【プロセカ】ボカロPに直撃! “夏代孝明”さんが語る“Leo/need”(レオニ)と、オリジナル楽曲『フロムトーキョー』について!【ボカロPインタビュー企画 #19】

夏代孝明さんの曲作りに迫る!

 2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。

 2021年10月には1周年を祝した特集を展開し、

『プロセカ』1周年記念特集は下記の画像をクリック!!
 

 さらに2022年10月には『プロセカ』2周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けている。

『プロセカ』2周年記念特集は下記の画像をクリック!!
 

 そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!

 “子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!

 『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!

 そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!

 さて今回ご登場いただくのは、Leo/need(レオニ)にオリジナル楽曲『フロムトーキョー』を提供された“夏代孝明”さんだ。

 プロを目指す4人組のガールズバンド、レオニのイベントストーリー『Unnamed Harmony』に書き下ろされた『フロムトーキョー』は、自分の力不足を痛感しながらも楽曲作りでメンバーに貢献したい……と奮闘する天馬咲希ちゃんの努力と葛藤を形にした曲だ。プロに向けて歩み始めたばかりのレオニにぴったりの『フロムトーキョー』は、いかにして作られたのか? たっぷり語ってもらったぞ!

※インタビューは感染対策を徹底して行っております。

高校生バンドらしい“ズレた曲”とは?

--夏代さんはコロコロ初登場! ということで、まずは恐縮なのですが自己紹介をお願いしたいのですが……!

夏代 はじめまして! 夏代孝明です! 僕はもともと“歌ってみた”でボーカリストとして活動をしていたんですけど、その中でボカロのカバー動画などもたくさん投稿させてもらっていたんです。すると徐々に「自分でも曲を作ってみたいな……!」という想いが芽生えてきて……。その前からバンド活動もしていたのでオリジナル曲を作ることに対するハードルもなくて、2016年に『ユニバース』という曲を作って投稿しました。それが、ボカロPとしてのスタートになります。

--でも夏代さんて、ボーカリストやボカロPだけでくくれる人ではなく、ホントに多才でゲームなどいろいろなことをされていますよね。

夏代 自分が好きになったことに熱中しやすいタイプなんですけど、逆に言うとそのせいで、まわりが見えなくなることも多いんですよね……。

--それでもキチンと結果を出されているのがすばらしいと思います。

夏代 ありがとうございます!

--そして今回はプロセカに参画されてオリジナル楽曲を提供されたわけですけど、この依頼を受けたときは率直にどう思われましたか?

夏代 とにかく、うれしかったです! 個人的にも遊んでいたアプリだったのはもちろんなんですけど、僕が“歌ってみた”で活動していたときから第一線で活躍されているボカロPさんたちがこぞって参加されていたので、「そこに、自分の曲を提供できるのか……!」と、ちょっと夢見心地になりました。プロセカには僕が作った『ニア』という楽曲も収録してもらっているんですけど、今回はオリジナル楽曲ですからね……! “プロセカのために”というスタンスで参画させてもらえるのは本当に光栄なことでしたし、一気にモチベーションが爆上がりしたことを覚えています。

--おっしゃる通り、プロセカって有名ボカロPを網羅しているんじゃないかってくらい豪華な布陣で制作されていますよね。明らかに、ボカロシーンのひとつを作っていますし。

夏代 まさに! しかも皆さん、気合の入りかたがスゴいじゃないですか。全熱量を集中して楽曲を作られていることがひしひしと伝わってくるので、僕も参加するからには“自分の最大値”をここで出したいと気合を入れ直しましたもん。

▲夏代孝明さんの人気楽曲『ニア』(作詞・作曲:夏代孝明)。プロセカでは3DMV付きで遊べるぞ!

--そんな夏代さんはレオニに楽曲提供されたわけですけど、彼女たちを初めて見たときはどんな印象を持たれましたか?

夏代 じつは僕も高校生のときにバンドを組んだんですけど、レオニの子たちと同じように仲間集めから始めたんです。ですので彼女たちを見た瞬間、当時の記憶が鮮明に蘇ってきました。レオニのメンバーのひとりひとりの感情をものすごく身近に感じることができたので、懐かしさを感じるとともに、高校生のころにバンドをやっていた人の誰もが経験するストーリーをここまで見事に再現するのかと、そのリアルさにも驚かされました。

--うんうん……!

