パイオニア新妄想紀行 vol.12 ~カードプールの隅っこを探せ!~

3. 神啓隆盛

 パイオニアというカードプールには、可能性に満ちているけれども注目を集めていないというようなカードがまだまだ存在する。
 
 環境の隅っこまでカードプールを見渡すことで、「え、そんなカード/能力が存在したの!?」というような、驚きの出会いを果たせることがあるのだ。
 

▲《欺瞞の信奉者》
▲《苦痛の予見者》

 《欺瞞の信奉者》《苦痛の予見者》も、そんなマニアックだけれどもワンチャンスありそうなカードたちのうちの一つだ。
 
 『神々の軍勢』で登場したメカニズムである神啓は、そのクリーチャーがアンタップしたときに発動するという若干使いづらい能力となっている。
 

▲《サルーリの世話人》
▲《壌土のドライアド》

 だがパイオニアには《サルーリの世話人》《壌土のドライアド》という、1マナで他のクリーチャーをタップできるクリーチャーが2種類存在している。さらに《バネ葉の太鼓》もあるので、「神啓」持ちのクリーチャーを早くも2ターン目から自在にタップさせにいくことが可能なのである。
 
 しかし、このギミックを使ってどんなデッキが組めるというのか。カードを引いたりサーチするだけなら、特にクリーチャーを使う必要はない。では反対に、クリーチャーを横に並べることに価値があるカードやギミックといえば、何があるだろうか。

▲《謎の石の儀式》

 そう、《謎の石の儀式》だ。
 
 《謎の石の儀式》で「神啓」持ちにマナ能力を持たせれば、さらに安定して「神啓」の発動を促すことができる。
 
 そしてクリーチャーがマナになるということは、アンタップしたらさらにたくさんマナが出るということでもある。
 
 では、クリーチャーをアンタップする手段といえば……?

▲《ジェスカイの隆盛》

 《ジェスカイの隆盛》で「神啓」持ちをアンタップさせまくったら楽しいのでは???🤔🤔🤔
 
 こうしてできあがったのがこちらの「神啓隆盛」だ!

『神啓隆盛』

枚数 カード名(メインボード)
4 《花盛りの湿地》
4 《植物の聖域》
4 《マナの合流点》
2 《枝重なる小道》
2 《岩山被りの小道》
4 《名誉ある教主》
4 《サルーリの世話人》
4 《壌土のドライアド》
4 《眷者の神童、キナン》
4 《苦痛の予見者》
3 《欺瞞の信奉者》
1 《迷い子、フブルスプ》
1 《願いのフェイ》
4 《バネ葉の太鼓》
1 《塵へのしがみつき》
4 《謎の石の儀式》
1 《垣間見た自由》
4 《ジェスカイの隆盛》
3 《召喚の調べ》
1 《バーラ・ゲドの復活》
1 《栄光の好機》
枚数 カード名(サイドボード)
1 《苦悩火》

 

 
結果としてvol.7で紹介した「キナンパラドックス」のアレンジになったが、《苦痛の予見者》《欺瞞の信奉者》と《サルーリの世話人》《壌土のドライアド》《バネ葉の太鼓》とのパッケージはマナコストが軽いコンボパーツを集めるのに重宝するので、将来そういったコンボが出てきた際には活躍の機会があるかもしれない。
 

4. 白緑デスタク

 唐突に他のフォーマットの話になってしまうが、モダンにおいて『ゼンディカーの夜明け』で最も強化を受けたのは「白単デスタク」だった。

▲《スカイクレイブの亡霊》
▲《エメリアのアルコン》

 つまり、《スカイクレイブの亡霊》《エメリアのアルコン》はモダンでも一線級であることが既に証明されている。
 
 そして、「他のフォーマットのデッキを再現しよう」とはvol.4で私自身が述べたところでもある。
 
 ならばパイオニアでデスタクが組めないか?という発想に行き着くのは至極当然だろう。
 
 だが、パイオニアには《霊気の薬瓶》もなければ《レオニンの裁き人》も《スレイベンの守護者、サリア》も《ちらつき鬼火》もない。さすがに《エメリアのアルコン》だけで相手の行動を縛ろうというのは虫が良すぎる。
 
