【京極夏彦×松本しげのぶ】驚愕!仰天!? 松本しげのぶ先生と水木しげる先生の知られざる繋がり!!【鬼太郎対談完全版第1回】


 
現在、別冊コロコロコミックで大人気連載中の『ゲゲゲの鬼太郎』のコミックス第1巻が、3月28日に発売したぞ!

商品概要
ゲゲゲの鬼太郎 1
原作:水木しげる
作者:松本しげのぶ
価格:591円+税
発売中
判型:B6版
ページ:128
詳細:https://www.shogakukan.co.jp/books/09143022

 
その中に収録されている、「京極夏彦×松本しげのぶ スペシャル妖怪対談」の完全版をコロコロオンラインで独占公開するぞ!
第1回から驚愕と仰天の話が飛び出した!
松本先生と水木しげる先生の知られざる繋がり。数年越しの真実と熱意がコロコロオンラインでさらに熱く語られる!


—-本日はよろしくお願いいたします。今回は松本先生から京極先生に是非ともお聞きいただきたいお話があります。
 
松本:
 じつは水木先生と僕には少し関係がありまして、それを見てほしいんです。結構なネタなんですけど。
 
京極:
 ええ! そうなんですか?
 

 
松本:
 小学生の頃、本屋さんで水木先生が描いた『妖怪辞典』を見ていたんです。そしたら店員さんが「水木先生の本、他にもあるよ」と教えてくれて。その時、『続・妖怪辞典』ってタイトルだけ知ったんですけど、値段も聞かずに予約しちゃったんです。その値段を後で知って、ものすごく高いことを知って…。
 
京極:
 子どものおサイフ事情から見れば高いですよね。
 
松本:
 「お金は後で用意します」と書店さんに頼みまして、先に予約を入れてもらったんです。そしたら出版元の東京堂出版の方が水木先生に、「子どもなのにすごいファンがいますよ」と伝えてくれたんです。そしたらなんと水木先生のサイン入りで2冊送ってきてくれたんです。
 
京極:
 えっ!? そんなことってないですよ、普通。だって本屋で注文しただけで、サインもらえたんですか?
 
松本:
 これがその本なんですけど…。
 
京極:
 こりゃあすごいなぁ。
 

 
松本:
 それからもう1つあるんですが…。
 僕、和歌山県出身なんですけど、小学生の時に和歌山県の地方紙にありました「妖怪を紹介するコーナー」を集めたスクラップブックを作っていたんです。水木先生の知らない妖怪もきっといるだろうと思って。
 それで、スクラップブックも小学生の時に集めていたものでしたので、集めきれない部分があったんです。なので、その部分の妖怪は自分で描いていました。
 
 その頃は日課で水木先生のイラストの模写をしてたんです。200枚くらいになったんですが…。水木先生がまだ描いていないような妖怪も、自分で描いていました。
 
京極:
 おっと、これもすごい。というか大変だ!
 

 
松本:
 これは、「はばきぬき」。こっちは「薮おばけ」です。
 20歳くらいの時、25年くらい前ですが、これをコピーしてファンレターと一緒に水木先生に送ったんです。水木先生がそれを見ていつか、はばきぬきを描いてくれないかなと待っていたんですよ。
 
 そのことも忘れていたんですけど、最近ツイッターを見たら「季刊『怪』8号(2000年発売)にはばきぬきがのっているよな」と書き込みがあって、「え、はばきぬき描いてあるの?」と慌てて買いに行って…。見てみたら『怪』8号の「目撃画談」の第1話のところに、はばきぬきを描いてくださっていて。
 

京極:
 松本先生が送ったはばきぬきと一緒!! これ……パクリですか?(笑)
 
松本:
 いえいえ(笑) ちゃんと僕の名前を入れてもらっていて。
 
京極:
 ほんとだ! 名前書いてある。「松本しげのぶ目撃」。じゃぁパクリなんかじゃなくて正式に採用されたんだ!!
 
 
 
松本:
 目撃画談の第1話目にしてくれたと思うと、水木先生も気に入ってくれたのかなって。
 
京極:
 いや、気に入っていたんでしょう。これはすごいわ!
 
松本:
 結構事件ですよね。
 
京極:
 事件です。
 水木さんは岩波書店からベストセラーになった『妖怪画談』、『続・妖怪画談』、『幽霊画談』、『妖怪画談』の4冊を上梓していますが、『妖怪目撃画談』はその続刊として企画されたものだったようです。
 
 『怪』の創刊時に、すでに絵は何枚も描かれていた。結局、岩波からは出さずに、『怪』に連載する形になさったわけです。だからはばきぬきを水木先生が描いていたのは、この『怪』8号より前のはずです。
 
松本:
 そうなんですか?
 

