【大塚角満のゲームを語る】第79回 ボドゲ好きにはたまらない『Voice of Cards ドラゴンの島』に魅せられる

体験版を遊んでみたら

 じつに不思議なゲームに出会ってしまった。

 Nintendo Switchの画面越しでゲームを楽しんでいるのに、まるで……良質なコンポーネントを備えたボードゲームを部屋に広げて、アナログに遊んでいるような感覚。

 1歩進むごとにパタパタと周囲のカードをひっくり返し、ゲームマスターのいざないによって戦闘が起こったり、宝箱を見つけたり、イベントが起こったりする--。街の人との会話も基本的にはカードの延長で、そのたびに手札を切ってみずからゲームを構築しているような気持ちになる。

 語り部の冷静な語り口と、アースカラーを中心にデザインされたシックなグラフィックも相まって、確実に“このゲームにしかない雰囲気”を構築することに成功しているわ……!

 「うーむ……。またしても、ただでさえ少ない時間を奪われてしまうゲームが発売されるのかぁ……!!」

 体験版をアッと言う間にクリアーし、ニンテンドーeショップにいそいそと駆け込みながら俺はひとりごちた。

 「秋の夜長に遊ぶには、ピッタリのゲームだぞ^^」

 睡眠時間がさらに短くなってしまうことへの憂慮は、この際どうでもよくなっていた。

 人は疲れてくると、バリバリのアクションゲームや血沸き肉躍るような格闘ゲームとかよりも、しっとりと遊べるアドベンチャーとかボードゲームを欲するよう、身体がプログラミングされているのだ。

 いままさに、俺は疲労の真っただ中にいるので、このゲームの体験版は“沁(し)みた”。

 「深く考えず、地面のカードをパタパタとひっくり返しながらこの世界観に没頭したい!!><」

 精神が、この特異なタイトルを激しく求めているのがよくわかった。

 ……と、ダラダラと前フリを書いてしまって申し訳ないのだが、どうもこのゲームで遊んでいると抒情的な文章を書きたくなってしまって、ついつい筆が乗ってしまったのである。結果、出来上がった文章がホントに抒情的かどうかはどーでもいいのだ。

 俺がついハマり込んでしまったゲームの体験版とは……すでにピンと来ている人も多いと思うけど、↓こちらのタイトルです!!

 スクウェア・エニックスから10月28日に発売されるプレイステーション4、Nintendo Switch用ソフト『Voice of Cards ドラゴンの島』

 ジャンルはRPGだけど、前述の通り世界のすべてがカードで構成されていて、語り部もしくはゲームマスターの語りに導かれるまま物語を進行させ、

 フィールドを散策し、

 ダンジョンの深淵に進み、

 街で買い物をして……、

 テーブルトークRPGをモチーフにしたという、ボード上で行われるターン制バトルで敵と戦闘を行う。

 これらの行動のほぼすべてがカードで展開し、その都度、語り部のアナウンスが入って雰囲気を盛り上げてくれる。

 これはまさに、テーブルトークRPGだ。もしくは、ボードゲームコレクターでもある俺が大好きな『ダンジョンクエスト』という極悪難度のボードゲームとも雰囲気がちょっと似ている。まあ何にしても、Nintendo Switchでプレイしているのに、ここまでアナログゲームで遊んでいるような気持ちにさせられるとは思わなかったわ……。

 この、あまりにも斬新なゲームシステムは、広大な3D世界で自由気ままに冒険できるオープンワールドRPGと一線を画しているので、人によっては、

 「うお。なんじゃこのゲーム!」

 と戸惑う向きもあるかと思う。そういう意味では、決して万人受けするタイトルではないだろう。

 でも……!

 その独特過ぎる空気感と、1手1手を熟考しながら進めるボードゲームライクな遊びが好きな人は、

 「た、たまらん!!」

 と思うに違いない。

 誤解を恐れずに言うなら『ドラゴンの島』で遊んでいると、秋の夜長に長編小説をジリジリと読み進めているかのような、そんな感覚すら覚えることがある。体験版でコレなんだから、製品版を本気で遊び始めたらどうなっちゃうんだろうワタシ……w

 とはいえ、早解きを競うようなゲームでもないし、ゆっくりと腰を据えて遊べる時間ができたときのために、Nintendo Switchに入れて持ち歩こうと思いました。

大塚(おおつか) 角満(かどまん)
1971年9月17日生まれ。元週刊ファミ通副編集長、ファミ通コンテンツ企画編集部編集長。在職中からゲームエッセイを精力的に執筆する“サラリーマン作家”として活動し、2017年に独立。現在、ファミ通Appにて“大塚角満の熱血パズドラ部!”、ゲームエッセイブログ“角満GAMES”など複数の連載をこなしつつ、ゲームのシナリオや世界観設定も担当している。著書に『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』シリーズ、『折れてたまるか!』シリーズなど多数。株式会社アクアミュール代表。