【プロセカ】ボカロPに直撃! “煮ル果実”さんが語る“25時、ナイトコードで。(ニーゴ)”と、オリジナル楽曲『トリコロージュ』について!【ボカロPインタビュー企画 #34】

煮ル果実さんの曲作りに迫る!

 2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。

 リリース当初からこのコンテンツを追いかけてきたコロコロオンラインプロセカ班は、2023年10月に『プロセカ』3周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けてきた。 

『プロセカ』3周年記念特集は下記の画像をクリック!!
 

 そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!

 “子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!

 『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!

 そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!

 さて今回ご登場いただくのは、“25時、ナイトコードで。”(ニーゴ)にオリジナル楽曲『トリコロージュ』を提供された“煮ル果実”さんだ。

 ニーゴの誕生を振り返る印象的なイベントストーリー『いつか、絶望の底から』に書き下ろされた『トリコロージュ』は、キーキャラクターの宵崎奏だけではなく、他のメンバーの心情をも歌い上げた幻想的な名曲。    とくに、ニーゴの4人を宝石に例えて表現する歌詞は美しくも意味深で、考察好きのファンの心をとらえて離さない。しかし完成までには、多大な苦労があったようで……!

 『トリコロージュ』誕生までの奇跡を、とことん語っていただきました!

※インタビューはオンラインで実施したものです。

メンバー全員を救うための楽曲を

--まずは簡単に自己紹介をお願いいたします!

煮ル果実 はい、煮ル果実と申します。2018年2月10日に初めて映像で作品を投稿しまして、活動歴はもうすぐ6年になります。そのころから、いろいろな曲調の作品を作りたい……という想いを抱き続けて現在に至ります。どうぞよろしくお願いいたします。

--煮ル果実さんは今回、『プロセカ』にオリジナル楽曲の『トリコロージュ』を提供されたわけですが、この依頼を受けたときは率直にどのように感じられましたか?

煮ル果実 お話をいただいたとき、すでに『プロセカ』はとんでもないコンテンツになっていて、ボーカロイドのクリエイター仲間の間でもウワサになっていたんです。「コレの依頼が来たらスゴイ!」、「大したもんだ!」という具合に。ですので、オリジナル楽曲のお話が来たときは、凄まじい喜びがこみ上げてきました。

--煮ル果実さんが作られた『トラフィック・ジャム』を、すでにビビバスと鏡音リンが歌唱していましたよね。

煮ル果実 はい、そうですね。

--それでもやはり、オリジナル楽曲の依頼は喜びもひとしおと……!

煮ル果実 そうなんです。もちろん、『トラフィック・ジャム』を収録していただいたときも、非常にうれしかったんです。昔から音楽ゲームに親しんできた人間なので、「いつかこういうゲームに自分の曲が入ったらな」と憧れを抱いていたので。でも、やっぱりイチから『プロセカ』のために音を作ることが出来たのは感動でした。

▲2019年に投稿された煮ル果実さんの代表曲『トラフィック・ジャム』。プロセカにも収録されており、Vivid BAD SQUADと鏡音リンが歌唱しているぞ!

--『トリコロージュ』を提供したユニットはニーゴになるわけですが、彼女たちを初めて見たときはどのような印象を持たれましたか?

煮ル果実 正直、「共感しかない」と思いました。ニーゴはとくに“モノ作りをする人たち”というテーマが裏にあると思うんですが、これについて彼女たちが感じていることと僕自身の考えがかなり重なっているんです。僕は作品そのものじゃなく、“モノを作っている自分”について考えることが多いんですが、ニーゴの子たちも明らかにそんな感じじゃないですか。ですので、彼女たちを見て最初に抱いたのは“共感”だったんです。

--モノ作りをする上での悩み、葛藤という部分ですか?

