TOP 特集&連載 ドブフクロウのMtGブレイキングアカデミー vol.126
特集&連載

ドブフクロウのMtGブレイキングアカデミー vol.126

TwitterFacebookLine

By ドブフクロウ
みなさんこんにちは。MtGライターのドブフクロウです。

さて、先週末にはMTGアリーナにてイニストラード・チャンピオンシップが開催されました。いわゆるセット・チャンピオンシップと呼ばれるシリーズであるこの大会は、過去の大会形式でいうプロツアーに相当する大会で、世界最高峰のプロ選手であるマジック・プロリーグ(MPL)およびライバルズ・リーグ所属選手と、予選を勝ち抜いた競合しか参加できないハイレベルなトーナメントです。

この大会で見事に優勝を収めたのは、日本人選手である市川 ユウキ選手でした! 市川選手といえば”瀬畑”のハンドルネームでも知られ、マジックの配信者として活動しています。このたび、見事数年ぶりのタイトル獲得を果たしました。

また、今大会では市川選手を含む日本人選手がトップ8に5名も入賞していました。もともと日本は世界有数のマジック強国でしたが、ここ数年の活躍は特に目を瞠(みは)るものがあります。トーナメントシーンの軸足がオンラインに移ってからは、言語や時差といった物理的な障壁がなくなり一層ポテンシャルを発揮できるようになったのかもしれません。

さて、今週はそんなイニストラード・チャンピオンシップの上位入賞デッキを見ていきます。

イニストラード・チャンピオンシップ

市川選手が持ち込んだデッキは「イゼット天啓」でした。今大会で最も人気の高かったアーキタイプで、なんと38.1%ものプレイヤーがこのデッキを選択しています。

ん?どのくらいすごいか分からない? 過去の記事で歴代のスタンダードの凶悪デッキの使用率をまとめたことがあるので、ここでももう一度引用してみましょうか。

メタゲーム支配率 環境のイメージ 具体例
15~20% 環境のトップメタと呼ばれるデッキで、トーナメントでも非常によく見かける。ただし有力な対抗馬が2~3デッキほどあることも多く、一強環境と呼ばれることはあまりない。 プロツアー『カラデシュ』におけるティムール霊気池(17.6%)
20~25% 紛うことなきトップメタであり、はっきりと「環境の仮想敵」として扱われるようになる。対策・攻略しがいがあるため、プロプレイヤーの中にはこうしたデッキが存在する環境を好むプレイヤーも多い。 プロツアー『霊気紛争』(スタンダード)におけるマルドゥ機体(22.4%)
25~30% トップメタデッキが頭一つ抜けており、環境に強い偏りが見られる状態。ほとんどのプレイヤーが「このデッキは何かがおかしいのでは……?」と気づきはじめる。 プロツアー『ドミナリア』(スタンダード)における赤黒アグロ(26.5%)
30%~35% 対抗馬がほぼ機能していない、いわゆる一強状態。残りの7割の中にもこのデッキの派生型のようなリストが散見されるようになる。このデッキに使われているカードの中から禁止カードが出たとしても疑問を感じる人は少ない。 グランプリ・リミニ20162日目におけるバント・カンパニー(31.8%/※1)
35%~ すでに何らかの異常事態が起きてしまった後であり、ここまで極端な状況に陥ったという事例自体が非常に少ない。「トップメタ」「それ以外」という環境なので、メタゲームという言葉があまり意味をなさない。 2011年5月13日時点のMagic Online(スタンダード)におけるCaw-Blade(約37%/※2)

※1……《反射魔道士》禁止前
※2……《石鍛冶の神秘家》《精神を刻む者、ジェイス》禁止前

一時は60%以上の支配率を誇ったシミック・フードほどとは言えないまでも(あれは例外中の例外)、今環境の「イゼット天啓」もかなり支配的な存在だったことは間違いありません。こうしたイゼットデッキの躍進の裏には、特にこのコロコロオンライン上でプレビューした《表現の反復》の存在があると言えそうです。わずか2マナで実質2ドローのような働きをするこのカードは、序盤のデッキの挙動を安定させ、終盤ではフィニッシャーを探す手助けをしてくれます。

さて、それではそんな市川選手の「イゼット天啓」のリストを見ていきましょう。果たしてどのようなリストなのでしょうか?