夏代 あのころ……つまり青春時代の感覚を文章に起こしたり、コンテンツに活かすのってかなり難しいと思っていたんです。ホラ、あるじゃないですか。なんとも表現しようのない“青さ”とか熱量とか……。その年代じゃないと持ちえない感情の機微とか情熱がすごく伝わってくるストーリーでした。そもそも僕、レオニがもっとも好きなユニットでしたし。

--あ、そうなんですね!

夏代 はい。もっとも身近に感じられる子たちなので、自然と感情移入しちゃうんです。

--わかります……! なんとも言えない甘酸っぱさというか、青春そのものを切り取ってきたようなユニットなんですよね、レオニって。そんな中、『フロムトーキョー』が書き下ろされたイベントストーリーは天馬咲希ちゃんがキーキャラクターでしたけど、彼女に対してはどんな印象を持たれましたか?

夏代 迷いながらもオリジナル楽曲に踏み込んでいくところに、すごくシンパシーを感じました。というのも、僕も同じような経験をしたことがありまして……!

--これは興味深い……!

夏代 高校生のころにバンド活動をしていると、文化祭などの学校行事で演奏を披露することになりがちじゃないですか。そんなときに直面するのが、ヒット曲のカバーをコピーバンドとして披露するのか、それとも自分たちが作ったオリジナル曲をやってしまうのか……という二択。でもオリジナル曲なんて、自分たち以外は誰も知らないわけですよね。ライブハウスだったらまだしも文化祭なんて、先生たちも聴いているわけですし。言うなれば、めちゃくちゃ高いハードルを飛び越えないと進めない世界。これが、メジャーシーンを目指す上でのレオニの葛藤に近いものだと僕は思って、高校生のころの自分の記憶を呼び覚ます契機になりました。

--……ちなみに、その文化祭ではどっちを選んだんですか?

夏代 僕は……オリジナルを選択しました。まあぶっちゃけ、超ヒエッヒエでしたけどね(苦笑)。マジでヤバかったですよあのときの会場!!

一同 (爆笑)

夏代 しかもバンドの仲間が集まり切らなくて、アコギ(アコースティックギターのこと)とピアノとボーカルという、編成で踏み切ったんです! あんなに冷えてる会場、後にも先にもあのときだけだと思いますよ……(笑)。

--いやでも(笑)。通り過ぎたいまとなっては、それもいい経験だったのでは?

夏代 そうですね……。演者とリスナーにはけっこう温度差があるんだな……ってことは経験できました。それと、自分の中にあった羞恥心というものがそのときにすべて削ぎ落ちて、ゼロになれたのは大きかったと思います。挑戦した意義はありました(笑)。 

--とはいえ、そのときの気持ちを考えると心臓が痛くなりますな……。

夏代 はい……。いまでも夢に見ますもん、本当に……。でもすごく楽しくはありました。メンバーには今でも感謝してます笑

--でもそういうことも含めて、このイベントストーリーはバンドをやっていた人の誰もが通る道なのかもしれないですね。

夏代 その通りだと思います。心から、ステキなストーリーだと思いました。

--そんなイベントストーリー『Unnamed Harmony』に書き下ろされた『フロムトーキョー』ですけど、この曲のテーマをお聞かせください。

夏代 まず大前提として、“ストーリーに寄り添った楽曲”ということを考えました。

--ということは、かなりストーリーを読み込まれてから作られたんですね。

夏代 はい。いただいた資料はすべて読んで、先ほども言った自分の青春とリンクした物語だな……という感慨を覚えました。でも、“青春”ということにだけ絞ってしまうと、僕の場合はメジャーデビューに向けて……と言えるほどの熱量はなかったので、しっかりと練り直す必要があるなと。

--ふむふむ。

夏代 僕のメジャーへの意識というのは、やはり“歌ってみた”を通して多くの人に聴いてもらえるようになってから芽生えたものです。ですのでレオニの子たちとはちょっと世代が離れてしまうんですけど……大阪から東京に上京してきて、なんとかしようと足掻いていたあのときの感覚をできる限り鮮明に思い出しながら曲作りを行っていきました。

--でもそれは、すごくレオニっぽい気がします。

夏代 はい。そういった夢を抱いたことがある人は、きっとシンパシーを感じられる感覚だと思いますね。

▲イベント『Unnamed Harmony』の書き下ろし楽曲としてリリースされた

--そんな『フロムトーキョー』の歌詞の中で、夏代さんがとくに気に入っている歌詞を教えてください!