煮ル果実 そこだけにフォーカスしているのではない……ってところが、ニーゴのストーリーのすばらしさだと感じるんです。私生活とか、人間関係とか、家族の悩みとか……。クリエイターと言えども人間ですし、ましてや彼女たちは高校生じゃないですか。等身大の悩みも浮き彫りにして、それで時にはぶつかりあったりしているのを見て、「ああ、すごく良いユニットだな」って思いました。僕も、そういった部分を題材にして作品を作ったりしているので、ニーゴとは親和性の高さを感じたんです。

--ニーゴの子たちって、悩みが凄くリアルですよね。だからこそ、ダイレクトに刺さるというか。

煮ル果実 まさにその通りで、重たさ……というか、すごく質量を感じるんです。この質量ってところを自分の作品作りでは大切にしていて、『プロセカ』の運営の方々もそこを評価して選んでくれたのかな、って。……勝手にそう思って、ひとりで舞い上がっていました(笑)。

--そんなニーゴの中でも、『トリコロージュ』が提供されたイベント『いつか、絶望の底から』のキーキャラクターは奏ちゃんですね。彼女については、どんな印象を?

煮ル果実 ストーリーの序盤は、その天才性が強く押し出されたキャラクターなんだと思っていました。でもそれだと、ちょっと自分とはタイプが違うな……と感じたんですけど、読み進めるうちにどんどん彼女に惹かれていったんですよね。過去の出来事しかり、メンバーとの関係性しかり、知れば知るほど共感できる部分が増えていったんです。とりわけ、“救い”という言葉に執着する様子が見逃せなくて。と言うのも、僕もその言葉……というか感情を大事にしてきたので、奏と想いが重なった気がしたんです。でもだからこそ、「生半可な気持ちじゃ作れない」とも思いました。

--確かに彼女は一貫して“救い”をテーマに創作活動をしている子ですもんね。

煮ル果実 そうなんです。僕も、クリエイター活動を始めた当初は、ただ楽しいからやっていたわけです。でも続けていくうちにいろいろな物事に出会い、「自分が本当にやるべきこと、やりたいことって何だろう?」と考えさせられることが増えていきました。今回の依頼をいただいたときも、ちょうどそういう葛藤と向き合っていたタイミングだったので、余計に奏というキャラクターに感情移入したんだと思います。

▲イベント『いつか、絶望の底から』の書き下ろし楽曲としてリリースされた。

--そんな中で作られた『トリコロージュ』のテーマ、方向性について掘り下げていきたいんですが……その前に! この『トリコロージュ』という曲名の意味を教えていただきたいのですが!

煮ル果実 はい。

--じつは、めっちゃ調べたんです。“トリコロージュ”という言葉を。でも……ぜんぜん意味にたどり着かなくて!

煮ル果実 すみません(笑)。僕、造語を作るのが大好きなもので。

--ですよねーーー! そりゃ出てこないよなぁ(笑)。

煮ル果実 加えて、ひとつの言葉に複数の解釈を持たせる……ってことが大好きなんです。

--ああ、ダブルミーニングですね。

煮ル果実 はい。ですので『トリコロージュ』もそのようになっているんですよ。まずメインの意味としては、「虜(とりこ)になる」という部分を絶対に入れ込みたいと思いました。

--おお……!

煮ル果実 そこに「ロージュ」ですけど、これはフランス語で“小屋”とか“特別席”とか、そんな意味のある言葉なんです。これに「虜」を付けると、いろいろなことが連なって連想できる造語になるなと。そして語感的に「トリコロール」と重なるようにしたんですけど、これは奏以外の3人の色……というのを表現したいと思ったからですね。

--じつに深いですね……!

煮ル果実 いろいろな意味を持たせたいって事と、絶対にトリコロールをもじった言葉にしたいな……と考えていました。

--この言葉を起点に楽曲を作っていった感じなのでしょうか?

煮ル果実 はい、そうですね。このイベントストーリーはもちろんなんですが、ニーゴの子たちは全員、何かに囚われているという印象が強いじゃないですか。僕はこの部分にきちんとフォーカスしたいなと思い、起点になった奏だけじゃなく、他のメンバーのこともしっかり書きたいと考えたことが、『トリコロージュ』の出発点だったと思います。

--『トリコロージュ』、僕も大好きでくり返し聴いているんですが、どこか幻想的な歌詞の中に、すごくストレートにニーゴの子たちを表現した言葉も入っているんですよね。「救われたあの日から 救いが義務になるなんて」とか。これが、じつに印象的なんです。

