【エヴォロイド】カラーチェンジで違った印象に!! 「EVV-GC1 ガンクロン」&「F-GAO-G1 ファンガオ(皇吼)」のカラーアレンジを紹介!

妄想ショートストーリー

 戦いが起これば、誰かが傷つく。それは敵であったり、味方であったり、はたまた自分であったりする。

 そのエヴォロイドは戦いを恐れた。兵器として開発されながら、機体に宿ったAIが最初に覚えたのは恐怖だった。

 例え、鋼鉄のキャタピラで地面を踏みしめようとも幾重もの厚い装甲に覆われていようとも、学習した『恐怖』を上書きできるプログラムはない。そして、エヴォロイドが自我を持つ以上、それを消すということもできないのが現状であった。

 そうした個性ゆえに戦線から離れ、救護活動用にチューンされた『ガンクロン』がいた。“彼”には『レスキューガンクロン』の呼称が与えられ、明るいスカイブルーと黄色の装甲に、左腕には特異な装備を引っ提げて任務に従事していた。

 島の中央に位置するなだらかな山岳を登りながら、微かな救難信号を辿る。

「救難信号はこの辺りか」
『はい。この先の谷間から救難信号を受信しました』
「と、いうことは……っと」

 そのパイロットは「兵士」というにはノンビリとした様子で、指差し確認しながらペダルやコンソールを操作し、ガチャンと音を立ててスロットルを下げる。

 すると、『レスキューガンクロン』がギクシャクした動きで減速し、最後は少しつんのめるようにして停止する。

『急な操作は足回りが傷みます。もう少し丁寧に操縦してください』
「軍医にあれこれと求められてもなぁ」

『レスキューガンクロン』のパイロットは顎ヒゲを撫でながら、緩慢にコンソールを操作して権限を移譲する。

「それに今回は私の出番はないだろうし。お前さんの指示に従うよ」
『ボクにそんな意思決定権はありません』
「餅は餅屋、というだろう? 機械の修理はお前さんの専門だ。ふむ、この辺の地盤は不安定みたいだな」

 そう言って、パイロットはサバイバルキットを背負って、コックピットから出る。

 そして、『レスキューガンクロン』の機体を伝って地面に降り立つと、目の前の崖の縁へと歩いていく。

 その後ろで『レスキューガンクロン』は人型形態へと変形。一度左腕部のコンプレッサーを外して、位置を変えて再び装着する様はお世辞にも効率的とは言えなかった。

「見るたびに思うが、面倒なプロセスだな」

  パイロットは肩の小型カメラを作動させつつ、その様子にぼやいた。やがて、崖の縁にたどり着き、下をのぞき込めば目も眩むような高さ。はるか下方に森の木々が波のようにゆらめいている。

 と、その中ほどに少しだけ張り出した岩棚の合間。まるで箸に摘まれた豆のように、器用に『ジェットン プロトタイプ』が挟まっていた。実験中にトラブルが発生したらしく、そのままこの地域に不時着した。

『プロトタイプ』が持ち込むトラブルはもはや、彼らにとっては日常茶飯事であったが、今回の不時着ポイントは少々厄介だ。

 パイロットはため息をつくと、『レスキューガンクロン』の方へ振り返った。

「要救助機体、視認。これより救助活動に入る」
『了解。状況確認』
「私が降りるしかないか、よっこらせ」

 パイロットは重い腰を上げて、今一度『レスキューガンクロン』の元へ戻るとサバイバルキットからハーネスとワイヤーを出して自分に装着する。それからワイヤーの反対側を『レスキューガンクロン』の左腕部についているアンカーハンドの内側にあるウインチにセットする。

「気をつけてくれよ」
『承知しました』

 パイロットが今一度崖の方へ向かっていくと、ゆっくりとそれに合わせて『レスキューガンクロン』はワイヤーを緩めていく。

 そして、崖の縁に立ったパイロットはハーネスに繋いだそのワイヤーを頼りに、ゆっくりと崖下へと降りていく。強烈な山風に煽られながら、崖を蹴って『ジェットン プロトタイプ』へと近づいていく。