夏代 あの……じつは僕、けっこう自分の選択を後悔することがあるんです。

--ほう?

夏代 大阪から東京に出てきた当初、本当に無一文みたいな状態だったので、知り合いで恩師の“事務員G”さんというキーボード奏者の自宅に居候していたんです。それこそ、屋根裏部屋に転がり込むような感じで。その生活は2ヵ月くらい続いたんですけど、毎日悶々と、「俺、本当に歌と音楽が好きで飛び出してきたけど……やっていけんのかなー!?」なんてネガティブなことばかり考えていました。ですので、そのころの気持ちを描いた歌詞、「好きな事選んだんだ 胸を張ればいいって わかってるわかってる繰り返した」というところは、個人的にめちゃくちゃ印象深いです。本当に、当時の僕の頭の中で巡っていた言葉をそのまま叩きつけた感じなので。

--その箇所に象徴されると思うんですけど、『フロムトーキョー』って全体的にものすごくストレートというか、奇をてらわない素直な歌詞が多いな、って思いました。

夏代 そうですね! “高校生らしさ”もかなり意識していたので、なんと言うか……難しい比喩表現とか複雑な言い回しがたくさん入ってくると、最初に言った“青さ”から遠ざかっちゃうよな……と考えたんです。

--そうか!! だからこそ、レオニの子たちが歌っていてもまったく違和感を感じないんだ!!

夏代 まさに!! そこに関しては、ズレが生まれないようにめちゃくちゃ意識した部分です。

--個人的には、「ボクらが この街で僕らになれますように」という最後のフレーズがすごく好きです。

夏代 ありがとうございます! うれしいです!

※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。

--でも、いったいどういう人生経験をしたらこんなステキな歌詞が紡げるんだろう……って考えていたんですけど、いまお話しされた着の身着のままで上京して……という下積み時代のバックボーンがあるからなんだと納得できました。それに付随してお聞きしたいんですけど、『フロムトーキョー』の聴きどころというと?

夏代 これ、ちょっと表現するのが難しいんですけど……Aメロのバンドのシンコペーション……要するにリズムの刻みかたと、Aメロの歌のリズムの刻みかたが微妙にズレているんです。ナゼかと言うと、高校生バンドって基本的にキレイにそろってはいないじゃないですか。

--あー……!!

夏代 これが演奏がうまくなってくると、すべてに理由付けを行うようになるんです。「バンドが2拍3連だったらメロディーも2拍3連でしょ」とか、「リズムがこれなら、メロの譜割りもそれに合わせるべきでしょ」とかとか。暗黙の了解に沿うようになるんですね。でも高校生のときに作っていた曲って、そういうもんじゃなかったなと。感覚とか閃きだけで作って、仲間と「ここ、こうしたほうがおもろいんちゃう??」なんていう挑戦が随所にあった気がするんです。……って、興奮して関西弁出ちゃいました。スミマセン(苦笑)。

--いえいえ、続けてください!

夏代 細かいところなんですけど、Aメロのリズムが微妙に噛み合っていないとか、サビで突然転調してまた戻ってくるとか、この“ツギハギ感”とか“ちぐはぐ感”をあえて意識し、それでもサウンドに一貫性はキチンとあってバンドとして成立している……というところを狙いたいなと考えました。言うなれば、“ころころと景色が変わる楽曲”

--いや、すごくわかります。『フロムトーキョー』の真髄を聞いている気がする……!

