【プロセカ】ボカロPに直撃! “OSTER project”さんが語る“ワンダーランズ×ショウタイム(ワンダショ)”と、オリジナル楽曲『ニジイロストーリーズ』について!【ボカロPインタビュー企画 #6】

OSTER projectさんの曲作りに迫る!

 2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。

 2021年3月にはハーフアニバーサリーを祝した特集を展開し、

『プロセカ』ハーフアニバーサリー特集は下記の画像をクリック!!
 

 さらに2021年10月には『プロセカ』1周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けている。

『プロセカ』1周年記念特集は下記の画像をクリック!!
 

 そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!

 “子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連載で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!

 『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!

 そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!

 さて今回ご登場いただくのは、“ワンダーランズ×ショウタイム”(ワンダショ)にオリジナル楽曲『ニジイロストーリーズ』を提供された“OSTER project”さんだ。

 テーマパークのショーステージで活動する4人のキャストにより結成されたワンダショは、天真爛漫で明るい雰囲気がじつに印象的なユニット。そんな中、どこか内向的なイメージのあるメンバー、草薙寧々の葛藤を描いたのがイベントストーリー『聖なる夜に、この歌声を』だ。このストーリー用に書き下ろされたのがOSTER projectさんの『ニジイロストーリーズ』なのだが……その曲調はじつにワンダショらしいショーミュージック! 寧々の心模様とリンクするこの名曲は、どのようにして誕生したのだろうか!?

※インタビューは、オンラインで実施したものです。

「最高級のショーミュージックを届けたい!」

--OSTER projectさんはコロコロ初登場だと思いますので、まずは簡単に自己紹介をお願いしたいのですが……!

OSTER project わかりました! ……って、自己紹介って何を言えばいいんですかね?

--いつぐらいから活動を始めたとか、ざっとご自身の歴史を語っていただくことが多いです!

OSTER project なるほど! 2007年8月31日にクリプトン・フューチャー・メディアから、ボーカロイドを使う音楽制作ソフト『初音ミク』が発売されました。これを使って、私はその翌月にオリジナル楽曲『恋スルVOC@LOID』を発表したんです。なので……15年間かな。“15年間ずっとボーカロイドで曲を作っている”ということをウリにしているボカロPです。

--ボーカロイドの歴史を紐解くと必ず、OSTER projectさんを始めとする開拓者的なボカロPたちの名前が出てくるんですよね。本当に、この世界の第1世代というか……!

OSTER project はい、そうなりますねー。

--間違いなく、ボカロP業界のレジェンドのおひとり。そんな方にお話を聞けるとあって、ちょっと今日は緊張しております。

OSTER project あははは。よろしくお願いします。

▲プロセカではOSTER projectさんの人気楽曲『ミラクルペイント』(作詞・作曲:OSTER project)が2DMV付きで遊べるぞ! また、青柳冬弥役の伊東健人さんが作詞作曲を務めて話題を呼んだ『magic number』(作詞・作曲: 伊東 健人、編曲:OSTER project)だが、編曲をOSTER projectさんが担当している。

--今回はワンダーランズ×ショウタイムにオリジナル楽曲『ニジイロストーリーズ』を提供されましたけれども、依頼を受けられたときはどのように思われましたか?

OSTER project お話をいただいたときは、まだ『プロセカ』はリリースされていなかったんです。かなりざっくりと、“ボーカロイドをモチーフにした新しいアプリゲームになります”という説明を受けたくらいで、具体的なことは見えていなかった時期ですね。

--ほうほう……!

OSTER project でも、すごく印象に残っているのが、「主役はバーチャルシンガーたちではなく、あくまでもオリジナルキャラクター。彼らが物語を紡いで、セカイを作っていきます。バーチャル・シンガーたちは、彼・彼女たちをサポートする存在として登場します。という制作者さんの言葉です。ただ、そんなゲームは見たことがなかったので、「え?」とも思いました。ピンと来なかったんですよね。

--確かに、これまでこういう系統のゲームって、あくまでも主役は初音ミクを始めとしたバーチャルシンガーでしたもんね。

OSTER project そうなんです! なんだかんだ、ボーカロイドの人気ってバーチャルシンガーたちに依存している部分が大きいじゃないですか。そんな中、あえてオリジナルキャラを中心にしたアプリを作るというお話だったので……。どんな形になって世の中に出ていくのか、想像すらできませんでした。私が考えていたボカロのゲームって、『Project DIVA』とかですしね。

--はい、すごくよくわかります。

OSTER project あくまでも、初音ミクたちが歌っているミュージックビデオに合わせて演奏をする……というゲーム。それが頭にあったので、「『プロセカ』って、どんなゲームになるんだろう……?」と、ちょっと不思議に思いながらお話を聞いていた記憶があります。

--そして『プロセカ』は形になって、OSTER projectさんはワンダショが奏でる楽曲を引き受けることになると……! このワンダショというユニットを見たときはどんな印象を持たれましたか? 