「こういうのは、空を飛べる『ジャイロン』向きの仕事だろうに」
『ボクも同意見ですが、人手不足ですから』
「嫌だね。オジさんまで駆り出されるなんてさ」

 愚痴りながら、パイロットは『ジェットン プロトタイプ』の機体に降り立つ。戦闘機形態でキャノピーが上面に向いていたのは幸いであった。

「見たところ大きな外傷はなさそうだが、さて」
『システムがフリーズしているのか、こちらの信号を受け取っていません。手動で立ち上げてみてください』
「やってみるよ」

 パイロットはキャノピー近くのコンソールを開いてパスコードを入力する。

 すると、黒いキャノピーが開き、無人のコックピットが露わになった。元々、無人操作で実験飛行であったから当然である。しかし、コンソールの一切に光はなく、眠っているように真っ暗であった。

 パイロットはコックピットに乗り移り、ハーネスにしていたワイヤーのフックを手近な手すりに引っ掛ける。

「システムが落ちてる。不時着の衝撃か……?」

 緊急用のイグニッションを入れて、システムを起動する。起動スクリプトが流れ、静かに機体が振動を始めた。

「メインシステムに異常なし。損傷箇所はどうも足だな、これは」
『抜け出せそうですか?』
「主機の出力が上がらない。へそを曲げているみたいだ」
『へそを曲げる、とは?』

 『レスキューガンクロン』は自分たちにない器官の名を聞いて疑問をぶつける。

 その反応にパイロットは、思わず口元が緩む。

「不機嫌ってことだ。こいつもウチじゃ古株だからな。雑な扱いに不満があるんだろう」
『ボクたちは機械です。そんな感情論……、いえ、なるほど」

 『レスキューガンクロン』は己の電子頭脳で自己矛盾を発見し、言葉を飲み込んだ。感情論などエヴォロイドにはない、というのは詭弁だ。人間で言う喜怒哀楽があることが観測され、それに伴うシステム不調は『レスキューガンクロン』が証明している。

 そんな制御に困るものがあることに、『レスキューガンクロン』は困惑もしていた。

 しかし、パイロットはコンソールを指差し確認しながら再起動の手順を一つずつ踏んでいく。

「エヴォロイド同士、その辺のケアもするのがお前さんの仕事だな。コイツは無口なぶん、色々と溜め込みやすいんだろうよ」
『よくわかりますね』
「いろんな人間を見てきたからな」

 『レスキューガンクロン』のパイロットは苦笑する。

 パイロットになる前は軍医として現在の部隊に配属され、幸いなことに大きな怪我で運ばれてくる者はいなかった。そのためか、閑古鳥がなく医務室から現場を回るエヴォロイド部隊に回され衛生兵として駆り出されることになった。

 従軍して20年とちょっと。新しい分野の勉強をする羽目になったが、相棒となった臆病な『ガンクロン』は機械らしからぬ機械で彼は興味をそそられた。

『人間を見ていると、わかるのですか?』
「お前たちで言う情報共有からの行動予測、といえばわかるか?」
『それは敵に対して行う思考であって、味方には適用できません』

 これにはパイロットが驚かされた。一方で、なぜ彼らが自分達パイロットに対して従順なのかも理解できた。

 戦闘ではパイロットの判断に対して意見することはある。しかし、それは作戦遂行における判断能力であって単なる状況分析でしかない。

 人と同じように恐怖を覚えながら、『レスキューガンクロン』は感情を押しはかる術を知らない。

「次からは適用しろ。自分たちがよりよくなるためにな」
『同型機とですか?』
「バカ、他の空飛んでる連中とかもぜ~んぶだ」

 パイロットは話は通じるが、いまいち噛み合わないチグハグさにヤキモキしながら再起動した『ジェットン プロトタイプ』のコンソールを見る。

 画面には損傷報告が列挙され、自力での飛行は難しいようだ。

「ガンクロン。こいつは自力で飛べそうにない。アンカーで引き上げてくれ」
『了解。クロー、射出します』

 『レスキューガンクロン』は左腕部を動かし、アンカーハンドを射出する。圧縮した空気によって飛び出したアンカーハンドは、重機に使用する頑強なワイヤーを伸ばしながら弧を描いて崖へと落ちていく。

