【プロセカ】ボカロPに直撃! “まらしぃ”さん、“堀江晶太”さんが語る“ワンダショ”と、オリジナル楽曲『88☆彡』について!【ボカロPインタビュー企画 #40】

まらしぃさん、堀江晶太さんの曲作りに迫る!

 2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。

 リリース当初からこのコンテンツを追いかけてきたコロコロオンラインプロセカ班は、2023年10月に『プロセカ』3周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けてきた。 

『プロセカ』3周年記念特集は下記の画像をクリック!!
 

 そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!

 “子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!

 『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!

 そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!

 さて今回ご登場いただくのは、まらしぃさん、堀江晶太さという超絶豪華なタッグであります!

 まらしぃさんと堀江晶太さんは、共同制作したオリジナル楽曲『88☆彡』を“ワンダーランズ×ショウタイム”(ワンダショ)に提供。この楽曲が提供されたイベントストーリー“まばゆい光のステージで”は、天馬司が役者としてひと皮剥け、その後のワンダショの歩みに影響を与える重要な物語となっている。

 重要極まるイベントストーリーに書き下ろされた『88☆彡』は、どんな曲なのか? 当連載で最長レベルの、めちゃくちゃ濃いインタビューをご堪能ください!

※インタビューはオンラインで実施したものです。

遠き日の約束を果たすために

――超有名人のおふたりにお聞きするのはたいへん恐縮なのですが、簡単に自己紹介をお願いできればなと……!

まらしぃ わかりました! まらしぃと申します。ピアノの演奏動画の投稿から活動を始めまして、2010年ごろより自分の曲を作るようになりました。初音ミクさんを始めボーカロイドを中心に歌ってもらい、活動を長く続けていたところ、『プロセカ』を始めいろいろとステキなご縁があって多くの方に聴いてもらえるようになりました。どうぞよろしくお願いいたします!

――ありがとうございます! では堀江さん、お願いします!

堀江晶太 はい。作曲家の堀江晶太です。ボカロPとして活動するときは“kemu”(けむ)の名義を使っています。コロコロコミックは毎月きちんと買っていた唯一のマンガ雑誌で、まわりの友だちが大人になって卒業していく中、僕だけはずっと買い続けていました! ですので今回のインタビューは、非常にうれしいです(笑)。

――いやあ、こちらこそ感激です! 一気にインタビューがやりやすくなりました(笑)。

堀江晶太 あははは。どうぞよろしくお願いいたしますー。

――さて今回はおふたりが作られた『88☆彡』(はちじゅうはち)についてお聞きするのですが、インタビュー用のカンペが過去最長の長さになりました……! というのも、そもそもこの強力タッグがどういう経緯で作られることになったのか、そこからお聞きしたいです! まらしぃさんと堀江さんは、いつからの知り合いなのですか?

堀江晶太 僕から話しましょう。もともとずっと昔……それこそ、お互いに楽器演奏が好きで、ニコニコ動画に投稿していた一般投稿者の時代から知ってはいたんです。「なんだかおもしろいことをする人がいるなぁ」って双方が思っていたんですけど、それがもう……15年くらい前になるのかね?

まらしぃ うん、そうだね。そういうレベルの時間になると思う(笑)。

堀江晶太 でもそれはあくまでも“インターネット上で知っている”ってだけで、リアルでの接点はなかったんです。それがあるとき、いまで言うオフ会のようなものが開かれることになったんですよ。「いっしょにスタジオに行って、楽器を合わせてみよう」とか、そういうノリの集まりですね。

まらしぃ そうそう。確か当時は、名古屋のスタジオオフ会みたいな集まりが定期的に行われていて、そこで初めて会った記憶がありますね。

堀江晶太 初めて顔を合わせて、「いやぁ、やっと会えましたね」みたいなお約束の話をして(笑)。でもそのときってまだ、僕は作曲家でもなんでもない音楽好きの一般投稿者で、まらしぃ君もピアノが好きで、ひたすら動画を投稿している人……って感じだったんです。

――ほうほう!

堀江晶太 でも会った初日から意気投合して、夜中までふたりで話し込んでね。そしてまらしぃ君の家に行って、けっこう熱い話をしたような記憶がある。僕は「これから東京に行って、作曲家になろうと思う!」って、まらしぃ君に言ったんだよな。

まらしぃ 言った言った!

堀江晶太 そしたらまらしぃ君も、「僕もピアノを弾いて、曲を作って、行けるところまで行ってみたい!」って。で、最終的に僕らは、「いつかお互いに独り立ちして、立派になったら、いっしょに何か作ろうね」って約束したりしていました。

まらしぃ あーーー! 言ってたねぇ~~~……!

――か、かっこいい……!!(感動)

堀江晶太 でもそこから6年くらいは、お互いに連絡を取り合うこともなかったんです。それが蓋を開けたら……こうしてあのときの約束通りに、ふたりで仕事をしていると……!

――めちゃくちゃドラマチックじゃないですか!!

まらしぃ あははは。でも、マジでそうなんですよ。

堀江晶太 はい、こうやって改めて話すと、なんかかっこいいですよね(笑)。

▲2020年に投稿されたまらしぃさんの代表曲『青く駆けろ!』。プロセカにも収録されており、初音ミクと星乃一歌が歌唱しているぞ!そして…!!2022年4月1日に公開され話題となったのが、青春/friendsが歌唱するエイプリルフールver.!!こちらはプロセカ公式YouTubeでチェックだ!

――初めて会ったとき、互いの第一印象はどうだったんですか?

