ドブフクロウのMtGブレイキングアカデミー vol.13 〜生きろ。そなたは美しい〜


By ドブフクロウ
 
みなさんこんにちは、MtGライターのドブフクロウです。
 
今週からはいよいよモダン向けのサプリメントセット『モダンホライゾン』の新カード情報が続々と公開され始めましたね。
 

▲《Force of Negation》

 
中でも特に耳目を引いているのがこのカード。英語版のカード画像しか公開されていませんが、テキストを日本語訳してみましょう。
 

あなたのターンでない限り、あなたはこの呪文のマナ・コストを支払うのではなく、あなたの手札にある青のカードを1枚を追放することを選んでもよい。クリーチャーでない呪文1つを対象とし、それを打ち消す。その呪文がこれにより打ち消された場合、それをオーナーの墓地に置く代わりに追放する。

 
……お分かりいただけただろうか。要するにピッチスペル版の《否認》ですね。全国10万人(?)のマジックプレイヤーの「マナ払えー!!」という叫びが聞こえてくるようです。
 

▲《意志の力》

 
ピッチで唱えられるタイミングが限定されたことや対象が狭まっているため、レガシーではお馴染みの《意志の力》の調整版と言えなくもないですが、この《Force of Negation》は素で唱える場合のコストも軽いんですよね。
 
古来よりモダンは攻めるカードに比べて守るカードが弱いため、「(自分の戦略を)押し付けた方が有利」と言われることもありましたが、この《Force of Negation》の登場で一概にそうとも言い切れなくなるかもしれません。環境に一石を投じてくれそうで期待大ですね。
 
慣例的にはこれから5月31日(金)にかけて続々と『モダンホライゾン』のカードが公開されていくことになると思いますが、はたしてこの《Force of Negation》を超える逸材が現れるのか!? とても楽しみです。
 
さて。今回は電脳世界における世界最強の座を懸けた戦いである>Magic Online(※以下MO)チャンピオンシップ2018から、興味深いモダンのデッキをご紹介しましょう。年度が昨年になっていますが、これは2018年度のチャンピオンを決める戦いなので間違いではありません。
 

MOチャンピオンシップ2018

MOチャンピオンシップは年に一度の大舞台で、同様に年に一度だけ開催される世界選手権に次いでハイレベルな戦いと呼ばれることもある非常に注目度の高いトーナメントです。
 

▲優勝者のマッティア・オネト選手

大会に参加する資格を得るための代表的な方法の一つは、まず各月に開催される「MOチャンピオンシップシリーズ」で優勝すること(MOチャンピオンシップと名前が似ているので紛らわしいですね)
 
そもそもこのMOチャンピオンシップシリーズへの参加資格を得ることでさえ(常人には)ちょっとした労力を懸ける必要がある上、ようやく参加できたと思えば待っているのは世界中の強豪たちとの激闘。これを勝ち上がった優勝者のみがようやくMOチャンピオンシップへの参加資格を得ます。
 
要するに日常的にMOをプレイしているめっちゃ強い人(だいたいプロ)だけが参加できる大会ということですね。従来の意味での廃人(ハイレベルな人)が集まる大会、そりゃレベルも高いというものです。
 
そんな本トーナメントはスタンダードとドラフト、そしてモダン3フォーマット混合で繰り広げられました。今回ご紹介するのはそのベスト4に進出した「イルハグシュート」。さっそくデッキリストを見ていきましょう!
 

イルハグシュート(使用者:バーナード・トレス選手)
枚数 カード名(メインボード)
4 《黒割れの崖》
4 《血染めのぬかるみ》
2 《宝石の洞窟》
3 《沼》
1 《新緑の地下墓地》
1 《湿地の干潟》
2 《血の墓所》
2 《山》
4 《引き裂かれし永劫、エムラクール》
4 《グリセルブランド》
4 《猪の祟神、イルハグ》
4 《猿人の指導霊》
3 《発生器の召使い》
3 《安堵の再会》
3 《集団的蛮行》
4 《信仰無き物あさり》
4 《御霊の復讐》
4 《裂け目の突破》
4 《五元のプリズム》
枚数 カード名(サイドボード)
3 《削剥》
2 《神々の憤怒》
1 《致命的な一押し》
3 《虚空の杯》
2 《稲妻の斧》
2 《思考囲い》
2 《夜の囁き》

 

 
こちらはモダンを代表する(ほぼ)瞬殺コンボデッキの一つ「《御霊の復讐》シュート」デッキですが、先日発売された『灯争大戦』から新カードが採用されたアップデート版のデッキリストになっています。
 

▲《御霊の復讐》


▲《猪の祟神、イルハグ》

 
新セットから鳴り物入りで採用されたカード、それこそがこの《猪の祟神、イルハグ》! これによって「《御霊の復讐》シュート」はさらに進化を遂げ、今では「イルハグシュート」と呼ばれるようになっています。
 
《御霊の復讐》デッキは墓地から大型クリーチャーを高速で釣り上げる、いわゆる「リアニメイト」系のデッキに大分されますが、その弱点は一度墓地を経由させないとクリーチャーを戦場に出せないという点でした。
 

▲《引き裂かれし永劫、エムラクール》

 
また、みんな大好き《引き裂かれし永劫、エムラクール》は強大なサイズを持つクリーチャーですが、その能力によりリアニメイトできるタイミングも限定的です。《エムラクール》をディスカードしつつ《御霊の復讐》を唱えて……という挙動を狙うとどうしても一度にかかるマナも増えてしまいます。
 
しかし、《イルハグ》はそんな課題を一発で解決! 墓地に《イルハグ》さえ落ちていれば実質的に手札からもクリーチャーをタダ出しできるようになり、《イルハグ》+他のデカブツの攻撃でゲームを一撃で決められるようになっています。
 
何より《イルハグ》自体が5マナなので、《五元のプリズム》や《猿人の指導霊》を駆使すれば普通に素出しも狙えるというのがポイント。手札からも墓地からもシシガミ様が襲い来る、驚異的なデッキとなっています。
 
シシガミ(《イルハグ》)と《エムラクール》をシュートしたら……「黙れ小僧!」なんて言うまでもなく、対戦相手は静かになってしまうでしょうね。
 

 

ライター:ドブフクロウ

青春時代のほぼ全てをテキストサイトやゲーム系サイトを徘徊することに費やしていた根暗ライター。人間としての軽薄さに定評があり、親しい間柄では「空っぽ」というあだ名で呼ばれることもある。
MtGプレイヤーとしての腕前は自他ともに認めるヘッポコだが、青春時代に (いろいろなものを犠牲にして) 培ったMtG知識量は他の追随を許さない。

次回は5/29(水)更新!!

※画像はマジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイトより引用しました。引用元URL:https://magic.wizards.com/en/events/coverage/2019MC1