煮ル果実 ありがとうございます。そう言っていただけて本当にうれしいです。じつはこの歌詞を書いたときは、ニーゴのストーリーをすべて把握した状態ではなかったんです。もちろん最低限の設定や資料は読み込んでいたんですけど、すべてを知ってしまうと逆に、その事実に囚われすぎてしまうかなと思って。自分が感じたことを、自分の言葉で表現したいという気持ちが強かったので、まずは歌詞をバーッと書いてみました。

--はい。

煮ル果実 その後、改めて設定やストーリーを深く読み込んでみたところ、もうその段階で書き直す部分はないくらい出来上がっていたんですね。自分で思いました、「これはスゴイ!」って(笑)。ニーゴに対して解像度を高くいられた自分に対してもうれしかったのですが、その結果としてそれまでは使わなかったような表現も入った理想的な歌詞になったなと感じました。先程仰ったストレートな想いもかなり入れることができて、これまでの自分にはない新たなジャンルを見つけられたかも……とも思ったんです。そういう意味でも、非常に大事な曲になりました。

--じつは煮ル果実さんのSNSを拝見したんですけど、『トリコロージュ』の歌詞の中でもとくに際立つ“宝石”のところで、かなり苦労されたとか……!

煮ル果実 そうなんですよ!! ここだけは本当にもう、ずっとハマらなくて、最後まで空欄になっていました。ほかの部分は完成しているのに……。

--ぜひ、その詳細をお聞きしたいです!

煮ル果実 この箇所、絶対に各キャラの想いみたいなものを反映させたいと思っていたんです。ニーゴを担当する以上、彼女たちの悩みとか囚われている事象をひとつひとつ、宝石に紐づけて書きたいなと。

--うんうん……!

煮ル果実 石にはそれぞれ“石言葉”があるんです。僕はふだんから、花言葉のような“モノに込められた裏の意味”といったワードを歌詞として使うことが多いんですね。『トリコロージュ』の宝石もそれと同じで、とにかく片っ端から石言葉を調べていったんですよ。でも……石って、その文献とか資料によって解釈がまったく違うんです。

--あーーー! そうなんですね!

煮ル果実 ときには真逆の解釈をされている石もあるので、「これは、何を信じたらいいんだ?」と。加えて、歌詞って文字数の縛りみたいなものもあるから、うまくハマってくれないんです。「アレキサンドライト」は長いな……とか、「ルビー」は短すぎる……! みたいな(苦笑)。それと、これは僕のこだわりなんですけど、あまりメジャーすぎる石は使いたくなかったんですね。ルビーとかダイヤモンドとか、サファイヤとか……。これが、いちばんしんどかったです(笑)。

--めちゃくちゃ縛りがありますね!!

煮ル果実 まだあるんです……(笑)。『プロセカ』のキャラクターってそれぞれにイメージカラーがあるじゃないですか。それも考慮して宝石の色を決めたんです。そういった、二重、三重の意味を持たせたいと思って石を探していたんですけど、この探す作業が、いままでの創作活動の中でもっともキツかったかもしれません。こんなに言葉を探求したことって、なかったと思います。

--この宝石の箇所、リスナーにめちゃくちゃ考察されていますよね。

煮ル果実 そうなんですよ。すごくうれしいです。皆さんの感性と読解力がすばらしいからこそ、そういった考察が起こっているんだろうなと思いました。……本当に、苦労した甲斐がありました。宝石の前に、ちょっとしたワードを付けているじゃないですか。「少し欠けているピンクオパール」、「迷子になったアイオライト」とか。じつはここも悩んだポイントで、このセットだけでそれぞれのキャラを凝縮して表現したかったんですよね。でもリスナーさんの考察とかを拝見して、しっかりと伝わったなと思うことができました。

--産みの苦しみとは、まさにこのことですね……!

煮ル果実 本当に難題でした。でも、この宝石の一文だけで彼女たちを表現できたなと、いまは思います。完成したのはほとんど奇跡みたいなものでした。

--うーーーむ! 『トリコロージュ』の神髄を見た気がします。

煮ル果実 いや正直僕も、ここまでしゃべったのは初めてだと思います。ここまで深く語ったことって、いままでありませんでした。

 

--それは……めちゃくちゃうれしいです! ありがとうございます! その流れでお聞きしますが、とくにお気に入りの歌詞ってなると、やっぱり宝石の箇所になるのでしょうか?

