『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』江口名人インタビュー!! 22年の時を超えて蘇る名作集。今の時代だからこそ広がるバトルネットワークの世界へプラグイン!【アドコレ】

『ロックマンエグゼ』シリーズの第1作から『ロックマンエグゼ6』までのナンバリング作品10タイトルを収録した『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』(『エグゼアドコレ』)。ついに本日4月14日(金)発売!

ネットワーク技術やAIを取り入れた近未来的な世界観や、アクションRPG×カードゲーム要素を融合させた戦略性のあるゲームシステム、「新世代のロックマン」として大注目を集めたあの名作が最新ハードで遊べるように!

今回コロコロオンラインでは、本作の発売を記念して、当時のコロコロコミックで『ロックマンエグゼ』シリーズの最新情報を届けてくれた江口名人にインタビュー!! 名人の誕生から当時の振り返り&開発裏話、いろんな話を聞いてきたぞっ!!

江口名人へのインタビューの世界へ、プラグイン!!

※本インタビューは2月に行われたものです。

■江口名人(江口正和氏)
『ロックマンエグゼ』シリーズの名人兼シナリオ担当。『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』のディレクター。これまで様々なロックマンシリーズの制作に携わる。

『エグゼ』移植発表はプチ同窓会

──今回発売となった『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』ですが、本作の企画自体はいつから始まったのでしょうか?

名人:企画が動き始めたのはだいたい2年ぐらい前ですね。周年記念タイトルという形での動き出しではなかったです。もともとファンのみなさんから、移植要望の声をずっといただいていて、ユーザーさんとより近い位置にいる販売部門のスタッフからも結構強い要望がありました。

──社内からもお話があったんですね!

名人:『ロックマンエグゼ』もそうですが、『ロックマン クラシックスコレクション』をはじめ、X、ゼロシリーズの移植もやってきましたし、そういうところも含めてロックマンというコンテンツを望む声は社内外の各所からあり、機運が高まって『アドコレ』を作ることにつながっていった……という流れですね。

──本作が発表されたときの手応えはいかがでしたか。

名人: TwitterとかYouTubeとかいろいろ見たんですけど、トレンドにもエグゼ関連のワードが上がっていて、「これほど反響が……」と思うくらい熱量を感じました! さらに元スタッフからも「嬉しいよ」とか「おめでとうございます!!」と連絡がきまして……プチ同窓会みたいでしたね。

──本作の開発チームですが、名人以外にも当時のスタッフも参加しているのでしょうか。

名人:数名関わっていますね。あと、チームメンバーとして参加していませんが、当時関わっていたほかのスタッフにも協力してもらうこともありました。20年も前のデータをひっくり返して作るので、「あれ、どうなってたっけ!?」みたいな問題はいっぱいあったんですよね。それはやっぱりいちばん知っている人にということで、みなさんそれぞれ忙しい中でご対応いただいて……。

みなさん『エグゼ』愛がすごく強くて、チームを離れても当時の記憶がすぐに蘇ってくるんです。

お仕事の話をしているんですけど、気がついたらちょっと昔話をしていたりとか。そういうのは楽しくもあり、大変でもあり、メンバー同士の絆もまだまだ健在だなと思いました。

──先ほどおっしゃっていたプチ同窓会に近いというか

名人:「あれ、覚えてます?」の連発ですね(笑)。全力でプログラムのコードとにらめっこして、手元に残っている資料と見比べながら「どうだったっけ!?」と記憶頼りにいろいろありました。

当時作り始めたころは2000年あたりですが、資料が手書きの紙だったり、バックアップに使っていたメディアがまだフロッピーディスクということもありましたし、昔の企画資料を参照したいけど無かったりと失われたデータがちょこちょこありました。

──こんな時にロックマンがいてくれたら……!