OSTER project 舞台の上でミュージカルやショーをやっている劇団のみんな……という設定だったので、受け止めやすかったです。私も、ミュージカルをベースにした楽曲はいくつも作ってきましたし、そういった音楽を聴きながら育ってきた人間でもあるので……。実際、そのような経験を作品に投影するというスタイルで活動してきたので、何と言うか……「自分にピッタリのユニットだな!」と思いました。

--実際にファンの声もそうですよね。「OSTER projectさん、ワンダショにピッタリすぎる!!」という絶賛の声が圧倒的で。僕もOSTER projectさんの楽曲はいろいろと聴いてきましたけど、ワンダショとはまさにステキな出会いだと思いました。

OSTER project ありがとうございます! 私、本当にミュージカルが好きなので、彼らと同じ視点で考えることができたと思うんです。『ニジイロストーリーズ』を作っているときも勝手に、「自分はワンダショの、影のメンバーのひとりだ」と思いながらやっていましたから(笑)。

--『ニジイロストーリーズ』を聴きながら、まったく同じことを考えていました。「ワンダショの影のプロデューサーって、OSTER projectさんなんじゃね!?」と。

OSTER project あははは! ありがとうございます(笑)。

--そんな『ニジイロストーリーズ』はイベントストーリー、『聖なる夜に、この歌声を』に合わせて作られた楽曲です。このストーリーのキーキャラクターは草薙寧々(くさなぎねね)ちゃんですが、彼女に対してはどんな印象を持たれましたか?

OSTER project じつは依頼を受けたとき、このイベントストーリーはまだできていなくて、あくまでも“メインストーリーで見た寧々ちゃんの印象”から、『ニジイロストーリーズ』を作っていったと記憶しています。

--あ! そうだったのですか!

OSTER project はい、確かそうだったかと……。なにぶん、かなり前の出来事なので、細部までは思い出せないんですけどね。

--でも、寧々ちゃんはメインストーリーでもイベントでも、ある意味ブレないキャラですからね。

OSTER project そうなんです。メインストーリーを読んで、寧々ちゃんの性格とか立ち位置を知ったんですけど、私も人前に出るのが得意じゃないので、すごく気持ちがわかるんですよね。それと……! 先ほども言った通り、私は15年もボーカロイドを使って曲を作るっているわけですけど、その活動って、寧々ちゃんがやっていたロボット(ネネロボ)を通してエンターテインメントをする……という形に、すごく近いんじゃないかなって思ったんです。

--あーーー! 言われてみると、確かに!

OSTER project ロボットの陰に隠れていた寧々ちゃんも、最終的には自分で“人前に出る”という選択をして、活動を始めるわけです。そこに、すごく親近感を覚えるんですよね。失敗するのは怖いし、まわりに迷惑をかけたくないけど、それよりも「楽しませたい」とか「笑顔にさせたい」という気持ちのほうが強くなって、いつしか壁を乗り越える原動力になっていく。気が付けばまわりには仲間がいて、彼らは力を合わせて夢を叶えようとしていくんですよね。そんな姿を、なんとか曲に落とし込みたいと思って制作しました。

--寧々ちゃんって、基本的には内にこもりがちなグルーミーな感じのキャラですけど、『ニジイロストーリーズ』はそれとは違う、すごく明るくて、前に進んでいくような曲ですね。

OSTER project はい、そうですね。実際、寧々ちゃんってふだんはそういうキャラクターですけど、ステージの上に立つと違うじゃないですか。

--わかります!

