By まつがん
はじめましての方ははじめまして。
私はまつがん……こちらのコロコロオンラインの方でデュエル・マスターズの連載を書かせていただいているほか、マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイトでは大会の観戦記事を書かせていただいたりもしているライターだ。
今回はこちらで月1回、新フォーマット「パイオニア」に関する記事を連載させていただく運びとなった。
そこで第1回となる今回では、これからパイオニアを始めたい!という方のために、「パイオニア環境ってどんな感じなの?」という疑問の答えとなるような環境概説を、マジック・オンラインで結果を残したリストを紹介しつつ、主にカードプールの面からさせていただこうと思う。
既にパイオニアを遊ばれている方にとっては退屈な話かもしれないが、最後までお付き合いいただけると幸いだ。
パイオニアとは?
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先月10月に発表されたばかりのパイオニアは、「スタンダード」「モダン」「レガシー」「ヴィンテージ」などと並ぶ公式の新たな構築フォーマットであり、カードプールとしては『ラヴニカへの回帰』ブロック以降、基本セットでは『基本セット2014』以降のセットが使用可能である。
詳しい環境の中身についてはこれから以下で述べるが、一言で言うなら「ここ10年弱の間における各環境のスタンダードデッキたちがどれも超強化された上でスマッシュブラザーズする環境」と聞くとわかりやすいだろうか。
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また2019年11月21日現在、《溢れかえる岸辺》をはじめとする5種のいわゆるフェッチランドと、《守護フェリダー》《豊穣の力線》《ニッサの誓い》《夏の帳》の4枚、計9枚が禁止カードとなっている。
1. マナベース
マジックにおいて環境を定義する要素の一つはマナベースにある。
マナベースと言われただけだとピンと来ないかもしれないが、「2色の土地を1ターン目から何ターン目まで連続でアンタップインできるのか」などといった尺度である。たとえばモダンやレガシーでは、フェッチランドから基本地形タイプを持つアンタップイン2色地形をサーチできるため、基本的には毎ターンアンタップインし続けることが可能である。
マナベースは安定したデッキを作るための土台であり、同時にデッキ構築の限界を決める制約でもある。環境のマナベースが強ければ4色や5色のデッキも平気で組めるだろうし、その逆に弱ければ単色のデッキが主流となる。
ではパイオニア環境のマナベースは強いのか弱いのかというと、少々特殊な状況にあると言える。
というのもマジックには5つの色があり、2色の組み合わせは10通りあるわけだが、パイオニアにおけるこの10個の組み合わせの間には、厳然たる格差が存在するからだ。
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具体的に説明していこう。まずは10個の組み合わせそれぞれについて、《湿った墓》などの通称「ギルドランド」が使用可能である。
また、アンタップイン・かつダメージ以外の追加条件なしで5色全てを出せる土地として《マナの合流点》がある。
ここまではどの2色でも使うことのできる (とはいえ、マナを出すたびにダメージを食らう《マナの合流点》の使用はアグロでもない限りなるべく避けたいのが通常だ)、格差の存在しない部分である。
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問題はここからだ。10個の組み合わせのうち、いわゆる対抗色 (白赤/青緑/黒白/赤青/緑黒) でギルドランド以外に5~8枚目ないし9~12枚目のアンタップインの2色土地を入れたい場合は、《尖塔断の運河》などの通称「ファストランド」や、《シヴの浅瀬》などの「ダメージランド」といった、最序盤にアンタップインできる強力な土地を使用できる。
これに対し、友好色 (白青/青黒/黒赤/赤緑/緑白) で同様に5~8枚目ないし9~12枚目のアンタップインの2色土地を入れたい場合は、《要塞化した村》などの「シャドウランド」や、《陽花弁の木立ち》をはじめとする「M10ランド」といった、最序盤にアンタップインしづらくイマイチな性能の土地を採用せざるをえなくなってしまう (しかもM10ランドは対抗色にも存在する)。
このマナベースにおける友好色と対抗色との非対称性はパイオニア環境の大きな特徴の一つであり、したがってパイオニアのデッキ構築においては、この制約をいかにして乗り越え強力なデッキを組み上げるかも醍醐味となっている。
