ドブフクロウのMtGブレイキングアカデミー vol.121 ~世界を変容させるジェスカイ変容~

By ドブフクロウ
みなさんこんにちは。MtGライターのドブフクロウです。

さて、先週から『イニストラード:真夜中の狩り』の新カードプレビューが開始されました。コロコロオンラインでもアンコモン1枚とレア1枚を公開させていただきましたが、みなさん記事はご覧いただけたでしょうか?(記事はこちら)

現在公開されているカードを見る限り、今セットは非常に強力なカードが多いようです。ローテーション後のスタンダード環境は大きな変化を迎えることとなりそうですね。個人的に注目しているのが擬似「多重キッカー」能力を持った神話レアの《敵対者》サイクル。

▲《血に飢えた敵対者》
▲《穢れた敵対者》

特に赤と黒はカードアドバンテージやボードアドバンテージに直結した能力を持っており、本セット注目の神話レアとなりそうです。もちろん他にも「フラッシュバック」や「変身」など、旧『イニストラード』を知っているプレイヤーにとってはおなじみの人気メカニズムも再録されており、非常に楽しみです。

早いもので、MTGアリーナでの実装は来週の9月17日(金)、紙のカードはさらにその翌週の9月24日(金)のリリースが予定されています。ぜひみなさんも来週末や再来週末は予定を空けて、存分にマジックを楽しみましょう!

さて、それでは今週もスタンダードのデッキリストを見ていきたいと思います!

チャレンジャー / ライバルズ / MPLガントレット

先週末には2020-2021シーズン最後のチャレンジャー / ライバルズ / MPLガントレットが開催されました。こちらは世界選手権の出場権利と来季のMPL所属を賭けた世界最高峰の戦いです。

本イベントには日本人選手も多数参加していました。中にはイベントの様子を生放送で視聴していたという方もいらっしゃるのではないでしょうか? 時差の関係で深夜の配信となっていましたが、豪華な実況解説陣による生放送は非常に見応えがありますので、見逃してしまったという方もお時間がありましたらぜひご視聴されてみてはいかがでしょうか?

本日はそんな世界最高峰の舞台で勝ち抜き、見事来季のMPL昇格を決めた井川 良彦選手の使用デッキを見ていきたいと思います。

ジェスカイ変容(使用者:井川 良彦選手)
枚数 カード名(メインボード)
4 《連門の小道》
4 《針縁の小道》
4 《ラウグリンのトライオーム》
4 《河川滑りの小道》
3 《島》
2 《山》
4 《伝承のドラッキス》
4 《雷の頂点、ヴァドロック》
4 《黄金架のドラゴン》
4 《棘平原の危険》
4 《表現の反復》
3 《非実体化》
2 《燃えがら地獄》
2 《火の予言》
1 《本質の散乱》
1 《乱動への突入》
1 《否認》
1 《セジーリの防護》
3 《プリズマリの命令》
3 《戦利品奪取》
1 《神秘の論争》
1 《ヴァラクートの覚醒》
枚数 カード名(サイドボード)
1 《レッドキャップの乱闘》
4 《精神迷わせの秘本》
1 《バーニング・ハンズ》
1 《燃えがら地獄》
1 《才能の試験》
2 《灰のフェニックス》
2 《襲来の予測》
3 《幼獣守り》

井川選手が使ったデッキは「ジェスカイ変容」と呼ばれるデッキで、スタンダードでは珍しい>無限コンボを擁したチェイン・コンボ系のデッキです。鎖のようにカードを連続して使用し、呪文の連鎖を繋げていく様子からチェイン(鎖)と呼ばれているわけですね。

コンボ手順はやや複雑なのですが、最も一般的なルートとしては、まず《黄金架のドラゴン》に《雷の頂点、ヴァドロック》と《伝承のドラッキス》の2枚を「変容」します。これにより、墓地にあるインスタントやソーサリーを唱えることができる体制ができます。

▲《雷の頂点、ヴァドロック》
▲《伝承のドラッキス》

その後、《戦利品奪取》や《プリズマリの命令》といった「宝物」トークンを生成できるカードを用いてマナを増やし、十分なマナを得たら《非実体化》で「変容」クリーチャーを手札に戻します。「変容」されたクリーチャーたちは領域を移動する際に重ねられた全てのカードが一度に領域を移動するため、《黄金架のドラゴン》と《雷の頂点、ヴァドロック》と《伝承のドラッキス》の3枚が一気に手札に戻ります。

▲《戦利品奪取》
▲《非実体化》

あとは再び手札から《黄金架のドラゴン》を出し、《雷の頂点、ヴァドロック》と《伝承のドラッキス》を変容。上記の手順を繰り返すことで無限マナ、無限ドロー、さらには無限に墓地の呪文を唱えることができるようになり、《プリズマリの命令》などを何度も対戦相手に打ち込むことで勝利します。言葉で言うと非常に複雑怪奇というか意味不明なコンボなので、実際はコンボが回っている様子を動画などで視聴すると早いかもしれません(余計にわからなくなってしまう可能性もありますが)。

このデッキの長所は、なんといっても無限コンボによる一撃必殺の勝利があることです。手札と盤面を整える必要はありますが、準備ができていればたとえライフが1だったり、対戦相手が1000体のクリーチャーをコントロールしていようともコンバットすら行うことなく勝利をすることができます。また、コンボができない場合でも対戦相手の行動を妨害しながら《黄金架のドラゴン》でビートダウンするコントロール・アグロデッキのような挙動を取ることができることも強みです。

スタンダードにおいて、二軸の強さを持つデッキというのは非常に脅威です。モダンやレガシーと比べて妨害カードがそこまで強くないため、異なる2種類の勝ち手段に対して柔軟に対応するのは難しく、対応する側が不利を強いられがちなためです。「ジェスカイ変容」はそんな強デッキの条件にぴたりと合致するデッキで、その使用難易度の高さにも関わらず非常に多くのプロや強豪プレイヤーに愛されてきたデッキです。

なんといっても、この手のチェインコンボ系のデッキはコンボが決まったときの爽快感がたまらない! MTGアリーナでは時間制限があるため、ある程度回すのに慣れていないと時間切れでコンボが途中で途切れてしまうこともあるのですが、もしコンボに挑戦してみたいという方がいらっしゃったらぜひおすすめのデッキです!

ライター:ドブフクロウ
青春時代のほぼ全てをテキストサイトやゲーム系サイトを徘徊することに費やしていた根暗ライター。人間としての軽薄さに定評があり、親しい間柄では「空っぽ」というあだ名で呼ばれることもある。 MtGプレイヤーとしての腕前は自他ともに認めるヘッポコだが、青春時代に (いろいろなものを犠牲にして) 培ったMtG知識量は他の追随を許さない。

 

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