【エヴォロイド】カラーチェンジで違った印象に!! 「EVR-01A ジェットン」&「E-REX-S1 E-レックス」のカラーアレンジを紹介!

妄想ショートストーリー

 その機体は、“悪魔”に取り憑かれている。

 それでもその機体に挑むパイロットは後を立たなかった。通常のジェット戦闘機以上の出力、人型機動兵器の剛健さを集約した天井知らずのハイスペック。それを操ることで、自分の名声は絶対のものになる。

 だが、そんな彼らをプライドごと振り落としていった。彼らの象徴であるパーソナルマークは、機体を動かすたびに空気摩擦で剥がされ、最後は血痕のように断片がこびりつくだけだった。

 それでも得られるデータがあるのだから、人々はその機体を手放さなかった。パイロットが乗らずとも、ルーティンプログラムを組み込んでしまえば、追加装備の耐久実験程度には役立つ。

 だから、その機体は“悪魔”に取り憑かれている。人を惑わし、鉛色の装甲は誰も寄せ付けない。

 その日、1人の整備員は件の機体のプログラムチェックをしていた。

「耐久実験機とはいえ、 プロトもガタガタだな」

 彼はプロトと呼ぶ『ジェットン プロトタイプ』のコクピットでの作業を終えて、機体の電源を落とすところだった。

 そこに、けたたましい警報が鳴り響いた。整備員は作業の手を止めて、急いでコクピットから飛び出した。

「何事だ!?」
「知るかよ!」

 キャットウォークで待つ同僚が困惑した表情で言った。

 整備員はキャットウォークに乗り移りながら、首のヘッドセットを耳に当てる。しかし、不協和音ばかりが鳴り響き、無線のチャンネルを変えても反応はなかった。

『コード809、発令。コード809、発令』と機械音のアナウンスが流れ、整備員たちは息を呑んだ。
「敵襲かよ!」
「何やってるんだ、観測班は」

 悪態をつく同僚の背中を叩いて、整備員はキャットウォークを走り出す。

「俺らは避難が優先だ」

基地内での整備員たちの主なに任務は装備の点検と整備だ。スクランブルに対応する部署ではない。

 実際、格納庫内の整備員たちは急いで中央司令塔に向かって避難を開始していた。どのみちまともな装備などここには無い

 整備員は混乱する状況の中で人の流れを見ながら一階へと降り立つと、くぐもった音が耳を打った。何かが爆発する音。次の瞬間には、足元を揺るがす地響きが伝わってくる。

 それが恐怖を自覚させると、いよいよ尻に火がついたように人の流れも慌ただしくなる。

 整備員が壁に手をかけると、そこにあった有線通信機が鳴った。彼は反射的にその受話器を取る。

「こちら第1格納庫。どうなってるんです!」
『現在、未確認機が基地の南方に上陸。そちらの装備で出せるものは?』

 受話器の相手は司令室のオペレーターだろうか。冷静な様子につい苛立ちを覚えてしまう。

「あるわけないでしょ!」

 整備員が叫んだ瞬間、一際巨大な揺れと共に格納庫のシャッターがひしゃげた。その衝撃で整備員たちは地面に手をついて、思わず光が差し込む裂け目に目をやった。

 その隙間から、金属が擦れる不協和音と共に光る顔がのぞき込む。が、再び響いた爆音と共にその顔が引っ込んだ。

『出せる機体は出払ってて、陸戦隊だけでは戦線を維持できない』

 受話器の向こうから声も逼迫している。

 しかし、整備員たちがそれに応えられる余裕はない。実践など経験したことがない。戦闘訓練も陸戦隊に比べれば、格段に劣る。誰もが我先にと中央司令塔に逃げていく。

 何もできない。そんな歯痒さを感じている余裕もなかった。

 受話器を持つ整備員も逃げ出そうとしたその時、彼の視界の端で巨大な影が動いた。

「なんで……誰が乗っているんだ!」

 格納庫にある巨大な武器に手を伸ばし、その巨体はこぼれた光に向かって重々しく歩いていく。

 誰かに呼ばれるようにプロトは格納庫の扉を破り、外へと出ていった。

 その後ろ姿に、整備員は意を決して追う。足が震え、得体の知れない機械音に恐怖しながらもプロトを動かす者の正体を知るために彼もまた外へと飛び出した。

 整備員は空の明るさに目を細め、遠い小波の音に混じって聞こえる機械音の方向に視線を向け、思わず一歩後ずさった。

 異形の塊。頭が二つ、円盤の体、貧弱な足、そして、鋼鉄の尻尾。無線ジャミング用のレドームまで備え、おおよそ機能性など皆無の機械の寄せ集めだが、その二つの顔は何かを探すように周囲を睥睨する。

 腹に仕込んだミサイルハッチを忙しなく開閉し、円盤に仕込まれた刃が火花を散らして不協和音を鳴らす。応戦していた陸戦隊を見失ったのか、駄々をこねるようにその場で荒ぶる。

 そこへアックスとショートソードを引きずりながらプロトが詰め寄っていく。正面から単調な動きで接近する。

「迂闊だぞ!」

 整備員が叫んだ。

 その時、異形の二つの頭がプロトの姿を捉えるがプロトに顔を向ける。不用意に近づく人型に敵の尻尾が大蛇のようにうねり出す。

 