夏代 高校生のころを振り返ると……やっぱり、すごく移り気だったんですよねー。その日の気分でゲームセンターに行ってみたり、スタバに立ち寄ってみたり……。本当に感覚だけで生きていたなぁ……といまになって思うので、レオニの子たちが歌う楽曲もそれくらいフラフラとしてもいいかなと思いました。

--リスナーのコメントを読んでも、“高校生バンドの音”を感じている人は多いですよね。

夏代 高校生のバンドが演奏しているライブハウスに聴きにいったら、たぶん衝撃を受けると思うんですよ。あの年代独特のちぐはぐ感に出会って。そういう感覚を呼び起こす手伝いを、『フロムトーキョー』でできればいいなと感じます。

--以前、このインタビューに登場いただいた164さんがレオニのオリジナル楽曲『「1」』を制作したとき、“高校生でもちゃんと弾ける曲”を意識して作ったとおっしゃっていましたけど、それに通じるものがあります。

夏代 ありがとうございます! でも『フロムトーキョー』は……ちょっと難しいかもしれないですけど(笑)。

--それほどこだわって作ったとなると、かなりの制作時間になったんじゃないですか?

夏代 そうですねー! ただ、かなり余裕を持ったスケジュールをいただいたので、いろいろと試すことができてよかったです。じつは、最初に通しで完成させた段階で『フロムトーキョー』の形を成していたんですけど、ちょっとキレイにまとまり過ぎててウソっぽいな……と思って、先ほど言った高校生らしいゴチャっとした感じを求めて試行錯誤を始めるんです。トータルで……3、4ヵ月くらいですかね。

--たっぷりと時間を使って煮詰めていったわけですね。

夏代 そうなんです。そのおかげで、原点回帰じゃないですけど自分の青春時代を思い返すことができたので、気持ちの整理にもなりました。

--アルバムをめくるような感じで。

夏代 あ、まさにそうですね!

--その試行錯誤も含めて、制作難度はどうでしたか?

夏代 やはり、難産だったなと思います。というのも、微妙にズラす感覚を僕自身が見失っていたので、「あれ……? これ、ちゃんとズレてるよな?」と疑心暗鬼のような状態になっていました。

--そんな、苦労の末に完成した『フロムトーキョー』がゲームに実装されたのを見て、どう感じましたか?

夏代 まず、めちゃくちゃ感動しました!! これは間違いないです!

--はい。

夏代 でも、実際にプレイしてみると……! 音楽ゲームって、リズムを取る部分とメロディーを取る部分があるじゃないですか。あれって、音源を制作している側からするとすごく不思議な感覚になるんだろうな……と思っていたんですね。何が言いたいのかと言うと、音ゲーで遊んでいて譜面が突然メロディーのほうに行ってしまうと、頭がバグるんです! “リズムゲーム”とも言われるくらいなので基本的にリズムを採用した譜面だと思うんですけど、サビで突然メロディーを拾ったりするので、「うわあああああ!!!」って頭が混乱するという……(笑)。なので簡単な譜面であっても、いつもクリアーできずに終わってしまいます……。

--勝手に夏代さんは、音ゲーも達人なのかと思っていました。

夏代 いやー、もう音ゲーは全般的にダメですね……。でも、楽曲の作り手こそゲームでプレイするとバグってしまう……って、あるあるのひとつだと思いますよ。

--先日、sasakure.UKさんにお話を聞きましたけど、sasakureさんは達人クラスにうまいことで有名ですね。

夏代 あ、確かにsasakure.UKさんはめちゃくちゃうまいですよね! ……そう考えると、変拍子や難しいメロディを組める天才肌の方は音ゲーもうまいのかも……! 逆に僕みたいなタイプのバンド出身の作曲家人は音ゲー苦手とか……! 今度ぜひ、統計を取ってみてください(笑)。

--おもしろいですね!(笑) でもゲーム実装後にいろいろと反響があったんじゃないですか?

夏代 ありました! 「あのAメロ、どうなってんの?」って友人にも言われましたし。

--あ、そうなんですね!

夏代 そのときに、「やっぱ高校生だからさ」と答えたら友人もしばし考えて、「……確かに、高校生っぽいな」と納得してくれて。そこから、「初めて曲を作ると、だいたいこんな感じになるよな」なんて思い出話に花が咲いて、自分としてもうれしかったです。

--その“高校生らしさ”も含めて、『フロムトーキョー』はすごく考察されているじゃないですか。そういうのをご覧になって、いかがですか?

