ドブフクロウのMtGブレイキングアカデミー 『ストリクスヘイヴン:魔法学院』カードプレビュー! ~《精霊表現者》他2種~

By ドブフクロウ
みなさんこんにちは。MtGライターのドブフクロウです。

なんと、今回も4月23日(金)に発売される新セット『ストリクスヘイヴン:魔法学院』のカードプレビューをいただくことができました! ちなみにセット名の「ストリクスヘイヴン」は5つの異なる魔法大学から成る最高峰の魔法学院だそうで、それぞれの大学は対抗色の組み合わせを支持(?)しており、その哲学も異なっています。

  • ロアホールド(赤白)/モットーは「石を残らずひっくり返して探せ」
  • プリズマリ(青赤)/モットーは「精霊とともに自己表現を」
  • クアンドリクス(緑青)/モットーは「数学こそ魔法」
  • シルバークイル(白黒)/モットーは「鋭いペン先、さらなる鋭知」
  • ウィザーブルーム(黒緑)/モットーは「自らの手で取り組め」

今回はこれらの中でもプリズマリ大学の呪文をプレビューさせていただくことになっております。プリズマリ大学に列する魔術師たちは、魔法を自己表現の手段と捉えており、その呪文は創造性を発露する緻密な芸術表現だそうです。

▲《プリズマリの命令》

同じ青赤の組み合わせであるラヴニカ次元のイゼット団は「マッドサイエンティスト集団」でしたが、この世界では「芸術家集団」という解釈になるようですね。マジックにおける青という色は理性的で好奇心が強いという性質を与えられており、一方でその対抗色である赤は感情的で自由であると位置づけられています。それぞれの思想は相反するようでいて、独自路線を突き進みがちという点では共通しているので、イゼット団にせよプリズマリ大学にせよその思想は対抗色とは思えないくらい腑に落ちるんですよね。はい、余談でした。

さて、プリズマリの哲学を予習したところでさっそくその芸術的呪文を見ていきましょう。まずはレアの《精霊表現者》から!

《精霊表現者》


通常版
▲拡張アート版(コレクター・ブースター封入)

まずは基本スペック。4マナ4/4というサイズはこの色の組み合わせにしては優秀ですね。能力欄を見てみると、「魔技/Magecraft」という新しいキーワード能力を持っています。自らのインスタント・ソーサリーのキャストやコピーが誘発条件となって、様々な効果を引き起こす能力です。果敢にも似た誘発条件ですが、「魔技」はインスタントかソーサリーでしか誘発させることができない代わりに呪文のコピーでも誘発させることができるので、過去のキーワード能力である「ストーム」などと相性がよさそうです。

《精霊表現者》の「魔技」は少しだけ難解な能力ですが、要するに自分のクリーチャー1体を対象に「これが戦場を離れるなら代わりに追放し、4/4のエレメンタル・トークンを出す」という能力を付与するものです。カードを引いたりといった直接的にカードアドバンテージにつながる能力ではありませんが、対戦相手の除去呪文に対応して「魔技」を誘発させることでトークンを戦線に残すことができたり、《魔女のかまど》のようなカードと組み合わせることで能動的にトークンを生み出すエンジンを作ることができれば強そうです。

ただ、テキストを読めば読むほどなにか悪さをしてくれそうに見えるんですよね。ちょっと僕は具体的な使い道は思いつかなかったのですが、これまであまり見なかった書式のテキストなので、もしかすると意外なコンボが可能だったりするかもしれません。いかにも青赤らしい?トリッキーなクリーチャーです。

《表現の反復》


通常版
▲拡張アート版(ダークフレーム版、プロモパック封入)

「3枚見て1枚手札、1枚ボトム、1枚追放領域でターン中唱えてよし」という青と赤の特性を見事に融合させたドロースペルの登場です! 2ターン目に唱えると少しだけ損をしてしまいますが、3ターン目以降であれば土地を追放するなどして2マナ2ドロー相当の呪文として運用することができます。

能力は非常にシンプルですが、テンポ面でもアドバンテージ面でも優秀な1枚なので、スタンダードのみならずモダンやレガシーなどでも活躍の機会があるかもしれません。軽い呪文なので「魔技」との相性もよいですし、ゲーム後半にマナが十分な状況でプレイすれば「魔技」を複数回誘発させることもできそうです。強いて弱点を挙げるとすれば、ソーサリーであるというくらいで、ケチが付けにくい非常に優良なドロー呪文です。

《精霊召喚学》

▲《精霊召喚学》

そして最後の1枚は《精霊召喚学》。5マナのソーサリーで4/4のトークンを出すというのは効率としてはイマイチですが、前述の「魔技」とのシナジーもあるのでクリーチャー枠を減らすことなく採用できるソーサリーはリミテッドで重宝されそうです。

そして何より目を引くのがカードのサブタイプ。「ソーサリー – 講義」と書かれていますが、これは『ストリクスヘイヴン:魔法学院』で新たに登場した新たなサブタイプです。「講義」を持った呪文は新キーワード能力「履修」と組み合わせることで、ゲーム外部から手札に加えることができます。《精霊召喚学》単体では少しパワー不足なカードに見えますが、「履修」呪文によってついでに手札に加えることができるのであれば決して悪くはないでしょう。

(以下妄想を含むオタク特有の早口)というか、魔法学院要素を「履修」と「講義」という形でカードに落とし込んできたか……!と衝撃を受けました。これすごい発明ですよね。マジックにおいて、手札にカードが加わるというのは知識を得るといったフレーバーで表現されるのですが、魔法学院というのはまさにそうした知識を体系的に身につける機関なわけじゃないですか。そこで「履修」して「講義」を受ける=手札にカードが加わるんですよ。これの何がすごいって、履修することによって知識が増えるというフレイバーを、カードを引くとかそういう安易な方法ではなくてゲームの外部という領域を使って表現していることです。もちろんこれまでにも《願い》呪文をはじめとしたゲームの外部を参照するカードはいくつかありましたが、これは「履修」と「講義」という良い意味で”狭い”能力(マジックの主席デザイナーであるマーク・ローズウォーター氏はこうした能力を「後方互換性が低い」とか「孤立的」といった表現で表しています。『神河』ブロックの「連繋」メカニズムなどはその最たる例の一つとされていますね)だからこそ「魔法学院」という世界観がくっきりとしたアウトラインを持つようになるのだと感じますしかもゲームの外部っていうのがまた想像の余地があっていいですね。「履修」するプレイヤーはまだ「講義」を受けていないので、その呪文への知識はないんですよ。だからこそ、記憶(ライブラリー)ではなく未知の領域(ゲームの外部)からカードを得る。カードを”探す”場所がちょっと違うだけで、この『ストリクスヘイヴン:魔法学院』というセットの世界観が如実に表されているような気がしませんか?この芸術的感性が分かるという方はぜひプリズマリ大学へどうぞ。願書受付中です。

熱くなりましたが、注目のキーワード能力やメカニズムも盛りだくさんの『ストリクスヘイヴン:魔法学院』、リリースが待ち遠しいですね。それではまた次回の連載でお会いしましょう!

ライター:ドブフクロウ
青春時代のほぼ全てをテキストサイトやゲーム系サイトを徘徊することに費やしていた根暗ライター。人間としての軽薄さに定評があり、親しい間柄では「空っぽ」というあだ名で呼ばれることもある。 MtGプレイヤーとしての腕前は自他ともに認めるヘッポコだが、青春時代に (いろいろなものを犠牲にして) 培ったMtG知識量は他の追随を許さない。

 

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