【プロセカ】ボカロPに直撃! “jon-YAKITORY”さんが語る“ビビバス”と、オリジナル楽曲『街』について!【ボカロPインタビュー企画 #41】

jon-YAKITORYさんの曲作りに迫る!

 2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。

 リリース当初からこのコンテンツを追いかけてきたコロコロオンラインプロセカ班は、2023年10月に『プロセカ』3周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けてきた。 

『プロセカ』3周年記念特集は下記の画像をクリック!!
 

 そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!

 “子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!

 『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!

 そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!

 さて今回ご登場いただくのは、“Vivid BAD SQUAD”(ビビバス)にオリジナル楽曲『街』を提供された“jon-YAKITORY”さんだ。

 『街』が書き下ろされたイベントストーリー“The Vivid Old Tale”は、幼いころの白石杏と伝説的シンガー“凪”が織り成す切なくも感動的な物語。「1日練習を見てあげる」と杏と約束をした父、謙。しかし街の人たちは謙たちを頼り、結果的にこれを反故にしてしまう。ショックを受けた杏は建設中の工事現場に隠れるも、凪がその姿を見つけて……!

 “街”がテーマのストーリーに書き下ろされたこの楽曲の背景には、どんな想いがあるのだろうか? じっくりとお聞きしたぞ!

※インタビューは感染対策を徹底して行っております。

解釈の余地を残した楽曲

――jon-YAKITORYさんはコロコロ初登場! ということで、まずは自己紹介をお願いできれば!

jon-YAKITORY わかりました。 2013年からボカロPとして投稿を始めたので、活動歴は10年を越えました。いろいろなジャンルの曲を、わりと自由に作らせてもらっております。

――jon-YAKITORYさんは、Adoさんとのコラボ楽曲である『シカバネーゼ / jon-YAKITORY feat. Ado』など、他のアーティストの方に楽曲提供を行うなど、幅広く活躍されていますよね。

jon-YAKITORY はい、ありがとうございます。 でも、活動開始から8年くらいは伸び悩んでいたので、芽が出ていない時代のほうが圧倒的に長いんです。

――そんなjon-YAKITORYさんなので、後半にお聞きする“ボカロPとしての歩み”に関するお答えも楽しみにしております!

jon-YAKITORY どうぞよろしくお願いいたします。

――まずは『プロセカ』に提供されたオリジナル楽曲についてお聞きしますが、この依頼が来たときの率直な心境からお聞かせください。

jon-YAKITORY 『プロセカ』に楽曲が収録されたり、書き下ろしを提供されている人たちって、やっぱり錚々たる顔ぶれじゃないですか。なので、まさか僕に書き下ろしのお話が来るとは思わず、かなりビックリしました。

――ボカロ業界を代表するクリエイターが揃っていますよね。

jon-YAKITORY はい。しかも僕は、さっきも言った通り8年くらい伸び悩んでいたので、驚きのほうが大きかったですね。

――そんなjon-YAKITORYさんが書き下ろし楽曲『街』を提供したユニットはビビバスになります。彼らを見たとき、どんな印象を持たれましたか?

jon-YAKITORY 誰もが感じることだと思いますけど、まず最初に「かっこいい!」と思いました。それに合わせるように、ビビバスの曲はダンサブルなものが多いイメージだったので、僕へのリクエストもそういった曲調になると思っていたんです。でも蓋を開けてみたら、思いのほか爽やかなギターロックを書くことになりまして。ですので最初は、「これでいいのかな……!?」と、ちょっとドキドキしたことを覚えています。もちろん、発注の中にあったリクエストに沿って作ったんですけど、他のビビバスの曲とは明らかに毛色が違うと思ったので、(どう受け止められるんだろう……?)と心配でもありました。

