【大塚角満のゲームを語る】第48回 『ダビスタ』は、名馬とともに


 

競馬ブーム!

 
 2020年12月3日に、全国の競馬ファンが待ちに待っていた競走馬育成シミュレーション『ダービースタリオン』が発売となった!!
 

 
 これを……喜ばずにいられるものか!!
 
 あの『ダビスタ』が、どこでも持ち歩けるNintendo Switch用ソフトとなって、完全新作で発売されたのだから!!
 
 折よく、今年は数年ぶりに空前の競馬ブームが巻き起こっている。
 
 その理由は言わずもがな、ひとつの時代に何頭もの歴史的名馬が結集していることにあり、先のジャパンカップでは、
 
 “史上初! 3頭の3冠馬が激突! ウチ2頭は無敗! ウチ1頭はGI8勝馬!!”
 
 という、ゲームの世界でもありえないような事象が東京競馬場に出現して、コロナ禍にありながらもとんでもない盛り上がりを見せた。残念ながら感染拡大防止の観点から東京競馬場には抽選で当たった4500人のファンしか入れなかったそうだが、もしも平常時だったら……パンパンの15万人で客席は埋め尽くされ、それでも収容しきれなかった馬好きたちが競馬場を取り囲んで、
 
 「競馬! 競馬ぁぁあああ!!!」
 
 というシュプレヒコールを上げたことだろう(どんな叫びだよ)。
 
 そう……!
 
 いま競馬は“キテる”のだ。
 
 そのタイミングで競馬ゲームの草分けである『ダビスタ』の最新作が投入されるとは……これは競馬の神様(それ大川慶次郎さんだろ)のお導き以外のナニモノでもない!!
 
 というわけで、Nintendo Switch版の『ダビスタ』、遊び込んでおりますよ!
 

 

惜しい!

 
 さておさらいとなるが、競走馬育成シミュレーションの元祖である『ダービースタリオン』シリーズの1作目が発売されたのは、じつにいまから29年も前の1991年12月である。
 
 ……29年だよ29年!!
 
 社会人……それも、会社でもそこそこのポジションに就き、メインの戦力として働き始めている中堅社員がこの世に生を受ける前から、『ダビスタ』はゲーム業界に新たなジャンルを確立して日本中の競馬ファンを魅了していたってことだ!!
 
 そもそも1991年って、俺がファミ通に入る3年も前のことだからな……。
 
 この連載の42回目に書いた“『ダビスタ』の冬がやってくる”というコラムで、
 

関連記事
【大塚角満のゲームを語る】第42回 『ダビスタ』の冬がやってくる

 
 ファミ通の面接を受けたときに、のちの師匠となる浜村通信さんに、
 
 「最近遊んで印象に残ったゲームはなんですか?」
 
 と質問され、
 
 「いまいちばんおもしろいのは、スーファミの『ダービースタリオンII』です。最強馬を作るために、寝る間も惜しんで遊んでいます!」
 
 と答えた……というエピソードを紹介したが、当時から俺は競馬にも『ダビスタ』にも本当に目がなく、1日のうち22時間くらいは馬のことばかり考えて過ごしていた。夢の中でまで、『ダビスタ』での配合と調教のことを考えていたと思う(苦笑)。まあおかげでファミ通に入ることができ、いまもこうしてモノ書きとして活動できているので競馬と『ダビスタ』には足を向けて寝られないんだけど、当時はマジでちょっと頭のネジが外れていたと思うわ。
 
 それほど人を夢中にさせる『ダビスタ』は、前述の通り競馬ファンにウケたのはもちろんなのだが、逆に、
 
 「『ダビスタ』がきっかけで競馬が好きになり、競馬場にも足を運ぶようになりました!」
 
 なんていう相互送客も実現する最高のサイクルも生み出す。俺も、いま思い返せばスーパーファミコンの『ダビスタII』に死ぬほどハマり、当時の仲間と毎日のように攻略会議を開く中で辛抱たまらなくなって、
 