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とはいえ、もちろん抜け道はある。たとえばクリーチャータイプを揃えたデッキなら《手付かずの領土》を採用できるし、エネルギーを生み出す手段が多いデッキなら《霊気拠点》が助けになるだろう。
また、パイオニア環境のカードプールはセットが出るたびに広がっていくので、今後発売していくセットで新たに強力な2色土地が出たなら、こうした非対称性はなくなっていくかもしれない。
カードプールに新たなカードが加入することで環境のマナベースが変化する瞬間は新デッキを構築するチャンスとなるため、なるべく見逃さないようにした方が良さそうだ。
2. クリーチャー
パイオニアはクリーチャーがとても強い環境である。
この10年余りのスタンダードは、そのほとんどがクリーチャー同士またはクリーチャーとプレインズウォーカーとの戦闘によって定義されてきた。であるならば当然その総決算たるフォーマットであるパイオニアは、クリーチャーをいかに効率よく展開しそして妨害を乗り越えて攻撃するかという部分が主要な争点となってくる。
『赤緑ストンピィ』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
4 | 《ラノワールのエルフ》 |
4 | 《エルフの神秘家》 |
4 | 《ゴブリンの熟練扇動者》 |
4 | 《軍勢の戦親分》 |
4 | 《恋煩いの野獣》 |
3 | 《探索する獣》 |
2 | 《ゴーア族の暴行者》 |
4 | 《乱撃斬》 |
4 | 《むかしむかし》 |
1 | 《争闘+壮大》 |
4 | 《密輸人の回転翼機》 |
2 | 《エンバレスの宝剣》 |
7 | 《森》 |
6 | 《山》 |
4 | 《踏み鳴らされる地》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
2 | 《漁る軟泥》 |
2 | 《栄光をもたらすもの》 |
2 | 《削剥》 |
2 | 《丸焼き》 |
2 | 《真髄の針》 |
2 | 《霊気圏の収集艇》 |
1 | 《英雄的介入》 |
1 | 《溶岩コイル》 |
1 | 《セテッサ式戦術》 |
特に各スタンダード環境において主役を張ってきた2~4マナ域のクリーチャーたちの層の厚さは群を抜いており、また同種系統の能力を持つクリーチャーが2種8枚積めたりもするので、過去強かったクリーチャーたちをマナカーブ通りになるよう適当に放り込んでも、それなりの強さになってくれることは間違いない。
だが、だからこそパイオニア環境においては単なるマナカーブ以上に積み上げのバリューが求められる。わかりやすく言えば「ぶん回りの強さ」とも言い換えられるだろうか。
たとえば2マナ域→3マナ域→4マナ域と順調に展開したとき、それはきちんと相手が対処しえないものとなっているかどうか。自分が持ち込んだパターンは、相手が持ち込んだパターンを上回れるものであるかどうか。
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もちろんそうしたパターンは必ずしも「攻撃する」ことによってのみ実現する必要はなく、たとえば《氷の中の存在》や《若き紅蓮術士》などのシステムクリーチャーを使った「ぶん回り」を作っても構わない。
『イゼットフェニックス』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
4 | 《氷の中の存在》 |
4 | 《弧光のフェニックス》 |
4 | 《選択》 |
4 | 《乱撃斬》 |
4 | 《稲妻の斧》 |
4 | 《航路の作成》 |
4 | 《イゼットの魔除け》 |
2 | 《巧みな軍略》 |
2 | 《胸躍る可能性》 |
4 | 《癇しゃく》 |
4 | 《宝船の巡航》 |
5 | 《島》 |
3 | 《山》 |
4 | 《蒸気孔》 |
4 | 《尖塔断の運河》 |
4 | 《シヴの浅瀬》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
3 | 《厚かましい借り手》 |
3 | 《栄光をもたらすもの》 |
2 | 《削剥》 |
2 | 《丸焼き》 |
2 | 《軽蔑的な一撃》 |
2 | 《霊気圏の収集艇》 |
2 | 《神秘の論争》 |
1 | 《否認》 |
だがいずれにせよ「相手クリーチャーによるぶん回り」とは向き合う必要がある環境であることは間違いないため、クリーチャー以外の手段で「ぶん回り」を作るなら、そうした相手に対して何らかの手段でダメージレース的、ないしはコントロール的な勝算が必要となる。
