『ゾイドワイルド』企画開発者特別インタビュー第1回 今だから語れる『ゾイドワイルド』の1年目!

—-12年ぶりのシリーズ再開で、開発面で意識したこと、テーマはありますか?
 
平位:
そうですね。『ゾイドワイルド』という形で出るまでの経緯としては、2005年から2006年に展開していたアニメの『ゾイドジェネシス』が一旦終了した後は、再販など小規模の展開を展開しつつ、その裏で研究開発が続いていました。
 
その一つの成果として『ゾイドの究極を求めた』形で2016年に「マスターピースZOIDS シールドライガー」と「マスターピースZOIDS セイバータイガー」が発売されました。

▲「マスターピースZOIDS
シールドライガー」
▲「マスターピースZOIDS
セイバータイガー」

平位:
そこの“より生物的な動き”を追求したという側面があり、そのノウハウもゾイドワイルドに生かされています。
 
ある程度ホビーの価格を抑えつつ、“より生物的なアプローチ”を求めていったのが『ゾイドワイルド』キットの骨格(ボーン)システムなんです。
 
骨格を組み立てて、アーマーをつけて完成というのが今回のシリーズの特徴となっています。その2段階の楽しさがあったり、より生物らしいフォルムがベースになってゾイドになるという楽しみ方があります。
 
もう一つは“本能解放(ワイルドブラスト)”ギミックですね。
 
より攻撃的な形態に変化するギミックなんです。「組み立てて動き出す」というのがゾイドの基本的な感動なんですけど、そこにプラスアルファとして“本能解放(ワイルドブラスト)”が加わったんです。
 
デザイン面も気をつけていました。
 
片山:
そうですね。同じ流れで「組み立てやすさ」を考えるのが難しかったですね。
 
—-ワイルド以前のキットはランナーからニッパーで切り出して……、と慣れていないと綺麗に完成できなくて悔しい思いをしましたね。
 
平位:
バリ取り(ランナーから外したゲート跡をヤスリなどで平滑にすること)もあったりして、社内でも意見が分かれましたね。
 
2013年くらいに、社内で昔のゾイドを子ども達に組み立ててもらったりして、調査しましたね。その中で、最後まで完成にたどり着けない子も多かったんです。普段プラモを作っている子はニッパーの使い方も慣れているんですけど、あまり触れない子はゾイドの組み立てに苦労している印象でした。
 
何度か調査を重ねましたが、昔に比べてプラモを完成できる率が下がっている感じがしましたね。もちろん、「教えていって慣れてもらう」というのも考えたんですけど、今の小学生市場でヒットさせるには「仕様から変えていこう」となったんです。
 
なので、1年目は組み立てやすさと普通のプラモデルだと僕や片山が作ると大体1時間〜2時間くらいかかるんですけど、『ゾイドワイルド』のキットは20分くらいでできる。でも、子どもにとってはもうちょっとかかりますが、それくらいがちょうどいいストレスになるのではないかと考えました。
 
昔、海外の人に売り込むとき「just stress」、「愛着を持ってもらうためのちょうどいい負荷なんです」と説明しましたね(笑)
 
だから、工場でのパーツの切り離しも結構手間がかかっていますね。
 
片山:
いやぁ、苦労しましたね。
 
平位:
工場でパーツを全部切り離して、バリ取りしているので、開発と生産面の苦労がありましたね。
 
片山:
結構本当に人が手作業で行なっている工程もあるんですよ。
 
—-手作業ですか!?
 
片山:
バリ取りの部分なんですけど、自動で切る機械もあるんですけど、細かいところは人間が一人ずつ切って行なっていますね。
 
平位:
ここの部分がそうですね。

▲“ワイルドライガー”を参考にすると、前足のボーンパーツに切り残しを処理した跡が!

片山:
ランナーから切り離したパーツだと、ぽこっと出てしまうので、なるべく出ないように気をつけましたね。みなさんがケガをしないようにも気をつけないといけません。
 
—-確かに、バリ取りするだけでも見栄えが全然違いますからね。
 
平位:
そうなんです。そこで、「発掘、復元」というコンセプトがあります。
 
「ゾイドって本当にいるかもしれない」というのが最初のテーマにあり、ユーザーの方に没入感を持ってもらいたくて、発掘、復元という恐竜になぞらえた設定としています。
 
片山:
キットの説明書も「復元の書」があるんですけど。今までになかったのが、全ページカラーで図式化して、丁寧にしましたね。

▲『ゾイドワイルド』キットの取扱説明書である「復元の書」はカラーで見やすい!

—-これだけで組むスピードが全然変わってきますね。
 
平位:
ここは片山が苦労した部分ですね。コストのこともありまして……
 
片山:
もっと簡略化した方がいいんじゃないか、とか。
 
平位:
でも、最後の最後に「ユーザーに寄り添ったものにしよう」となりましたね。
 
片山:
これを知ったら、他の取説は見られないんじゃないかってくらいの自信はあります!
 
—-これは片山さんが一人で?
 
片山:
というわけではなく、チームのもう一人の担当を中心に見やすさとかをチーム全体で議論しながら作っていきましたね。
 
—-ワイルドシリーズ最大のギミック“本能解放(ワイルドブラスト)”はどのようにして生まれたのですか?
 
平位:
『ゾイドワイルド』を立ち上げる至っても、まずかっこいいゾイドとは何かをチームで追求して、一回本能解放のないゾイドも生まれています。
 
さらにそこから、小学生の方、ゾイドを知らない方に受け入れてもらうにはどうするかをコロコロさんと考えていきましたね。コロコロ編集部の方たちとのアイデア会議も行われ、その流れで「もう一つ、さらなるインパクトが必要だね」となりました。
 
確かに昔の第1期、第2期シリーズの時代の展開と違って、今はTCGとか子どもの遊びの選択肢がめちゃくちゃ多くなっています。
 
その強豪ひしめく中でゾイドという立体ホビーが輝くには、さらなる“輝き”が必要であると意見ももらったりして、自分たちの中で考えていって、生まれたのが“驚きを生む”本能解放(ワイルドブラスト)ギミックになっていきました。
 
片山:
そこから本能解放(ワイルドブラスト)を、モチーフごとに落とし込むのが難しいんです。
 
特にゾイドのシルエットを崩さないようにデザインするとか、非常に大変だったけど、多くの人に受けいれられているのでよかったな、と。
 
“ワイルドライガー”なら、ライオンがモチーフなので爪でひっかくなど、「動物が本来持っている武器を誇張する」とか「違う武器に置き換わったらどうだろう」という着眼点で作っていきましたね。
 
平位:
「生物モチーフに根ざしたアクション、ギミック」が『ゾイドワイルド』の最初に心がけたことですね。
 
メカ生命体ではあるんですけど、全く知らない人が見たとき生物だったり恐竜だったりのモチーフを感じられる方が「近づきやすい」とという部分が重要視されています。
 
—-モチーフを決める会議では、どんな風に決まっていくのですか?
 
平位:
ゾイドチームが10人弱くらいいるんです。そのゾイドチームも、昭和に展開していた“ゾイド第1期”の担当者、平成に展開していた“ゾイド第2期”の担当者、そして、僕たち『ゾイドワイルド』の”第3期”がいます。なので、60代から20代がいるチームで、「当時はこういうのが流行った」とか「こういうのが売れた」「こういうネーミングをした」とか今までのノウハウを詰め込んで、どういうのがいいだろうと決めていきますね。
 
モチーフでいうと売れている順番を意識していて、過去シリーズの売れていたモチーフを中心に選定していたりします。
 
そのメンバーで毎日ないし、毎週会議しています。
 

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