――確かにビビバスの曲は、彼らのイメージにあるストリート系とか、攻撃力の高そうなものが多いですもんね。リスナーのコメントを見ても、「まさかビビバスに、こんなに暖かい曲が入るなんて!」という論調が多かった気がします。

jon-YAKITORY まさにその通りで、『街』を発表した当時も、期待と不安がないまぜになっていました。とくに、ビビバスをずっと推しているファンの人たちはどういう反応をするんだろう……って。

※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。

――そのへんのこと、後ほど詳しくお聞かせください! さてこのイベントストーリーのキーキャラクターは白石杏ちゃんなわけですが、彼女にはどんな印象を?

jon-YAKITORY こう言ってしまうと軽く聞こえちゃうかもしれないんですけど、このストーリーを経たことによって、より“エモさ”が際立ったように感じます。物語から透けて見えた彼女の性格もそうですけど、歌の部分でも魅力が鮮明になりました。歌がうまい杏ちゃんだからこそ、あまり複雑なメロディーにしなくてもシンプルかつエモく、メロディアスに歌ってくれます。そういう意味では、“楽曲をより良くしてくれる子”という印象を受けました。

――ほーーー。

jon-YAKITORY メロディーってシンプルであればあるほど、シンガーの実力が問われるようになるんですよね。複雑な曲って、こう言ってしまうと身も蓋もないんですが、ごまかしが効く部分がけっこうあって。表現力の問題じゃなく、たとえばラップみたいな感じにしてとにかくリズムに乗れればうまく聞こえたりするんです。しかしシンプルなメロディーだとそうはいきません。絶対的な“歌唱力”というものと、切っても切り離せなくなります。その点において杏ちゃんは、本当に秀でています。「この人だったら安心して任せられるな!」と思いながら作っていました。

――すごくよくわかります。カラオケに行って、賑やかでノリのいい歌を歌うと「俺、意外とうまいな!」なんて思ったりしますけど、バラードにした瞬間、「あれ……?」って現実に戻されるという……!

jon-YAKITORY そうそう! まさにそれです!(笑) 速いロックやパンクも、パッションでなんとかなったりするんです。でも、バラードは本当に歌唱力、表現力勝負なので、歌い手の実力が如実に現れるんです。

――長年感じていたことの答えを、いま聞けた気がします……!

jon-YAKITORY よかったです(笑)。

▲イベント『The Vivid Old Tale』の書き下ろし楽曲としてリリースされた。

――さて、このイベントストーリーは凪さんも重要なキャラになっていますが、彼女にはどんな印象を持たれましたか?

jon-YAKITORY もちろん、曲を書く上でストーリーや設定も読み込ませてもらったんですけど、なんというか……。ゴリゴリに寄り添いすぎないスタンスで曲作りをしようと思っていたんです。

――これは興味深い。

jon-YAKITORY ですので凪さんに関しても、ある程度のところで気持ちを止めて、思い入れを入れすぎないようにしたんですね。そうやって作ったほうが、リスナーたちのあいだでいろいろな解釈が生まれて、楽曲が成長すると思ったので。もちろん、曲を作るうえで杏ちゃんや凪さんたちの心情はイメージしましたけど、決してやり過ぎないように注意したと言うか……。足らないところは、自分の経験をもとに付け足していく感じで。よって答えとしては、凪さんに対しても感情移入しすぎないように、注意深く見ていました。

――基本的に、そういうスタンスで曲作りをされることが多いんですか?

jon-YAKITORY そうですね。あまりにも世界観に近づき過ぎちゃうと、答えがそれしかなくなっちゃう気がして……。でも僕は楽曲を作るときの信条として、“この曲を自分事にしてもらいたい”というものがあるんですね。ストーリーも考慮するし、僕自身の経験も乗せた曲にはしますけど、リスナーさんの視点から聴いても違和感がなく、それぞれの解釈が生まれる曲にしたいと思って制作しています。

――想像の余地をきちんと残したい……と。

jon-YAKITORY そうです。ストーリーと完全に合致した曲ももちろん必要なんですけど、僕はやっぱり、多角的に聴くことができる曲を作るのが楽しいな……って思います。