名人:残念ながら2023年にはまだロックマンがいないので、自力で探すしかないですね(笑)。

──完全再現はまだまだ先ですが、時代が徐々に追いついてきている気はしますね。最初の作品が発売されてからかなり時間が経っていますが、開発チームに参加されたスタッフの中で、当時『エグゼ』を遊んでいた人もいたのでしょうか。

名人:全然いますね~。ファン層に近い30歳前後ぐらいのスタッフが多くて、別のタイトルで同じチームになったメンバーも名人って呼んでくれたり、同じチームで働いて1年ぐらいたったころに「名人サインもらっていいですか」と言われたこともありました。最近入ってきた新入社員のなかでも、「兄がエグゼをやっていた」、「アニメ見てました!」とかそういう形で、『エグゼ』のことを知ってくれている若い社員もたくさんいます。

オンラインでつながる『ロックマンエグゼ』のバトルネットワーク

──開発チーム内で、『エグゼアドコレ』で特に力を入れた部分についてお聞かせください。

名人:各ナンバリングタイトルをまとめるときに、『ロックマンエグゼ』の思い出であるPET(※)をステーションにして、それを皆さんにお届けするという形のコンセプトを決めました。ロックマンをメインメニュー画面で出していますが、アニメでロックマンを演じた木村亜希子さんに日本語のボイスを担当していただいています。

ゲームのイラストやサウンドをはじめ、木村さんのロックマンなどアニメも含めた当時の思い出を振り返りながら遊んでほしい、という想いを込めて作りました。

※PET……『ロックマンエグゼ』シリーズに登場する携帯情報端末。“PET”は”Personal Terminal”の略称で、さまざまな生活に役立つ機能を搭載している。ネットワークと人間の橋渡し的な役割を持ち、1人1台持つほどに普及している。

──ロックマンがメニュー画面でナビゲートするのは、ある意味PETの再現ですね。

名人:メニュー画面をPETとして見立てたり、ゲームを立ち上げたときのロックマンのリアクションやそういうところも含めて、熱斗になった気分で楽しんでいただけたらなと思います。

もうひとつ力を入れた部分はオンライン機能です。今回は移植作ですが、さすがに通信ケーブルを使用した部分は対応できないので、オンラインで世界中の人たちと対戦が楽しめる要素を取り入れています。「バトルネットワーク」という名前を冠しているゲームですし、今の時代だからこそできる要素なので、新たな通信システムを作りました。

──確かに『ロックマンエグゼ』といえば、対戦も魅力のひとつですし、オンラインでのネットバトルはチーム内で大きな課題であったと。

名人:そうですね。オンラインということで開発難易度が上がっています。今回は『エグゼ1』~『エグゼ6』までの移植なので、通信のプログラムや仕様、バトルシステムも違います。6作分のネットワークの実装やチェックとなると、手間や制作期間も膨れ上がってくるので、いろいろ懸念材料の多い所ではありましたが、ユーザーさんからも大きな期待を寄せられていましたし、ぜひやりたい、やらなければいけないところだったので頑張りました。

──今回、エグゼ2のプリズムコンボの調整だったり、『エグゼ6』のクリア後BGMの対応など、オリジナル版からの変更点がいくつかありますが、他にも変更された要素はありますか?(※)

名人:ところどころ気になった不具合は直していますが、すべてに、完全に応えるのは難しいですね。ただ、あまりにも通信対戦のバランスを破壊するような部分は修正を入れています。

※プリズムコンボ……『ロックマンエグゼ2』で発見されたコンボのこと。バトルチップ「プリズム」に「フォレストボム」を当てると、周囲1マスの敵をあっという間に倒してしまう。本作ではストーリー部分ではそのまま使えるが、通信対戦ではダメージリアクションなどを変えた『ロックマンエグゼ3』のプリズムと同じ性能に変更となる。

※『エグゼ6』のクリア後BGM……『ロックマンエグゼ6』をクリアしたあとに続きからはじめると、事件発生時の緊迫したBGMが鳴り続けてしまうという現象。『エグゼアドコレ』では修正された。実は「名人が平穏なBGMに戻す指定を出し忘れていた」ということが原因であり、移植開発が始まったときに真っ先に修正するリストに入った。

──ほかの調整についてですが、『ロックマンエグゼ4』はオールコンプリートまで目指そうとすると、周回プレイが必須となります。このあたりはサクサク進めたいのですが、オリジナル版と同じように進めるしかないのでしょうか。

名人:そこは変わりませんが、『アドコレ』では新たにバスターMAXモードという新機能を追加しています。ロックマンの単発バスターの攻撃力を100倍にする機能ですね。

──ひゃ、100倍!?