 それでも、なんとかパイオニアのカードプールで相手のマナを縛る方法がないものだろうか……。
 
 そうして考え抜いた私は、一つのギミックに辿り着いたのだった。

▲《浸食する荒原》
▲《ラムナプの採掘者》

 《浸食する荒原》を《ラムナプの採掘者》でセットし続けたらランデスでハメ殺せるのでは???🤔🤔🤔
 
 こうしてできあがったのがこちらの「白緑デスタク」だ!
 

『白緑デスタク』

枚数 カード名(メインボード)
4 《森》
2 《平地》
4 《寺院の庭》
4 《マナの合流点》
4 《枝重なる小道》
4 《廃墟の地》
4 《浸食する荒原》
4 《ラノワールのエルフ》
4 《エルフの神秘家》
2 《無私の救助犬》
4 《エメリアのアルコン》
4 《スカイクレイブの亡霊》
4 《エイヴンの思考検閲者》
4 《イリーシア木立のドライアド》
4 《ラムナプの採掘者》
2 《クルフィックスの狩猟者》
2 《戦慄の存在》

 

「こんなんで勝てるわけねーだろ」感が全力で漂ってくるデッキリストだが、現在は黒単やオーラをはじめとしてアグロが元気であることがそう見える一因でもある。
 
 したがって、もしもこれからコントロールが台頭してきた際には、パイオニアのカードプールの隅っこにある《浸食する荒原》の存在を知っていることが、何かの助けになるかもしれない(ならないかもしれない)。
 

5. 見捨てられパラドックス

 『ゼンディカーの夜明け』の中には、まだまだ面白そうなカードがいくつも存在する。

▲《見捨てられた碑》

 《見捨てられた碑》もそんなカードの一つで、デッキ内の土地を無色マナを生成できるもので統一すれば実質マナが2倍になるため、新時代の《ミラーリの目覚め》と言っても過言ではない(?)カードである。

▲《名高い武器職人》
▲《主任技師》

 パイオニアには《名高い武器職人》《主任技師》という、アーティファクトの早出しに貢献するカードも2種存在している。
 
 これを活用して、《見捨てられた碑》を軸にしたアーティファクトデッキが組めないだろうか。
 
 だが、アーティファクトを並べるだけでゲームに勝利するのは何かしらのコンボを絡めないと難しい。そんなコンボ御用達アーティファクトが都合よく存在するはずも……。
 
 あった。

▲《パラドックス装置》
▲《ゴンティの霊気心臓》

 《パラドックス装置》とか《ゴンティの霊気心臓》でなんかガチャガチャしたら何となく勝てるのでは???(適当)
 
 こうしてできあがったのがこちらの「見捨てられパラドックス」だ!
 

『見捨てられパラドックス』

枚数 カード名(メインボード)
4 《霊気拠点》
4 《シヴの浅瀬》
4 《ヤヴィマヤの沿岸》
4 《イプヌの細流》
2 《手付かずの領土》
4 《ダークスティールの城塞》
1 《発明博覧会》
4 《主任技師》
4 《名高い武器職人》
4 《光り物集めの鶴》
4 《拡大鏡》
4 《真夜中の時計》
4 《面晶体の記録庫》
1 《霊気貯蔵器》
4 《見捨てられた碑》
4 《パラドックス装置》
4 《ゴンティの霊気心臓》

 

 
《パラドックス装置》でアンタップしつつ、その気になれば手札も供給できるというようなマナアーティファクトを厳選していった結果、正気とは思えないデッキリストになってしまったが、そもそもパイオニアで《パラドックス装置》を真面目に使おうとすること自体が正気の沙汰ではない可能性もあるので、ここは引き分けということにしておこう(?)
 

