ゾイド生みの親徳山氏5656万字!?限界ロングインタビュー 第5回

──そうした時期を経て、徳山さんはトミーに入社されるわけですよね。『ゾイド』にはいつ頃関わるのですか?

徳山 僕は入社したのが1981年で、最初の担当が『ZOIDS』なんですよ。それは『ゾイド』以前の、アメリカとか海外向けに準備されていた別個の商品なんです。当時のトミーは、小さなマイクロゼンマイのついてるおもちゃのシリーズが人気商品だった。そのなかのひとつが、この海外向け『ZOIDS』だったんです。ラインナップとしては3体だけ用意されていたんですけど、個々のロボットには名前すらもついてない、かわいそうな状態でね。
 そして、入社したての僕に「これを国内でも売れ」っていう指示が来たんです。そこで『メカボニカ』っていう名前にして、ホビーショーで最初に売ったんです。(当時の資料を指差して)これなんですけど、でも不思議なことに、もうすでに3体に共和国のマークがついてるんですよね(笑)。


▲ストーリー設定もなく3体だけが発売された『メカボニカ』。しかしよ~く見ると、コックピット付近に共和国のマークが! 下の写真では赤い円で囲まれているのがおわかりだろうか?

──ああ、ほんとだ! 雷のマークがついてるじゃないですか!(笑)

徳山 ここはなかなかすげえなあ、と思います(笑)。ただこれ、シリーズでもなんでもなく、単発の商品なんですよね。マイクロゼンマイのシリーズがいっぱいあって、そのなかのひとつにすぎない。
 でも僕は、『メカボニカ』を見たときに、これって恐竜の骨みたいなもんじゃないか、って思ったんですよ。バラバラのものを、さも恐竜の骨を復元するかのごとく組み立てて、最後にゼンマイを回すと、今と過去がくっついちゃう。その、『メカボニカ』に触発された自分自身の発想に、当時の僕は相当興奮しました。たぶん、普通の人よりもハマっちゃったんだと思います。しかも、ゴムキャップもあるし、金のメッキもあるし、ゼンマイで動いて、接着剤なしで組み立てられるしと、今の『ゾイド』の要素が全部入ってるんですよね。
 それから当時はね、僕の好きな玩具に『チョロQ』(※5)があって……。

──タカラの大ヒット商品ですね。

徳山 あの頃は、まさかのちにトミーと合併(※6)することになるとは思わなかったけどねぇ(笑)。で、『ダイアクロン』(※7)とか『チョロQ』がブームになり、いろんな雑誌や書籍に取り上げられていた。だから、オリジナルキャラクターっていうのをやったほうがいいんじゃないのかな、みたいな雰囲気が、当時のトミー社内には高まってたんです。ただ、トミーって会社は、技術はあるんですけど、当時はソフトを作るのがそんなにうまくなくてですね。


▲タカラトミー「アニュアルレポート2017」より抜粋。旧トミーから『ゾイド』が登場した1980年代には、旧タカラが『チョロQ』や『トランスフォーマー』をヒットさせていた。

──ソフトというのは、今でいうIP(※8)みたいなことですよね。

徳山 そうそう。もともとトミーは、「トミー工業」っていう開発の会社が親みたいな立ち位置だったんですね。僕が入社したのは「株式会社トミー」という会社で、そこはマーケティング、販売、宣伝を主な業務とする部門だった。そうしたら、2代目の富山允就(故人)という会長が、面白いものを作るために、現場、営業、若い人まで含めて、全社でアイデアコンテストをやりましょうっていうことになり、ぼくもそれに参加したんです。入社した翌年、1982年のことでした。

──けっこう大胆な発想ですね。

徳山 ところが、僕は絵は描けたんだけど、開発マンではないんで、ネタがないわけです。でも『メカボニカ』があった。しかも、当時は某スペースオペラの映画シリーズが大ヒットして流行っていたんで、『メカボニカ』にも敵味方をつけて1つの大きなシリーズにしたらいいんじゃないか、と考えたんです。そしてだいたい1ヶ月くらいで世界観をつけて、シリーズ化する企画を書いて、コンテストに出したんです。さすがにその企画書はもう残ってないですけど、色付きじゃなくて全部鉛筆で描いて絵を描いてね。記憶している限りだと、絵の枚数は多かったのと、『メカボニカ』を元にしていたからか、もうちょっと骨っぽかった気はするなあ……。
 で、それをコンテストに出したら1等賞になっちゃったという……これで運を使い果たしたのかな(笑)。だから僕の功績をひとつだけ挙げるとすれば、アイデアコンテストにネタがなくてこれを出したっていうことかもしれない(笑)。

──いやいやいや(笑)。今も『ゾイドワイルド』で活躍されてらっしゃるじゃないですか。

徳山 でもまぁ、『メカボニカ』はほんとに好きだったし、何よりも恐竜図鑑が好きだったんで、現在の『ゾイド』につながる、こういうものができる、と自分なりに考えたのでしょう。つたない絵だったかもしれないけど、敵味方もこうだったらいいよとか、とにかくいっぱい種類を描いたことが、よかったのかもしれない。

※5 チョロQ:旧タカラから1980年に発売された、プルバックゼンマイのミニカー。デフォルメされた自動車がモチーフとなる。
※6 合併:2006年にタカラとトミーが合併、タカラトミーとして再出発した。
※7 ダイアクロン:旧タカラから1980年に発売された変形合体ロボット玩具シリーズ。
※8 IP:Intellectual Propertyの略。知的財産。エンターテインメント業界では、有力な作品タイトルやシリーズ、キャラクターなどを指すことが多い。


徳山 光俊(とくやま みつとし)
『ゾイド』立ち上げに携わったスタッフのひとり。『ゾイドワイルド』ではゾイドのデザイン原案を担当。溢れんばかりの『ゾイド』愛を若い世代に伝えるべく奮闘中。

 

次回は8/18(土)更新!!