堀江晶太 すごく人懐っこい人だなーって思いました。というのも、まだお互いに情報が少ないながらも、「(ニコニコ動画)界隈でブイブイ言わせているピアニストがいるらしい」という話は聞いていたんですね。ですので芸術家肌の、すごく変わった人が現れるんじゃないかと身構えてもいました。実際に会うと……ある意味、変わった人ではあったんですけど悪い意味のほうじゃなく、すごく人懐っこくて、人好きするオーラのある人でした。そういう意味で、ちょっとビックリもしたことを覚えています。

――ではまらしぃさん、堀江さんの第一印象は?

まらしぃ おそらく、会った人全員が思うと思いますけど、「背ぇ高っかいなぁ……!」という感想(笑)。(※堀江さんは188cmの長身なのだ)

堀江晶太 そこ?(苦笑)

まらしぃ そういうビジュアルのインパクトがありつつ、話してみると音楽がめちゃくちゃ好き……というレベルじゃなく、“音楽の中で生きている”っていうくらい純粋な想いがあふれている人で、僕からすると……うん、すごくキラキラと輝いて見えましたね。

――おお……!

まらしぃ 僕は昔、ピアノを習っていたときに音楽がイヤになって辞めてしまったことがあるんです。ですのでインターネットでの活動は“再開後”のことなんですね。そこでようやく「音楽って楽しいな」って思い始めるんですけど、かつて先生に怒られた記憶とかは残っているわけです。そんな自分から見ると晶太君は、ただひたすらに音楽が大好きで、没頭していて、多大な情熱を注いでいるわけです。その姿には憧れますし、うらやましいとすら思ったことをいまでもよく覚えています。

――まらしぃさんから見たら、堀江さんは音楽の化身みたいな感じなんですかね。

まらしぃ あーーー! 本当にその通りですね! いまも変わりませんけど!

――わかりました! そんなおふたりで『プロセカ』にオリジナル楽曲を提供するわけですけど、この依頼はどういった形で届いたのですか?

まらしぃ 最初は、僕に依頼が来た形になります。

――そこから、堀江さんとタッグを組むまでの流れは?

まらしぃ これがですねぇ……。いくつか複数の話が進行していたので、どこから話すべきかなぁ……!

――ごくり。

まらしぃ 僕、ふだんから自分で曲を作るときに、アレンジャーの方に手伝っていただくことが多いんです。ひと通りできたあとに、最終的なブラッシュアップで協力してもらう感じですね。僕もアレンジは、見よう見まねでできないこともないんですけど、そこは餅は餅屋でプロの人にお願いして、かっこよくしてもらったりしているんです。

――はい。

まらしぃ で、先ほど晶太君がちょっと話しましたけど、6、7年ぶりくらいに連絡を取り合って、『10年越しのラストピース』という曲を共作したんです。そのときに、「ようやくいっしょにやれたね!」って喜び合うことができました。

――聴きましたよ! めっちゃいい曲なんですよねー!!

堀江晶太 ありがとうございます!

まらしぃ そのとき、「またいっしょにやろうね!」って盛り上がっていたところに、『プロセカ』さんから書き下ろしの依頼をいただいたんです。そこで、せっかくの機会だし、ちょうどいいタイミングでもあったので、僕の方から「堀江晶太君といっしょに」という提案をさせてもらいました。

――これまたドラマチックだなぁ……。そのお話をまらしぃさんから聞いたとき、堀江さんはどう思われたのですか?

堀江晶太 まらしぃ君からのお誘いはいつもステキなことなので、もちろんうれしかったです。加えて、僕も『プロセカ』は知っていたので、そんな大事な場所に呼んでもらえたことを光栄に思うとともに、「しっかりやらなきゃ!」という想いも強くしましたね。

――堀江さん、知っていたも何も、DECO*27さんとのタッグであの『セカイ』を作られたじゃないですか!(笑)

堀江晶太 そうなんです(笑)。でも『セカイ』はこのゲームがスタートする前に作ったものなので、『88☆彡』を作ったときとはだいぶ心境が違いました。『セカイ』を作ってから何年も経ち、『プロセカ』はファンに愛される大きなコンテンツに成長して、注がれる情熱もスゴいことになっています。そういった成熟した状態のものに曲を作るとなると……おのずと、いろいろと意識するようになります。

――わかります……!

堀江晶太 ですので、『プロセカ』がいまどうなっていて、ユーザーにどれほどの影響力を持つものになっているのか、ある程度は知ってから作品作りに臨もうと思いました。

▲『プロジェクトセカイ』のテーマソングとして書き下ろされた楽曲、『セカイ』(作詞:DECO*27、 作曲:堀江晶太(kemu))。『プロセカ』がリリースされたときから愛され続ける、屈指の名曲のひとつである。

――そして『88☆彡』が作られるわけですが、この曲が提供されたユニットはワンダショです。彼らには、どんな印象を持たれていますか?

まらしぃ 僕はおそらく……! 全ボカロPの中で、もっとも『プロセカ』にお金と時間を費やしている人間だと自負しています(笑)。

――はい、よく存じ上げています(笑)。

まらしぃ ありがとうございます(笑)。そんな僕から見たワンダショは……ちょっと月並みなんですけど、“見ていてワクワクするユニット”でしょうか。そのうえで、彼らがどんなふうに成長して羽ばたいていくのかを、ぜひ近くで見続けたいと思っています。各キャラのストーリーを追っていくと、さまざまな困難や葛藤を乗り越えたすえにいまの彼らがあるとわかるので、それも含めてかっこいいし、そしてすごくかわいい子たちだなって感じます。……って、ただのゲーム好きおじさんの感想みたいになっちゃいましたけど、大丈夫ですかね?(苦笑)

――大丈夫ですよ! すごくわかりますし。

まらしぃ じゃあもっと言うと、僕、髪の毛をいろんな色に染めるのが好きなんですけど、ちょうど『88☆彡』を作っていたときの髪色が、すごく類君に近かったんですよ!