6. アブザンカウンター

 《歩行バリスタ》が禁止になったことであまり注目されなくなってしまったが、実はパイオニアのカードプールには《硬化した鱗》《巻きつき蛇》が存在しているのだ。
 

▲《硬化した鱗》
▲《巻きつき蛇》

 《歩行バリスタ》によるアンフェアな盤面処理が目玉のデッキだったとはいえ、この2種8枚が残っているなら爆発力はいまだ健在。それどころか、《議事会の導師》まで入れれば12鱗すら可能なのである。
 
 また、『ゼンディカーの夜明け』で地味に《群れのシャンブラー》という新戦力も獲得できている。

▲《議事会の導師》
▲《群れのシャンブラー》

 そこで、+1/+1カウンターを主軸にしたデッキが組めないだろうか?
 
 だが、ここで一つ問題があった。モダンのいわゆる「鱗親和」では《電結の荒廃者》を介して+1/+1カウンターの移動が可能なのが強みの一つだったが、パイオニアには《電結の荒廃者》が存在していないため、愚直に殴るしかないのである。
 
 何か、何かないのか。
 
 その私の思いが、幻覚奇跡を見せてくれた。

▲《オゾリス》
▲《カルテルの貴種》

 《オゾリス》を設置すれば《カルテルの貴種》も実質《電結の荒廃者》になるのでは???🤔🤔🤔
 
 こうしてできあがったのがこちらの「アブザンカウンター」だ!
 

『アブザンカウンター』

枚数 カード名(メインボード)
2 《寺院の庭》
3 《マナの合流点》
4 《花盛りの湿地》
4 《秘密の中庭》
3 《枝重なる小道》
2 《ラノワールの荒原》
2 《コイロスの洞窟》
2 《石とぐろの海蛇》
4 《搭載歩行機械》
4 《実験体》
4 《鱗の召使い》
4 《群れのシャンブラー》
4 《霧裂きのハイドラ》
3 《カルテルの貴種》
4 《巻きつき蛇》
4 《議事会の導師》
4 《硬化した鱗》
3 《オゾリス》
枚数 カード名(サイドボード)
1 《夢の巣のルールス》(相棒)

 

 
《カルテルの貴種》と《オゾリス》が単品だとやばいし重なるともっとやばいので4枚ずつ積めていないあたりにコンセプトの限界が見え隠れしている気がしないでもないが、アブザンというカラーリングのマナベースは強いし+1/+1カウンターが乗るクリーチャーの布陣もかなり揃っている感はあるので、「《歩行バリスタ》Ⅱ世」みたいなカードがあれば将来的にはワンチャンあるかもしれない。


 新しいアーキタイプとは新カードのみによって生まれるものではなく、新カードが今までカードプールに存在していたカードと新たなシナジーを形成することで生まれることが多い。
 
 したがって、カードプールの隅っこにあるカードについて「将来的にこういうカードが登場したらいいな」という想像をあらかじめ巡らせておくことで、いざ新アーキタイプの核となりうる新カードが登場した際に、いち早く対応できるのだ。
 
 ではまた次回!
 

ライター:まつがん フリーライター。クソデッキビルダー。 論理的な発想でカード同士にシナジーを見出すのだが、途中で飛躍して明後日の方向に行くことを得意とする。 オリジナルデッキでメタゲームに風穴を開けるべく日夜チャレンジを続けている(が、上記のような理由で大体失敗する)。

 

パイオニア新妄想紀行 バックナンバー
パイオニア新妄想紀行 vol.1 ~パイオニアとは?~
パイオニア新妄想紀行 vol.2 ~環境の「ゼロ」を求めて~
【MtG】パイオニア新妄想紀行 vol.3 ~『テーロス還魂記』で遊ぼう~
パイオニア新妄想紀行 vol.4 ~他のフォーマットのデッキを再現しよう~
パイオニア新妄想紀行 vol.5 ~部族とともにあれ!~
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パイオニア新妄想紀行 vol.8 ~強さの掛け算で目指せオーバーキル!~
パイオニア新妄想紀行 vol.9 ~基本セット2021で遊ぼう~
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