コロコロお仕事図鑑 その①「レゴ社」 環境責任担当者のネレッケ・ヴァン・デ・ピュエルさん「レゴ®ブロックの果てしない研究・開発の日々」

世の中にあるホビーやゲームの仕事を紹介する「コロコロお仕事図鑑」! その記念すべき第1弾に登場してくれるのが、コロコロと親交の深いレゴ社だ!! デンマーク本社のデザイナーやブロック開発の担当者、レゴ®認定プロビルダーの三井淳平さんなど、5名のインタビューを掲載していくぞ! 今回は、環境に配慮したレゴ®ブロックの開発をしている研究者が登場! みんなは、こうしてレゴブロックに携わる大人になった! 参考にしてくれよな!!

プロフィール
ネレッケ・ヴァン・デ・ピュエル
レゴグループのマテリアル担当バイスプレジデント。本社デンマークのビルンにて、レゴ社のコアライン製品の現在および将来の素材を担当している。レゴグループの「サステナブル・マテリアル2030」という計画達成のために、彼女のチームは技術を調べ、サプライチェーンのパートナーと協力して材料の研究開発を行っている。

新時代の、環境にやさしいレゴブロックをつくるため

――レゴブロックとの出会いについて教えてください!

6歳の誕生日に両親がプレゼントしてくれたのが、初めてのレゴ®セットでした。それは「レゴ®クラシック」で、ベースプレート、ロック、窓や屋根のパーツなどがありました。セットには組み立ての説明書がなかったので、私は自分の創造力でつくり始めました。今でも息子たちと一緒に作るのが好きで、特にレゴ®テクニックのセットがお気に入りです。

――レゴグループで働くことになった経緯を教えてください!

大学で化学工学を専攻していたため、学位を取得した後、研究開発の仕事に就きたいと思い、化学工学の博士課程に残りました。化学業界では最初に、砂糖を原料とした新しいプラスチックを開発していた小さな企業に入社し、よりクリーンで優れた化学物質の製造プロセスを目指した多くの研究プロジェクトに携わっていました。

そんなある日、レゴグループから、素材のスペシャリストを集めたチームを率いて、持続可能なプラスチックの開発に向けて他社ともコラボしてプロジェクトを進めてほしいという話を受け、このテーマがとても興味深かったため、喜んで「はい!」と答えました。

――現在はどのような仕事をしているのでしょうか!?

私は素材の専門家チームを率いています。素材とは、レゴブロックをつくり上げるために使用するプラスチック、色、インクのことです。プラスチック、色、インクは、丈夫で長持ちし、見た目にも美しくなければなりませんし、もちろんレゴブロックでの創造は楽しいものでなければなりません。私たちは、多くの企業と協力して、製品に最適なプラスチック、色、インクを作っています。

私たちは、実験室でテストを行うことで、材料の特性や習性を学びます。プラスチックに重りを落としたり、曲げたり、日光や湿気、熱にさらしたり、着色したり、インクで装飾したり、組み立てたりするとどうなるかを研究するのです。素材の強度、着色の具合、色の鮮やかさ、デコレーションの定着度、組み立て・分解するときに必要な力などがわかります。

――環境にいいレゴブロックをつくっている理由を教えてください!

レゴブロックは安全で丈夫で長持ちしますので、使い終わったレゴブロックをお友達やご家族にプレゼントして遊んでもらうことで、捨てられることなく何年も続けていくことができます。

ただ、将来的には、レゴブロックの材料を製造する際に発生する二酸化炭素(CO2)の量をできるだけ少なくしたいと考えています。そのためには、石油や天然ガスからではなく、植物や木から作られたプラスチックを使って材料を製造することが一つの方法です。私たちはすでに100個以上のレゴ作品をサトウキビから作られたプラスチックでつくっています。

もうひとつの二酸化炭素削減方法は、レゴブロックにリサイクルプラスチックを使用することです。そのためには、プラスチックを洗浄し、色を落とさなければなりません。そうすれば、リサイクルプラスチックを使用しても安全であることがわかり、美しいレゴブロックをつくることができます。私たちのウェブサイトを見ると、リサイクルされた飲料ボトルを使ってレゴブロックを作る実験をしていることがわかります。2005年から、この開発は進んでいるんですよ。

――リサイクル素材を利用したレゴブロックと従来のレゴブロックの違いがあれば教えてください!