夏代 すごく細かく紐解いてくれていますよね! 「これはバレないだろうな」と思いながら仕込んだこともけっこうあるんですけど、だいたい秒でバレています(笑)。なかには「天才か!!」と感心してしまう考察もあって、それを読まれた別のリスナーがさらに深く分析してくれていたり。いろいろな角度から楽しんでもらえているようで、うれしいですね。

--リスナーのコメントということでは、『フロムトーキョー』は調声が非常に高く評価されています。とくに、“透明感”。これは、やはり意識されて調声をされているんですか?

夏代 今回は“cillia”さんというボカロの調声に定評のある方にも相談して、“青春感”とか“透明感”を意識して作り上げていきました。

--なるほど! やはり透明感に注力されていたわけですね。

夏代 はい。……それにしても、最近のボカロは本当にスゴいですよね。調声次第で、めちゃくちゃ歌の幅が広がりますもん。

--まったくもって……! さて、『フロムトーキョー』が大好きなファンがたくさんいますが、そんな方たちにひと言送るとすれば?

夏代 この曲を好きになってくれた方って、やっぱりなりたいものとかやりたいことがあるんだろうな、って思うんです。

--はい。

夏代 僕、先日31歳になったんですけど、30代になってから明らかに、物事の見方とか考え方が変わってきたなと感じるんです。そういう意味で、10代、20代のころにだけある無敵感とか、何にでも突き進める無鉄砲さってすごく大事だったなって思うので、もしも夢に向かって何かやらなきゃ……と思うことがあるのなら、四の五の考える前にとにかくやってみるのがいちばんいいよ……と伝えたいです。そんなときはぜひ、近くで『フロムトーキョー』を流してもらえればなと思います。

--リスナーのコメントに、「『フロムトーキョー』を聴いて、将来を夢見ていた時代の自分を思い出した」というのがあって、読んだ瞬間に泣きそうになりました。

夏代 小さなころに抱いた夢って、大人になったいまの自分とかけ離れていることが多いですよね(苦笑)。僕も、最初に夢見たのはパイロットで、つぎはロボットの研究者でしたし。

--ちなみに、その道を目指さなかった理由は?

夏代 あ、あの……数学が壊滅的にできなくて、やさぐれて音楽の道に進みました(笑)

一同 (爆笑)

--レオニの子たちは高校生にしてメジャーデビューを夢見るわけですけど、夏代さんは高校生のときに思い描いた自分に、なれていると思いますか?

夏代 あーーー……! ……どうでしょう。胸を張れるかどうか……ちょっと怪しいかもしれないです(苦笑)。

--でも、音楽をずっとやられているわけですし。

夏代 うん、そうですね。ギリギリで及第点ってところでしょうか。決して、拍手喝さいではないですけど。

--わかりました! ありがとうございます! ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは……夏代さんが、ボカロPになられたきっかけを教えてください!

夏代 最初にお話した通り、きっかけは“歌ってみた”でボカロの楽曲を使わせてもらったことです。それに対しての恩返しの気持ちであったり、同じ景色が続いていくといずれシーン全体が停滞していってしまうのかなという懸念があって。そこで、ボーカリストがボカロの曲を使う……という流れとは逆の、“ボカロの曲をボーカリストが作る”というムーブメントを起こそうと考えました。当時、これをやられていたのって、僕の知る限りだと“まふまふ”君くらいしかいなかったと思うので。僕はもともとバンドをやっていたので、その経験を活かしたバンドサウンドでボカロシーンにお邪魔させてもらおうと思いました。

--先ほど、高校の文化祭のときにオリジナル楽曲を演奏した……とおっしゃっていた通り、ボカロに触れる以前から作曲活動はされていたんですよね?

夏代 まともな形になったのは、2016年に発表したボカロの『ユニバース』が最初だと思います。それ以前のものは……なんていうか、ちょっと恥ずかしいレベルのものでした(苦笑)。

--夏代さんはボーカリストでもありますけど、ボカロは文字通り、初音ミクを始めとするバーチャルシンガーが歌うわけですよね。それに対しては、どう思われたんですか?