名人:攻撃力が1なら100ダメージ、5なら500ダメージです。これはもう単純に、時間が足りないので早くシナリオを進めたい、早く対戦したい人に需要はあると思いますので。

よくあるイージーモードみたいな形でやると、イージーモード用のセーブデータが作られたりとかすることが多いかなと思いますが、いつでも好きなタイミングで変えることができます。

このボスだけは普通に倒す! ここはサクっと倒したいなど、お好きなタイミングで難易度調整して遊んでくださいというつもりで入れました。

ただ、『エグゼ4』以降のSPナビですが、デリートタイムが早いほどSPナビチップの攻撃力が上がっていくんですけど、さすがにバスターMAXモードオンでレコードを更新してしまうと、SPナビチップの攻撃力が簡単に最大値にできてしまい、このシステムの面白さがスポイルされてしまうので、バスターMAXモードがオンになっていたらデリートタイムレコードが反映されないようにしました。

あ、『エグゼ3』のクリア後のボスナビタイムアタックも同様です。

──ちなみにバスターMAXモードなんですけど、これは対戦では使えない…?

名人:これはさすがに自動でオフになります(笑)。

──あぁ~良かったです!アリだと100倍ダメージでのぶつかり合いになってしまうので……(笑)

名人:ただ、みなさんがシナリオで詰まるとしたら、100人切りとか、発電所の電脳あたりだろうなと……。今回はシナリオ進行に対するイージーモードはないので、そこは自力でお願いします……!!

──出しますか。当時の攻略本を……!

名人:攻略本ですが再販していただいたら売れるかもしれないですね。(※)

※当時はカプコン全面協力、コロコロ特別編集の体制で小学館から攻略本が販売されていた。

──当時はお世話になりましたから……

名人:こちらもいまチェックプレイ用で攻略本が大活躍しています! あと『エグゼ4』から登場した改造カード。当時カードは別売りでしたが今作では全種類ゲームに搭載されていて、最初から好きなタイミングですべての改造カードが使用可能です!

配信チップもそうなんですが、当時欲しかったけどイベントに行けなかったり、改造カードを買ってもらえなかったり、そもそも読み込むための機器が必要だったりと、いろいろと手に入れるハードルが高かったかなと思っているので、当時やりたかったけどできなかった人にぜひ体験してもらいたいです。雑誌限定のカードやフォルテクロスロックマンもすべて入っています!

──今回、ランク実装もされたオンライン通信対戦ですが、こちらは対戦ゲームによくある定期的なランクリセットみたいな仕様は導入されるのでしょうか。

名人:ランクマッチに関しては、実力も踏まえて同等のレベルの人たちがマッチングしやすいようにするためのシステムとして入れてます。シーズンマッチなどはとくにありません。ランクアップ、ランクダウンの仕様があるので、ネットバトラーのみなさんはぜひ頑張って上のランクを目指し、維持していただきたいです。

ゴールデンウィークのど真ん中に誕生した“名人”

──名人といえばゲーム内の登場だけでなく、制作部分ではシナリオ担当として知られていますが、当時はどういうきっかけで『ロックマンエグゼ』の開発に携わるようになったのでしょうか。

名人:当時の僕は2年目の若手で、それまでは『ロックマンDASH2』を作っていました。終わったあとは、短期でいろんなチームのお手伝いや新しい企画の考案をやりつつ、『エグゼ』の企画が本格的に動き出すタイミングで、シナリオ補佐みたいな人がひとり欲しいということで、僕が開発チームに呼ばれたという感じですね。

いまではシナリオ担当として紹介されていますが、1作目のときは雑用兼シナリオのお手伝いという感じで細々とした仕事がすごく多かったです。プログラムくんのセリフ、物を調べたときのメッセージなんかが主な仕事だったのですが、その流れで先輩から「この話だけお願い」みたいな形でシナリオを任されることになりました。

ちなみに、街や電脳のマップをどんな形にするか、物語からバトルに入る流れを考えるのもシナリオ担当の仕事なんです。エレキマンやブルースが出てくる発電所のシナリオが、僕のデビュー作になりますね。

──発電所の電脳は子どものころ難しかった記憶がありますね……

名人:当時の上司がチェックプレイをしていて、「江口ーっ!」って呼ばれたんです。「はい、なんでしょうか」と聞きに行ったら一言目に「鬼!」って言われました。

「このダンジョン作ったのお前か。鬼か! 難しすぎるやろ!」と言われたのもいい思い出です(笑)。

 

──名人は1作目のスタッフロールでは企画としてクレジットされていますが、本格的にシナリオ制作に入ったのは2作目からでしょうか?