――それは親近感が湧くかも(笑)。

まらしぃ でしょう(笑)。

――では堀江さん、ワンダショについてはいかがですか?

堀江晶太 僕はまらしぃ君ほど『プロセカ』を網羅しているわけじゃないんですけど、一応、すべてのストーリーを読んで人物像もつかんでいったんですが、やっぱり知れば知るほど愛着が湧く子たちなんですよね。すごくがんばっているし、真っ直ぐな子たちだから、ついつい、「彼らにはずっと笑っていてほしいな」って思いました。

――あーーー……!

堀江晶太 でも、彼らは自分たち以上に、まわりの人たちに笑ってほしいって思っているんですよね。だからこそワンダショの子たちは元気に、幸せになってほしいな、って。そう思わせるスター性を持っているんです。「この子たちが笑ってくれれば、もうそれでいいや!」って、僕は思ってしまいました。

まらしぃ うん、わかるわかる! ワンダショ推しの人たちが、共通で想っていることだよね、それって。

堀江晶太 ああ、やっぱりそうなんだね。彼らのことを知れば知るほどそういう気持ちがこみ上げてくるので、ちょっと曲のことに触れちゃうんですけど、まらしぃ君が入れた『88☆彡』の詞を改めて読んだときに、「これ、めちゃくちゃいい詞なんだな……!」って思えたんですよねー。

まらしぃ そうでしょうそうでしょう!(笑)

※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。

――そのスター性というところで言うと、『88☆彡』が書き下ろされたイベントストーリー『まばゆい光のステージで』のキーキャラクターは司君です。彼については、どんな印象を?

まらしぃ ちょっと変な言いかたになるかもしれないんですけど、司君は……いまは無理ですけど、彼が大人になったときに、いっしょにお酒を飲みたいって思ったんです。

――ほーーー!

まらしぃ 司君って、輝く星なのは間違いないんですけど、何の努力もしなくても完璧でいられる……っていう子ではないですよね。裏ではたくさんの努力も、苦労もしているし、妹の咲希ちゃんが病弱だったという背景もあって、すごく人間味のある、温かい子に育ったんだなぁ……って思ったんです。そんな彼が大人になったときに、酒を酌み交わしてみたいですね。

――司とお酒を飲んだら……おじさん、泣き上戸になりそうだなぁ。

まらしぃ 間違いなく、泣いている自分が見えます。途中から酔っ払って、司君に同じことしか言わなくなってる気がするし(笑)。

――では堀江さん、司君についてはいかがですか?

堀江晶太 すごくステキなリーダーだな、って思いました。何でもやれて、誰よりも頭が回る……というリーダー像もあると思いますけど司君はそうではなく、ひたすら正直に、真っ直ぐに突き進むことで仲間を引っ張っていくタイプ。自分も、集団の中でこういう人になれたら、きっとおもしろいチームを作ることができるんだろうなぁ……って、ついつい重ねて見てしまうんですよね。うれしいことがあれば「うれしい!」って直情的に言うし、何か間違えたとしても、「すみません!」って謝れる子じゃないですか。そういう部分も含めて真っ直ぐな人って、やっぱり魅力的ですよね。

――僕は司を見るといつも、長嶋茂雄さんを思い出します。

まらしぃ あーーー!!

堀江晶太 そうそう! スポーツだとわかりやすいですね! なんでも器用にこなすタイプじゃなく、とにかくカリスマがあって、憎めなくて、ついていきたくなる人。「この人のために、がんばっちゃうか!」ってね。

――ありがとうございます! ではいよいよ『88☆彡』に切り込んでいきたいのですが、この曲はまらしぃさんが作詞作曲で堀江さんがアレンジを行った……という感じなのですか?

まらしぃ えっとですね、まず作曲に関してはふたりで行いました。最初のフラッシュアイデア……こういった曲でこういう曲調で……というラフの状態をまず僕が作り、それを晶太君に聴いてもらって、ここを出発点にふたりでイチから作っていこうか……という感じで始まったと思います。

堀江晶太 そうだね。まらしぃ君がワンコーラス分のラフを持ってきてくれて、それを聴きながらコードを弾いて、「これをもとにやっていこう」と話したんですよね。そのラフ……原案で残っている部分はもちろんあるし、僕から「こっちはどう?」と提案して入れ込んでいったものもあります。その逆もしかりですね。そうやって上書きしていって、メロディーも組んでいった……という感じでしょうか。ですので、本当の意味での“共作”になりますかね。

――キャッチボールをしながら積み上げていった……というイメージ?

まらしぃ そうですね。基本的に、オンラインで通話をしながら作っていったんです。

堀江晶太 そうそう。通話で繋いでおいて、ふたりともピアノとか楽器を弾くので、音を鳴らしながらね。「これいいね!」、「いまのもいけるね!」なんてワイワイとやっているうちに、まとまっていったイメージです。

まらしぃ まさにそんな感じで、「曲を作らなきゃ!」って追われていたというより、いっしょにアイデアを出しながら進めていったんですよね。それを晶太君がまとめ上げてくれたんですけど、それがもう、爆速で(笑)。アッと言う間にいろいろと出来上がっていくんですよ!