――そこでお聞きしたいのが『街』のテーマなんですが。

jon-YAKITORY 依頼をいただいたときのリクエストに、「街をテーマにした曲をお願いしたい」というものがあったんですね。“街”“世代”がテーマのキーストーリーということだったので、当然これを頭に入れて、どういった曲がいいのかを考え始めました。

――はい。

jon-YAKITORY そこで出てきたのが、“キャラクターに寄り添い過ぎず、ちょっと引いた視点から見た曲にしたい”という想いです。ですので特定の誰かの視点というよりかは、“街全体の視点の曲”と考えて作っていった……という感じになります。

――!! 街全体の視点……!

jon-YAKITORY 昔見たアニメで、病院の庭に大きな木が植えられていて、その大木が見つめる視点で物語が展開する……ってのがあったんです。……いや、だいぶ記憶もあやふやなんですけどね(苦笑)。でも、そういった街の“人”ではなく、もっと大きな何かが街でくり広げられる人間模様を見ていて、そこから物語を紡いでいく……って感じの曲にしたいと思ったんです。

――それはおもしろいなーーー。

jon-YAKITORY でも、そんなテーマで曲を作ったことがなかったので、「とりあえず、街に出てみるかな!」と思って電車に飛び乗ったんですよ。

――ほう!!

jon-YAKITORY 平日の午後3時くらいだったので、車内はガラガラ。晩秋のころで、外を見ると太陽が沈みかけのタイミングでした。その夕日に照らされた街に、家がたくさんあるわけです。そしてその中に、それぞれの人生の営みがある――。そんなことに想いを馳せているうちにカバンからペンとメモ帳を取り出して、頭に浮かんだことをバーッと書き出していました。1番のAメロあたりの歌詞が、それにあたります。

――確かに!! 冒頭の「ガラガラの電車に乗る度 思い出すことがあった 窓の外から見えてるのは それぞれの物語」の部分!

jon-YAKITORY そうですそうです! 引いた視点の歌詞、ですよね。これにより、何か特別な感情とか、エモさみたいなものが生まれるんじゃないかと思いました。

――いわゆる“神視点”というポジションですかね。

jon-YAKITORY あ、そうですね!

――でも、jon-YAKITORYさんの狙い通りというか、『街』はいろいろな考察を生んでいるじゃないですか。

jon-YAKITORY そうなんですよ。すごくありがたいですね。

――その中で多くの支持を集めているのが、「『街』は杏ちゃんの視点ではなく、じつは凪さんの視点で書かれているのでは?」という考察。「なるほど!」と思うと同時に、「でもやっぱり、杏ちゃんの心情かも?」と考えたり。まさに多角的に捉えられる曲だなーと。

jon-YAKITORY ありがとうございます。 そういう、さまざまな解釈の余地がある作品が僕は好きなので、そういっていただけると本当にうれしいです。じつは楽曲を多角的に捉えてもらえるよう、歌詞も可能な限りシンプルになるよう心掛けているんです。「誰かが笑ったような気がした」、「泣いたような気がした」とか、ありふれている歌詞なんですけど、そういう表現をチョイスすることで解釈の余地が生まれると考えます。……とはいえ、何度も言うように杏ちゃんの歌唱力がないと説得力がなくなるので、かなり甘えているとも言えますね(笑)。

――そう、『街』の歌詞はシンプルゆえに非常に伝わってくるんです。jon-YAKITORYさんご自身で、とくにお気に入りなのはどのあたりですか?

jon-YAKITORY やっぱりサビでしょうか。「笑って走っていく日も 泣きながら帰る日も この街はいつもここに 刻み込んでいく」の部分。先ほど言ったようにありふれた表現かもしれませんけど、だからこそいつまでも聴き続けられると思うんです。そして、こういう歌詞が書ける機会を与えてもらったことを、本当にありがたく感じます。