 
京極:
 『怪』零号より前に目撃画談の原稿は何枚もできていたから……松本先生がいつ送られたのかわからないんですけど、気に入ったんでしょうね!
 
松本:
 嬉しい…。
 
京極:
 『怪』の初代編集長が水木さんのところに初めて行ったとき、テーブルの下に置いてあった目撃画談の原稿を見てはらはらと泣いたという伝説があるんです。本人は泣いていないというんですが、水木さんが泣いていたというから、この場合は水木さんのいうことを信じます(笑)。目撃画談の原稿があったから、『怪』は生まれたんですね。
 
松本:
 そうなんですか!?
 

 
京極:
 事実です。松本さんが送った、水木さんがそれを見た、感心した、それで絵を描いた。それを角川の人が見た、泣いた。その結果『怪』ができた! 素晴らしい! そういう話ですよね!

 
松本:
 はばきぬきってマニアックな妖怪ですよね。
 
京極:
 だいぶ細かい妖怪だと思いますよ。だって他の地方にいるわけでもないし。
 
松本:
 たまたま2、3ヶ月前にはばきぬきを検索したらツイッターで引っかかって。その中に「目撃画談で松本しげのぶ目撃になっているけど、これデュエル・マスターズの人?」と書かれていて驚きましたよ。
 
京極:
 それは俺だよ! って言えばいいのに(笑)
 

 
松本:
 そのツイートも僕が鬼太郎を描いているから、ということでツイートされたんですよ。だから、鬼太郎を描いていなかったら、気づいてもらえなかったと思います。
 僕も水木先生がはばきぬきを描いてくれたことに気づかなかった。

 
京極:
 いいものを見せていただきました。これはお化け史に残る新事実ですね。感動しました。そんな頃から関係があったとは。これはもう、松本さんは鬼太郎を描くべくして描いたということですね(笑)。
 
松本:
 京極先生とも面識はなかったんですけど、繋がりはあった。『怪』にはばきぬきが載ったのは2000年くらいです。ファンレター送って4、5年後ですかね。
 
京極:
 水木先生は読者からの手紙やハガキをかなり大事にされる方で、気にいるとダイアリーに貼り付けたりしてますし、納得できる意見なら反映したりもしています。
 
 たとえば、ある人が40年くらい前に、「最近のねずみ男の顔の描き方はダメだ」なんて、ダメ出しのハガキを出したというんですね。ハガキを出した本人と僕はずいぶん後に知り合ったんですけど、そんな上から目線のハガキ、普通出しませんから、たぶんネタだろうと思っていた。ところが、これが調べてみるとダイアリーに貼ってあったんですね。で、その時期の作品を見てると、ハガキを貼ったあたりからねずみ男の顔が少し元にもどっているんです。ちょっと感動しました。
 

京極: 
水木先生は、読者の手紙やハガキをまめにご覧になっていたし、大事にしていたんですよ。
 
 だから結構ガッと来たんじゃないんですか、はばきぬき。水木しげるのハートに。そんな松本先生が鬼太郎を描いているなんて、感無量ですね。水木先生もきっと喜んでくれていることでしょう。
 

 
松本:
 本当に良かったです。にわかファンだって思われるのがすごくイヤだったので。
 
京極:
 いや、にわかとかあんまり関係ないですし、要は長さよりも深さです。松本さんは、相当深いです。お話できてよかったですよ。今後もよろしく。お仕事だけじゃなくて水木仲間として。
 
松本:
 はい。よろしくお願いします。


次回はゲゲゲの鬼太郎を描くのに必要なこととは何か?
松本しげのぶ先生と京極夏彦先生が徹底討論! お楽しみに!
 

京極夏彦
1994年「姑獲鳥の夏」でデビュー。「百鬼夜行シリーズ」は累計1000万部を超える。世界妖怪協会、全日本妖怪推進委員会改めお化け友の会・代表代行。お化け大學校・水木しげる学部教授

 

松本しげのぶ
1990年に小学館新人コミック大賞児童部門佳作を受賞しデビュー。月刊コロコロで「デュエル・マスターズ」、別冊コロコロで「ゲゲゲの鬼太郎」を連載中。