 「よし!! 本物の競馬を見に行こうぜ!!」
 
 って話になったんだよなー。
 
 当時も、いまと同じかそれ以上の競馬ブームの真っただ中。オグリキャップやトウカイテイオーといった歴史的な名馬がしのぎを削る中、いまでも俺がいちばん好きなミホノブルボンという筋肉のバケモノみたいな馬も現れて、無敗の2冠馬として暴れ回っていた。そして、俺が初めて馬券を買ったレースが、ミホノブルボンが3冠を目指して走った菊花賞。しかしここで、後に3000m以上のGIレースで無類の強さを発揮するライスシャワーという伏兵に足元をすくわれ、無敗の3冠馬は泡と消えるのであった……って、こういうことを書き出すと止まらなくなるのでこのへんでやめとくw 俺の競馬愛が伝われば、それでいいんだったw
 
 そう、Nintendo Switchの『ダビスタ』である。
 
 家庭用ゲーム機で『ダビスタ』の新作が発売されるのは、2004年のプレイステーション2用ソフト『ダービースタリオン04』以来ってことなのでめちゃくちゃ久しぶりなのだが、随所に積み上げてきた歴史と最新技術の邂逅が見られて、競走馬育成シミュレーションとしてのデキは、
 
 「さすがダビスタ!!!」
 
 とヒザを叩きたくなるものがある。
 

 
 うん、間違いなく楽しい。
 
 わずかな資金と1頭だけの繁殖牝馬でスタートする牧場経営はきびしいものがあるが、
 

 
 心を込めて仔馬を育て、競走馬として鍛えていく喜びの試行錯誤。
 

 
 スピードを伸ばすのか、スタミナを付けさせるのか、それとも勝負根性を植え付けていくのか……? レースの日程と馬体重、なにより体調(無理な調教で怪我をすることがよくあるのだ)を考慮しながらの調整は慎重を期さざるを得ない。
 

 
 そしてその間にも、新たな戦力を作るための種付けを考える。
 

 
 重視すべきは、インブリードかニックスか。それともディープインパクトのような実績のある種牡馬から種をもらうか。いやでも、そんな馬の種は高くてまったく手が出ない。となれば……“安定C”の種牡馬を使って、奇跡の天才馬の誕生を狙うか……!?
 

 
 このへん、競馬や『ダビスタ』を知らない人が読んだら8割くらいは意味がわからないと思うが、多少でも「こいつは、何を言っているんだろう……?」と興味が湧いたらぜひゲームに触ってほしい! 交配の理論どころか、競馬そのものをまったく知らなくても、懇切丁寧なチュートリアルや、
 

 
 調教やレースへの参加は厩舎におまかせできるので、飛び込んでしまえばどうにでもなるから!w
 
 そして、本作でもっとも力が入っているであろうレースシーンは……!
 

 
 史上初の音声実況……だけにとどまらず、なんとプレイヤーが生産した馬の名前まで淀みない発音で読み上げてくれるから驚いた!! この手の実況って、プレイヤーが任意で付けた固有名詞はまず読んでくれなかったけど、『ダビスタ』は完璧。このシーンだけでも見る価値があるので、ひとりでも多くの人にプレイしてもらいたいと思ったわ。
 
 ただ。
 
 いろいろなところで言われているし、俺も他のメディアで書いたコラムでけっこう厳しく指摘したんだけど……やっぱりデータ読み込みの回数と時間が多いし、長すぎる。テンポよく馬の生産、調教、レースをくり返すゲーム性なのに、場面を切り替えるたびにローディングが入るのは……あまりにも残念すぎる!! 可能ならば、今後のアップデートで真っ先に修正してもらいたいポイントだ。ていうか、それ以外の部分は手を入れなくていいので、読み込み部分だけを全力でどうにかしてほしい!! じゃないと、もったいなさすぎる!!
 

 
 そう切に願いつつ、俺は再び競馬場(ダビスタのな)に消える。
 
 やめどきがわからないんだわ、コレ(苦笑)。
 

大塚(おおつか) 角満(かどまん)
1971年9月17日生まれ。元週刊ファミ通副編集長、ファミ通コンテンツ企画編集部編集長。在職中からゲームエッセイを精力的に執筆する“サラリーマン作家”として活動し、2017年に独立。現在、ファミ通Appにて“大塚角満の熱血パズドラ部!”、ゲームエッセイブログ“角満GAMES”など複数の連載をこなしつつ、ゲームのシナリオや世界観設定も担当している。著書に『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』シリーズ、『折れてたまるか!』シリーズなど多数。株式会社アクアミュール代表。

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