堀江晶太 あははは。

まらしぃ こう言ったら語弊があるかもしれませんけど、ふつうに楽しく遊んでいた……って感覚なんです。

堀江晶太 そうだね。「こういう和音あるけど、どう?」、「うん、いいねそれ!」ってな会話をくり返しているうちに、気が付けば曲が仕上がっていた感じです(笑)。

――そんな作り方ができるんですねぇ……。

堀江晶太 ……できましたねえ!

まらしぃ うん、できました(笑)。

堀江晶太 音楽って、おもしろいし難しいですよね。真面目に黙々とやればいいものができる……っていうものでもないじゃないですか。「こうすればいいものになる」っていう正解がないので、今回みたいにワイワイとやっているあいだにいい作品が仕上がったりもするわけです。

▲イベント『まばゆい光のステージで』の書き下ろし楽曲としてリリースされた。

――おふたりの関係性も大きかったんじゃないですかね。互いに信頼し合っているからこそ、そういう作り方もできたのではと。

堀江晶太 それは、少なからずありました! やっぱり“プロセカ愛”を強く持っているのはまらしぃ君のほうで、僕は違う視点も持っていたから、そういう違いも好影響したんだと思います。

――まらしぃさんの『プロセカ』に対する想いが、楽曲制作の道しるべのひとつになった……って感じですね。

まらしぃ 改めて言われるとちょっと恥ずかしいですけど、確かに「歌詞は僕に書かせてほしい」って提案したんですよね。このイベントストーリーや、ワンダショの子たちに向けて書きたい歌詞のビジョンがある……と晶太君に話して、一度書き上がったものを見て気になるところを修正していこうという話になりました。

――直しはけっこうあったんですか?

まらしぃ いや……。晶太君、直しって何かあったっけね?

堀江晶太 僕のほうから質問をした記憶はある。「ここって、これでいいの?」というくらいだったけど。

まらしぃ ああ、そういうのは何回かあったね。

堀江晶太 でも、そういう質問に対してもまらしぃ君は、「これはこういう理由で書いたもので、『プロセカ』的には間違っていないから、俺はそのままいきたい」と説明してくれたので、結果的に最初に上げてくれた歌詞で決定したように思います。

まらしぃ うん、そうだね。実際にメロディーラインに載せたときの語感だとか、もっとリズムにあったワードのチョイスを……という話はしましたけど、基本的には僕が最初に作った歌詞を晶太君が信頼してくれて、「OK!」と言ってくれたのを覚えています。

――へぇ~~~!!!

堀江晶太 音楽を作るときのルールとして、クリエイターは皆、独自の理論みたいなものを持っているわけです。それは当然、僕の中にもあるんですが、今回はそういったものすら上回るまらしぃ君のプロセカ愛があったので、「そっちを優先する」というルールを新たに設けた感じです(笑)。たとえて言うなら、僕が聴いて不協和音だなと思ったとしても、それをまらしぃ君が「この不協和音こそふさわしい」って言ったら、それも「OK!」って言うつもりでした。

――すばらしい信頼ですね、それは……!

堀江晶太 そういう、特殊なルールを自分の中に設けたことによって、さっきも言ったワイワイしながらもキチンと筋が通った仕事ができたんだろうな……って、いまになって思います。

――そこで改めて『88☆彡』のテーマをお聞きしたいです。

まらしぃ まず、楽曲を作るにあたってストーリーや設定資料をいただくわけですけど、それを読ませてもらって、いの一番に出てきたフレーズが「88個のスター 駆け上がれ!」でした。

――はいはい!!

まらしぃ 「駆け上がれ」というのは、司君に対してもワンダショの面々に対しても、ずっと思っていたキーワードみたいなものだったんですよね。ストーリーの中で、ワンダショの子たちやバーチャル・シンガーたちが掛け合いを展開していますけど、彼らは心のうちできっと、お互いに、「駆け上がってほしい!」と思っていると感じていたんです。そして僕自身もひとりのユーザーとして、ワンダショの子たちに、「駆け上がってほしい! そして幸せに輝いてほしい!」と思い続けていました。それはもう、“願い”と言ってもいいと思います。

――はい。

まらしぃ そこで出てきたのが「88個のスター 駆け上がれ!」と、もうひとつ、「そんな君に幸せが降るといい」というフレーズです。

――そこ!! めっちゃいいです!!

まらしぃ ありがとうございます(笑)。

――そこでぜひお聞きしたいのが“88”についてなんです。まらしぃさんがSNSでいくつか種明かしもされていましたけど、この88にはいろんな意味が込められているんですよね?

まらしぃ はいはい。そうですね!

――いったいどこまでが仕込みで、どこからが偶然なのかなって。

堀江晶太 先に僕が補足すると、それほど狙ってはいなかったはずです。というのもまらしぃ君って、昔からこういう奇跡というか、不思議なことが起こりがちな人なんですよ。

――それはおもしろいですね!

堀江晶太 ですので、僕はそれほど意識して88に意味を持たせたつもりはなかったので、逆にまらしぃ君に聞いてみたいです(笑)。どれくらいの意味を含有しているのかを。

まらしぃ もちろんピアノの鍵盤の数や、“スター”がキーワードでもあるので星座の数にも掛けています。とはいえ、“狙ってやりました”と僕が言ってしまうとそれだけが答えみたいになってしまうので、ちょっとそれはどうかなとも思うんですね。

――うんうん、わかります。

まらしぃ それよりも、リスナーさんが考察されている、「●●の数が88になる!」、「アレとコレを掛け算すると88だ!」みたいな説を見て、逆に「みんなスゴいな!!」って(笑)。

――なるほど(笑)。

まらしぃ でも、これは後から知ったんですけど、晶太君の身長が188cmなんですよね!