名人:そうですね。1作目は途中からお手伝いという形だったんですけど、2からはシナリオ担当の先輩と半分ずつ担当することになりまして。

お手伝いからいきなり半分担当に……と思われるかもしれないですが、『エグゼ2』は『1』が出た年の12月に発売されているので、若手であっても任せてもらえる、しんどいけど、やりがいのある、ありがたい環境でした。大きい仕事を実践でやるのはとっても勉強になりましたね。

──そこからはじまり、やがて名人の誕生につながっていくと。

名人:最初は江口名人じゃなくて江口博士って名前だったんですよね。プロモーションスタッフからそういう博士キャラを開発からひとり出してほしい、と要望がありました。『エグゼ』はバトルチップとかものすごく情報が多い作品ですし、そういうのを解説してくれる詳しい人が必要だったので。

最初は鈴鹿サーキットでのイベント出演だったのですが、これがゴールデンウィークのど真ん中の日程でした。僕がいっしょにやっている先輩ふたりに「連休に鈴鹿行かへんか?」と上司から話が回ったんですけど、連休のど真ん中だったからふたりとも断ったんです。

──連休の真ん中ですか……! たしかにそうなりますよね。

名人:そうしたら上司とその先輩がこっちを見ていて「江口、ゴールデンウィークに鈴鹿行かへんか?」と言われまして、断れるはずもなく「はい、行きます」という感じでした(笑)。

当日のイベントで白衣と台本を渡されましたが、当時はステージ上で喋るとかそういう感じでもなかったんです。会場に机を並べて体験会みたいなのを開いて、「開発のスタッフとバトルしてみたい人~!」って言ったら参加されたお子さんが「ハイハイハイハイ!」と集まって、何十人と行列を出してそれを片っ端から倒していく……という流れでした。もうひたすら「シャドーマンV3」でがんばっていましたね。それがはじめての名人デビューでした。

ただ、コロコロ読者たちは「絶対強い人の方が憧れる!」ということで、めちゃくちゃネットバトルが強い人・名人として紹介されるようになりました。こんな経緯でしたけど、嫌々やったわけではなく、もう流れで、という感じでしたね。気が付けばもう20年ぐらい名人やっていますから何が起こるかわからないですね。

──ゲームではやりこみ勢とかバトル強い子とかやっぱりいるじゃないですか。「バトルも強い」という意味の名人ですと、なかなか負けられない戦いとは思うんですけど。

名人:イベントの前日に上司から「負けるなよ!」と託されていました。3作目くらいまでは、ゲームボーイアドバンスを会場に持っていって、対戦を挑まれたら受けたりしていたんですけど、途中からプロモーションスタッフから「名人! もう絶対バトルしないでください! 負けたら権威がなくなるんで禁止です!」って言われて、バトルすることを禁じられました(笑)。

──禁止令を出されたとなると、実際に会場で「名人、対戦してください!」って言われたときに大変そうですね。

名人:そうなんですよ。なので「ごめんね~アドバンス持ってないんだ」とか「ごめん、バトル禁じられてんねん」とフォローしてました。さらに、直接ファンの子どもたちと触れ合えるような状況になると、けっこう人だかりができてしまうようになりまして。本当にありがたいことですが、それはそれで会場がごちゃごちゃになってしまうので「スペシャルステージから出ないでください」とか、だんだん行動が制限されていきました。

──確かにそうですよね。「あーっ名人だ!」ってワーッと集まりますし。

名人:そういった事情で、すごく嬉しいんですけど、なかなかみんなと交流というわけにもいかず。『エグゼ1』のころは全然そんな知名度もなかったので、ブースの中でウロウロしていましたね。

「配信チップの列はどこですか」と親御さんから怒られて、「すみません! あちらでお願いします」と誘導したり、いちスタッフとしても動いていました。

↑次世代ワールドホビーフェアでは限定チップの配布も行われていた。(当時のコロコロ記事)

江口名人のコロコロコミックとロックマンエグゼの思い出

──コロコロ関連で当時印象に残ったエピソードをお聞かせください。

名人:シナリオ担当としてまんがのネーム監修をさせていただいて、ほかにもコロコロの記事に登場させてもらうとか、普通のゲーム開発ではなかなかできない体験でした。コロコロの記事用にスタジオでカメラマンさんに写真を撮ってもらうなんて、あまりないでしょうし。「すごいな……僕、本当にゲーム会社に入ったのかしら」みたいな。