――『街』の歌詞って音楽なしで追っていくと、まるで私小説を読んでいるかのような気持ちになるんです。街を歩いて、電車に乗って車窓から外を眺めて……って感じで。

jon-YAKITORY 確かに。ガラガラの電車に乗ってちょっとした旅に……って、僕自身が経験したことをなぞっているので、余計にそう感じてもらえているのかもしれません。……あ、それで言うと、「窓の外から見えてるのは それぞれの物語」という歌詞も好きですね。

――わかる!! そこ、僕もメモってあります(笑)。

jon-YAKITORY ありがとうございます(笑)。ここはうまいこと書けたなぁ……と、自画自賛ながら思います。あと、Bメロの「仲間の呼ぶ声がする 合わさって初めて動き出す」のところ。“街”とともに“仲間”もキーワードのひとつとして大事にしたいと思っていたので、この箇所はそれがうまいことマッチしてくれたなと感じます。

※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。

――僕は個人的に、「繋ぐ手が増えるその度に 強くなれる気がしたんだ」のところが、ビビバスっぽくて好きです。

jon-YAKITORY ありがとうございます。 あ、それともうひとつ。

――はい。

jon-YAKITORY サビにある「遥か昔の記憶に針が落ちていく 街と共に」のところなんですけど、この“針”ってレコードのことなんですね。“レコード=再生”の意味を込めていて、「誰かが笑ったような気がした」とかも目の前の事象ではなく、遠い記憶の中の出来事に掛けてあるんです。小さいころの記憶としてそういうものがあって、大人になったときにふと、「あ。そういえばここで昔、泣いていたことがあったな……」って思い出す……みたいな。ちょっとフワッとしているんですけど、伏線を張っているような表現として気に入っています。

――まさにおっしゃる通り、そういったフワッとした感じをリスナーたちが受け取って、凪さん視点でも聴けるし、杏ちゃん視点でも聴ける……という、この楽曲ならではの楽しみを生んでいるんでしょうね。

jon-YAKITORY そう言っていただけると、本当にありがたいです。

――もうひとつ、曲の最後にある「街と共に」が、非常に印象的なんです。これが『街』という曲のポイントなのかも、と。

jon-YAKITORY そうですね。 あくまでも街がテーマの曲なんだよ……ということを、ここで一度印象付けています。

――では、『街』の聴きどころというとどのへんに?

jon-YAKITORY サウンド的なことでいうと、2番のAメロでしょうか。「カラカラに渇く喉の奥」の箇所が、かなりパーカッシブになっています。歌詞も“渇く”と書いているのでサウンドもカラリとしたものにしたんですけど、曲全体を見たときにいいアクセントになっているので、自分でも気に入っています。あとは、その後に続くギターソロですね。

――かっこいいですよね!

jon-YAKITORY いつもお願いしている“シンナイコウジ”さんというギタリストに演奏してもらったのですが、ご本人も「jon-YAKITORYの曲の中で、『街』の演奏がいちばんうまくいった」っておっしゃっていました。

――そんなこだわりの楽曲となると、制作日数がかなりのものになったんじゃないかと想像するのですが、いかがでしたか?

jon-YAKITORY 振り返ってみると、いつも通りに進行できたな……と思います。だいたい、2、3週間くらいで楽曲自体は完成していたかなと。

――早いですね!!

jon-YAKITORY あまり時間をかけ過ぎちゃうとダメなタイプなんです。自分の中で旬が過ぎちゃうと、ドツボにハマってしまうというか……。最初の勢いのまま、完成まで持って行きたいんですよね。

――鉄は熱いうちに打て……ってやつですね。では、それほど難産だったという感じは……。

jon-YAKITORY なかったです。 自分がこれまでに作ってきた楽曲とはテイストが違ったんですけど、それが逆に刺激になって、楽しみながら作れたと思います。

――では、そんな『街』がゲームに実装されたのを見て、いかがでしたか?