堀江晶太 確かに!!(笑)

まらしぃ これも狙っていました!!

――いま「後から知った」って言ったじゃないですか(笑)。

まらしぃ でも晶太君の言うように、うれしい偶然がたくさん積み重なってくれたんですよね。その中には、意図的なものもありますし、そうじゃないものもあります。だからこそ、リスナーさんが愛を持って考察してくれているのは、とても幸せなことだなと感じています。

――でもホントに堀江さんがおっしゃった通りで、不思議なほど88に紐づいてくるんですよね。

堀江晶太 そうなんですよ。だって僕のXのIDからして“8888”(正確には、@kemu8888)ですから。

――うおおおお!!

まらしぃ 僕も“@marasy8”だ。1個足りないですけど。

――すげええええ!!

堀江晶太 もちろん偶然なことも多いんですけど、楽曲とか作品っていつしか作者の手を離れて、リスナーとか関わってくれた人の想いを纏って、ステキな奇跡を見せてくれることがあるんです。それがあるから、おもしろい。僕らが意図していなかった感動を生んでくれるって、すばらしくないですか?

まらしぃ うん、めちゃくちゃうれしいよね。まあときには、「さすがにそれは、こじつけが過ぎるやろ!」って、笑いながら見たものもありますが(笑)。

――僕が見て「マジ!?」って思ったのが、ワンダショの英語表記“Wonderlands×Showtime”が11(文字)×8(文字)で、掛け算すると88文字になる……ってやつです。「まらしぃさんすげえ!!」って思いました。

まらしぃ いやあ、スゴいでしょう?

一同 (爆笑)

まらしぃ ワンダショというユニットが生まれる前から、じつはこのネタを仕込んでいたんですよ~(笑)。

――予知能力者じゃないですか(笑)。でも、そんなことも含めてワンダショっぽいんだよなーーー。

まらしぃ あー、そうですね! ワンダショって、そういう空気を纏っていますもんね。

※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。

――さてそこで、ぜひおふたりのお気に入りの歌詞を聞きたいです。堀江さん、いかがですか?

堀江晶太 まらしぃ君がさっき言った「君に幸せが降るといい」が好きなのは、僕もまったく同じです。この楽曲の、もっとも温かい場所にこのワードを持ってくるのが、すごくキレイだなと思って。あとは……「待ってました お出ましだ」のところ。

――はいはい!

堀江晶太 この言い方って、いろいろとあったと思うんです。日本語として、もっと真っ直ぐな表現も選べますしね。それをあえて、エンタメとして楽しませようとするニュアンスが入った「待ってました お出ましだ」は、すごくいいですよね。ここでワクワクしてほしい……という想いが伝わってくる、じつにワンダショっぽい表現だなと。聴いている人を楽しませてあげたい……という気持ちの中に、“自分自身も楽しみたい”という想いも見え隠れするんですよねー。すごく好きな言い回しです。

――とてもよくわかります! では、まらしぃさんいかがですか?

まらしぃ 個人的に、すごく好きな箇所がふたつあるんですけど、そのひとつをいま、晶太君が解説してくれました。まさにその通りで、「待ってました お出ましだ」は司君をイメージしてチョイスしたワードだったので、そこを評価してもらえたのはすごくうれしかったです。

――おお!

まらしぃ もうひとつ、「君に幸せが降るといい」の直前で類君が歌っている、「朝になって 息を吐いて それから今日を彩っていけばいい」のところ、ここも好きなんですよねー。

――わかるーーー! ……って、さっきから同じことばかり言ってしまっていますが(苦笑)。

まらしぃ ありがとうございます(笑)。あの、僕も、晶太君もそうですけど、夜型の人ってたくさんいると思うんです。楽器を弾いたり曲を作ったりするのって楽しいんですけど、やっぱりそれだけじゃなくて。夜中になって、さまざまな確認作業とか、メールの返信だとか、あと事務作業とかとか、その周辺でやらなきゃいけないことっていっぱいあるんです。当然、人間ですから、「むむ……」って思うことに直面したりね。

――はい。

まらしぃ そんなことをやった翌朝、起きたときに、「ま、今日は今日だな」って思うことが多いんですよ。

堀江晶太 あはは。わかるわかる。

まらしぃ なのでワンダショの子たちも困難に立ち向かったら、まずはゆっくり寝てもらって、またつぎの日からがんばってほしいな……っていう願いが、そのワードに込められています。

――まらしぃさんが、彼らに送ったメッセージ……と。

まらしぃ 僕からもそうですし、おそらくワンダーランドのセカイにいるミクちゃんやKAITOさんも、彼らに対して同じように思っているんじゃないかな、って。

――僕は個人的に、「夢も希望も欲張っちゃえばいい」のところが好きです。

堀江晶太 あー! そこもわかる!

まらしぃ 僕も、同じく好きです(笑)。

――では、『88☆彡』の聴きどころというと?

まらしぃ 歌詞や歌声もそうなんですけど、楽器をやっている人間目線で言いますと、間奏のところでもピアノをいっぱい弾かせてもらったんですが、じつはそのシーンで流れるホーンセクション(※3つの楽器による、管楽器のアンサンブルのこと)が聴きどころかなと思います。

――ほほう!

