コロコロオンライン超特集!! 本村健太郎シニアプロデューサーに聞く 『NewみんなのGOLF』開発秘話!!

 

『みんなのGOLF VR』制作秘話

――さて「みんGOL」はその後、PlayStation®VR(PS VR)を使った『みんなのGOLF VR』も発売されました。じつは……これにめちゃくちゃハマりまして!
 
ありがとうございます!
 
――つねに事務所のテレビにつないであって、ウチのスタッフと勝負しているんです。
 
そういう遊び方、いいですよね!
 
――超おもしろいんですよ! 『みんなのGOLF VR』は発売前からSIEさんにお邪魔して遊ばせてもらっていましたけど、実際リビングで“みんな”で遊ぶと、楽しさが倍増するというか。
 

 
僕らも開発中に、同じようなことをしていました。我々のいるフロアーって、入り口を入ってすぐにソファーブースがあるんですけど、そこのテレビに『みんなのGOLF VR』をつないで、休憩時間に遊んでいたんです。すると、いろんな人が、「何してんの? やらせてやらせて!」って寄ってくるわけです(笑)。偉い人までも何度も何度もやってきて、「……やっていい?」って(笑)。
それを見て、「これはやはり、引きが強いな」と。プレイして楽しいのはもちろん重要ですが、“見て楽しい”というのも大事な要素なので。『みんなのGOLF VR』は、その部分が非常に優れていたと思います。
 
――『みんなのGOLF VR』の企画は、『New みんなのGOLF』を作っている最中からあったんですか?
 
いや、かっちりと固まった企画はなかったと思います。
 
――あ、そうなんですね!
 
ただ、『New みんなのGOLF』を作っていたときにPS VRはリリースされたので、開発現場のプログラマーたちは、「VR、すごいよね」、「興味あるよね」なんて話していたことは覚えています。その過程で、冗談ではありますけど、「『New みんなのGOLF』のアップデートでVRモードを入れたらどうだろう?」なんて話題も出たりはしていました。
 
――なるほどなるほど。
 
で、実際に『New みんなのGOLF』が発売されて、アップデートのスケジュールを組んでいったときに、「手が空きそうなタイミングで、何かおもしろいことをやりたいね」となって、「じゃあVRを考えてみましょうか」という話になったと記憶しています。
 
――そういえば『New みんなのGOLF』が発売されるずっと前にクラップハンズの村守さんや小林シリーズプロデューサーにインタビューさせてもらったことがあるんですけど、そのときに「VRで『みんGOL』を作ってください!」とリクエストした記憶が(笑)。
 
あ、そうですね! 僕も大塚さんがそうおっしゃっていたこと、覚えています!
 
――となると……『みんなのGOLF VR』は、俺のために作ってくれたのでは(ドヤ)。
 

 
そうかもしれないですね(ニヤリ)。
 
――いやでも、冗談抜きでよくできていると思います。
 
「VRで作ってみよう」と話をしてからのクラップハンズさんの動きは、めちゃくちゃ早かったですよ。確かひと月も経たないうちに、『New みんなのGOLF』をベースにしたVR版を持ってきてくれました。キチンとプレイできるものを。
 
――え! そりゃスゴいな!
 
ただ、それは本当に『New みんなのGOLF』を丸ごとVRモードにしたようなもので、カートもすべてVRで操作できたんです。だからもう……テストプレイしたら酔ってしまって(苦笑)。
 
――あ、3D酔いして(笑)。
 
でもこれ、貴重な経験でした。僕は3DのFPSとかもよく遊びますけど、そこまで酔った経験はなかったので、ここを出発点に要素を削っていって、“本当にVRで遊びたい部分”だけを抽出して作っていきました。
 
――それで、あれだけ遊びやすいVRのゲームになったんですね。
 
そうなんです。要素を絞りつつ、VRに適したの操作とか、クラブの振り方とかを研究して……。現在の操作系に落ち着くまでは、かなりの時間がかかりましたけど。
 
――リアルなゴルフに、すごく近いと思います。
 
あ、本当ですか! 先ほど言った通り、僕はゴルフはまったくやらない人間なんですけど、VRでやると弾道がすごく曲がっちゃうんですね。でも、ゲームの「みんGOL」は遊ばないけどリアルゴルフは好き……という人に遊んでもらうと……これがいいスコアが出るんですよ。
 
――あ、やっぱそうなんですか(笑)。『みんなのGOLF VR』をプロゴルファーがやったら、どうなるんだろう。
 
シリーズプロデューサーの小林さんが、リアルゴルフの前日に『みんなのGOLF VR』をやり込んだら、翌日の成績がめちゃくちゃよくなったそうです(笑)。「記録的なスコアが出た!!」って。
 
