デフォルメロボからティラノサウルスへ。力強さとかっこよさを備えたエヴォビースト「E-REX-S1 E-レックス」先行レビュー

妄想ショートストーリー

 島の南端はゴツゴツとした磯が広がっている。干潮時には浅瀬が顔を出し、普段は海鳥たちが岩陰に隠れた魚を求めて降り立ってくる。

 しかし、海鳥の影はなかった。それもそのはず、巨大な赤い恐竜が我が物顔で闊歩し、岩ごとその強靭な顎で食らってしまうからだ。

「全く、なんでオレ様がこんなことを・・・」

 巨大な恐竜エヴォビースト、E-レックスはしばらく岩を口の中で転がしてから、海面へ吐き捨てる。干潮時だというのに押し寄せる波には勢いがあり、強靭な足に波が当たり、ビチビチと小魚が跳ね回る。

「相棒だけで十分じゃねえか」

 引き波に乗って逃げていく魚を見送りながら、再び魚がいそうな岩を地面ごと食う。

 そうしていると、彼の集音センサーが空を切り裂く音をキャッチした。鋭く、力任せなジェット音。微かな異音も混ざっているが、真っ直ぐに彼がいる場所に向かっている。

 E-レックスが怪訝そうに空をふり仰ぐと、太陽を背に機械の巨人が降りてくる。それをセンサーアイで追いながら、浜辺に着地する姿を見て体の向きを変えた。

「タイプE、レックスだな」

 不躾にそう言い放つのはエヴォロイド、ジェットンだった。もちろん、それはジェットンのAIではなく、パイロットのものである。

「誰だ、テメェ。見ねぇ顔だな」
「・・・・・・」

 パイロットは正直驚いていた。この島の基地に着任して初めてのエヴォビーストと接触。訓練時からエヴォビーストなどの情報を聞き知っていても、意志が感じられる口ぶりは単なる機械とは思えなかった。

 そんなパイロットの困惑を感知して、ジェットンが割って入る。

『該当機の保護を提案。拒否する場合は捕獲を実行』

 ジェットンが銃口を向けて警告する。

 パイロットもそのアシストを受けて、操縦桿を握り直す。セーフティを外し、トリガースイッチに指をかける。

「悪いが、お前は重要な手がかりなんだ」

 そこまで言われて、E-レックスは口の中で転がしていた岩を唾棄する。

「ようは喧嘩売りに来たんだろ? いいぜ、暇潰しに相手してやる」

 交渉決裂。

 ジェットンの銃口が瞬くのとほぼ同時にE-レックスが岩場を跳んだ。

 ビームが海水を蒸発させ、もうもうと白煙を上げる。だが、ジェットンの鋭敏なセンサーはE-レックスの挙動を追っていた。

 左、10時方向。ジェットンのAIが即座に反応する。

 しかし、パイロットはそのタイミングに合わせられず反撃が遅れた。

 E-レックスが巨大な口を開いて一気に突進。鋭い牙がジェットンの左腕に食らいつく。

「コイツっ!」
『左腕、損傷率10%。なおも増加』

 パイロットは鼻息を噴き出すE-レックスを睨みつけながら、ペダルを切り返し、操縦桿を力一杯引いた。

「出力最大! 振り払え!」
『了解』とジェットンは機械的に答えつつ、瞳を光らせて腕に絡みつくE-レックスを最大出力で振り払う。

 その衝撃はパイロットにも大きな負担を与えたが、凄まじい力で振り回されるE-レックスが先に根を上げる。刺さっていた牙が装甲から外れ、その巨体がゴム毬のように水平線へ向かって飛んでいく。

「しまった!」

 パイロットは自分の迂闊さに思わず声を上げた。
 
 捕獲すべき対象があっけなく沖へと叩きつけられた。深い青色の海に巨大な水柱がそそり立つ。

「ジェットン。こちらの水中での可動時間は?」
『水中機動は当機に想定された運用にありません』
「回収は無理か・・・」

 落胆していると沖合の波が渦を巻き始める。

『警告。熱反応を感知。数、2』

 ジェットンの警告ともに、渦を割って無骨な機械龍が姿を現す。その頭部には、人型へと変形したE-レックスの姿があった。

「少しは力があるじゃねか」

 E-レックスは傲岸不遜に言って、口元をほころばせる。

「あの機械龍は・・・」
『データ照合。先遣隊が遭遇したタイプD型と推察』
「まだ居たのか」

 パイロットは厄介な増援に気を引き締めながら、コンソールを操作する。上空で待機しているサポートビークルを呼ぶためだ。

 だが、そんなパイロットの焦りをよそに、E-レックスは機械龍から降りて、磯に降り立つと武器である斧を担いでいう。

「相棒は下がってろ。これはオレ様の喧嘩だ」
「お前、何のつもりだ!」

 パイロットはコンソールを操作する手を止めて、E-レックスにいう。

 圧倒的に有利な立場にあるというのに2体で攻めようとはしない。そうすれば彼らの勝率は格段に上がる。そして、何よりもエヴォビーストがそんな「矜持」を持っていることが理解できなかった。