まらしぃ じつはあれ、生音でレコーディングさせてもらったんです。トランペット、トロンボーン、そしてアルトサックス。僕はホーンセクションの生音レコーディングは初めてだったので、ひとりで興奮していて。「晶太君、ありがとう! すばらしい奏者を紹介してくれて!」って、ずっと晶太君にお礼を言っていた記憶が(笑)。

堀江晶太 そうだったそうだった。

まらしぃ もうひとつ、マニアックなことなんですけど、曲の最後にちょっとだけ鐘が鳴っているんです。あれは、晶太君が小粋に入れてくれた音。「みんな幸せになってほしいね」って。そういった、細かい楽器の音も味わってもらえたらうれしいなと思います。

――堀江さんの願いも込められた鐘の音……って、いいですねえ。

堀江晶太 はい、そうですね。僕は作詞はしなかったので、そういった音でメッセージを送ろうかなって思いました。

――そんな堀江さんから見た、この曲の聴きどころは?

堀江晶太 楽曲全体を通して、駆け上がっていく感じとか、夢の持つ温かさ、優しさを表現したつもりです。

――はい。

堀江晶太 ひとつ付け足すなら、コード進行ですね。それも、お互いに楽器を弾きながら、王道ではない、なんていう構造なのかもわからない“感覚の音”で作ったことでしょうか。ピアノを弾いて鳴った音を拾って、「この音とこの音の組み合わせ、よくない?」って採用したり。もちろん、それぞれの和音には名前があるのかもしれませんけど、そういう理論に詳しいわけじゃないので、そこは感覚でやっていました。「なんてコード名なのかわからないけど、おもしろいし、ワクワクするからいいよね!」って。

――ある意味、自由に取り組んだ感じなんですね。

堀江晶太 そうですそうです。正体がわかってないけど、まらしぃ君としゃべりながらいっしょに楽器を鳴らして、ピンと来た音でコード進行を組んでいたりします。……ですので言ってしまうと、作っている僕らもよくわかっていない(笑)。

まらしぃ あははは。

堀江晶太 わかってないけど、なんだかワクワクする和音の動きが入っているので、リスナーさんも肩ひじ張らずに、「なんかこの曲、楽しいね」って感じで聴いてもらえると嬉しいです。ただね……。

――はい。

堀江晶太 この曲、まらしぃ君のイベントとかで演奏することがあって、僕もベースなどで参加したりするんです。でも、毎回毎回、弾くのに苦戦します(苦笑)。わからずに作ったから(笑)。

 

――おもしろいなーー!! でも振り返ってみて、制作難度はどうだったのですか? 共作ということで、けっこう時間がかかったのではと思うのですが。

堀江晶太 僕は作詞はしていないので作曲のことになりますけど、それほど悩まず、ふたりで盛り上がっているあいだにできちゃった……という感じがします。

まらしぃ そうそう。作詞も、「じゃあ書くね」って晶太君に言った翌日に、「はい」って渡した覚えがあります。

堀江晶太 早かったよねーーー。

まらしぃ なので、めちゃくちゃ早かったと思いますよ。

――じゃあ、難産だった……という感じは?

まらしぃ ないと思います。

堀江晶太 そうだね。やっぱり、事前にちゃんと話していると、そんなに悩まないんですよね。モノ作りって。その段階で躓くことも多いと思うんですけど、僕とまらしぃ君の関係値なので、そのへんの話し合いも非常にスムーズだったんです。

――ツーカーだからこそ。

堀江晶太 そうですね。スタートの時点ですでに、迷わずに作り進められるだけの材料がテーブルの上に揃っていた……と言ってしまっていいと思います。これが中途半端だと、「何を作ったらいいの?」ってなっちゃうんですけど、今回はそれがまったくありませんでした。

――まらしぃさん、いかがですか?

まらしぃ 作っているときはそれほど意識していなかったですけど、後から思い返してみると、やっぱり全面的に晶太君のことを信頼して進めていたんだなって思います。……いや、信頼とかそういう次元ですらなく、いっしょにやれて楽しいし、絶対にいいものが作れるってわかりきっていたので、終始楽しんでいたんだと思います。むしろ客観的に、「どんなすごい曲になるんだろう……!」って、自分自身で思っていたくらいです(笑)。

――それはすばらしいですねえ。

まらしぃ ひとりの音楽家として、こういう新鮮な刺激の中に身を投じられるのってすごく貴重だし、恵まれているし、何より幸せなことだなと思いました。

――そんな『88☆彡』がゲームに実装されたのを見て、どう感じられましたか?

まらしぃ いやあ、うれしかったですねぇ……! 皆さんが楽しんでプレイされているのを知って感激しました。でもひとつ言うなら、ピアノの部分とかもう少し、スーパー難易度にしてもらってもよかったなと(笑)。

――まらしぃさん、このイベントのときめっちゃイベラン走ってましたよね? 順位もとんでもないことになってた気が……!

まらしぃ はい、イベランで47位でしたね。

――いったい、どうやってその時間を捻出しているんですか!? 毎回不思議なんですけど……!

まらしぃ いやでも! 出遅れちゃったんですよ。このイベントが始まるタイミングでレコーディングが入っていて、ひと仕事終えてから参戦したんです。「うわ! 出遅れた!」って。

――それでこの順位って……。

まらしぃ 昔から、寝る間も惜しんでゲームに没頭するタイプなんです。とくに今回は書き下ろしもさせてもらったので、気合を入れて、楽しみながらイベランしました。

――47位じゃなく、88位だったら、さらに奇跡が上乗せされましたね。

まらしぃ あ、そうそう! このとき、88位が大激戦だったらしいですよ(笑)。

――そうなりますよね! では堀江さん、いかがでしょう?

堀江晶太 僕、本当に音ゲーが苦手過ぎて、まともにプレイできませんでした(苦笑)。

――あ、そうなんですか!?