煮ル果実 ……苦労しすぎて、もうあまり見たくないって気持ちもあります(苦笑)。

--あーーー(笑)

煮ル果実 自分でグッときたのは2番のBメロにある「ああ 訪れた幸せが ほら 祝祭日みたいに 既に決められた予定調和で 一瞬で失せてしまう」という部分です。じつは僕が作った『トリコロージュ』、『ヘブンドープ』、『YOMI』という3つの楽曲を“三部作”と呼んでいるんですが、その最後の曲である『YOMI』の中で“祝祭日”という単語を使っているんです。

--ほう……!

煮ル果実 『トリコロージュ』の中では“必ず来るけどすぐに失せてしまうもの”という、一瞬の幸せという意味になっています。言ってしまえば、マイナスに近い要素ですね。でも『YOMI』では逆で、祝祭日をプラスの要素として表現しました。この3作品を連作としている象徴のような単語なので、それが出てくる一節は個人的に「熱いな!」と思って気に入っています。

--いや改めて、深い曲ってことがよくわかります。

煮ル果実 ありがとうございます。うれしいです。

--僕が個人的に気になったのは「濁って」という単語。これは「ニーゴ」と掛けているんですか?

煮ル果実 おっしゃる通りです。そういった細かな言葉のチョイスは、かなり気を遣いました。奏の曲ですけど、そのパーソナリティーにフォーカスするというより、彼女を起点にニーゴというチームについて書きたかったんですよね。そういう意味ではちょっとおこがましいんですけど、僕がメンバー全員を救うための楽曲を作るとしたら、どんな感じになるかな……ということまで考えて歌詞を紡いでいった感じです。この文章ならまふゆを救えるし、これは絵名、これは瑞希のために……と、ひとつひとつ考えながら作っていきました。


--そこでぜひお聞きしたいのが、『トリコロージュ』の聴きどころです。

煮ル果実 淡々と流れていく曲ではあるんですけど、たまに出てくる歌詞のえげつなさには注目してほしいです。たとえば「トレパレーション」という単語は、調べるとかなりどぎつい意味だったりするんですよ(※頭蓋骨に穴を開けて治療する民間療法のこと)。そんな、パッと見はきれいだけど、中を見るとちょっと濁ったものがある……ということをサウンドに落とし込んだつもりです。“幻想的だけど毒がある”という妖しさを秘めているので、ぜひそこを意識して聴いていただけたらと思います。

--いいですねえ、そういうの……!

煮ル果実 あと、曲の2番は気に入っている歌詞が集中しています。苦労した箇所も含めて。それもあってか、楽曲のテンションに変化が起きたりもしているので、ここからラストに向かって少しずつ上がっていく雰囲気を感じ取ってもらえたらうれしいです。……『トリコロージュ』って、幸福の固定観念から逃げてつぎの幸福を探す……という、人間のちょっと強欲で濁ってるけど美しいと感じる部分を表現したかった曲なので、全体を通して、それを具現化できたんじゃないかなと思います。

--個人的に気になったのは、冒頭の「Lady」という単語。「レイデー」という発音に聞こえます。

煮ル果実 はい。ここは意識して、あえて「レイデー」と発音してもらいました。

--ここも、リスナーがめちゃくちゃ考察していますよね。

煮ル果実 そうなんです、僕もそれを見て「おおお!!」って思いました。……が、そういった考察が正解なのかどうかは、僕からは語らないようにしています。

--あ、そうだったんですか!

煮ル果実 はい。言ってしまうと要素が薄れちゃうかな……と思って。

--わかります。こういう秘密めいたことはそのままにしておいたほうがいい場合もありますよね!

煮ル果実 ありがとうございます(笑)。

※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。

--では改めて、『トリコロージュ』の制作日数がどれくらいだったのか、ぜひ教えてください!

