》
4 《切望の報奨》

 

 

▲《ベースキャンプ》

 惜しむらくはせめて《ベースキャンプ》がアンタップインでさえあったなら……というのは言っても仕方のない話だが、マナカーブ上で最善のパーティークリーチャーを各色から集める必要があるため、マナベースにかなりの負担がかかってしまっているのと、これだけ頑張っても除去1枚でパーティーが完全崩壊する点が残念だが、『ゼンディカーの夜明け』のコンセプトを遊び尽くしたいという方は、自分なりのパーティーを構築してみるのも面白いかもしれない。