堀江晶太 『セカイ』も、あれはゲームをインストールしてすぐにプレイするじゃないですか? でもぜんぜんクリアーできなくて2時間くらいかかった思い出があります(笑)。昔、まらしぃ君とよくゲーセンに行きましたけど、彼が音ゲーをやっているのを、「何が起こっているんだ……」と思いながら眺めていましたし……。

まらしぃ 僕からすると、不思議なんですよ。晶太君、あんなにいろんな楽器を弾きこなせるのに、なんで音ゲーになるとダメなの?? って(笑)

――あはは、それでは『88☆彡』が大好きなリスナーに向けて、ひと言ずつお願いいたします。

まらしぃ この曲が好きで、たくさん聴いてもらえている……ということが、とにかくひたすらうれしいです。それは、皆さんと同じく『プロセカ』が好きで、ミクさんが好きで、ワンダショも司君のことも大好きな僕が、同じ時間を共有できた証左でもありますから。『88☆彡』をすばらしい思い出のひとつとして覚えておいてほしいですし、今後もよかったら……1日に88回くらい『プロセカ』でプレイしてほしいなと(笑)。

――わかりました! では、堀江さんお願いいたします。

堀江晶太 楽曲って完成して世に出したら、そこから先はリスナーさんたちのものになるんですよね。ですので、たくさん聴いてほしいですし、好きなように楽しんでもらいたいと思います。

――ありがとうございます! ではここから、おふたりのこれまでの歩みを聞かせてください! まず、ボカロPになられたきっかけをぜひ!

堀江晶太 僕はもともと作曲家になるのが夢だったので、ボカロPってものに限定していたわけじゃないんですね。でも、その夢を追い掛ける過程で、「ボカロに触ってみたら?」と勧めてくれる人がまわりにいて、実際僕もボカロの音楽はたくさん聴いていたので、ちょっとやってみようかなと。“自分が進む道の途中にボカロもある”って思えたことが、この道に入るきっかけでしょうか。

――ほーーー。

堀江晶太 あのとき、まわりの人にけっこう強めに勧められなかったら、ボカロPにはなっていなかったかもしれません。というのも、本当にボカロ楽曲のリスナーのひとりだったから。自分でやってみようなんて、思わなかったと思います。

――振り返ってみて、いい出会いでしたか?

堀江晶太 もちろん! これがなかったら、いまの自分はありませんから。

――ありがとうございます! ではまらしぃさん、いかがですか?

まらしぃ 僕のボカロとの出会いって、曲じゃないんです。当時のニコニコ動画によくあった“描いてみた”とか、初音ミクの二次創作のファンアートから入った人間なんですよ。「この初音ミクって子、かわいいな!」ってところがスタートでした。

――意外ですね!!

まらしぃ じつは、ミクさんが歌を歌う……ってことは後から知ったので、そういう意味では少し変わった出会いだったかもしれませんね。ですのでその段階では、自分で曲を作ってみようなんて思えるわけもなかったんです。

―スタートがビジュアルからなんですもんね。

まらしぃ はい。当時の僕はピアノを弾いた動画の投稿者だったわけですけど、あるとき、それを見たレコード会社の方が「CDを出しませんか」と声を掛けてくれたんです。それが、大好きなボーカロイドのカバーCDだったんですけど、そのときにレコード会社の偉い方から、「自分でも曲を作ってみたらどう?」と提案してくれました。

――はい。

まらしぃ 僕はそのとき、作曲なんてやったことないし初音ミクも触ったことがなかったんですけど、当時は駆け出しだったので、(偉い人からの提案を断ったら、つぎはないかもしれない!)と考えて、「やります!」って答えました(笑)。これがボカロPとしてのスタートなので、ほかの人と比べるとかなり邪道な気がします(苦笑)。

――驚きです。作曲も、小さいころからたしなんでいたのかと思っていました。

まらしぃ まったくそんなことないんですよ。ピアノにしても、一時期やめていたくらいですから。でも、あのときに即答してよかったです。こんなに楽しい世界があるってことを教えてくれて、導いてくれたのは、ミクさんを始めとするバーチャル・シンガーたちですから。

――そこでお聞きしたいのが、ボカロPになるために必要なスキルです。堀江さん、何かありますかね?

堀江晶太 難しいなーーー。……もしかしたら、趣旨を壊すような回答になるかもしれません。

――もう、何でも聞かせてください!

堀江晶太 ボカロPって、誰でもなれるんです。ソフトを買って、なんでもいいから楽曲を作って投稿した時点で、それはもう立派なボカロPですから。……何が言いたいのかと言うと、変に“特別なモノ”と思う必要はないですよ、ってこと。憧れのスター……なんて決めつけちゃった時点で、「自分には無理かも」、「音楽のスキルがないし」ってブレーキが掛かっちゃうので、まず特別視をするのはやめましょう。音楽理論も必要ないし、楽器も弾けなくて大丈夫です。ボカロのソフトを買って、ひとつでもふたつでも音を作ってボーカロイドが歌ってくれたら、その時点であなたはボカロPなんですから。最初に、その感覚を知ってほしいです。

――はい。

堀江晶太 専門の学校に行って、知識を身に着けて、楽器を弾けるようになって……という準備は、ボカロPには必要ありません。何もわからなくても始められるのがボカロだと、僕は思っています。なので、何かアドバイスを……と言われたら、「すぐにでもなれるので、スゴいものだと思わないでください」って伝えます。

―形から入ろうとする子は多いと思うので、とても響くメッセージだと思います。

堀江晶太 そうなんですよね。でも、免許や資格は必要ありませんから。気軽に始めてみてください。

――確かに!