 E-レックスは頭を低くする機械龍を手で制しながら高笑いする。

「こいつは喧嘩だ。タイマンだ! テメェの力だけで勝たなきゃオモシロクねぇだろ」
「なんてやつだ」
『理解不能』とジェットンも苦言を呈した。

 敵対する機体だが、その行動に何ら効率というものが感じられない。同じ機械でありながら、論理というものがない。情報の質も偏りが見える。

 だというのに、ジェットンはその壊滅的論理には『何か』を感じていた。その『何か』という漠然とした解に、ジェットンは一瞬思考が混乱した。

  その一瞬をついて、E-レックスがジェットンへ飛び込む。

 虚をつかれたジェットンだが、パイロットが即座に反応する。E-レックスの斧が弧を描いて振り下ろされるのを紙一重で回避。

 だが、E-レックスはしなやかに腰を捻って斧を薙ぎ払う。

 それもパイロットが直感的に予想し、ジェットンに防御を取らせた。刹那、鈍く衝撃が襲いかかり、視界が一瞬大きく揺さぶられ、途端に彼の意識は暗闇に落ちていった。

 ジェットンの機体が軽々と弾き飛ばされる。空戦を想定した軽量設計が仇となった。

『パイロットのバイタルに異常あり。操縦不能。戦闘要綱第1項に基づき、操縦権を掌握(アイハブコントロール)』とジェットンは機械的に判断を下した。

 だが、事前に要請していたサポートビークル「ブルーインパクト」が水平線スレスレを高速で迫り、装備していたウィングパーツをパージ。緊急の合体シークエンスで、ジェットンの背中に追加ウィングを装備させ水没を回避させる。

