【大塚角満のゲームを語る】第81回 『アンチャーテッド トレジャーハンターコレクション』で、いまさらながらこのシリーズのスゴさを知る

これは……とんでもねえな!

 とある日。

 1月28日に発売されたばかりのプレイステーション5用ソフト『アンチャーテッド トレジャーハンターコレクション』のサンプルが、発売元のソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)から送られてきた。

 これは、この上ない僥倖である。

 というのも、俺はゲームを楽しむサイクルにけっこうな波があって、まったく頭を使わなくてもいいアクションやシューティング系ばかりを好む日々があると思ったら、重厚長大でゲームをスタートしただけで頭が痛くなるようなヘビーなタイトルに傾倒したいこともあるし、パズルやテーブルゲームなどのカジュアルなジャンルしか受け付けないこともある。

 これって、読書の傾向とまったく同じで、軽いエッセイやマンガしか読めない日があるかと思えば、鈍器のような重さを誇るハードカバーの長編小説を見てやたらと、

 「読みたい!! そういうのしか読みたくない!!!

 なんて感じることも少なくない。その日の気分とか、前日に呑んだ酒の残り具合とかとか、いろんな要素が絡み合って、“受け入れられるコンテンツ量”が決まってくるようなのである。

 で。

 2022年になり、どこにも行けない正月休みが一瞬で過ぎ去ってしまったいま、俺がもとめるゲームジャンルがズバリ……!!

 「広大な世界、風景を堪能できるオープンワールドか、少年のように沸き立つ冒険心を満たしてくれる重厚なアクションアドベンチャー……!! こういうのしかやりたくねえ!!!><」

 ↑こんな感じだったのです。

 そんなタイミングで手元に届いたのが……!!

 俺の欲求を、120%以上の満足度で満たしてくれるこちらの……!!!

 『アンチャーテッド トレジャーハンターコレクション』だったのだッ!!! 少年時代、考古学者になりたかった俺の記憶を呼び覚ましてくれる、唯一無二のゲームシリーズッ!!!><

 てなわけで、2月に入ってから毎日、仕事を切り上げた3秒後にはプレイステーション5の電源を入れて、宝探しの旅に没頭している。

 この時間はいつも、動画配信サービスを使って映画やらアニメを楽しむひと時に充てていたんだけど、

 冒険に出たい欲求も、血沸き肉躍るようなアクションも、心臓が痛くなるような銃撃戦も、奥深いストーリーもすべて『アンチャーテッド トレジャーハンターコレクション』が補完してくれるもんだから、ここ数日はその手の映像コンテンツをまったく見ていない。正直、ここまで心が満たされてしまうのは我ながら想定外のことであったよ。

 さてこの『アンチャーテッド トレジャーハンターコレクション』だが、“コレクション”とタイトルに付いている通り、じつは2016年に発売されたプレイステーション4用ソフト『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』と、その追加エピソードとして2017年に配信された『アンチャーテッド 古代神の秘宝』をセットにして、プレイステーション5用にリマスターした作品となっている。

 ハードの性能がハネ上がったことでグラフィックの質が格段に向上し、迫力も、臨場感も、没入感も激増。もちろん、DualSenseに対応して細かな感覚が超リアルに手に伝わるようになっているし、プレイステーション5お得意の高速ロードも実現している。コレ、毎回思うけどホントの本気でめちゃくちゃロードが速くて、プレイステーション5の電源を入れてから『アンチャーテッド トレジャーハンターコレクション』の続きが始まるまで(タイトル画面が出るまで、ではないぞ)1分もかかっていないんじゃないかと思う。ロードによるストレスがまったくないので、その美しすぎる映像と相まって、

 「いま俺……映画を動かしてるんじゃね……???

 そんな感慨に陥ることもしばしばである。

 そして、いま俺がこれほどハマり込んでしまっている大きな理由のひとつに、“プレイステーション4版は未プレイだった”って事実も関わっているのかなと思う。当時はまさに、古巣に骨を埋めるのか、それとも独立してモノ書きとして生きていくのか……ってことを決めなければいけない岐路に立たされていて、前述の“重いコンテンツは処理できない時期”にあったのよ(苦笑)。よって、遊びたかった『アンチャーテッド 古代神の秘宝』もパッケージを開けることなく(いまゲーム棚を見たらソフトは買ってあった)、そのまま月日は流れて……この『アンチャーテッド トレジャーハンターコレクション』を手に取るに至ったというわけだ。

 いやそれにしても、くり返しになるがこのゲームはスゴイ。

 プレイステーション4版のころから語られ尽くしていると思うけど、映像の見せ方がじつに映画的に洗練されていて、ただ画面を眺めているだけでもグイグイとその世界に引き込まれてしまう。当然、その世界に介入して飛んだり跳ねたり、戦ったりをするわけだけど、複雑な動作をしているのにプレイヤー側の戸惑いが少なく、50歳になって判断力や動体視力が衰えまくっている俺でさえも余裕で主人公を操ることができる。これは、“どの操作をプレイヤーにやらせるのか”という取捨選択とボタン配置の妙から生み出される快感で、改めて、

 「このゲーム……ホントによくできているわ!!!」

 と感心させられることしきりである。

 そう言えば……。

 『アンチャーテッド』の1作目がプレイステーション3で発売された2007年の年末、仲のいいゲームクリエイターと酒を飲んでいたときに、まさにこのタイトルの話になったことがある。

 「大塚さん、『アンチャーテッド』ってプレイしました?」

 ビールをうまそうに飲みながらクリエイターさんはそう言うと、俺の返事も待たずにつぎのように語り出したのだ。

 「このゲームには、やられました……。アクションも、演出も、とてつもない出来ですよ……! これからは、このレベルのゲームが基準になるんでしょうね……。スゴイ時代になりますなぁ……」

 あれから、もう15年……。

 ハードが2世代も進み、究極と呼んでも過言ではないクオリティーの『アンチャーテッド』が、当時では考えられない大画面のモニターで躍動している。

 「クリエイターさん、このPS5版も遊んでいるのかなぁ。どんな感想を持っているんだろう」

 そんなことに想いを馳せながら、俺は今日も仕事を早く切り上げて『アンチャーテッド トレジャーハンターコレクション』で遊びますw

大塚(おおつか) 角満(かどまん)
1971年9月17日生まれ。元週刊ファミ通副編集長、ファミ通コンテンツ企画編集部編集長。在職中からゲームエッセイを精力的に執筆する“サラリーマン作家”として活動し、2017年に独立。現在、ファミ通Appにて“大塚角満の熱血パズドラ部!”、ゲームエッセイブログ“角満GAMES”など複数の連載をこなしつつ、ゲームのシナリオや世界観設定も担当している。著書に『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』シリーズ、『折れてたまるか!』シリーズなど多数。株式会社アクアミュール代表。