ゾイド生みの親徳山氏5656万字!?限界ロングインタビュー 第1回

 今回なら、たぶんいずれわかることなんですけど、「ゾイドコア(※2)が地球に来る」っていう大きな世界観のラインがあるんです。今回の『ゾイド』にはワイルドブラストという新要素が加わりましたけど、僕のそもそものコンセプトでは、本能解放って、要するに動物でいえば「牙を剥く」みたいなことなんです。
 過去の『ゾイド』にも「オーガノイドシステム」(※3)っていうのはあったんですけど、まさか身体まで変化するというのは、なかなかやらなかった。
 でも考えてみれば、実際の動物もそうなんですよね。フクロウがびっくりして、細くなっちゃう擬態をするとかあるじゃないですか!

──アフリカオオコノハズク、でしたっけ。ツイッターとかでもよく、そういう動物の生態の映像がバズったりしますね(笑)

徳山 そうそう。そのへんもヒントにして、ゾイドが牙を剥いちゃったら、そして人間も本能解放で気持ちが一致して、何か身体の部位をより剥き出したら、っていう発想があったんですよ。それで、このコンセプトアートの中では、その設定を裏付ける世界観を描いたんです。

 まず、地球で恐竜絶滅期が訪れたとき、恐竜たちは断末魔の中で、それでも必死に生き抜こうとして、何らかのすごい本能を宿すことになります。そんなとき、惑星ゾイド(※4)からきたゾイドコアがミートして、ゾイドコアと断末魔の恐竜の本能が融合して、粛々と進化を遂げていった、みたいな話にしたんです。そして未来の地球はいろいろあっていったんリセットして、テラフォーム(※5)みたいな形で再生した世界がある。その想定で今のアニメの『ゾイドワイルド』の世界も、けっこう自然豊かなとこだったりするんです。

「何々種」っていってるくらいだし、今回の『ゾイド』は、もともと地球にいた恐竜たちの断末魔の本能と融合した、「地球版のゾイド」みたいなもの、としないと理屈つかないんですよね。しかも骨格に関しては、地球上の恐竜の骨みたいに、けっこうリアルにやってるっていうのもポイントですしね。

 このあたりの絵は、2016年10月頃に描いたのかな。ここでの絵では、原型となるデザインはだいたいできていて、それからこっちの初期のコンセプトデザインになっていきます。めんどくさいっていうかね

(一同笑)

 でもここからやらないと、デザインってできないんです。

──じゃあかなり前から企画は進めていたんですね。スパンが長いといいますか。

徳山 長いですねー(笑)。そしてここから、ボーンがあって、アーマーがあって、っていう理屈をつけるんですよ。

 今回のアーマーの発想って、競走馬のブリンカー(馬の視野を制限する馬具)なんです。すごい凶暴な動物を少し調教する時って、視野を狭くするんですけど、それがヒントになりました。今回のゾイドの頭部アーマーって、単なるカバーじゃなくって、視界を狭める用なんです。

──なるほど! ウマですか!

徳山 単純にかっこいいからアーマーつけるんじゃなくって、ちょっと凶暴性を持った地球のゾイドを、地球人が調教しようとしてアーマーをつけてくんですよね。もちろんこういうものの基本的発想っていうのは、もともとある『ゾイド』の世界、過去に描いた『ゾイド』の歴史を踏襲しています。

<第2回に続く>

※2 ゾイドコア:惑星ゾイドの原子金属生命体に、地球の生物の遺伝子を取り入れた、ゾイドの心臓部。
※3 オーガノイドシステム:ゾイドコアを活性化させて、戦闘能力を飛躍的に向上させるシステムのこと。
※4 惑星ゾイド:地球からおよそ6万光年彼方、銀河の正反対にある惑星。これまでの『ゾイド』シリーズの舞台となった星。
※5 テラフォーム:人為的に惑星の環境を変化させて、人間の住める星にする計画。

徳山 光俊(とくやま みつとし)
『ゾイド』立ち上げに携わったスタッフのひとり。『ゾイドワイルド』ではゾイドのデザイン原案を担当。溢れんばかりの『ゾイド』愛を若い世代に伝えるべく奮闘中。

 

次回は7/21(土)更新!!