ゾイド生みの親徳山氏5656万字!?限界ロングインタビュー 第6回

──ジオラマは立石(※2)で撮ったんですか?

徳山 うん、地下でね。でかいコックピットを作って、タミヤの1/24の人形を材料に作ったんですよ。今の社内には、この頃を知っている人がだれもいなくて。こうした苦労をいろいろ重ねて、ようやく『ゾイド』ができたんです。決して魔法のようにできたんじゃないってことを、僕は信じてもらいたい(笑)。

──ほんとに貴重な話ばかりで、聞くことができて嬉しいです。

徳山 なかなか話す機会もないですしね(笑)。それで、最初のときはまだ敵側のゾイドがいなかったけど、なんとかある程度ラインナップも揃ってくるじゃないですか。ほんと髪の毛が真っ白になる原因だったんじゃないか(笑)ってくらいの苦労もあったりしながら、ようやく我々若手は、「レッドホーン」っていう商品を一から作るんですよ。ビガザウロやゾイドマンモスとかは、先輩が作ってくれたメカボックスなんですけど、でもこのレッドホーンって、チューン型のメカボックスになっていて、若手が作ったんですね。

▲徳山さんたち若手スタッフが初めて一から作ったゾイド、レッドホーン。帝国のゾイドはエンジ色という設定を初めて具現化したものでもある。

──おお! 若手のオリジナルということですね。

徳山 そうですね。このレッドホーンができたことで、やっと帝国と共和国が対立する、敵と味方が揃って登場する世界になったんです。まあ先輩方の真似はしたけど、このコンパクトなメカボックスを作ったことで、こいつがやがてサーベルタイガーになって、シールドライガーになるんですよ。だから、僕らを一番ほめたいなと思いますよ(笑)。ビガザウロもマンモス、ゴドスに受け継がれていったけど。ある意味、一番僕の思い出に残っているゾイドは、このレッドホーンかもしれない。

──なるほど。しかもシールドライガーは、今のワイルドライガーにまで脈々と継承されていくわけですし。『ゾイド』の進化として大事な一体ですね。

徳山 レッドホーンがなかったらサーベルタイガーはないわけですからね。『ゾイドワイルド』のコンセプトデザインのサーベルタイガーを、若手と一緒にワイルドライガーに仕上げたのと、僕の中では同じようなやり方ですから。
 
▲ワイルドライガーの祖とも言えるサーベルタイガー(動画) エンジ色だった。
 
 そしてこのレッドホーンでやっと、開発当初のコンセプトにあった、帝国側は「装甲をかぶせたデザイン」、「色はエンジ系」っていう設定を具現化できたんですよ。一方の共和国はゾイドとの共生派だから、ちょっとメカが剥き出しになっているデザインなんですよね。
 こんな感じのラインナップが出てきて、だんだん僕らなりの『ゾイド』ができるようになってきたんですよね。なんというか、先輩も少し僕らを見守ってくれるような感じになってね。それが1984年頃かな。
 その頃、うちのエンジニアの二階堂が、これはもう○○○をやるしかない! ……ゴジュラスだ! って(笑)。そして、藤野がデザインを仕上げちゃいました(笑)!
 

▲肉食恐竜最強のティラノサウルスをモチーフとしたゴジュラス(動画) 。直立二足歩行の大型電動ゾイドとしてシリーズの看板になった。

──そこは伏せ字にしますね(笑)。

徳山 じゃあ……最強のティラノサウルスをやるんだっていって(笑)。これはメカボックスもレッドホーンで自分たちなりの処理ができて、ギミックがどんどん展開されるようになってきた結果ですね。マイクロゼンマイはある程度動きが限定されますから、だからこそ、自分たちのものになってきたっていう感じがしました。今回の『ゾイドワイルド』でも当然我々はチャレンジしてますが、まあ2本足の肉食恐竜って真打(しんうち)みたいなところがありますしね。

※2 立石:旧トミー本社、現在のタカラトミー本社の所在地。東京都葛飾区立石。


徳山 光俊(とくやま みつとし)
『ゾイド』立ち上げに携わったスタッフのひとり。『ゾイドワイルド』ではゾイドのデザイン原案を担当。溢れんばかりの『ゾイド』愛を若い世代に伝えるべく奮闘中。

 

次回は8/25(土)更新!!