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<第3回>国語辞典編さん者が「うんこ」「ちんちん」を超ガチで解説!! 〜35万人が投票した「うんこ・ちんちん総選挙」をひもとく〜

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「“うんことちんちん”は、いわば“水と空気”なんです」
 
——今冬、コロコロコミック500号の記念イベントとして実施した「うんこ・ちんちん総選挙」!! 編集部の予想をはるかに超える反響で、およそ35万人ものネットユーザーが投票した!
 
“バズ”という名の熱狂。コロコロオンライン編集部は、このイベントの盛り上がりをひもとくことが、メディアとしての責任であると感じ、ある方にインタビューを申し込んだ!!
 
その方とは『三省堂国語辞典』の編さん者である、飯間浩明さん!!!! つまり、超・超・ガチの日本語学者だ!! 長年にわたってコロコロ読者のハートをつかんでてきた、「うんこ」と「ちんちん」に、今、迫る……!!!
 

<プロフィール>

飯間浩明(いいま・ひろあき)
1967年、香川県生まれ。国語辞典編さん者。『三省堂国語辞典』編集委員。国語辞典を楽しむイベント「国語辞典ナイト」の開催や、Twitterでの日本語に関する投稿など、幅広いスタイルで情報を発信している。近著に『知っておくと役立つ 街の変な日本語』(朝日新書)、『日本語をつかまえろ!』(毎日新聞出版)、『つまずきやすい日本語』(NHK出版)、『ことばハンター』(ポプラ社・児童書)、『四字熟語を知る辞典』(小学館)など。
 
Twitterアカウント:@IIMA_Hiroaki

 
<目次>
第1回(2月16日更新)
■「うんこ」はカジュアル、「うんち」はリアル
■辞書に「ちんちん」があって「ちんこ」がない理由
 
第2回(2月23日更新)
■「キミ、小さいのを下げてるね」〜うんちんの語源に迫る
■うんこ派の心はピュア
■人によって「ちんこ」でも「ちんぽ」でもいい
 
第3回(3月1日更新)
■「『くそ』は国宝レベルの言葉」
■「人気投票」から「総選挙」へ 〜言葉は時代と共に変化する
 
【取材余話】(3月1日更新)
■コロコロを読んで見つけた気になる言葉
■『ドラえもん』で使われていたから辞書に載せた言葉
 

「『くそ』は国宝レベルの言葉」


ーー前回は、辞書は「今の時代、この言葉はこういう風に使われていますよ」という観察記録、とのお話でした。言葉の意味は時代によって変わっていくんですね。
 
最近、Twitterで取り上げた話題でいうと、私は驚いたら「ガーン」と言いますけれど、今の小学生は「ガーン」とは言わない。漫画を見ると、書き文字として使われてはいるけれど、擬音をそのまま口には出さないんですね。それが今の人の感覚らしいぞ、と。そうすると、「ガーン」という感動詞は、今やちょっと古いのかな、となってくる。
 
だからと言って、どこかの偉い人が「もっと『ガーン』を使うようにしなさい」とか、「最近の人は『ガーン』と言わなくなってきたから言葉が乱れている」とかは言わないですよね。時代によって、用途や意味が変わっていく。それが言葉のおもしろいところなんです。
 
——反対に、辞書から消えていく言葉もあるのでしょうか。
 
辞書が、言葉に死亡宣告するようなことになると気の毒なんですけれど、観察した結果、今使われていないとなると……。「使われてない」という判断はとても難しくて、高年層の間ではなお使われているケースもあるんですね。
 
その場合は、「〔古風〕」というマークを付けます。それと、「〔やや古風〕」という分類もあって。たとえば、「アベック」という言葉。今では「カップル」と言う人が大多数ですが、決して使われていない言葉ではないので、削ってはいません。
 
一方で、70〜80歳以上の人さえ使わない・誰も知らない・むしろ辞書に載っていると異様だ、となれば退場してもらうこともあります。恐らく、それぐらいの認知度になると、その言葉が辞書からなくなることを誰も惜しまないんですね。
 
——「辞書から消えた言葉」というテーマで本が1冊書けそうですね。将来的に、「うんこ」「ちんちん」という言葉も変わっていく可能性があるのでしょうか。
 
100年ぐらいでは変わらないと思います。何百年かは、まだ言うでしょうね。1779年の文献に、「うんこ」という単語が出てきます。江戸時代です。それ以来、200年以上「うんこ」と言ってきているわけですから、あと何百年かは「うんこ」でしょうね。「ちんこ」や「ちんぽ」も残ると思います。
 
なぜかというと、生活する上で根本的な言葉だからです。むしろ、変わると困るんですね。根本的な言葉は変わらないんです。「目」とか「鼻」とか「口」がくるくる変わっていったら、言葉の意味が通じずに日常生活ができないですからね。「雨」とか「雲」とかもそう。「雨」はずっと「雨」だし、「雲」はずっと「雲」だしね。「目」「鼻」「口」も奈良時代からずっとあるわけです。
 
——「うんこ」「ちんちん」から始まって、ここまでためになる内容になるとは思いませんでした……!
 