時間がないのでイベント会場の控え室の隅でさくっと撮影した写真がコロコロに載っていたこともあって、「これ、あそこの控え室で撮ったんだよな~」とか思い出もあります。

──2年前に鷹岬先生にインタビューしたときに、カプコンさんからは自由にやらせていただきましたというお話を聞きました。

名人:鷹岬先生のまんがは「これはやめてください、これを描いてください」みたいな指定はあまりなかった覚えがあります。まんがも連載が続く事に、キャラクターがどんどん鷹岬先生のキャラクターになっていって、成長していくのを直に感じられました。

最初は「カプコンのキャラクター」という印象でしたが。最後は自立して走っているような……長期連載だから感じられることなのかなと思いましたね。先生でしか出せないカッコよさとギャグのバランスだったり、泣きのシナリオやウェットな演出、「これは僕にはできないな」って思うところがいっぱいありました。

あと、当時のコロコロ編集さんの熱量がすごかったのを覚えています。子ども向けコンテンツへの情熱にすごく刺激を受けました。僕たちは子ども向けのゲームを作るという上で、子どもだましは通用しない、子ども向けだというナメた作りをしちゃいけないんだと。編集さんとお話させていただいてその想いを感じました。

現在も僕の根底にあるお客さんと向き合う姿勢、子どもを子ども扱いしない、そういう考えや熱量を近くで見せていただいたのは、今もすごく印象に残っています。

絶え間なく忙しい当時の苦労話

──『ロックマンエグゼ』は第1作が3月に発売して、第2作は同年12月に発売してますよね。結構ハードなスケジュールだったと思うのですが、当時苦労されたお話はありますか。

名人:もう基本的にずっと忙しかったですね……! 『エグゼ2』も最初スケジュールを聞いたときに驚きましたし、第1作以上のボリュームを乗せて年末発売となっていたので。

国内でリリースされたあとに、海外版ということで英語版を作るんですよ。だいたい日本語版の完成版ロムが上がったあとから動き出すんですが、つまり2作目を作ってるときの前半で『1』の海外版もいっしょに作っているんですね。なので絶え間なく忙しいんです。

名人:いちばん忙しくなったのは『エグゼ4』のあたりでしょうか。『エグゼ4』を作り終わったあとに同作の海外版が動き出しましたが、それと同時に『ロックマンエグゼ4.5 リアルオペレーション』という、ホビーと連動した作品も同時進行で開発がはじまりました。

そういう作品はふつう別のチームで作るのでは……と思われるのですが、『エグゼ4』を作ったスタッフが担当していたんですよね。『エグゼ4海外版』、『エグゼ4.5』、『エグゼ5』の開発が進み……もうどうにかなりそうでした(笑)。

──同時進行ラインがめちゃくちゃ多いですね……!!

名人:それぞれの作品ぜんぶの仕様が違うので、『エグゼ5』を考えながら『エグゼ4.5』を考えたり、海外版に関しては、翻訳とか事務的な確認作業が多くて単純に時間がかかるので、脳みそのいろんな部分を同時に使ってる感覚でスゴイ大変です。

なので時間をどうやって作るかと言ったら、もう「寝ない」しかないんですよね。解決方法が3つあって、ひとつは「睡眠時間を削る」。もうひとつは「キーボードを速く叩く」。もうひとつは「マウスを使わない」。物理的なスピードを上げる方法で対処するという。今となってはめちゃくちゃな方法ですが、当時はもうぜんぶ真正面からやっていました。

──もうやるしかなかったと。

名人:会社に泊まるのはしょっちゅうでしたが、それはそれですごく楽しかったですね。毎日午前1時ぐらいになったら残っているスタッフみんなで近所のコンビニに買い出しに行くんですよ。そこから帰ってきて夜食を食べながらおしゃべりして、そのあと気分転換したり、忙しいながらもそういう時間がたくさんあったから、仕事だけじゃない関係というか、仲間としての深い繋がりが生まれた気はしますね。いろいろ大変でしたが、楽しみながら毎作作り上げてきました。泊まり込んで仕事するっていうのは、もちろん昔話なのでいまは違いますよ!

一同:(笑)。

名人:ほぼそういう感じで働いているので『エグゼ2』を作っていたころは、パソコンもモニターも電源つけっぱなしでした。液晶モニターに線も入って「ガタがきてるな……」と思いながら騙し騙しずっと使ってたんですけど、任天堂さんからマスター承認の連絡が届いた次の瞬間、モニターの画面が真っ黒になって動かなくなりました。完成を見届けてモニターの中のプログラムくんが力尽きたんでしょうね。

──限界を越えてしまった……。

名人:機材も人間もけっこうギリギリでやってました。

スタイルチェンジの誕生のきっかけ、気になるキャラクター人気に迫る!

