ゾイド生みの親徳山氏5656万字!?限界ロングインタビュー 第2回

 で、あるときソーラーストーム(※3)がやってきて、ゾイドたちはそのときに本能を一気に解放しちゃって、人間たちは初めて彼らの攻撃的な姿を目の当たりにするんです。そうすると今度、ゾイドは人間にとって怖いものとして扱われるので、強制的にゾイドを使おうとするデスメタル帝国(※4)的な勢力が出てきたり。一方では一部のゾイドを愛する者たちが自警団を作ったりする、という歴史なんです。

──ああ、やっとつながりました! 昔の『ゾイド』の帝国と共和国もそんな感じでしたよね。兵器的に扱う帝国と、共生をする共和国という、ゾイドに対する考え方の違いがありましたよね。

徳山 そうなんだよね。要するにテーマは、「ゾイド」っていうメカ生体が地球であろうとどこだろうと、人間が関わる以上、やっぱその星の人間が共生していかないと、惑星の危機が訪れるかも、ということなんですよね。人間と野生動物の共生、それが骨子の部分かなと思っています。
 一応僕の中では、ワイルドブラストのキーの設定ってあるんですけど、もともと超文明の頃に地球に降り立った連中が、小型のゾイドにパイロットが乗っていますよね。その彼らは、コントローラーというか手綱みたいなものって持っていたはずなんですよ。それがオーパーツ化してたんじゃないかって考えて、デザインしたんです。もちろん、ここまでの話、それがどこまでアニメなどになるかは、また別の話なんですけど。

── あくまで徳山さんの頭の中にある、イマジネーションの発想として、ってことですよね。

徳山 それがないとデザインができないですから。例えばこれがコックピットの絵なんですけど、このレバー部分は繋がっているんですよ。これが「人機一体」の手綱にあたるんです。一方の帝国はゾイドを機械としてしか扱わないので、こんなふうになるのかなとか考えていくんです。

──「人機一体」や「地球」っていう要素は、『ゾイドワイルド』の企画が最初に立ち上がる段階からあったものなんですか?

徳山 えーっとね、これがさらに前の段階の資料なんですけど……。

──どんどん貴重な資料が出てきますが、いいんでしょうか(笑)。

徳山 まあまあ(笑)。でね、この段階から、「人が乗るタイプ」っていうのはあるんですね。「地球」であるってことも、『ZOIDS concept art』(※5)のベースにあったんで、最初からですね。で、このときはデザインが若干機械的で、乗るときもiPadみたいな端末を乗せて、背景もちょっと現代ぽいかな。さらに、ちょっと子供向きでいこうと思って、キャラクターなんかもちょっと『コロコロコミック』を意識して描いたりしてたんだよね(笑)。

──ありがとうございます(笑)。

徳山 でも、この段階だとまだ「本能解放」がないんですよね。『ゾイド』ってどうしてもアクションが重要なんで、仮にこの「人機一体」タイプで、端末で制御してってなると、意外とアクション的な差が出ないじゃないですか。そこで今の時代で、昔の『ゾイド』とも違って、武器ではない、何かアクション的なもの……って考えて、「牙を剥く」っていう発想がチームの皆の中で固まってきたんです。生物の世界なわけだから、現実的に何かモチーフがないといけないわけです。『ゾイド』って、ビーム砲をいっぱい撃つ世界じゃないですしね(笑)。

※3 ソーラーストーム:太陽の表面の爆発・太陽フレアで、吹き出した電磁波や粒子などが地球まで及ぶ現象。
※4 デスメタル帝国:アラシやベーコンらの前に立ちふさがる、アニメ版の敵勢力。ゾイドをあくまで兵器として操る。
※5 『ZOIDS concept art』:ホビージャパン社から発行されている、徳山光俊氏の画集シリーズ。『ゾイド』シリーズの世界観を、新たに整理、引き直し、イラストと簡易なテキストストーリーでまとめたもの。既刊4巻。

 

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