OSTER project 曲を作ってからアプリの中でストーリーを読んだんですけど、「やっぱりそうだったんだね」って思いました。資料でいただいたものって文字だけのプロットと指示だけだったので、イメージすることは簡単ではなかったんです。でも、先ほど言った共感もありましたし、きらびやかなショーのイメージも私の中にはあったので、そのへんを少しずつカタチにしていきました。ゲームに実装されたのを見て、「ピッタリはまった!」と安心しました。

--イベントストーリーが配信されたことが、OSTER projectさん的には答え合わせのようにもなっていたんですね。

OSTER project あ、まさにそんな感じでした!

▲イベント『聖なる夜に、この歌声を』の書き下ろし楽曲としてリリースされた。

--では、『ニジイロストーリーズ』のテーマを教えてください。

OSTER project サウンド面で言えば、本当にいろんな展開をする楽曲になっています。途中で三拍子になったり、テンポが最後で変わったり、“ザ・ショーミュージック”って感じの音が随所に入っていたり。賑やかで色鮮やかな曲にしたかったので、そんな“いろいろな場面”を1曲に集約しようと思ったんです。短時間のゲームで使用する……という制約の中で、それほど盛り込むのはかなり難しいんですけど、与えられた条件の中で精一杯、さまざまなシーンを組み合わせたような曲に仕上げたいと思って作りました。

--でも、まさにその通りで、いろんなシーンが入り乱れるかのような、すごく楽しい曲なんですよね。よくぞこんなに難しい歌を歌えるなぁ……と、声優さんの歌唱力にも驚かされましたし。

OSTER project ああ、私もそう思います(笑)。

--そんな『ニジイロストーリーズ』の中で、とくにお気に入りの歌詞はどのあたりでしょうか?

OSTER project 寧々ちゃんが自分を受け入れて、もう一度羽ばたいて……という曲なので、「いつか見た憧れと違ったとしても みんながすくい上げてくれたこの私で その脚で 歩き出す story」という最後の部分が、かなり効いていると思っています。夢ってそのときどきによって、どんどん形が変わっていくものだと思うんですね。それが、自分が目指していたモノからかけ離れていったとしても、努力することをやめず、あきらめずに突き進んでいければ、どんな形であれ叶えることはできる……と考えるんです。

--はい。

OSTER project 先ほど話した例で言うと、私はもともとミュージシャンになりたいと思っていたんです。「どんな形で、この夢を叶えられるのかな……」と考えていたところ、2007年にボーカロイドに出会いました。本当にたまたまだったんですけど、ボーカロイドと出会えたおかげでいまのような仕事ができている事実があるので、「夢は形を変えるけど、あきらめないでずっと続けていればきっと叶えることができる」と強く考えるようになりました。その気持ちを重ねたことで、『ニジイロストーリーズ』の歌詞にたどりついたのかな……って思います。

--『ニジイロストーリーズ』の歌詞って、すごくストーリー性が強いですよね。なんと言うか……短編小説を読んでいるかのような心地になるんです。とくに、「隣で歌う声 怖がりな背中を押して 閉じ込めたはずの心に 翼宿す魔法をくれたから」の箇所から続く一連の流れが美しすぎて、正直感動してしまいました!!(熱弁)

OSTER project わー、ありがとうございます! すごくありがたいです!

--歌詞って、“制約の中の文学”だと思うんです。短い時間の中で、わずかな文字を使って表現しなければならないので……。このへんの難しさについて、ぜひお聞かせ願いたいのですが!!

OSTER project おっしゃる通り、無駄を省きに省いた上で、言いたいことをキチンと的確に、なおかつオシャレに表現しなければならない……ということを、歌詞を考えるときにはつねに念頭に置いています。『ニジイロストーリーズ』のときも、自分ひとりで歌ってるだけじゃなく、隣で歌ってくれる仲間がいてくれるからこそ翼が生えて、ステージで羽ばたくことができる……ということを、歌詞の中で伝えたかったんですよね。いま改めて『ニジイロストーリーズ』の歌詞を読んでみても、仲間の存在に支えられて、もう一度夢に向かって歩き始める……というテーマが、曲全体に散りばめてあるなぁ……と思いました。

--なるほどなるほど。

OSTER project やっぱりキチンと“これが言いたい”ということがあるのなら、それをいろんな角度から補強するように歌詞を作るといいのかなと思います。テーマがはっきりしてくるので。『ニジイロストーリーズ』に関しては、それをしっかりと実践することができたんだなと、改めて感じました。

※下段のMV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。

--では、『ニジイロストーリーズ』の制作期間をお聞かせください! OSTER projectさんのTwitterとかを見ていると、ものすごく筆の速い人なんだろうな……とは思っているのですが。

OSTER project あはは。えーっと、あまり正確な日数を覚えていないんですけど……たぶん、1週間くらいだったかなと思います。

--速いですねッ!!!

