【大塚角満のゲームを語る】第43回 忘れたころの『ピクミン』


 

ナゾのジャンル

 
 皆さん、ゲーム好きな友だちや同僚と、↓こんなテーマの会話をすることはないですか?
 
 「いちばん好きなゲームのジャンルって、何?」
 
 ハイ、みんなで考えよー!!
 
 いろいろありますよ?? アクション?? シューティング?? それとも日本人らしくRPG???
 
 いや、RPGってことになると、そこから枝分かれもするんだよな。アクションRPGにシミュレーションRPG、昨今ではオープンワールドとかローグライクとかダンジョンクロウルなんてのも、RPGの眷属(?)としてラインナップされるようになっているよねえ。でもそれを言ったらシューティングだって、弾幕系からバトルロワイヤル系まで、細かく見ていたら無数に分岐するような気が……。
 
 このように、ここ20年くらいでゲームの構造的な広がりは一気に進行し、ひと言で「好きなゲームジャンルは?」と聞かれても即答できないくらいの細分化が進んでいるのである。
 
 しかも--。
 
 いまだ、
 
 「これ……ジャンルで言えば、どこに分類されるんだ???」
 
 と、頭を抱えてしまいたくなる作品も存在する。こんだけ細かくジャンル分けされていたら、ふつうはどこかしらで、
 
 「あら、あなたはココよ♪ 安心してね」
 
 てな具合に仲間が見つかるものだが、稀に、
 
 「こいつは……どう考えても、一匹狼だな……」
 
 そう結論付けざるを得ないものが現れるのである。
 
 俺が思う“ジャンル不明ゲーム”の代表格が……今回取り上げる『ピクミン』だ。いまから19年前にニンテンドーゲームキューブ用ソフトとして登場したそのときから、
 
 「え、えっと、この『ピクミン』ってゲームは……シミュレーション?? それともリアルタイムストラテジー?? それとも……ゲーム業界に現れた新種!?」
 
 ゲームメディアの人間を混乱させ、そして魅了してきたタイトル。
 
 その『ピクミン』がついに、Nintendo Switch用ソフトとして降臨する。Wii Uで発売された『ピクミン3』をベースに、現代風にパワーアップした『ピクミン3 デラックス』が、明後日(これを書いてるのは10月28日です)の10月30日に店頭に並ぶのだ!
 

 
 今回は、絶賛配信中の体験版をプレイしてみたので、その感想などを綴りたいと思う。
 

サラリーマンよ、立ち上がれ!

 
 『ピクミン』シリーズは上のほうで「リアルタイムストラテジー?」と書いた通り、ひとりの指揮官が大群を指揮してあらゆる業務に当たらせる……という、戦略シミュレーションの要素が色濃い。それもターン制ではなく、つねに流れる時間の中で判断、実行を迫られる“リアルタイム性”が最大のキモになっているので、もっとも近いジャンルとしては、『エイジ・オブ・エンパイア』シリーズに代表されるリアルタイムストラテジーが思い出されるのだ。
 

 
 まあでも……。
 
 ゴリゴリの戦闘が全面に押し出されることが多いリアルタイムストラテジーと比べると、『ピクミン』のそれはどこか牧歌的でどこか切なく、そしてあらゆる面がほのぼのとしている。
 

 
 ゲームの中で戦力になるのは、“ピクミン”という、動物なのか植物なのかもよくわからないナゾの生き物。
 

 
 彼らは従順、勤勉で、プレイヤーの命令通りに戦いも、破壊も、採取もこなしてくれる“正しい日本のサラリーマン”を具現化したような存在なのであるよ。
 



 
 数十匹、数百匹に増えたピクミンは、一糸乱れぬ統率で上司(プレイヤーね)について回り、
 
 「敵じゃ!! 突撃~~~!!!」
 
 と命じられたら、オノレが喰われることも厭わずに向かっていき、
 

 
 「堅い壁や!!! お前ら、突っ込め!!!」
 
 と言われれば、頭が割れようがなんだろうが突入していく……。
 

 
 これ、新橋あたりを千鳥足でウロつくおっさんサラリーマンにしてみたら、
 
 「わかる!!!>< 上司に言われたら、どんな無理難題でも「御意!!」と言わざるを得ないもんな!!!><」
 
 と全面賛同したくなる行動だろうし、逆に個人主張が強い現代の若手社員にしてみたら、
 
 「え??ww なんでそんなことしなきゃいけないんスか??w 編集長ご自身でやられればいいのにww」
 
 こっちを半分バカにして鼻息で言ってくるかもしれない。ハラ立つなチクショウw
 
 そんな“ピクミンらしさ”が、『ピクミン3 デラックス』でもしっかりと息づいている。当たり前だけどw 目まぐるしく変わる状況の中で的確な判断を迫られる戦略性、大量のピクミンを働かせる気持ちよさ、そしてすべてがうまくいったときのカタルシス……。
 
 唯一無二の“ピクミン”というジャンルのゲームを、秋の夜長にダラダラと遊び込みたいと思いました。
 

大塚(おおつか) 角満(かどまん)
1971年9月17日生まれ。元週刊ファミ通副編集長、ファミ通コンテンツ企画編集部編集長。在職中からゲームエッセイを精力的に執筆する“サラリーマン作家”として活動し、2017年に独立。現在、ファミ通Appにて“大塚角満の熱血パズドラ部!”、ゲームエッセイブログ“角満GAMES”など複数の連載をこなしつつ、ゲームのシナリオや世界観設定も担当している。著書に『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』シリーズ、『折れてたまるか!』シリーズなど多数。株式会社アクアミュール代表。

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