jon-YAKITORY いやあ、不思議な感覚でした。だって、自分の手元から飛び立って、いろいろな人が遊んでくれているわけですから。『プロセカ』で見たときに、確かに自分で作った曲ではあるんですけど、そうじゃないような感慨も覚えて……。これはもう、“不思議な感覚”としか言いようがないですね。「これ、誰が作った曲なんだっけ……?」みたいな(笑)。

――『街』はゲーム内だけじゃなく、セカライでも披露されましたよね。

jon-YAKITORY そうなんです。 映像で見させてもらいましたけど、それもふつうに「いいなー!!」って(笑)。ひとりのお客さん視点で堪能させてもらいました。

▲“プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE 2nd – Will -”にて『街』を披露するビビバスのメンバーたち。圧巻のパフォーマンスに会場中が魅了された。

――ゲームに実装後、いろいろな反響があったと思いますけど、印象に残っていることはありますか?

jon-YAKITORY 前半でも言いましたけど、それまでのビビバスの楽曲と曲調が違うじゃないですか。それでも多くの方が受け入れてくれたのを知って、単純にうれしかったです。加えて「『街』を聴いて泣いた」というコメントがたくさんあって……。“うれしい”と思う以上に、“安心した”がいちばん大きかったかもしれません。ビビバス好きの人たちにも、きちんと感動を呼び起こすことができたんだ……と、ある意味ホッとしましたね。

――そう、「感動した」という声が非常に多いと思いました。

jon-YAKITORY そうなんですよね。でも感動って、狙って作りにいくとそこまで響くものにならないと思うんです。もっとナチュラルに、引いたところで作ったほうが、リスナーそれぞれの感情を揺さぶれるのかな、って。それゆえに、くり返しになりますけどひとりのキャラにだけ縛られるのではなく、歌詞もメロディーもシンプルにして、いろいろな解釈ができるように作っていったんですよね。「さあここで感動しましょう!」なんていう押しつけがましい曲になると、みんな「えー……」ってなっちゃいますから。でも、そういういろんな角度から見られる曲って、J-POPのバラードでも多いですよね。事象に寄り添いすぎず、あいまいな表現の歌詞が続くことで、聴いた人それぞれに感動を呼び起こす……という。

――感動の押し売りって、逆に引いちゃいますもんね。

jon-YAKITORY でも、この『街』が多くの人に受け入れてもらえたのも、『プロセカ』というずっと長く続いているストーリーと、魅力的なキャラクターがいてくれるからなんですよね。僕はそこに、ちょっとした調味料を加えただけだと思っています。

――その調味料がいい感じの化学反応を起こして、たくさんの人に届いたということですね。

jon-YAKITORY ありがたいです、本当に。

――では、『街』が大好きなファンに向けて、ぜひひと言お願いいたします。

jon-YAKITORY ……僕があまり言いすぎてしまうと、逆にシラケてしまうんじゃないかと思います。いまの話の通りに(笑)。

――ああ、なるほどー!(笑)

jon-YAKITORY ですので、「ギターソロを聴いてください!」という程度に止めておきます。あとは、カラオケで見かけたらぜひ歌ってみてください。ゆったりとした曲ですけど逆に難しいと思うので、挑戦してもらえたら幸いです。

――ありがとうございます!! ……ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは……jon-YAKITORYさんが、ボカロPになられたきっかけを教えてください!

jon-YAKITORY きっかけは、“ジミーサムP”さんというボカロPです。『Calc. 』とか『from Y to Y』とかを作られた方ですね。僕はずっとリスナーとしてその方の楽曲を聴いていたんですけど、あるときジミーサムPさんがブログで、使っている機材やソフトを公開してくれたんです。それを見たら……DTMのソフトやボカロのソフト以外、ほぼ無料のもので制作をされていたんですよ。

――ほーーー!

jon-YAKITORY で、「これなら自分にもできるんじゃ!?」と思い、ブログで紹介されていた無料のソフトをひと通り落として制作を始めてみた……というのが始まりだと思います。