OSTER project でも、自分としてはかなり時間がかかった楽曲なんです。

--それはやっぱり、まだイベントストーリーが完成する前で、イメージを膨らませたりする作業に時間かかったからでしょうか?

OSTER project 確かに作詞をしているときに、「本当にこれで合っているのかな……?」という不安を感じたことはありました。でもそれよりも、やっぱりミュージカルベースということでいろんな展開を考えなきゃいけなかったのと、編曲のボリュームがかなりエグかったのが大きかったです。フォー・リズム(※ピアノ、ギター、ベース、ドラムから構成されるリズムの基本を作るセクションのこと)に加えて管楽器も入っているし、弦楽器も入れて……。これらがないと、「ミュージカルの曲です!」とか「ショーミュージックです!」と声高に言えないと思ったので。最終的には、「最高級のショーミュージックを作ろう!」という意気込みで作り込んでいったので、それに伴って編曲の分量がとてつもないことに……(苦笑)。

--他の楽曲に比べても、かなり難産な印象で?

OSTER project いやー、難しかったですね! 『ニジイロストーリーズ』は!

--苦労された分、実装されたのを初めて見たときは感動なさったんじゃないですか?

OSTER project そうですねー。『プロセカ』がリリースされるまえに作った曲なので、『ニジイロストーリーズ』もそうですけど、アプリそのものがどういう受け取られかたをされるのか、すごく興味がありました。

--はい。

OSTER project でも『プロセカ』って、配信された直後から勢いがスゴかったじゃないですか。私のまわりの人もこぞってプレイしているのを見て、「ああ……。こんなに多くの人が受け入れてくれたんだ……」って、めちゃくちゃ嬉しかったのを覚えています。

--『ニジイロストーリーズ』に対するファンのコメントを集めてみたんですけど、やっぱり圧倒的に多かったのが、「聴いた瞬間に“OSTER projectさんの曲だ”と確信した」というものです。

OSTER project あ! 確かにそれは、よく言われますね!

--これ、すごくわかるんです。曲全体からあふれてくる幸せそうな雰囲気とか……。そんな『ニジイロストーリーズ』がまとっているオーラに「救われました」と言われているリスナーもたくさんいて、僕まで救われた気持ちになりました。

OSTER project それはすごく嬉しいですね、本当に……。

--ワンダショというユニット自体が、やっぱりOSTER projectさんの曲にピッタリなんですよね。基本的に前向きで、幸せそうな気配が漂っていて。

OSTER project 私もワンダショとの出会いは、本当にステキなものだなと思っています。ありがたいですね。

--では、『ニジイロストーリーズ』が大好きなファンの皆さんに、ひと言お願いできますでしょうか。

OSTER project この曲の歌詞で語られているようなマインドで生きられたらいいな……と、私自身も思います。誰かを笑顔にしたいんだったらまずは自分が笑顔じゃなきゃいけないし、そうするために必要なのって、やっぱり支えてくれる仲間だと思うし。ふだんは自分のことで手一杯で、まわりの人のことまで考えられないかもしれないんですけど、時にそういう方たちに想いを馳せて、感謝の気持ちを持ってもらえたらなと思います。みんながそんなふうに考えられたら、世界中に笑顔が広がっていってステキだな……と思いますし。……って、なんか壮大になっちゃいましたね(苦笑)。スミマセン(笑)。

--でも、実際に『ニジイロストーリーズ』を聴いて、「前向きになれた」、「すごく幸せな気分になる」とコメントされている人が多いので、OSTER projectさんの気持ちはしっかりと届いているんだと思います。

OSTER project だとしたら、とても嬉しいですね。そうやって受け取った笑顔を、ぜひ別の人にも連鎖させて届けてほしいと思います。

--ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは……OSTER projectさんが、ボカロPになられたきっかけを教えてください!