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また『カラデシュ』が使用可能カードプールに含まれていることから、クリーチャーそのものではないが「機体」を使うという選択肢もある。
特にスタンダード当時は禁止カードにまで指定された《密輸人の回転翼機》はパイオニアでも環境を定義する1枚であり、このカードを自身で使うか、はたまた自分の「ぶん回り」コンセプトで乗り越えるかという二択は、パイオニアでデッキを作るにあたって常に念頭に置いておく必要があるだろう。
『黒単アグロ』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
4 | 《血に染まりし勇者》 |
4 | 《漆黒軍の騎士》 |
4 | 《夜市の見張り》 |
1 | 《どぶ骨》 |
4 | 《屑鉄場のたかり屋》 |
4 | 《残忍な騎士》 |
3 | 《悪ふざけの名人、ランクル》 |
4 | 《致命的な一押し》 |
4 | 《思考囲い》 |
4 | 《密輸人の回転翼機》 |
15 | 《沼》 |
4 | 《ロークスワイン城》 |
1 | 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 |
4 | 《変わり谷》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
4 | 《強迫》 |
3 | 《害悪な掌握》 |
2 | 《帆凧の掠め盗り》 |
2 | 《ゲトの裏切り者、カリタス》 |
2 | 《見栄え損ない》 |
2 | 《悪性の疫病》 |
2 | 《神秘の論争》 |
1 | 《否認》 |
『青白ミッドレンジ』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
4 | 《スレイベンの検査官》 |
3 | 《無私の霊魂》 |
4 | 《厚かましい借り手》 |
4 | 《反射魔道士》 |
4 | 《呪文捕らえ》 |
4 | 《大天使アヴァシン》 |
4 | 《密輸人の回転翼機》 |
1 | 《軽蔑的な一撃》 |
2 | 《時を解す者、テフェリー》 |
4 | 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 |
2 | 《残骸の漂着》 |
7 | 《平地》 |
6 | 《島》 |
4 | 《神聖なる泉》 |
4 | 《氷河の城砦》 |
2 | 《灌漑農地》 |
2 | 《アーデンベイル城》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
3 | 《厳粛》 |
2 | 《拘留代理人》 |
2 | 《軽蔑的な一撃》 |
2 | 《正義のうねり》 |
2 | 《至高の評決》 |
2 | 《安らかなる眠り》 |
1 | 《霊気の疾風》 |
1 | 《ドビンの拒否権》 |
3. マナクリーチャー
パイオニアは2~4マナ域のクリーチャーが強いと述べたが、1マナ域のクリーチャーはというとそれほど強くはない。
もちろんスタンダードならプレイアブルであろう「パワー2+α」くらいのスペックを持ったクリーチャーであれば好きなだけかき集めることができるが、それだけでは上で述べたような積み上げのバリューが得られづらく、環境的に十分なほどの「ぶん回りの強さ」が手に入らないからだ。
ただし、例外的に強い1マナ域のクリーチャーもいる。それはマナクリーチャーだ。
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マナクリーチャーを使えば、たとえば先手なら相手が環境的に弱い1マナ域のクリーチャーを出した返しで、強力な3マナ域へとジャンプアップすることができる。
しかも《ラノワールのエルフ》とその同型再録である《エルフの神秘家》が2種8枚使えるのに加えて《むかしむかし》もあるので、このジャンプアップをコンセプトとするデッキは高い安定性を誇る。
それに加え、後述する除去の弱さの問題もあって、1ターン目のマナクリーチャーが返しで除去される確率はそこまで高くないのだ。
『緑単信心』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
4 | 《歩行バリスタ》 |
4 | 《ラノワールのエルフ》 |
4 | 《エルフの神秘家》 |
4 | 《炎樹族の使者》 |
4 | 《大食のハイドラ》 |
3 | 《漁る軟泥》 |
4 | 《翡翠光のレインジャー》 |
4 | 《むかしむかし》 |
4 | 《アーク弓のレインジャー、ビビアン》 |
4 | 《世界を揺るがす者、ニッサ》 |