 アンカーハンドは一度崖の内側に叩きつけられると、パイロットが使用したワイヤーを巻き取りつつそれを頼りに『ジェットン プロトタイプ』へと接近する。

『視界良好。目標を確認』
「よし。腕を上げる。掴んでくれ」

 パイロットはキャノピーに打ち付けられる小石の音を聞きながら、操縦桿を操作する。

 すると、『ジェットン プロトタイプ』の上部。収納されている右腕が展開。腕を掲げて、降りてくるアンカーハンドの目印になる。

 それに合わせて、パイロットもワイヤーを引っ張り誘導する。手慣れた様子でクローハンドが降りてくると、『ジェットン プロトタイプ』の腕をガッチリと掴んだ。

 同時に『ジェットン プロトタイプ』の手もアンカーハンドのワイヤーを掴んだ。

「よぉし! 引き上げ作業開始」
『引き上げ作業開始』

 『レスキューガンクロン』は復唱すると、ワイヤーの巻き取りを開始。左腕部のコンプレッサーが吠えるよう音を立て、『レスキューガンクロン』の超重量級の機体がわずかに引っ張られる。

『想定を超える反応です』

 腰を落として踏ん張りつつ、キャタピラを展開して接地面を増やして機体を安定させる。

 ワイヤーで繋がる『ジェットン プロトタイプ』にも大きな揺れが襲った。

「思ったよりガッチリ食い込んでるな。大丈夫か?」
『こちらは問題ありません』
「おう。プロトの方も踏ん張れよ」

 パイロットはシートベルトをすると操縦桿を握り、おっかなびっくりにフットペダルを踏み込む。

 すると、『ジェットン プロトタイプ』は残る左腕を展開し、自機を離さない岩へと手をかける。そのまま力任せに突っ張ると、ギリギリと装甲を削る音ともに徐々に機体が持ち上がっていく。

「よおし。ガンクロンはそのままゆっくり、引き上げてくれよ……」

 微振動が続くコックピットでパイロットは言いながら、体をこわばらせる。

 瞬間、ドンッ!と体を突き上げる衝撃ともに『ジェットン プロトタイプ』が浮き上がる。鋼色の機体がゴム毬のように弾み、ワイヤーが大きくたわんだ。

 それを感知した『レスキューガンクロン』側も即座にワイヤーを回収、衝撃に備えてさらに深く腰を落とす。

 その時、『ジェットン プロトタイプ』の畳まれていた脚部が展開し、わずかにスラスターを噴射。『レスキューガンクロン』の負荷を抑えながら、その足を崖につく。だが膝に力が入らない。また鋭い衝撃がコックピットを襲った。

「膝が辛いか? 保ってくれよ」

 ワイヤーに引っ張られながら『ジェットン プロトタイプ』は一歩、また一歩と登っていく。コックピット内では方々から警報音が鳴り響き、各部の損傷箇所が浮き彫りになっていく。

 それでも『ジェットン プロトタイプ』は力を振り絞るようにして、その足で進んでいく。

『もうすぐ、高低差ゼロになります。衝撃に備えてください』
「わかった。気を抜くなよ」

 『レスキューガンクロン』はワイヤーを巻き上げつつ、ゆっくりと後退する。失敗すれば『ジェットン プロトタイプ』の重さに引っ張られてしまうからだ。

 そして、『ジェットン プロトタイプ』の頭部が崖から顔を覗かせる。左腕が縁にかかりグッとその巨体を起こそうとする。

 しかし、『レスキューガンクロン』たちが予想した通り、切り立った崖は脆く崩れ鋼の機体が下へと引っ張られる。

 『レスキューガンクロン』はキャタピラを後転させて、素早く対応。再び重力に引き込まれる鋼の巨体を支え続ける。それでも、地盤は力を加えるごとに、砂糖菓子のようにボロボロと崩れていく。