――jon-YAKITORYさんは、音楽の経験はあったのですか?

jon-YAKITORY 当時、僕は高専の学生で軽音部に入っていました。並行してバンド活動もしていたんですけど、途中から(音楽を作るほうがおもしろいのでは……?)と思い始めたところ、ジミーサムPさんのブログに出会ったんです。

――ボカロのソフトには、すぐに慣れたんですか? 素人目に、難しそうに思えるのですが。

jon-YAKITORY すでにDTMは経験していたので、その流れで入れました。

――では、ボカロPになるために必要なスキルとして、何か思いつくものはありますか?

jon-YAKITORY これは、“好奇心”と“ユーモア”じゃないですかね。

――おお……!

jon-YAKITORY それ以外、何もいらないとすら思います。

――楽器の経験はどうですか?

jon-YAKITORY それについても、PCのマウスだけで名曲を作られている方がたくさんいるので、“絶対”というものではないですね。できるに越したことはないですけど、興味があればやってみてもいいのでは……という程度だと思います。僕がそうだったんですけど、ボカロPに興味が出てきて「やってみたいな」と感じたら、本気の子は何も言わなくても勝手に始めると思います。

――うんうん。

jon-YAKITORY もちろん、ボカロのソフトを買うというハードルはありますけど、そこさえクリアできれば、あとはどうにでもなります。 いまはスマホでも、楽曲は作れますしね。僕の時代なんて、まわりにボカロを使っている人はいなかったですし、ネットの情報もいまほど充実していなかったので、それと比べたらすごく入りやすくなっていると思いますよ。

――jon-YAKITORYさんは、どうやって壁を乗り越えたんですか?

jon-YAKITORY 僕、音楽機材が好きで、サンプラー(※録音したサウンドを自由に加工し、音源として使用できる機材)だけは持っていたんです。すごくアナログで、番号ごとに音を入れていく……という仕様だったんですけど、1番にAメロのギターを録音して、2番にBメロのギター、3番にサビ、さらにドラムを……って、完全にカセットテープと同じ使い方で音楽を作って録音していました(笑)。でも、こんな面倒なことをせずに、DTMを勉強してからやればよかったんですけど、「早く自分の曲を作りたい!」という気持ちが勝って、ありあわせの機材で始めちゃったんですよね(笑)。

――まさに好奇心ですね。

jon-YAKITORY そうなんです。でも当然、不具合が出てくるわけです。そこで、「これ、絶対に作りかたを間違えているな……」と思って、さらにいろいろな機材を中古屋さんとかで見つけて、そろえていったんです。そして部屋がバカでかいキーボードとかで埋まっていったころになって、「……どうやらパソコンがあれば曲を作れるらしいぞ」と知るに至ります。

一同 (爆笑)

――そこでようやく!!(笑)

jon-YAKITORY 試行錯誤の連続で、ようやくそこにたどり着いたんですが、決して無駄ではなかったと思います。そういう経験を経ていま思うのは、“ボカロPになるために必要なのは、好奇心とユーモアだ”ということですね。

――すごく説得力があります。そういった泥臭いことをされたうえで、いまがあるわけですね。

jon-YAKITORY まさに!! いまでも曲作りって、泥臭い作業の積み重ねですし。 “ユーモア”というところで言うと、あまりにもマジメに考えて「曲作りはこうじゃないとダメだ!」なんて思ってしまうとクリエイティブが凝り固まってしまうので、肩の力を抜いて捉えたほうがいいと感じます。

――型にはまらず、自由に考えていいんですね。

jon-YAKITORY もう、おっしゃる通りです。

――では、ボカロPになってよかったと思うこと、なにかありますか?

jon-YAKITORY 友だち……同じ目線を持つ仲間ができたこと、でしょうか。

――それは大きいですねーーー!