煮ル果実 どれくらいかかったんだったかな。歌詞に関しては、先ほどの宝石のところ以外はスラスラと書けたんです。音作りも、大変なところはあったんですけど。やっぱり、一番苦労したのは宝石の部分ですね(苦笑)。ここがハマらない限り完成じゃないと思っていたので、すべてひっくるめると……半年以上かかったかもしれません。……いや正直、苦労が掛け合わさって半年どころじゃないよなとも思うんですけど、それくらい時間を掛けて、丁寧に作り上げた曲と言えますね。

--煮ル果実さんのほかの楽曲と比べても、難産でしたか?

煮ル果実 間違いなく、いちばん難しかった部類だと思います。

--そんな『トリコロージュ』がゲームに実装されたのをご覧になったとき、率直にどのように思われましたか?

煮ル果実 感動でしたね……! 2DMVも作っていただきましたけど、それもめちゃくちゃ良くて……! 僕自身のチャンネルでバーチャル・シンガーver.を上げていますけど、それとはまたぜんぜん違う雰囲気ではあるんですが、歌詞と音から食事とか城のワンシーンの印象を感じ取ってキチンと表現してくれているんです。この2DMVの制作者の方も、歌ってくれた声優さんも、そしてゲームの譜面を作ってくれた皆さんも、すごく『トリコロージュ』を大事に扱ってくれたんだなと感じました。

--リズムゲームもプレイしてみたんですね。

煮ル果実 はい、やってみました。この曲の雰囲気に合わせた譜面になっていて感動したのと同時に、「うわ! 難しい!」と(笑)。一応、MASTERでクリアはしたんですけど、フルコンは無理でした。でもやっぱり、歯応えのある曲として実装されると、ちょっとうれしいですよね。

--ゲーム実装後、いろいろな反響があったと思いますが。

煮ル果実 まず、たくさん考察されているのを見て感激しました。

--ですよねー!

煮ル果実 もうひとつ、『トリコロージュ』って僕がいままで作ってきた楽曲とまったく違う雰囲気なんですね。なのでファンの方たちがどう捉えてくれるのか不安もあったのですが、「新しいものを見せてもらえた!」とポジティブに思ってくれる人たちがたくさんいて、かなり安心したのを覚えています。

--そんなファンの方たちに、ひと言送るとすれば?

煮ル果実 日々生活をしていると、気持ちがどうにもならなくて落ち込むことがあると思うんです。心が停滞してしまって、諦めの境地にでも達してしまいそうな瞬間が。でもそんなとき、『トリコロージュ』を思い出して聴いてもらえたら……と思います。

--わかりました! ありがとうございます!! ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは……煮ル果実さんが、ボカロPになられたきっかけを教えてください!

煮ル果実 僕は本当に何度もボーカロイドの作品に心を救ってもらってきましたし、青春や人生をすごく豊かにしてもらいました。その中で尊敬するアーティストさんをたくさん見つけることができて、「自分もいつか、こういう人たちみたいになりたい」と夢を抱くようになったんです。そして、「こういうスゴい曲を自分でも作ってみたい!」という衝動を抑えきれなくなり、この世界に飛び込みました。

--音楽の経験はあったのですか?

煮ル果実 幼少期からエレクトーンを習っていたので、音感は付いていたと思います。音楽に対して非常に能動的になったのは……中学生のときですかね。音楽制作そのものに興味が出てきていろいろな曲を聴くようになり、その流れでボカロに出会ってのめり込んでいきました。曲はもちろんなんですけど、作っているクリエイターの人となりとか、文化を知れば知るほど好きになっていって、気持ちが抑えられなくなったんです。

--そこでぜひお聞きしたいんですけど、ボカロPになるために必要なスキルって、何かありますかね……? ヒントをお聞きできればと思うのですが……!

煮ル果実 正直、楽譜とか楽器よりも、もっと精神的なものが重要なんじゃないかと思うんです。シンプルに言えば、“音楽とボーカロイドを愛する心を持つ人”。そして“なりたい自分を見つけたいと思っている人”。これが、ボカロPないしクリエイターになるための資質なんじゃないかと考えています。こういう人たちって、好きな曲、好きなアーティストを能動的に見つけられる人だと思うので、その時点でスタートラインに立てていると思います。

