【アニポケまであとちょっと!】特別編 ラブリーチャーミーな敵役「ロケット団」のキャストさんに特別インタビュー!

テレビアニメ「ポケットモンスター」の主人公のサトシとピカチュウの前に立ちふさがるロケット団の4人の目標はひとつ。「ボスのサカキ様に認められて、組織のなかで偉くなること」だ。  

 彼らは基本的に、サトシのピカチュウをはじめとして、トレーナーたちからポケモンを奪おうと企む悪役として登場する。

 

 しかし、ムサシたちロケット団は自分たちのポケモンにとても愛情を注ぐ。また、サトシであろうが誰であろうが「困っている人を放っておけない」という、人情味あふれる面を見せることがある。  非人道的な行為を行うロケット団の別団員と対立することさえあるのだ。

 こうした、彼らが活躍するエピソードはファンからの人気も根強い。  

 彼らが多くの支持を集める理由は、悪役でありながらどこか憎めず、組織の下っ端として一生懸命働き、人情味があり、ポケモンを大切にする。そんな、まさしく「ラブリーチャーミーな敵役」だからこそだろう。  

 今回は、ロケット団のメンバーを演じ続けるムサシ役の林原めぐみさん、コジロウ役の三木眞一郎さん、ニャース役の犬山イヌコさん、ソーナンス役のうえだゆうじさんにインタビューを行うことが出来た。

 

 数々の人気作に出演し、とても忙しい日々を送っているであろう4名だが、なんとこれまで「ロケット団の4人が揃わないとアフレコしない」というぐらい、ワンチームで作品作りに取り組んでいたそうだ。  

 コロナ禍により同じブース内で揃ってアフレコすることは難しくなったそうだが、今回、ロケット団の4人が久しぶりに集結することになり、まるでロケット団のやり取りをそのまま見ているような、おおいに盛り上がったインタビューとなった。

 インタビューは、97年のテレビアニメ「ポケットモンスター」放送初期の思い出から、アフレコの裏話、それぞれのお気に入りのエピソードにまで話が及んだ。  正直、筆者も「ここまで作品とキャラクターに愛情を持っているのか……!」と驚いてしまったほど、熱のこもった話をたくさん聞くことが出来た。

 ロケット団ファンのあなたも、そうでないあなたも、きっとこの記事を読めばより彼らを好きになるのではないかと思う。

 最強の4人組のキャラクターと作品愛に溢れまくった本音トーク、ぜひ楽しんで欲しい。

 

取材・文:金沢俊吾


 ──本日は、ロケット団の歩みを皆様に振り返っていただきたいと思います。よろしくお願い致します。

林原めぐみ・三木眞一郎・犬山イヌコ・うえだゆうじ:

 よろしくお願いします!

──ロケット団の4人は、ひたすらサカキ様のために頑張ってるのが大きな魅力のひとつだと思うのですが、忠誠心と一生懸命さって、一体どこからきてるんでしょうか?

三木(コジロウ役):
 あれはね、4人だから頑張れるんですよ。1人じゃ絶対に途中で諦めてると思うな。

林原(ムサシ役):
 もちろんサカキ様のためになんだけども、根本的に、ムサシは負けず嫌いなんだと思う。
 ダメだったことは悔しいからもう一回チャレンジする、それを繰り返した最終目的地に、頑張ったっていうことを褒めてくれる人がいるっていうのはモチベーションになってると思いますね。


──今のお話聞いていても思ったんですけど、みんな、本当はピカチュウを捕まえなくてもいいと思ってるんじゃないかと思ったのですが。

三木(コジロウ役):
   何を言ってるんですか! 捕まえたいですよ!

林原(ムサシ役):
  捕まえたいとは心の底から思ってるんですよ。でも、それだけじゃないんだよね、やっぱりね。

──ニャースは、サカキ様に溺愛してほしいっていう分かりやすい目標があると思うんですけど、ムサシとコジロウはなぜ頑張ってるのかな? って昔からずっと疑問だったんですよ。

林原(ムサシ役):
 ムサシは幹部昇進とか、ちょっとかっこいいキャリアウーマンのトップになるみたいな欲望はあると思いますよ。

 でも、今は上司にあの眼鏡女がいるじゃない。それはもうムサシ的には許せないよね。ぜったいに引きずり下ろしたいと思ってるはず!(笑)


三木(コジロウ役):
 コジロウに関して言えば、居心地が良いからロケット団にいるんだろうな。出世よりは、自分の知らない世界を知りつつ、自分自身が成長したいと思ってる部分もあんだろうなって。

林原(ムサシ役):
 コジロウはそうだろうね。ムサシやニャースから頼られてる、期待されてることに、ちゃんと応えようとしてるもんね。

うえだ(ソーナンス役):
 ソーナンスはどうやらムサシさんのことが大好きで一緒にいますね(笑)。ニャースはロケット団のパイセンという認識で行動を共にすることが多いですけど。

ロケット団の人間らしさはいつから?

──ここからはロケット団の歴史をちょっと振り返ってみたいと思います。初期は「エリートでちょっと冷酷」っていうイメージで、少しずつ人情味が出てきたと思うのですが、こうした変化の実感はありますか?

林原(ムサシ役):
 そうですね。どのあたりから、エリートキャラが崩れていったんだろうね?