OSTER project ボカロPっていう概念自体が、私が活動を始めたころにはなかったんですよね。いつ“ボカロP”っていう言葉が生まれたんだろう……。2007年当時は、なかったと思うんです。

--そうかもしれません。本当に、ボーカロイドの黎明期ですし。

OSTER project 私はもともと音楽が好きで、とくに“歌モノ”を作ってみたいと言う想いをずっと抱いていたんです。でも、それをどういうふうに作って、誰に歌ってもらうのか……というプランを立てることができなかったんですよ。正直、コミュニティーを広げていく力が備わっていなくて……。そんなとき、毎日のようにチェックしていたクリプトンさんのサイトでたまたま、新しいボーカロイドとして『初音ミク』が出るというニュースを見たんです。デモソングを聴いてみてすぐに、「これだったら……!」とピンときて、「自分の作った曲を初音ミクに歌わせてみたい!」と感じました。これをきっかけに、ボーカロイドの曲を作り始めるんです。

--冒頭でも言いましたけど、OSTER projectさんがボーカロイドの曲を発表されたのって、『初音ミク』が発売された直後ですよね!?

OSTER project はい、そうですね。2週間後……くらいだったかな?

--当時、「ボーカロイドは流行る!」という予感のようなものはあったんですか? 

OSTER project いえ、まったく(笑)。ボーカロイドで曲を作り始めたのも、言ってしまえば“自分がやりたいから”という単純な理由ですし。この新しい技術を手にしたら、どれだけ新しくて斬新な音楽ができるんだろう……という、興味と探求心しかなかったです。なので初期のころは、自分でも驚くくらいバンバン曲を作っていました。しかも、その曲を聴いた方からの反響もすごくて、「じゃあもう1曲作ろう!」、「もっといいものを!」と、いい循環が作れたのも大きかったと思います。

--作り始めてすぐに、「これは楽しいな!」と思えたのですか?

OSTER project はい、思いました。「いままで作れなかったものが作れるようになったぞ!」という驚きが凄くて、世界が広がった感慨を覚えました。最初からめちゃくちゃ楽しかったですね。

--では、ボカロPになるために必要なスキルなどがあったら、ぜひ教えていただきたいのですが! 将来、この道に進みたいと思っている人たちの道しるべになるようなヒントを……!

OSTER project スキル……スキルかぁ……。(しばし考えて)これ、スキルとして数えていいと思うんですけど、いちばん重要なのは“行動力”です。「自分じゃできない」、「なりたいけどなれない」と思い込んでしまっている人にいちばん欠乏している要素って、間違いなく行動力なんですよね。でも人間って何かをやりたいと思っても、行動に移すまでにどうしても時間がかかるじゃないですか。

--はい、激しく頷かざるを得ません……。

OSTER project そんな皆さんに、「とりあえずやってみよう!」と伝えたいです。ひとまず行動してみて、悩むのはその後でいいと思います。やってみないことには、何も始まらないですから。

--ダイエットとかがそうですけど、「明日から本気出す」とか思っちゃうんですよねぇ……。でもそうではなく、まずは1歩踏み出してみよう、と。

OSTER project そうですね。それさえクリアーできれば、あとはなんとかなると思うんです。もしも壁にぶつかっても、技術的なことでしたら調べればいいし、それでも進めなかったらSNSとかを活用して意見を求めてもいい。それにネットが発達した現代だったら、How to動画とかもたくさんあるじゃないですか。できる人に聞きやすくなったいまは、何事であっても挑戦しやすくなっていると思いますよ。あとは、メンタルをどう整えるかになるんじゃないかな、と。

--たとえばですけど、楽器が弾けたほうがいいとかありますか?

OSTER project 私、子どものころからクラシックピアノをやっていましたけど、いまの曲作りはPCでマウスを使って打ち込むのがメインですからね。そういう意味では、“絶対に必要なモノ”ではないと思います。私もピアノ編曲はなんとなく感覚でわかりますけど、ほかの楽器はいっさいできませんから(笑)。それでも、編曲をしていますし。

--何かコツのようなものがあるんですか?

OSTER project プロの方が弾く演奏を聴いて、「この楽器って、こういうふうに動くんだ……!」と吸収することは重要かもしれませんね。それをマネたり、アレンジしながら、曲を作ってきました。とはいえ楽器を触っていると、曲がどのように演奏されているのか……という勉強にはなるので、決して無駄にはならないと思います。でも私としては演奏の技術よりも、「この和音、気持ちいいな」とか「素敵な音だな」といった感性のほうを大事にしてほしいなと考えるんです。そういった興味が、「じゃあどうやって鳴らしているんだろう?」という好奇心に発展して、さらにネットを使ってコードを調べたり……という“曲を紐解く”行動につながっていくんです。こういったプロセスを経ることで、「自分にも曲が作れそう!」という想いが強くなっていくんじゃないかと思います。

--技術よりも、心のありようを重視してほしい、と……!