--なるほどなるほど。

煮ル果実 最初から、唯一無二の作品を作れる人って、まずいないと思うんです。なので、はじめはそこは目指す必要はないんですね。そればかりに囚われるのではなく、真似でもいいから何かを作りたい……という抑えきれない衝動を持ちながら作り続け、自身の心を湧き立たせる音楽やアーティストを見つけられた人が、いつしか他に無い個性を獲得したり、独自の表現を持つクリエイターになっていく……と思います。

--まずは好きなクリエイターと出会い、その人のマネとかアレンジをすることから始めるのもアリ……と。

煮ル果実 そこから始めるのがいちばんいいです! 真似とか二次創作とかって、相当好きじゃないとできないじゃないですか。その時点で他の人よりも凄いエネルギーを持っているわけです。普通だったら、まず何かを作ろうという考えにすら至らないですから。そういう人はこの創作の世界に来ても長く続けられるし、いい作品をどんどん生み出せるんですよね。

--好きこそものの上手なれ、ですね。

煮ル果実 おっしゃる通りです。“好きだから始めた”というのが、いちばん大事だし強いです。楽譜は、読めなくてもどうにかなります! それが音楽のいいところなんです。

--わかりました! では、ボカロPになってよかったと思うことがありましたら、ぜひ教えてください!

煮ル果実 大きくふたつあります。ひとつは、新しい自分を見つけられたこと。最初に言いましたけど、僕はいろいろな味のする曲を作りたい……という気持ちが作品作りの根底にあるんですね。ボカロPになったことで、ジャンルもぜんぜん違うさまざまな音にチャレンジすることができていて、それが完成したときに、「こんなふうに音をとらえた自分もいたのか!」、「こんな表現をした自分もいるんだ!」と、そのたびに発見があるんですよね。まだまだ自分自身が掘り尽くされていなくて、新たな表現に挑戦できることが、本当にうれしいんです。

--クリエイターだなぁ……!

煮ル果実 もうひとつはもっと単純で、根っから音楽が好きな人たちと仲良くなれたことが大きいです。ボカロPにならなければ、絶対にこの人たちと人生で交わることはなかったろうな……と思うことが多くて。そんな人たちと音楽以外にも様々な知見を得られるような話が出来たり遊んだりできているのは……、これはもう、ロマンの世界です(笑)。彼らと仲良くなれたことは財産ですね。

--そんな煮ル果実さんに、ぜひボカロPを目指す少年少女たちにエールをお願いしたいのですが!

煮ル果実 先程言ったことのまとめみたいになりますが、ボカロへの愛を忘れず、新たな自分を見つけにいくことを恐れずに作品を作っていってくれると嬉しいです!

--ありがとうございます! 励みになると思います! それでは最後の質問なのですが、ぜひ『プロセカ』にもひと言お願いできますでしょうか。

煮ル果実 すでに本当に大きなコンテンツになっているので、何かを言うのもおこがましいのですが……! まだ見たことのないセカイを、僕らクリエイターにも、そしてファンにも見せていってくれるのをすごく楽しみにしております。自分も微力ながらお手伝いできることがあればと思っているので、その際はぜひお声掛けいただければと思います。

--わかりました! 本日はたいへん貴重なお話、本当にありがとうございました!

 

煮ル果実

作詞・作曲・編曲家。主にVOCALOID楽曲のコンポーザーとして活動。

ロックミュージックをベースに多種多様なジャンルを縦横無尽に行き来し、謎が散りばめられた中毒性が高い映像との相乗効果で、独特な世界観の作品を手掛ける。

ずっと真夜中でいいのに。ナナヲアカリ、Sou、Ado等のメジャーアーティストにも精力的に編曲参加・楽曲提供を行っている。

『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』では、『トラフィック・ジャム』が収録されているほか、書き下ろし楽曲『トリコロージュ』を提供している。

 

『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』の関連記事こちらをチェック!!

ボカロPインタビュー連載

 

1周年ボカロPインタビュー

 

 

タイトル概要

プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク

■対応OS:iOS/Android

■App Store URL:https://itunes.apple.com/app/id1489932710

■Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.pjsekai

■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)

■価格:基本無料(アイテム課金あり)

■ジャンル:リズム&アドベンチャー

■メーカー:セガ/ Colorful Palette

■公式Twitter:https://twitter.com/pj_sekai