夏代 難易度……ということだけを考えれば、自分で作った曲を自分で歌うのがもっとも手っ取り早いです。でも、自分が作った曲を女性の声が歌ってくれるという経験をしてこなかったので、初めて初音ミクちゃんに歌ってもらったときはとんでもなく新鮮な感慨を覚えました。「こんなに刺激的で楽しいことがあったのか!」と思うくらいに。

--操作は難しくなかったですか?

夏代 難しかったです! かなり専門的な発音記号があったりするので、とにかくネットで調べまくりながら、手探りで作業をしていきました。

--そこでぜひお聞きしたいんですけど、ボカロPになるために必要なスキルって、何かありますかね?

夏代 断然、ピアノですね! もう、ピアノが弾ければあとは何もいらないレベルです。ピアノ最強ですよ!!

--おおおお!! そこまで断言されたボカロPは初めてかもしれないです!!

夏代 ご自身も歌われるんだったらギターでもいいと思うんですけど、こっちは打ち込みと直結しないので。ピアノやキーボードだと、すべて打ち込めますから。なので、鍵盤が弾けるということは、猛烈なアドバンテージになると思います。

--ということは、夏代さんもピアノをずっとやられていて。

夏代 ……いや、僕はぜんぜんやってないんです^^; ぶっちゃけ、まったくわかりません^^;;;

--やってなかったんかい!!(笑) めちゃくちゃ弾ける人かと思いましたよ!!

夏代 いや! だからこそ後悔なんですよ!! 僕、小さいときに母親に、「英会話かピアノ、どっちを習いたい?」って言われて、ナゼか「えいご」って言ってしまって……! それで英語がしゃべれるようになったならまだ救われたんですけど、そっちもまったくですし!! 「あのとき、ピアノって言っときゃよかったああああ!!」っていまでもすごく思います。なので、ボカロPを目指して何かを始めるなら、断然ピアノをオススメします!!

--逆に、音楽をやるようになってから「ピアノを習い始めるかな」とは思わなかったんですか?

夏代 そうなんですよね……。いやでも、そこが難しいところでして。物心ついてしまったあとだと効率を考えるようになって、「楽器を習う時間があったら曲を作っちゃったほうがいいや」と……(苦笑)。それがずっと続いて現在に至っているので、もういまさらかなと……。

--こう言ってしまうとアレですけど、すごく説得力があります(笑)。

夏代 あと、やっぱりギターだとコードに限界あるんですけど、ピアノだと無理やり不思議コードが作れるので知識も深まりやすい気がします。ギターで作ると、自分の好きなコード進行が染みついてて逃げられなくなって、気付けば同じような曲ばかりできてしまっていた……なんてことになりがちなんです。僕もがんばって手癖から逃げようとしているんですけど、なかなか難しいんですよね。

--あー。自分の癖と追いかけっこになるんですね。

夏代 そうなんです。なので、やるなら絶対にピアノです! 間違いない!

--では、ボカロPになってよかったと思うことがあれば、ぜひ教えてください!

夏代 創作した自分の作品を自分以外の声が歌ってくれている……という状況が、とにかく楽しくて仕方ありませんでした。自分の声じゃないからこそ見える景色があるし、想定していなかった独特な雰囲気に出会うこともあります。自分の歌だと、作ったときの固定観念で歌ってしまってまとめてしまうことがあるんですけど、ミクちゃんに歌ってもらうことによってすべてをフラットに見られるようになりました。「この歌詞って、本当にいいのかな?」とか、「メロディーは美しく聴こえているかな?」とかとか、ボカロに歌ってもらうことでワンクッション入れることができるので、“冷静な自分”を保てていると思います。

--なるほど、客観視できるわけですね。

夏代 はい。自分の曲を俯瞰で見ることができるんだと思います。

--ちなみに夏代さんは、他のボカロPさんと横のつながりはあるんですか?

夏代 いや……! 僕は少ないほうかもしれないです。

--あ、そうなんですね! ちょっと意外かも。

夏代 僕は、なんと言うか……半分人間、半分妖怪みたいな。わかります??

--!!? どどど、どういうことですか……??ww まったくわかんないですけど!w

夏代 あ、えっと、半分歌い手、半分ボカロP、ってことですね(笑)。

--あ、そういうことか!!(笑) わかりますわかります!