『ジェットン プロトタイプ』を引き上げるどころではない。『レスキューガンクロン』も徐々に崖へと引き摺られている。

「辛いだろうが、ここが踏ん張りどころだ。ガンクロン、カウント0でワイヤーを緩めろ」
『了解』

 パイロットはコンソールを操作して、残り少ない出力を全て脚部のスラスターに回す。必死に上ろうとする不恰好な『ジェットン プロトタイプ』が、ドッと推進器を噴射。鋼の機体が青空に飛び上がった。不恰好だった機体が人型へと変わり、機体のバランスを調整する。

「カウント開始。…3、2、1、0ッ‼」

 中途半端な形態の『ジェットン プロトタイプ』が、ドッと推進器を噴射。鋼の機体が青空に飛び上がる。同時に不恰好だった機体は完全な人型へと変形し、伸ばした四肢で機体のバランスを調整する。

 合わせてワイヤーも伸び上がり、『レスキューガンクロン』も救助対象とは思えない機体のパワーに驚きながら、その場から後退しつつタイミングを測りワイヤーの巻き上げを再開。

 空に上がった 『プロトタイプ ジェットン』が落下を始める。先ほどの上昇で力を使い果たしたのか、反応がない。『レスキューガンクロン』は瞬時に落下軌道を予測し、機体の各部の出力を高めて待ち構える。

 そして、衝撃を最小限に抑えつつ、『ジェットン プロトタイプ』を受け止めた。その重量を剛脚が受け止め、ワイヤーと腕部がしっかりと支える。地面にめり込むほどの勢いがあったものの、彼らの位置はすでに安定した地盤の下にあった。

「とりあえず、危険地帯は脱したな」

 『ジェットン プロトタイプ』のコックピットで、パイロットは体中の痛みに引き攣った笑みを浮かべる。

『大丈夫ですか?』
「問題ない。それよりも機体の応急処置に入ってくれ」
『了解。応急処置に入ります』

 『レスキューガンクロン』は『ジェットン プロトタイプ』を降ろし、クローハンドを開く。そこに搭載されたスキャナーを作動させて、機体全体を調べる。

『外傷軽微。装甲の保護作業に入ります』
「了解した。回路はこちらで調べる」

 『レスキューガンクロン』は携行したエアブラシのような修理機器を構え、片膝をつく『ジェットン プロトタイプ』に向ける。装甲に凹みと擦り傷がある脚部にその噴射口を近づけ、ゆっくりと装填されている液体を噴射する。それらが薄く、装甲に付着するとすぐに効果を始める。何度か塗り重ねれば、凹むも埋まり、すり傷も滑らかになった。

「厚塗りはするなよ。整備の連中にどやされる」
『現状の装備ではこれが精一杯です』
「加減をしろって話だ」

 パイロットはそう言って、コンソールに表示された情報を見て、シートベルトを外した。

「制御系のダメージがひどいな。コイツを運ぼう。準備してくれ」

 『レスキューガンクロン』は外装の処置を終えると、運搬車形態へと変形した。本来なら重戦車へと変形するのだが、『レスキューガンクロン』は標準装備をオミットしており、機体を載せるスペースを有した形態を取る事が出来る。

『自力移動は可能ですか?』
「あと少しなら動くみたいだ」

 パイロットがそういうと、『ジェットン プロトタイプ』はヨロヨロと立ち上がり、『レスキューガンクロン』の積載スペースに腰を下ろした。

「積載確認。固定は大丈夫か」

 パイロットはコックピットを離れて、『レスキューガンクロン』に乗り移る。そして、キューポラハッチを開けて、コックピットに収まると再び指差し確認をしつつ、操縦桿を握る。

「よし、お仕事完了、撤収するか」
『そうですね』

 こうして、『レスキューガンクロン』は来た時と同じように発進して、帰路に着く。

『あの…そろそろボクもヘソを曲げそうです』
「あー…、気をつける…」

 

商品概要
EVV-GC1 ガンクロン

■発売月:2022年5月
■価格:3,080円(税込)
■スケール:NON
■製品サイズ:全高85mm
■製品仕様:プラモデル
■パーツ数:51~200
■詳細:https://www.kotobukiya.co.jp/product/product-0000004369/
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