堀江晶太 やってみないと、何も見えてこないですから。「難しそう」、「自分には向いてないかも」なんて先入観は持たずにチャレンジしてみましょう。

――ありがとうございます! では、まらしぃさん。

まらしぃ 晶太君の回答が、100点満点ですね。それに付け足すとすると、楽器が弾けたり、音楽理論を知っていたりすると、引き出しのひとつにはなるんです。でも絶対に必要かと言われるとそんなことはなくて、それよりも何よりも、“ミクさんに自分の曲を歌わせたい”という情熱が大事になると思うんです。たぶん、現役のボカロPのほとんどが、単純に「おもしろそうだから」という理由でボカロに触ったんだと思うんです。そんな理由で、十分なんですよ。

堀江晶太 ひとつ思ったのが、生まれた家系が代々のボカロP一家だった……なんて事例は、まだないと思うんです。一子相伝のボカロP一族……って、聞いたことないじゃないですか。

――ないですね(笑)

堀江晶太 ゆえに、きっかけは皆「なんとなく」とかなんですよね。もちろん、1000年後とかはわかりませんよ? 代々その秘儀を受け継いだナントカ流なんていうボカロPの系譜ができているかもしれませんけど(笑)。

一同 (爆笑)

まらしぃ このインタビューを読んでいる子たちで、習い事でも、勉強でも、部活でも、興味を持っていることがあったら、ぜひ一生懸命やってほしいと思うんです。一見、ボカロとは関係ないように見えますけど、そういった“夢中になった”という経験が、のちに絶対に活きてきますから。

――はい。

まらしぃ というのも、たとえば野球の曲を作りたい……って思っても、実際に野球をプレイしているときに込み上げてくる気持ちを知らないと、真に迫った作品は作れないじゃないですか。

――確かに!!

まらしぃ 勉強もそうですよね。「なんでこんなに勉強しなきゃいけないの!?」って怒っている子もいるかもしれませんけど、そういう“込み上げてきた感情”って、楽曲を作るときの武器になります。そういった気持ちの籠った曲を作れると、同じように思っていたリスナーが「そうだそうだ!」って共感してくれるようになるんです。いろいろなことにチャレンジして湧き上がってきた気持ちこそ、ボカロPになったときに自分自身を助けてくれると思いますよ。

――すべての経験は、無駄にならないってことですね。

まらしぃ ならないです! 僕なんて、一時期ピアノを辞めていたことすら、ものすごく人生の糧になっていますから。

――ありがとうございます! では最後に、『プロセカ』にメッセージをお願いいたします。

堀江晶太 たくさんのストーリーを読んでいくうちに、僕も『プロセカ』にすごく愛着が湧いているんです。なので、何度も言いますけど、みんなに幸せになってほしいです。それに尽きると思います。

――はい。

堀江晶太 そして、『プロセカ』を通じて夢を持ったり、「自分もがんばろう!」って思う若い人がいっぱいいることは知っています。そんな、今日をがんばる1歩目にこのコンテンツが活用されているなら、関わらせてもらった人間のひとりとして、こんなにうれしいことはありません。

――わかりました……! では、まらしぃさん。

まらしぃ はい。リズムゲームとしてはもちろん、キャラにも、ストーリーにも、本当に楽しませてもらっています。そして僕と同じような熱量を持つ人がたくさん集まっているからこそ、いまの『プロセカ』の隆盛があるんだと思うんですね。いま、ボカロ界隈は非常に盛り上がっていますけど、その一翼を担っているのは間違いなく『プロセカ』です。このコンテンツをきっかけに僕らのことを知ってくれたらもちろんうれしいですし、さらにボカロ楽曲にのめり込む入り口になってくれたら……とも思います。若い子たちに夢を与え続け、どんどん大きなセカイが広がっていってくれたら、参画しているひとりとして、たいへんうれしく思います。

――ありがとうございます!! 本日は長時間、本当にありがとうございましたー!!

 

まらしぃ

 

1990年名古屋市生まれ在住、ピアニスト、作曲家。

2008年から名古屋自宅よりピアノ演奏動画、ライブストリーミングを発信。

アニメ、ゲーム、ボーカロイド、J-pop…日本カルチャーを代表する楽曲を自分のスタイルに置き換えピアノ演奏動画を投稿。

2021年3月ピアニスト単独での日本武道館公演を開催している。

ピアニストの活動と並行し「アマツキツネ」「青く駆けろ!」等多くのボカロ楽曲を発表、

「SNOW MIKU 2023」テーマソング(SnowMix♪)を担当、

2023年3月投稿「新人類」はボカコレ2023春総合ランキング1位を獲得している。

現在YouTube8億回再生、チャンネル登録数196万人ピアノ1台で多くの人の心を虜にするピアニスト。

堀江晶太(kemu)

 

作詞作編曲家、演奏家。

ボーカロイドクリエイター「kemu」として2011年から楽曲制作活動を行う。

また、5人組バンド「PENGUIN RESEARCH」のベーシスト、プロデューサーとして2016年のメジャーデビューから活動中。

アニメシーン、インターネットシーンを中心に作詞作編曲家、演奏家、プロデューサーとして多くのアーティスト、作品に携わる。

 

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タイトル概要

プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク

■対応OS:iOS/Android

■App Store URL:https://itunes.apple.com/app/id1489932710

■Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.pjsekai

■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)

■価格:基本無料(アイテム課金あり)

■ジャンル:リズム&アドベンチャー

■メーカー:セガ/ Colorful Palette

■公式Twitter:https://twitter.com/pj_sekai