イゼット天啓(使用者:市川 ユウキ選手)
枚数 カード名(メインボード)
4 《荒廃踏みの小道》
4 《河川滑りの小道》
4 《嵐削りの海岸》
3 《清水の小道》
2 《ストーム・ジャイアントの聖堂》
2 《島》
2 《山》
1 《黄金架のドラゴン》
1 《溺神の信奉者、リーア》
1 《船砕きの怪物》
4 《棘平原の危険》
2 《消えゆく希望》
4 《表現の反復》
3 《感電の反復》
3 《ジュワー島の撹乱》
1 《削剥》
1 《燃えがら地獄
1 《才能の試験》
1 《轟く叱責》
4 《ゼロ除算》
1 《悪魔の稲妻》
1 《セレスタス》
4 《予想外の授かり物》
2 《多元宇宙の警告》
1 《家の焼き払い》
3 《アールンドの天啓》
枚数 カード名(サイドボード)
4 《くすぶる卵》
1 《削剥》
1 《罠を探す》
1 《燃えがら地獄》
1 《環境科学》
1 《才能の試験》
1 《轟く叱責》
1 《襲来の予測》
1 《アルカイックの教え》
1 《家の焼き払い》
1 《溺神の信奉者、リーア》
1 《マスコット展示会》

 
前回の記事ではコントロールタイプのイゼットデッキをご紹介しましたが、こちらは《感電の反復》+《アールンドの天啓》によるコンボを搭載したコンボ寄りのコントロールデッキです。

▲《感電の反復》
▲《アールンドの天啓》

「予顕」を利用した場合でも合計で8マナが必要なコンボですが、《予想外の授かり物》のような「宝物」トークンを生成するカードの働きによってコンボ成立のハードルはそこまで高くありません。そもそもこの《予想外の授かり物》自体も《感電の反復》と相性がよく、状況に応じて自身の呪文をコピーすることでアドバンテージを築いていきます。

▲《予想外の授かり物》

上述の通り《表現の反復》によって高い安定性を得ているデッキでもあるため、単体では不要牌になってしまう恐れのある《感電の反復》のようなカードをデッキに投入するリスクも軽減されます。デッキを回すプレイヤーが腕のあるプレイヤーであればあるほど、デッキの安定性が高いことのメリットは大きいです。いわんや大規模トーナメントで勝ち抜くのであれば、事故負けのリスクが減るというのも非常に大きな要素と言えるでしょう。

ただし、デッキを回す難易度は非常に高いです。《ゼロ除算》のようないついかなる状況でもほとんど腐ることのない便利なカードがある一方で、状況に応じた適切なカードのプレイが要求され、マナカーブ順に強力なカードをプレイしていけばいい、というような単純なデッキではありません。構築自体も幅があるため、デッキを組む段階~実際の対戦まで、プレイヤーの腕前が試されるデッキタイプと言えるでしょう。

▲《ゼロ除算》
▲《黄金架のドラゴン》

市川選手のリストでは《黄金架のドラゴン》が採用されています。現在のイゼット天啓ではこの《黄金架のドラゴン》を採用した型が一般的で、一部のデッキでは《船砕きの怪物》になっています。また、《くすぶる卵》を採用しているリストや、少数ながら《マナ形成のヘルカイト》を採ったリストなど、同じカラーリングでも様々なフィニッシャーを選べるというのがイゼットカラーの強みと言えます。

今後も禁止カードなどが出ることがなければ、イゼットはメタゲーム上で活躍を続けることでしょう。この先どのようなリストが出てくるのか、まだまだ目が離せません。

ライター:ドブフクロウ
青春時代のほぼ全てをテキストサイトやゲーム系サイトを徘徊することに費やしていた根暗ライター。人間としての軽薄さに定評があり、親しい間柄では「空っぽ」というあだ名で呼ばれることもある。 MtGプレイヤーとしての腕前は自他ともに認めるヘッポコだが、青春時代に (いろいろなものを犠牲にして) 培ったMtG知識量は他の追随を許さない。

 

『ドブフクロウのMtGブレイキングアカデミー』バックナンバーはこちらをチェック!!

この記事をシェアする!

TwitterFacebookLine