15 | 《森》 |
2 | 《ギャレンブリグ城》 |
4 | 《ニクスの祭殿、ニクソス》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
3 | 《ナイレアの信奉者》 |
3 | 《英雄的介入》 |
2 | 《再利用の賢者》 |
2 | 《探索する獣》 |
2 | 《霊気のほころび》 |
2 | 《造命師の動物記》 |
1 | 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 |
2ターン目から高スペックの3マナ域を出したり、スノーボール型 (プレインズウォーカーなど、ターン経過によって威力が増すことを指す) の強力な3マナ域を出したりしてプレッシャーをかけていく戦略は、本来マナを有効に活用しづらい序盤をスキップすることで展開が加速して単純にとても楽しいことはもちろん、パイオニア環境においても極めて有効でもある。
「困ったら何はともあれエルフ8枚+《むかしむかし》からデッキを構築する」というのも、基本的にはそう間違った選択肢とはならないだろう。
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また、《金のガチョウ》や《森の女人像》といった好きな色が出せるマナクリーチャーたちはマナベースの強化に資するため、多色化にも貢献する。
3色以上でデッキを組む際などは、土地の弱さを補う存在としても重宝するであろうことは間違いない。
4. 単体除去
パイオニアはクリーチャーが強い環境だと書いたが、その原因の一つは他の環境と比べたときの単体除去の弱さという点にもある。
パイオニア環境には《剣を鍬に》はおろか、《稲妻》も《流刑への道》もない。《致命的な一押し》はあるが、フェッチランドは禁止で序盤に能動的には「紛争」を達成しづらい。
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とはいえ環境に《密輸人の回転翼機》がある以上、1マナインスタントで2マナが対処できる上に状況によってはそれ以上も目指せるカードとして、それでも《致命的な一押し》が環境で最も優秀な除去であることに変わりはない。
一方赤の除去はというともっと悲惨で、1マナ域の除去で最もハイスペックなのは《乱撃斬》か、せいぜい《焦熱の衝動》《稲妻の斧》などになってしまう。
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ただその除去の弱さもテンポ面で見た場合の話で、除去できる範囲やおまけの強さで見た場合、2~3マナの除去には優秀なカードが数多く揃っている。
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また、そうした強力な呪文を再利用する手段も豊富に存在する。ミッドレンジやコントロールは、ある程度のライフ損失は受け入れつつ要所となるクリーチャーやプレインズウォーカーだけピンポイントで撃ち落として、テンポやリソース差での勝利を目指す形になるだろう。
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また、除去ではないが同じく1:1交換でリソースを削るカードとして、《思考囲い》はパイオニア環境でも最強クラスの1マナアクションである。
余談だが、2種8枚のマナクリーチャーと《致命的な一押し》《思考囲い》で強力な1マナ域が緑と黒に固まっていることもあり、現状ではパイオニアは緑と黒が比較的他の色より強い環境になっていることは覚えておいた方がいいかもしれない。
『黒緑鱗』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
4 | 《歩行バリスタ》 |
4 | 《搭載歩行機械》 |
4 | 《石とぐろの海蛇》 |
4 | 《実験体》 |
4 | 《鱗の召使い》 |
4 | 《巻きつき蛇》 |
4 | 《硬化した鱗》 |
4 | 《突然の衰微》 |
3 | 《むかしむかし》 |
3 | 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 |
7 | 《森》 |
1 | 《沼》 |
4 | 《草むした墓》 |
4 | 《花盛りの湿地》 |
4 | 《森林の墓地》 |
2 | 《ラノワールの荒原》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
4 | 《強迫》 |
4 | 《虚空の力線》 |
3 | 《戦慄衆の侵略》 |
2 | 《致命的な一押し》 |
2 | 《軍団の最期》 |