ああ、「うんこ」と言えば、奈良時代には「うんこ」はありませんでしたが、「くそ」はありました。
 
「くそ」は、もう千数百年にわたって使われているわけです。国宝級のことばですね。
 
あるいは、「ネコババ」という言葉がありますけれど、「ばば」は江戸時代の言葉で「くそ」のこと。今でも関西などで使います。私は「うんこ」の類語を数多く知っているわけではないですけれど、「はこ」なんて言い方もあります。
 
調べてみましょうか。……あ、これだ、これだ。「大便を受ける容器……転じて、大便」とあります。平安時代の言葉ですね。「はこする」という動詞もあって。
 

 

「人気投票」から「総選挙」へ 〜言葉は時代と共に変化する

——「トイレする」みたいな感じでしょうか。
 
はいはい、「トイレする」ね。……ああ、「はこすべからず」という例文があります。つまり、「大便すべからず」という意味なんですね。これはさすがに廃れましたが、こんなふうに、何かのきっかけで、新しい言葉が生まれ、広まっていくことはあります。
 
昔、「人気投票」と言っていたのが「総選挙」になったのは、もちろんAKB48が広めたからです。「人気投票」にはない新しさを感じて、「総選挙」という言い方を人々が支持したんですね。遠い将来、「うんこ」や「ちんちん」にもそういうことが起こるかどうか……。まあ、今のうちから全否定はしないでおきましょう。
 
——ありがとうございます。「ひもとく」を『三省堂国語辞典』で調べると、「なぞを明らかにする」とあります。日本を代表する言葉のプロの見解を聞くことができて、大変勉強になりました!
 
この先は、取材のこぼれ話を掲載! 「コロコロを読んで見つけた気になる言葉」と「『ドラえもん』で使われていたから辞書に載せた言葉」の2本立てだ!!
 

【取材余話】「コロコロを読んで見つけた気になる言葉」

——飯間さんの著書やTwitterを拝見すると、「昆虫採集」ならぬ「(言葉の)用例採集」を普段からしているとありますが、コロコロコミックを読んでみて、気になる言葉はありましたか?
 
言葉もさることながら、「!!」で終わるセリフが多いのに気づきました。もしかして、セリフ全体の半分以上あるんじゃないかな。言葉の面では、「クリーチャー」「ターン」「コンボ」などのゲーム関連の言葉が賑やかですね。「むずい」「かっちょいい」「デコる」など以前からの言い方も健在なのを確認しました。
 

逆質問ですが、近年のコロコロコミックでよく使われている言葉はありますか?
 
——「超」「激」「爆」が、よく枕詞になっています。
 
「超」という言葉は、80年代からありましたな。後には「超絶」とかも。この雑誌にも「攻撃力…、超絶アップや~~!!」というセリフがありますね。「激」は70年代ぐらいから使われていたかな。写真家の篠山紀信さんの「激写」ね。爆は「爆睡」とか言いますね。最近だと「爆買い」とか。昔から使われている言葉が、子どもの言葉の最前線にあるというのはおもしろいですね。
 

『ドラえもん』で使われていたから辞書に載せた言葉

——飯間さんはコロコロコミックをお読みになったことはありますか?
 
『ドラえもん』が大好きで。よく、友だちに借りて『ドラえもん』を読んでいました。実は『ドラえもん』に載っていたから、辞書に載せた言葉があるんですよ。
 
——えっ、そうなんですか!?!? どんな言葉ですか?
 
「うっちゃらかす」です。作中に「宿題をうっちゃらかして遊ぶ」と書いてあるんですね。
 
今の人たちは使わない言葉だと思いますけど、辞書に載せました。『ドラえもん』に載っているなら、辞書に載っててもいい言葉だろうと。その極端な例が「うっちゃらかす」です。
 
——『ドラえもん』が辞書に載せる・載せないの一つの基準になっているとは……! 改めまして、貴重なお話をありがとうございました!!


<まとめ>
「うんこ」と「ちんちん」の語源をたどると、本来、どちらも親しみが込められた言葉であり、それが「うんこちんちん総選挙」での35万票もの投票に結びついたとみられる。そして、加トちゃんはレジェンド。投票してくれたみんな! 本当に、本当にありがとう!!
 
そして、本来なら社会人が口にするのをはばかるような言葉でも、草原のように広い心と海のように深い知見をもって解説してくれた飯間浩明さんに、最大級の感謝を申し上げます!!!!

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