 風を切り裂く音とともに、鋼の尻尾が鞭のように振るわれる。その風圧に整備員も思わず体を小さくして、その場で堪える。

 その先でプロトは直撃を受けながら、踏ん張り、一歩また詰め寄る。装甲は傷つくも致命傷には至っていない。

 敵の返す刃が逆袈裟に再び襲い掛かろうとも、プロトはなおも前進。そして、間合いを測るように、引きずっていたアックスをおもむろに振った。

 重々しい斧が敵の円盤部分をとらえ、力任せに地面に叩き伏せる。

「やった!」と整備員も思わず歓声を上げた。

 だが、敵は刃を高速回転させ、その勢いでプロトへ体当たりを決める。

 鉛色の巨体が傾き、装甲を削る甲高い音が響く。それでも地に足をつけ、その場に踏みとどまっていた。

 整備員の目には、その行為が背後にある格納庫を守ろうとする姿に見えた。

 そんなプロトの意図を知ってか知らずか、敵の蛇のような頭部が振るわれた。まるでゴルフボールを打つように、その首は弧を描いてプロトを強襲。

 鉛色の機体が宙を舞う。重々しい武装を手にしながら、その巨体が格納庫へと叩きつけられた。背中を預け、プッツリと動かなくなる。

 整備員はそれを見て、すぐにヘッドセットを耳に当て無線に叫んだ。

「起きろ! すぐ敵がくるぞ! おい!!」

 オープンチャンネルでもノイズが酷い。プロトからの応答はおろか、彼の声が届いているのかすら怪しい。

 それでも敵は体を起こして、品定めでもするかのように少しずつ間合いを詰める。鋼鉄の尻尾を揺らし、刺突のタイミングを測っている。

 その光景が見えるからこそ、整備員は焦った。コクピットを貫かれれば、それまでだ。対抗しうる機体は残っていない。友軍がいつ戻ってくるかもわからない。

 基地の存亡を前に、しかし、整備員の胸に沸き起こるのはもっと小さな視点だった。

「早く逃げろ! 死んじまうぞ!」

 その瞬間、機械たちは同時に動き出した。

 敵の鋭い尾が鎌首の様に持ち上がりプロトの頭部に襲いかかる。それに反応するようにしてプロトが紙一重で回避しながら起き上がる。今までにない機敏な反応。

 整備員は驚いて、開いた口が塞がらなかった。

 しかし彼以上に、敵は驚愕しているようだった。尻尾を引き戻し、さらに一歩下がって間合いを開けたのだ。

  整備員の死角で、敵の2つの頭部は捉えていた。アックスと軽々と担ぎ上げ、ショートソードを強く握り直したプロトの“魂”を宿した赤い瞳が睨みつけているのを。

 敵は赤い隻眼にいすくみ、攻撃の手が緩む。

 その瞬間、どこからともなくロケットランチャーの弾が敵の頭部に命中。その攻撃に反射的に敵は物陰に隠れていた陸戦隊に胴体を向け、ミサイルハッチを開いた。

「陸戦隊か!? 無茶をする!」

 整備員は戦況を見ながら言って、動き出すプロトを目で追った。

 重々しくプロトがショートソードを振るって突進をかける。

 しかし、敵はやはり頭一つ飛び抜けている。双方向からの攻撃に対して、一方は陸戦隊に照準を、もう一方は円盤の刃を起動して応戦。

 ショートソードと回転する刃が激突。火花が弾け、鋼鉄の体を跳ね回る。その間隙を縫って尻尾による奇襲が襲い掛かる。

 プロトはそれを冷静にアックスで叩き落とす。蛇腹の尻尾をコンクリートに縫い付けたまま、一歩力を込めて踏み込む。

 敵の不安定な体が押し出され、よろめいた。ミサイルの照準が狂う。

 その瞬間を陸戦隊は逃さず、開けっ放しのミサイルハッチへロケットランチャーを放った。

 爆音が轟く。熱風が一気に基地を駆け抜けていく。

 陸戦隊も整備員もその爆風に体を丸めて堪える。だが、その爆心地に踏みとどまるプロトは赤い瞳をギラつかせ、崩れていく敵にショートソードの切っ先を向ける。

 とどめの一撃が放たれる刹那、大きくよろめいたかに見えた敵の円盤が地面に接触。そのまま、一気に刃を高速回転。尻尾を切り離し、一気にプロとから距離を取った。

プロトの視線が敵を追うが、既に巨体は豪快に海へと飛び込み巨大な水飛沫を上げていた。

「ゲホゲホ……。敵は?」

 整備員はクラクラする頭を押さえつつ、スコールのように降り注ぐ水しぶきにぎょっとした。周囲に海水が落ちて、爆炎と煙を攫っていく。

 そして、彼の目に力尽きたように尻餅をつくプロトが見えた。

「おい。大丈夫か!」

 整備員は急いで機体へ駆けていく。

 機体は至る所に傷を作り、水飛沫が蒸発しているのか白い煙を全身から立ち上らせている。

「返事をしろ」

 プロトの元へついた整備員は無線に呼びかけながら、機体の出っ張りを利用して頭部のコクピットへと登っていく。

 機体の機動こそ激しいものではなかったが、敵の攻撃を正面から受け過ぎている。パイロットの安否が心配だった。

 整備員は外部の緊急パージレバーを引き、キャノピーを強制排除して、コクピットを覗き込んだ。
  
「よくやってくれ、た?」

 しかし、その中には誰もいなかった。

 がらんとするコクピットでは、ただ弱々しくコンソールスクリーンだけが点滅していた。

商品概要
EVR-01A ジェットン

■発売月:12月
■価格:2,860円(税込)
■スケール:NON
■製品サイズ:全高87mm
■製品仕様:プラモデル
■パーツ数:51~200
■詳細:https://www.kotobukiya.co.jp/product/product-0000004205/
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※本レビューでは、開発中のサンプルを使用しております。実際の商品とは異なります。
※共通コア部分の成型色は、製品では「プログレスボディ」と同様のガンメタルとなります。
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