夏代 よかった(笑)。要するに“どっちつかず”。どちらにも染まり切れていないと感じることがあるんです。先ほど自己紹介をしましたけど、そのときもすごく悩んじゃうんですよ。(歌い手ではあったけど、最近あまり歌っていないし……! ボカロPでもあるけど、そんなにたくさん投稿していないしなー……!)とか。それゆえに、ボカロPをずっとやられてきた人たちの輪に混ざると、すごく違和感というか、異物感を感じるんです。

--そんなことないですよ!!

夏代 (ここにいていいのかな……! 大丈夫かな……!?)ってつねに思います(苦笑)。よって、ひとりのことが多いですねー。

--うーん。そういった雰囲気は、1ミリも感じませんでした。ちなみにいまは、どっちのほうがしっくりきます?

夏代 どちらかと言うと、ボカロPですかね?

--プロセカにオリジナル楽曲を提供されているんですから、堂々と胸を張って「俺はボカロPだ!」って言ってしまっていいですよ!

夏代 確かに! それに関しては、プロセカさんに大感謝ですね!!

--夏代さんは立派なボカロPだと決定づけられたところで、ぜひこれからボカロPを目指そうと思っている少年少女にエールをお願いしたいのですが。

夏代 まずは、さっきも言った通り「ピアノをやってみよう!」ですね! それと、曲作り自体はスマホがあればできる時代なので、まずはそういった端末を使って最初の1歩を踏み込んでほしいです。実際、スマホでボカロ曲を作って発表されている方、最近はたくさんいますから。

--それでは最後に、プロセカに対してもひと言お願いできればなと!

夏代 ……もう1曲書きたいので、どうぞよろしくお願いいたします!(笑) そのためにも、ボカロPとしてがんばっていかないといけないですね!

--そうですね!! 本日はたいへん楽しいお話、ありがとうございました!!

夏代孝明

インターネットを活用しながら音源を公開。次々に動画による発表を続けて持ち前の歌声で注目を集め、連続的にTVアニメ主題歌を担当するなど引く手数多の存在に。
2018年には全自作曲によるアルバム「Gänger」を発売。ネットカルチャーからヒットを巻き起こし400万再生を超えた「ニア」などが収録されオリコン13位、iTunes6位を記録。
2019年のライブツアー「Fußgänger」ではLIQUIDROOM公演を含む全会場を即完させ、初の海外単独公演を含むツアー「Vacilando」を開催したほか、JOIN ALIVE等のロックフェス初出演も果たした。
同年に音楽組織的プロジェクト「夏と彗星」を発足させ、1980年-90年代のポップカルチャーから影響を受けたサウンドやアートワークで注目を浴びタワレコメン&タワレコNEXT BREAKERSに選出されるなどニュージェネレーションポップスの注目株に躍り出た。
2020年10月に国内・世界のトップシーンで活動するプロeスポーツチーム“JUPITER”へ加入し、カルチャーの垣根を多様的に飛び越え新時代の活躍を見せている。

 

『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』の関連記事こちらをチェック!!

ボカロPインタビュー連載

#1:市瀬るぽさん       

#2:R Sound Designさん

#3:ナユタン星人さん

#4:じんさん

#5:すりぃさん                         

#6:OSTER projectさん

#7:40mPさん

#8:八王子Pさん

#9:いるかアイスさん

#10:DIVELAさん

#11:Ayaseさん    

#12:YASUHIRO(康寛)さん

#13:シノさん 

#14:164さん 

#15:ポリスピカデリーさん 

#16:sasakure.UKさん 

#17:加賀(ネギシャワーP)さん 

#18:ササノマリイさん 

#19:夏代孝明さん

 

 

1周年ボカロPインタビュー

#1:DECO*27さん

#2:ピノキオピーさん

#3:Mitchie Mさん

#4:Gigaさん

#5:syudouさん

 

 

タイトル概要

プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク

■対応OS:iOS/Android

■App Store URL:https://itunes.apple.com/app/id1489932710

■Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.pjsekai

■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)

■価格:基本無料(アイテム課金あり)

■ジャンル:リズム&アドベンチャー

■メーカー:セガ/ Colorful Palette

■公式Twitter:https://twitter.com/pj_sekai