【ネット騒然】ユニークすぎる和菓子「トイレの最中」の誕生には、町の歴史が秘められていた!!

みんなーーー! とってもユニークな和菓子「トイレの最中(さいちゅう)」って知ってるか!? トイレの便器を模した最中(もなか)に、うん……じゃなくて、あんこを入れて食べるお菓子なんだ! つくっているのは、愛知県常滑(とこなめ)市にある、1951年に創業した老舗和菓子店・大蔵餅さん。実は、ユニークなだけじゃなく、町の歴史と関係した物語性のあるお菓子なんだ。知られざる開発秘話を、大蔵餅の店主・稲葉憲辰さんに聞いてみた!

▲大藏餅さんのホームページ(HPのスクリーンショット)

町の歴史が詰まった和菓子

――トイレの最中をつくろうと思った経緯を教えてください!

15年ほど前に、商工会議所青年部の会長を務めていたのですが、その時に、LIXIL(リクシル)がINAX(イナックス)だった頃の創業家の元社長・伊奈輝三さんとお会いする機会がありました。伊奈さんが生まれた町であり、大蔵餅のある常滑市は、衛生陶器(トイレ)の町でもあります。輝三さんと飲みながら、「衛生陶器のお菓子を作りたいんです。『うんこ』と『あんこ』って似てるじゃないですか」と話したのが最初だったはずです。そうしたら、「ぜひ、やりたまえ」と快諾してくださったんですね。

とは言え、当時、トイレを模した食品が受け入れられる時代の風潮でもなく、アイデアは置き去りに。それから10数年が経った頃、LIXILの榎戸工場さんから「工場見学に何かお土産を付けたいのですが、おもしろいものはありませんか?」と相談を受けたのです。その時、思い出したのが、輝三さんに話した衛生陶器のお菓子です。近年、うんこミュージアムやうんこドリル、おしり探偵など、これまでなら下品だと言われていたものが、かわいいものとして受け入れ始められてきました。当時、輝三さんとこんな話をしていたんですと榎戸工場の方に話したところ、「ぜひ、やりましょう」となりました。

――そうして製品化したのが2021年8月のことですね!

そうです。LIXILの榎戸工場には、年間約7000人の小学生や業者の方が工場見学に訪れるのですが、その方々たちへのお土産にしようと製品化が始まりました。輝三さんに「やっと、できました!」と持っていったところ、LIXILのライブミュージアムでも販売させていただけることになって。余分がある時には、大蔵餅でも販売させていただくことになりました。

▲トイレの最中。あんこは自分で詰めるのだ!

――反響はいかがでしたか?

ネット上で爆発的な反響がありました。ただ、儲かればいい商品ではないと思っているんです。あくまで、常滑市がINAXの衛生陶器の町であるからこそ、生まれた商品だという点に注目していただけるとありがたいですね。

――トイレにゆかりのある町だからこそ、生まれた商品だと!

そうです。ただ、おもしろいだけの商品ではありたくないと申しますか……。商品は、何のために、どうして存在するのかが大事だと思っています。始まりは、榎戸工場の工場見学のお土産ですから。常滑市は衛生陶器の町なんだよね、という歴史的背景を感じていただければ幸いです。

▲Google マップにおける常滑市のスクリーンショット

――商品開発においても、LIXILさんとコラボしていると伺っています。商品開発にはどのような影響がありましたか?

最中の皮は、LIXILのサティスという洋式便器をモデルにしているのですが、実際にLIXILの開発陣の方たちが3D.CAD(キャド)で原型デザインをつくってくださったんです。

――おお、それはすごいですね! 本物の便器の形に限りなく近いわけですね。

はい。リアルなフォルムを楽しんでいただければと。あとは、北海道産の香り豊かな小豆を使っているので、意外においしいんですよ。

――意外ってことはないじゃないですか、老舗の和菓子店なんですから!!

ありがとうございます(笑)。小豆の甘み・香り、そして最中のパリパリ感ですね。ぜひ、ご堪能ください。

――生産が間に合わないほどの反響だそうですね! 11月には、大蔵餅さんのサイトでも通販予定とのことですが。

最中の皮屋さんに増産をお願いして、それでもやっと、というところです。開始予定の通販でもありがたいのですが、常滑にお越しの際は、ぜひLIXILのライブミュージアムや大蔵餅に寄って買っていただければうれしいです。やっぱり、常滑市の歴史と共に味わっていただけるのが一番ですから。

■大蔵餅HP
https://www.ohkuramochi.jp