 そして、そのまま陸地のE-レックスに向けてロング・レーザーライフルを発砲。海面を割いて走る光だが、待機していた機械龍が射線に割って入る。

 獰猛な光は拡散。猛スピードで突っ込むブルーインパクトは力任せに海水を巻き上げながら急上昇をかける。

「面白くなってきた」

 E-レックスは介入してきた機体を目で追って、飛行機雲を引いて大きく宙返りする姿を捉える。しかし、太陽を背にした瞬間、目標を見失った。

 E-レックスと機械龍は自然と互いに距離をあけて、迎撃態勢に入る。攻撃の標的を分散させ、海面でフラフラと滞空するジェットンを警戒しての事だ。

 ビリビリと空気が震えているのを、E-レックスは肌で感じた。 遅れてジェット音が空に轟く。

「来るっ!」とE-レックスは直感した。

 瞬間、目にも止まらぬ速さでブルーインパクトが接敵。ミサイルハッチを開いて、機体を起こしながら標的に狙いを定める。

 狙いはE-レックス。

 それを待ち構えていたE-レックスはバランスを取るブルーインパクトが減速する瞬間を定めて、大きく斧を持つ腕を振りかぶる。

「食らいやがれ!」

 ミサイルが発射されるのと、斧が投げられるのは同時だった。

あろうことかミサイルと斧が衝突。空中で爆発が巻き起こり、ブルーインパクトが爆風でよろけ、ロング・レーザーライフルが弾け飛んだ。

 そこに機械龍の追撃。巨大な砲身を展開した頭部が火を吹き、ブルーインパクトを掠める。巨大な青い機体は陸地の梢に腹を擦り付けながら距離を取る。

「相棒——っ!」

 E-レックスは機械龍の方へ向き直ると、高速で迫ってくるジェットンが視界に入ってきた。

 速い。追加ウィングのブースターで加速し、ロング・レーザーライフルを即座に回収。機械龍の眼前を通り過ぎた。

銃口がE-レックスを捉える。いや、射撃態勢ではない。下部のナイフで貫くつもりだ。

『ミッション遂行に問題、なし・・・』

 ジェットンはそう判断した。

 E-レックスの手に武器がないことを見越しての攻撃。すべては計算と論理に導かれた有効打。相手の戦意を削ぐのに十分なダメージを与えられる。

 だが、そんなジェットンの計算外のモノがすぐ横間を過ぎ去った。

 それをE-レックスは手を伸ばし、掴み取る。

「感謝するぜっ!」

 その手に握られたのは長槍。機械龍の尻尾にマウントされた武装が渡されたのだ。

 E-レックスは自身をも凌ぐその巨大な得物を振るった。

 ジェットンは予想だにしない武器の登場に混乱し、その薙ぎ払いを受けてしまう。再び、岩場を転がるもウィングのブースターで無理やり体勢を立て直す。

『理解不能』

 E-レックスと機械龍の間に指示や命令はなかった。だというのに、彼らは最適な判断を下した。思考の並列化を仮定したが、それらしい通信は傍受できなかった。

 パイロットの意識はまだ回復していない。だから、不合理な事象に対してジェットンの思考は「機械」となっていた。

 同時にブルーインパクトと合流し、一本調子でE-レックスたちに突進する。

 それを見て、E-レックスの顔から笑みが消えた。

真正面からジェットンの刃を受け止めたE-レックスは踏ん張りながらいう。

「テメェ、人間はオレ様たちみたいに頑丈じゃねぇぞ」
『・・・・・・・っ』

 ジェットンはそれを聞いて、混線していた思考の流れを整理することができた。

 パイロットは気を失っている。バイタルサインも確認でき、生存しているのを把握できる。

 だが、ジェットンはパイロットの命を優先するために戦うことを選んだ。それがあらゆるシミュレーションパターンの中から選択された手段であったからだ。それ以上のことを仮定する必要などなかった。

 しかし、それがパイロットに大きな負担をかけていることを想定していなかった。

「興醒めだなっ」

 E-レックスはジェットンの刃を軽くいなして、大槍の柄でジェットンを殴り飛ばす。

 少し離れたところで小競り合いをする機械龍とブルーインパクトを一瞥する。が、機械龍の後ろ、森の影に小さな人影を見つける。戦闘の迫力に驚いたのか、呆然と立ち尽くしている。

「あいつ、待ってろって言ったのにっ」

 E-レックスは動かないジェットンを見下ろして、早口に言う。

「この喧嘩、預けた。今度はもう少し頭使え」

 そう言って、E-レックスは大槍を担ぎ、低空から迫るブルーインパクトを見る。機械龍へ一直線の軌道。ミサイルハッチを開いて、発射タイミングを伺っている。

 機械龍も背後にいる小さな存在に気づいていない。真っ向から食らいつく構えだ。

 狙いを定めている時間はない。

 E-レックスは大槍を予測進路上に投げ飛ばし、素早くティラノサウルスへと姿を変えて走り出す。

 ブルーインパクトは進路上に大槍が刺さり、緊急回避。だが、同時にミサイルが発射された。小型のミサイルが無軌道に機械龍に迫る。

 それらを自慢の頭部と爪で受ける機械龍だが、数発が狙いを外れる。それらは木陰にいる存在へと向かっていた。

 間一髪、E-レックスは大きく口を開いて、地面ごと小さな人間を飲み込む。爆風に背中を押され、頭上で炸裂する熱にツンのめりながら森の奥へと逃げ去っていく。

 機械龍も相棒の異変に気付いたらしく、突き刺さった大槍を口で回収し後を追った。

「たく、人間の飯を手に入れんのも楽じゃねぇな」

 E-レックスがぼやく口の中で保護された人間は土まみれの魚を見て笑っていた。


 
 

テストショットを触ってみて

ヒロイックでメカ描写が捗る「EVR-01A ジェットン」とは異なる、ワイルドで豪快な印象の「E-REX-S1 E-レックス」。

デフォルメロボ形態ではアグレッシブに動かすのが楽しく、「顔」があることで見る角度によって表情が違って見えるのも魅力的だ。ティラノサウルス形態は手のひらサイズながら、迫力ある頭部や脚部で恐竜らしい力強い印象が伝わってくる。また、小さな手や小柄な体型で足を上げて歩く姿は可愛らしさを持っている。

また、今回の改造例で紹介した「ハンドユニット ノーマルハンド2020」はエヴォロイドシリーズのアクションをさらに広げてくれる。本体とミキシングして改造する他にも、多彩な武器で無限のアクションが楽しめる。

「E-REX-S1 E-レックス」はいよいよ来月、12月発売! ぜひチェックしてくれ!

商品概要
E-REX-S1 E-レックス
■発売月:2021年12月
■価格:2,860円(税込)
■スケール:NON
■製品サイズ:全高:82mm
■製品仕様:プラモデル
■パーツ数:51~200
■詳細:https://www.kotobukiya.co.jp/product/product-0000004206/
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