新しい素材で作られたレゴブロックは、安全性や耐久性に優れています。何年も前に製造されたレゴブロックと同じように使えますし、他のレゴブロックと同じような形、同じような感触です。見た目は従来のレゴブロックとほとんど変わらないようにしたいと考えていますが、再生したペットボトルを使用したレゴブロックの色は少し違うかもしれません。これはまだまだ調査の必要があります。

――リサイクル素材を利用したレゴブロックを開発するにあたって、大変だったのはどのような点ですか!?

課題は、現在使用されているプラスチックと同じように、耐久性、安全性、遊びやすさを備えた、より持続可能な素材を見つけることです。レゴブロックを組み立てるときに感じる特別なクリック感や、バラバラにするときの簡単さを想像してください。それぞれの素材は異なる特性を持っています。したがって、私たちは、この特別なブロックの「見た目」と「感触」、そして現在のレゴブロックと同じ機能も与えられるように、どのように「微調整」できるかを学ぶ必要があります。

社内の専門家チームが新素材を徹底的に調査し、他社や大学の専門家と協力して各素材の習性を学んでいます。そして、これらの素材は新しいものなので、まだまだ多くのことを学ばなければなりません。また、素材だけでなく、その素材を作るプロセスの中にも、まだ開発中の新しいものがあることもあり、興味を持った素材をつくるために、まずこれらの企業と協力します。小規模なものから大規模なものまで、何年も掛けて取り組んでいます。

レゴブロックを通じてよりよい未来を

――サステナブル・マテリアル・チームには、150人以上のメンバーがいるそうですが、どのような職種の方たちが働いているのでしょうか!?

150人の中には、さまざまな専門分野の人がいます。私のチームでは、未来の素材の可能性を探り、その素材を作る企業と協力している人や、その素材が与えるCO2の量は多いのか少ないのか、その素材をリサイクルすることは可能なのかなど、素材が地球に与える影響を計算している人もいます。

ほかにも、プラスチックを研究し、新素材のための色やインクを開発している人や、また、すでに家庭にあるレゴブロックと組み合わせてつくったり使ったりできるように、素材をどのように適用すべきかを計算する専門家もいます。

私たちは、社内の他の専門家が設計、製造、テストした金型を使って形をつくります。材料が溶けたときにどのような動きをするのか、色を加えたときにどのような動きをするのか、そして型に注入するときにどのような動きをするのかを調べる必要があるため、大変な労力を要します。また、金型を入れる機械を設計する専門家もいます。なぜなら、金型に特殊な条件(※たとえば、湿度管理)が必要な場合があるからです。

また、工場の専門家は、同じ金型でこの素材を長時間成形しても問題ないかどうか、素材のテストを行っています。これは、1つの素材候補だけでなく、多くの素材候補に対して行います。このように、レゴブロックに採用されるまでには、たくさんの下調べが必要なのです。

――すごいなあ! 環境に配慮したレゴブロックを開発することは、レゴグループにとって、どのような意味があると思いますか?

私たちは、子どもたちが受け継ぐ世界に良い影響を与えたいと考えています。そのためには、子どもたちが遊びを通して学び、問題を解決したり、うまくコミュニケーションをとったり、人と協力したりできるようなスキルを身につけられるようにサポートしていきたいと考えています。

さらに、私たちは製品が地球に与える影響をできるだけ少なくしたいと考えており、そのために、より持続可能な素材を使って製品を作ることに取り組んでいます。私たちは、レゴブロックが現在と同じように安全で、強く、耐久性があり、CO2排出量ができるだけ少なく、廃棄物ができるだけ出ないようにしたいと考えています。

――リサイクル素材を利用したレゴブロックが広まることで、どのような未来が実現するのが理想的ですか!?

地球上の資源の使用量が減り、無駄遣いが減り、今よりもずっと再利用、共有、リサイクルが進んだ世界で、地球のより良い未来を築くことに貢献できることを願っています。私は、より持続可能な素材で作られたレゴブロックが、このような世界を実現するために必要な多くの前向きな変化の一つとなり、私たちの活動が他の多くの企業に刺激を与えることを願っています

――最後に、レゴブロックの魅力、楽しさはどのような点だと思われますか!?

個人的には、レゴブロックの魅力は、作っている時の楽しさと、作り終わった時の誇りと満足感です。レゴブロックで創造することに年齢は関係ありません。私のチームでは、楽しみながら一緒につくることが多いのですが、レゴブロックは自分の考えをクリエイティブに表現する方法を与えてくれます。

誰でもつくることができ、それぞれの作品はユニークで特別なものです。そして、レゴブロックの最も魅力的な点は、何度でも繰り返し使えることです。使わなくなったレゴブロックは、他の人に譲って、またつくって遊んでもらうことができますから。

■レゴ社ホームページ
https://www.lego.com/ja-jp