jon-YAKITORY あと、ボカロという文化に絡んでいるという実感を、すごく貴重なものだと思っているんです。

――はい。

jon-YAKITORY たとえば、90年代のロックについて語りなさい……と言われたとしても、知識としてはあるんですが、なんとなくでしかしゃべれないんです。その時代を生きていないので。でも、そのときに現役として見ていた人は本当に楽しそうに事象について語れるし、聞いているこちらもおもしろいわけです。それと同じように、いま僕はありがたいことにボカロシーンの只中に身を置かせてもらっているので、この界隈で何があり、どう動いているのか……ということを、自分の視点でしっかりと話すことができるんです。それが、ボカロPになってもっともよかったことだと思います。

――本で読んだ知識ではなく、実体験を語れるんですもんね。

jon-YAKITORY そうです。「ここで初音ミクが生まれ、リンレンが出てきて曲の幅が広がり、ルカの登場で英語までカバーできるようになって急に歌詞に英語を入れる人が増えた」なんてことを、きちんと気持ちを込めて発信することができます。これはやはり、現場で活動している人間の特権みたいなものですよね。

――わかりました! では、そんなボカロPを目指している全国の少年少女に向けてエールをお願いいたします。

jon-YAKITORY ボカロPを職業として捉えている人も多いと思いますけど、免許が必要なわけじゃないので、やりたいと思ったときにやってみましょう! もしそう思っても手が出ないのなら、きっとその子はいま、ボカロ以外のことにも興味が向いていると思うんです。ですので、“いま自分は何をしたいのか”を見極めて、本気で「やりたい!」と思ったことに手を出してみるのがいちばんだと考えます。音楽をやりたいと思ったなら、まずは無料の作曲アプリを試してみるのもいいですしね。もしもそれでピンとこなければ、きっとそれ以外に向いていることがあるはずです。なので、あまり難しく考えず、好奇心の赴くままに動くのがいちばんかなと。

――ありがとうございます! では最後に、『プロセカ』にもひと言いただけますでしょうか。

jon-YAKITORY うーん、とても恐れ多いですね(笑)。……でもひと言でまとめるならやっぱり、「ありがとうございます」でしょうか。『街』を作らせてもらい、それを聴いた多くの人が感動してくれて……。そういう機会を与えてもらえたことを、いま改めて「ありがたい!」と思っています。それがいちばんですね。

――わかりました! 本日はお忙しい中、本当にありがとうございました!

 

jon-YAKITORY

 

ブラックミュージックのビート感とボカロミュージックの融合に挑戦するボカロP。

2020年3⽉に投稿しバイラルヒットしたシカバネーゼ(feat. Ado)はYouTubeでの再⽣回数が1,590万再⽣を越える。

2021年には⽊村拓哉主演⼤⼈気ゲームシリーズ『LOST JUDGEMENT:裁かれざる記憶』の主題歌に書き下ろした蝸旋 (feat. Ado) も700万再⽣を越え⼤きな話題を呼んだ。

2023年には新しい学校のリーダーズに楽曲提供した「じゃないんだよ」が映画「ベイビーわるきゅーれ2ベイビー」の主題歌に、「マ⼈間」がテレビ朝⽇⾦曜ナイトドラマ7⽉期 「警部補ダイマジン」オープニングテーマ曲に起⽤されるなど多⽅⾯で活躍中。

現在混沌ブギが各SNSでバズり中で、ボカロ曲としては異例のYouTube⼈気のミュージックビデオランキングでTOP10⼊りし再⽣数も1,950万に到達!

 

『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』の関連記事こちらをチェック!!

タイトル概要

プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク

■対応OS:iOS/Android

■App Store URL:https://itunes.apple.com/app/id1489932710

■Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.pjsekai

■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)

■価格:基本無料(アイテム課金あり)

■ジャンル:リズム&アドベンチャー

■メーカー:セガ/ Colorful Palette

■公式Twitter:https://twitter.com/pj_sekai