──シリーズの特徴といえばスタイルチェンジ、ソウルユニゾン、クロスシステムなど、ロックマンの見た目が変わるシステムが登場し、戦略やバトルの幅が増えたことも魅力のひとつだと思います、これらのシステムはどのような経緯で生まれたのでしょうか。

名人:当時の上司に「何種類か変身を入れてほしい」というお題がチームに出ていたんです。なぜ入れるのか聞いたら「変身があるといろんな種類のホビーが出せるやろ」と言われました。こう聞くとメディアミックスの商品戦略の一面が強いですが、ゲームでもバトルチップだけじゃない、バトルの戦略の幅を広げるものとして完成されました。メディアミックス展開という背景もあって生まれてきたシステムなんですが、そういう考え方もあるのかと、当時は感心した覚えがあります。

手前味噌ですが、ゲームだけのコンテンツじゃなくて、まんがもアニメもホビーも展開して、ゲームをもとにした当時のメディアミックスコンテンツとしてはすごく完成度が高い作品だったと今も思います。

───『エグゼ』の盛り上がりを感じたのはさまざまな展開が始まってからでしょうか?

名人:コロコロコミックでのまんが連載もありましたが、やっぱりTVアニメの放送開始が大きかったです。放送が始まったころの認知度の上昇はすごく感じていて、TVアニメ連動と同時にホビー展開も一気に広がりました。

──熱斗とロックマンはもちろん人気だと思うのですが、開発側から見ても大人気だと感じるキャラクターはいましたか?

名人:キャラ人気ですと、オペレーターとネットナビ込みで熱斗&ロックマン、炎山&ブルース、ライカ&サーチマンの3大巨頭ですね。主人公とライバル系キャラのほかにも、マスコット的なアクアマンやバブルマンも人気ですね。

▲熱斗&ロックマン
▲炎山&ブルース
▲ライカ&サーチマン

──ちなみに名人ではなく、江口さん個人として好きなオペレーターとネットナビって誰なんでしょうか。

名人:あえて言うなら、荒駒虎吉(あらごまとらきち)とキングマンですね。『エグゼ3』でしか出てきていませんが、関西弁キャラを作りたくて。キングマンはデザインコンテストで入賞したナビでチェスがモチーフだったのですが、大阪には将棋のイメージがあるからチェスをやってても違和感ないし、関西弁キャラでもOKだろう!と、多少強引に関西愛を振るったキャラクターです。

荒っぽいけど理詰めで戦う知的なタイプで、ちょっとお節介焼きという、僕好みの関西キャラになったと思います。

▲荒駒虎吉&キングマン

──チェス→将棋と自動変換されたんですね

名人:そうですね。「チェスか。なら将棋や!」と。虎吉はいま思えばもうちょっと出してもよかったなって思います。

──読者応募ナビはどれもアイデアセンスがズバ抜けてますね……キングマンも「そうきたか!」と当時思いました。

名人:キングマンに関しては、「なぜこれを思いつかなかったんだ~~~~!!!」と思いました。実にエグゼっぽいキャラクターですよね。ほかにも、『アドコレ』のチェックプレイをしていると思い入れのあるキャラクターが次々と出てくるので1番を決めるのは大変です。

──1番はなかなか決めづらいですもんね。

名人:今回は虎吉とキングマン、ということでお願いします。

──最後に、ファンに向けてメッセージをお願いします。

名人:みなさん、『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』をもうプレイされていますか?

『ロックマンエグゼ』シリーズの全ての思い出が詰まった『アドコレ』ですが、過去を懐かしむだけではなく、新たなオンライン対戦、新たなバトルネットワークを広げてこれからも思い出を築いていける作品として作りました。ストーリーを十分に遊んでいただいたあとは、現代のネットバトルを体験してみてください!

もしかしたら名人もオンラインのどこかに潜んでいるかもしれませんので、ひょっとしたら対戦できるかもしれませんね。そのときを楽しみにしております。

『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』をまだ遊んでない人はぜひ、そして既に遊んでいただいている人はどんどんお友だちも誘って楽しんでください! それでは、名人でした! バトルオペレーション、セット!イン!!

▼関連リンク
■『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』公式サイト

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