OSTER project はい。最終的な判断を下すのって、やっぱり心……感性じゃないですか。自分が「いい!」と思えるものを作るのに、技術や理論も必要になってくるかもしれませんけど、それはあくまでも補助的なもの。まずは己の感性に従ってやっていくのが、もっとも健全だと思いますよ。

--好きこそものの上手なれと言いますけど、まずは「好き」という気持ちを大事にするといいわけですね。こういった言葉って、ボカロPを目指す人たちにすごく響くと思います。

OSTER project ああ、だったらよかったです!

▲2007年8月31日にクリプトン・フューチャー・メディアより発売された音声合成ソフト『初音ミク』。そのソフトを使い、同年9月13日にOSTER projectさんは、初音ミク初作品となる『恋スルVOC@LOID』をニコニコ動画に公開。ボカロブームの火付け役のひとりとなった。

--ちなみに、「ボカロPになってよかった!」と思うことって、なにかありますか?

OSTER project んーーー……“全部”かなぁ! なんと言っても、自分の存在を知ってもらえるきっかけになりましたから。私、歌モノだけじゃなくインスト(※インストゥルメンタル。歌のない、楽器だけで演奏された曲のこと)もずっと作っていたんですけど、ボカロをきっかけにそれらのジャンルの曲も多くの人に聴いてもらえるようになりました。結果、お仕事にもつながりましたし、さらにいろんな音楽を作る起爆剤にもなったので、ボカロに出会えて本当によかったなと思います。

--ボカロPさんどうしで横のつながりとかはあるのですか? と言いますのも、この連載でいろいろなボカロPの方とお話する機会に恵まれたんですけど、皆さんじつに個性的でおもしろい方が多いな……と感じたので。

OSTER project あー! 私はどちらかと言うと、他のボカロPの方との接点は少ないほうかな……と思います。ボカロPって、ひとりで完結するタイプの音楽制作者がたどり着くスタイルだと思っているんで、部屋にこもってコツコツと曲作りに没頭する……という職人気質の人が多いかなという印象はありますね。でも逆に言うと、内向的で人と接するのが苦手な人でも制作を完結できる……という点が、ボーカロイドがもっとも革新的なことだったと強く感じます。

--わかりました! では最後に、ボカロP目指してるその少年少女に先達としてエールをお願いしたいのですが……!

OSTER project 「とりあえずやってみよう!」ですね。始めるまでのハードルが高いと思われるかもしれませんけど、やったらメチャクチャ楽しいですから!

--やってみないことには、それが楽しいのか、自分に向いているのかどうかもわかりませんもんね。

OSTER project はい、まさにそうなんです。ですので、「やりたい!」と思ったら、ホントに今日から動きましょう。ボーカロイドの環境を整えるのにお金はかかると思いますけど、“PCでの音楽制作”ということだったら、無料のソフトも充実していますからね。まずはそのへんから手を付けてみるのをオススメします!

--確かに、パソコンじゃなくとも、いまだとスマホとかタブレット用の音楽制作アプリとか、たくさんありますもんね。

OSTER project そうですそうです! 未来のライバルたちの誕生、お待ちしております!

--本日はお忙しい中、本当にありがとうございました!!

OSTER project

Composer&Arranger。2000年よりネットを中心とした音楽活動を始める。
JAZZからROCKまで幅広いジャンルの作曲を得意とし、その型に囚われない作曲スタイルや メッセージ性の高い歌詞により、多くのリスナーを魅了している。

 

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#4:Vivid BAD SQUAD編      

#5:ワンダーランズ×ショウタイム編

#6:25時、ナイトコードで。編

 

タイトル概要

プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク

■対応OS:iOS/Android

■App Store URL:https://itunes.apple.com/app/id1489932710

■Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.pjsekai

■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)

■価格:基本無料(アイテム課金あり)

■ジャンル:リズム&アドベンチャー

■メーカー:セガ/ Colorful Palette

■公式Twitter:https://twitter.com/pj_sekai