三木(コジロウ役):
 『あらしのサイクリングロード』(※)とかかな?
(※97年放送テレビアニメ「ポケットモンスター」第36話)

──サイクリングロードに、なぜか一輪車に乗って登場するという(笑)。コミカルな一面が見れた回でした。

三木(コジロウ役):
 マイク前にいる僕たちが何とかしようっていうことではなくて、台本自体がそういう感じになっていったんだよね。

林原(ムサシ役):
 うん、面白く演技したというよりは、台本がそうなっていったと思う。ムサシが看護学校に通っていたってエピソードが出てきて「そうだったのかよ!」って私も思ったり。 

犬山(ニャース役):
 そうそう。ロケット団の生い立ちみたいなものが徐々に語られるようになって、余計に人間らしさが出てきたよね。 

三木(コジロウ役):
 このメンバーでよかったのは、「笑わせよう」ってコトをしないっていうところがすごいあるんだよね。あくまでロケット団は、自分たちの使命を全うするために一生懸命頑張ってるだけなので。

──本当に、いつも組織のためにマジメに頑張ってますよね。

三木(コジロウ役):
 あとね、サトシたちに負けて飛ばされて、空中で反省会するじゃないですか。その時、誰にも責任をなすりつけないっていうのがステキだなと思うんだよね。

 「ニャースのせいよ!」とか言わなくて、「きー、悔しい!」って。自らを戒めてて、いい奴らだなって思う。まぁ、場合にもよるけれどね(笑)。

アフレコ後はよくご飯に行っていた

──台本によってキャラクターの方向性が定まって行ったということですが、アフレコの雰囲気はどのような感じだったのですか?

三木(コジロウ役):
 初期の頃は特に、番組作る雰囲気っていうか、スタッフ同士の距離が近かったんですよ。その中でロケット団同士の「人となり」もお互いがどんどん理解していったような気がするな。

うえだ(ソーナンス役):
 そういう雰囲気って、林原さん、三木さん、犬山さんのお三方の現場内外での普段のやりとりから生まれてきていて、そのコンビネーションが演技に心地よく反映されているんです。

 キャラクターを作り上げるにしても、スタッフ側と演者側で練り上げ合った結果が、現在のロケット団。

林原(ムサシ役):
 今はこんなご時世だから無理だけど、前は収録後によくみんなでご飯食べに行って「ああでもない、こうでもない」って話したよね。番組の話だけじゃなく、お互いの近況も含めて話し合ったりとかしてて。

三木(コジロウ役):
  そうそう。だから、お互いが感じた違和感とかもすぐ共有して、改善できたんだよね。

うえだ(ソーナンス役):
 あー、そうでしたね。そこは今、少々難しくなっているね。

犬山(ニャース役):
 いやーコミュニケーションは大事だなあ、一緒にものを作るっていうのは、やっぱコミュニケーションからだねぇ。

三木(コジロウ役):
 そうそう。僕の中で、ロケット団はみんなで会話して作り上げていくっていう感じなんだよね。

──そうやってコミュニケーション取る中で、それぞれのキャラクターの共通認識がどんどん出来あがっていったっていう。

三木(コジロウ役):
 けんかすることなく、みんなが理解して前に進むっていうか、頭ごなしにダメ! ではなくて、なぜダメなのかっていうことを話し合える現場なんだと思っています。

林原(ムサシ役):
 例えば、台本にあるムサシのセリフに「ん? あれ?」って違和感があると、三木さん、犬山さん、うえださんも、同じことを思っているんですよ。

 台本を変えること前提じゃなくて、じゃあ変えるならどういう方向がいいかな? ってみんなで話す。

「これだといいんじゃない? あれだといいんじゃない?」って、お互いが納得できることを探ってみるんです。

うえだ(ソーナンス役):
 ササーって打ち合わせしちゃいますよね(笑)。

犬山(ニャース役):
 うん。「ここはこういうふうに言ったらいいんじゃない?」とか、「だったら次のセリフはこう受けたほうがいいよね」っていうのが、割と瞬時にできちゃうかもしれない。

三木(コジロウ役):
 素敵なお芝居をされる人がいたときに、ロケット団メンバーが一斉にうなずいてみたりとかね。

──それはロケット団のシーンに限らずですか?

林原(ムサシ役):
 そうそう。誰かがいいお芝居してると、「いいねいいね!」って私たち4人が頷き合ってる気がする。

犬山(ニャース役):
 だから感覚がすごく一緒な感じがしますよね。

三木(コジロウ役):
 この4人の受信機というか、感覚が非常に近いんだよね。それぞれ発信するモノは全然違うのに。それが面白いよね。

──セリフに対して議論が起こるということですが、台本との折り合いはどのように付けてるんでしょうか?
三木(コジロウ役):
 まず、台本にあるセリフを否定することは全くないんです。

林原(ムサシ役):
 そうそう。もちろん台本ありきです。ただ、ムサシっぽさ、コジロウっぽさとか、「なるほどニャース」だなっていう言い回しみたいなものは、やっぱり私たちの中にあって。ソーナンスはちょっと分からないけど。

うえだ(ソーナンス役):
 そんな。ソーナンスっぽいのありますよ!恐らく…。

一同:(笑)