――すげえ(笑)。リアルゴルフのシミュレートができたのかなあ。
 
ですかねえ。ゴルファーの方のプレイ感覚とは違うと思うんですけど、結果で差が出るのはおもしろいですよね。
 
――リアルな部分もスゴいですけど、いままで遊んでいた「みんGOL」の世界に本当に入り込んでいる感覚があって、ちょっと感動したんです。目の前にかわいいキャディさんがいるし。
 
……じつはキャディさんに関しては、最後まで試行錯誤がありました。というのも、「みんGOL」ってリアルな等身のキャラクターを出してこなかったシリーズなんですが、世界に没入するVRのゲームでそれをやってしまうと急激に白ける恐れがあります。ですので、どこまでリアルにするのか、どこまで「みんGOL」っぽくするのかで、落としどころを見つけるのがたいへんでした。
 

 
――ちょうどいいバランスじゃないですかね。正直、ちょっとドキドキしますし。だって横に、キレイな女の子がいるんですもん(笑)。
 
そうなんですよね。『サマーレッスン』がPS VRで話題になったのを見て、そういう要素をもっと入れたいな……という思いもありました。実際、最初の企画段階では、キャディさんとのやり取りがもっと膨大にありましたし。でもやりすぎるとどんどん「みんGOLF」から離れていっちゃうので、ほどほどに止めました。
 
――あははは! そっちのバージョンも遊んでみたいなあ。クラップさんに行ったときに、お願いしようかな(笑)。
 
たぶん、作りたいと思っているかと(笑)。
 
――すごいですね、クラップハンズの技術力とスピードは。
 
その分、こだわりも強い方たちですけどねー。『New みんなのGOLF』がなかなか完成しなかったのも、こだわりによるところが大きかったですから。
 
――とくに『New みんなのGOLF』は、こだわりの集大成って感じだもんなぁ。
 
はい。ゴルフじゃない部分も、力を入れまくっていましたから。何度、「ここはほどほどで」と言ったことか。
 
――そんな中、いまから『New みんなのGOLF』を遊ぶ人にアピールしたいポイントは?
 
ゴルフゲームって基本的に、小難しいイメージがあると思うんです。風とかラインとかクラブの選択とか……。でも、そんなことないですよ。すごく遊びやすくて楽しいですよ……ということをお伝えしたいかなと。それもあって、RPGの要素を入れたり、下手でも遊んでいるうちに上達していく……という部分を濃くしました。そのうえで、ゴルフに疲れたらコースを走り回ってもいいし、カートで追いかけっこをしてもらってもいいし……。肩ひじ張らずに気軽に遊べるということを、これからもアピールしていきたいと思っています。
 
――うんうん。そもそも、わいわいきゃーきゃーと遊びたい人に向けられたシリーズですもんね。
 
まずはそこからですよね! 今回、ナンバリングにせず“New”と付けたのも、決意の表れみたいなものですし。ナンバリングにしてしまうと、「シリーズ作品をやってないとわからないのかな……?」と思われてしまうかもしれませんし、敷居の高さも出てしまうので、あえてナンバーは取っ払い、リスタートの意味も込めて『New みんなのGOLF』としました。
 
――納得のいく作品になりましたか?
 
作っている過程でどうしても、アレを入れたかった、ここはこうしたかったという反省点は出てきてしまうので、100点とは決して言えないのですが、合格点には達したかなと思います。ただ、アプローチの仕方はほかにもあったと思うので、それらは今後の作品に活かしていきたいなと。
 
――相当詰め込んだじゃないですか、『New みんなのGOLF』って。でも作り手からすると、もっと入れたい要素とか改良したいポイントも出てくると?
 
たくさんありますね。いまでも、ぜんぜん入れきれていないですし。それを全部入れようと思ったら……まだ発売されていないと思います。
 
――クリエイターって、貪欲だからなぁ……。そこをコントロールしなくちゃいけないプロデューサーって、たいへんですね。
 
放っておいたらいつまでも完成しない、サグラダファミリアみたいになっちゃいますから(苦笑)。それでも、オンラインでアップデートができるので、昔と比べたらかなり作りやすくなりましたけどね。初代のプレイステーションくらいまではパッチで修正なんてありえなかったので、完全に作り切らないといけませんでしたけど……。
 
――ハードが進化してくるとできることが増えるから、クリエイター魂が刺激されてなかなか完成しなくなるんですかね。
 
それは間違いないです! 『New みんなのGOLF』を作っているときもありましたから。「某タイトルが導入したコレ、いま作り手のあいだで流行っているから、ウチもやりましょう!」なんて。「いや、そういうことを言い始めると本当に完成しなくなるから、今回はやめましょうね!」と止めるのがたいへんで……。
 
――本当に、サグラダファミリアになっちゃう(笑)。
 

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