【プロセカ】ボカロPに直撃! “いるかアイス”さんが語る『プロセカ』と、プロセカNEXT”採用楽曲『Brand New Day』について!【ボカロPインタビュー企画 #9】

いるかアイスさんの曲作りに迫る!

 2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。

 2021年3月にはハーフアニバーサリーを祝した特集を展開し、

『プロセカ』ハーフアニバーサリー特集は下記の画像をクリック!!
 

 さらに2021年10月には『プロセカ』1周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けている。

『プロセカ』1周年記念特集は下記の画像をクリック!!
 

 そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!

 “子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連載で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!

 『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!

 そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!

 さて今回ご登場いただくのは、セガ/Colorful Paletteが主催する楽曲コンテスト“一緒に作ろう! 第1回楽曲コンテストプロセカNEXT”の採用曲『Brand New Day』を手掛けられた“いるかアイス”さんだ!

 コンテストのテーマ“テンションが上がる曲”にピッタリ過ぎる明るくて前向きな曲は、審査コメントで「最初から最後まで元気でアップテンポな曲で、サビにかけての盛り上がりや、明るい音色と未来へ頑張ろうと思わせてくれるポジティブな歌詞がテーマの「テンションが上がる曲」にぴったりだったため選ばせていただきました!」と絶賛されるほど! そんな『Brand New Day』がいかにして誕生したのか、じっくりと話を聞いたぞ!

※インタビューは感染対策を徹底して行っております。

高難度譜面に憧れて

--いるかアイスさんはコロコロ初登場となりますので、まずは簡単に自己紹介をお願いしたいのですが……!

いるかアイス わかりました! えー、キラキラしていてハッピーになれる音楽をコンセプトに、エレクトロポップやハッピーハードコアなどさまざまな楽曲を制作している“いるかアイス”と申します。ボカロと音ゲーコンテンツが大好きです。よろしくお願いします!

--いるかアイスさん、まだお若いですけど、いつぐらいから、ボカロPの活動をされているんですか?

いるかアイス 2015年11月に、初めてニコニコ動画にボカロの曲を投稿したんです。そこが活動の出発点になりますね。

--ってことは、7年くらい前……。そう考えると、決して短くはないですね。

いるかアイス はい、そうですね。けっこう長くやっていると思います。

--そして、今回のインタビューのきっかけにもなった楽曲『Brand New Day』ですが、これはセガとColorful Paletteが主催するコンテスト“一緒に作ろう! 第1回楽曲コンテストプロセカNEXT”の採用曲になります。まずは、このコンテストに応募したきっかけから教えていただけますか?

いるかアイス ボカロPとして作っている新曲の動画を投稿すればオッケー……と応募のハードルが低かったので、挑戦してみました。このコンテストは、過去にCDとかで発表した既存の楽曲でも応募が可能だったのと、第1回のテーマが“テンションが上がる曲”というものだったので、「じつにいるかアイスにピッタリだな!」と思いまして(笑)。そこで、ちょうどそのときに動画投稿したいなと思っていた未発表曲『Brand New Day』がテーマに合致していると感じたので、コンテストに参加する形で新曲を投稿したんです。

--そして見事に採用となるわけですけど、 第一報を聞いたときはどんな心境でしたか?

いるかアイス 私、音楽を作り始めた2大ルーツが“音楽ゲーム”と“初音ミク”なんです。ですので、音楽ゲームに自分の楽曲が収録されることはホンッッットにずっとずっと夢でしたし、加えて初音ミクの公式コンテンツに関わることも目標で……! 私の大好きなボカロと、ハピコア(ハッピーハードコアの略)な曲調の『Brand New Day』を収録していただくってことになって、もうこのうえなく嬉しかったというか……!!

--なるほど、音楽ゲームと初音ミクが創作の原点だったんですね。

いるかアイス はい、そうなんです!

--音楽ゲームって、いつくらいからやられているんですか?

いるかアイス 大学に入ったときに、自分の趣味とか生活に新しい風が吹いてきたんです。私、理系の大学だったこともあってかまわりにサブカルチャーとかインターネットが好きな人が多くて、いろいろと影響を受けてきました。で、大学で使う用にひとりに1台ずつiPadが配られたんですけど、『jubeat』(ユビート。コナミアミューズメントから発売されている音楽ゲームシリーズ)が好きな人が何人もまわりにいて、アプリ版の存在を教えてもらいました。そこで“音ゲー”というものに触れ、その中で使われている楽曲を聴いて、あまりのかっこよさに衝撃を受けるんです。同時に、ボカロが好きな人もまわりにたくさんいて、少しずつ曲を聴くようになりました。気付けば、kzさんとか八王子Pさんのエレクトロ系の曲にハマって、他の音ゲーでもキラキラしたエレクトロ系電子音の楽曲に魅了されて、完全にトリコになるんです。

--ということは、大学に入るまではそういうものに触れてこなかったと?

いるかアイス そうですねー。J-⁠POPとかバンド系とか、いわゆるメジャー寄りな音楽はすごく好きだったんですけど、ゲーム音楽のような電子音系には接してこなかったんです。だからこそ、衝撃が大きかったんだと思います。

--確かに、何らかのきっかけがないと、ゲームミュージックやエレクトロ系の楽曲にハマるのって、なかなか難しいですもんね。

いるかアイス はい。まさしくその通りだと思います。

--では『Brand New Day』のお話を伺いますが、改めて制作されたときのテーマを教えてください。……とはいえ、採用されたコンテストのテーマは“テンションが上がる曲”だったわけですけど。

いるかアイス 『Brand New Day』を作ったきっかけからお話しますと、このコンテストを意識する前から、「音ゲーライクなハッピーハードコア調のボカロ曲を作りたい!」と思って制作を始めました。そういう意味では最初から、音楽ゲームに収録されるイメージを持って作っていたと思います。歌詞のテーマも、突き抜けるように明るく、希望を目指すような世界観を念頭に置いていました。

--これ、誤解を恐れずに言うんですけど、おっしゃる通りものすごく音ゲーライクな楽曲ですよね!

いるかアイス ありがとうございます(笑)。「そういうのを作りたい!」と最初から思って作っていましたから。

--『プロセカ』の初代王座決定戦“RAGE プロジェクトセカイ 2020 Winter powered by AQUOS”で優勝した瑠璃(るり)選手に以前インタビューをしたんですけど、『Brand New Day』がいちばん好きと言っていましたよ。

いるかアイス あ! そうなんですよね!! 瑠璃さん、以前からこの曲を推してくれていて、本当にありがたいです!

--お世辞ではなく、本当にいい意味で音ゲーライクな楽曲で驚いたんですけど、作ったご本人も「これはハマった!」と思われたんじゃないですか?

いるかアイス はい、思いました! すごく(笑)。

--当然、これは曲も歌詞もいるかアイスさんが作っていらっしゃるんですよね?

いるかアイス はい、そうです。

--では、とくにお気に入りの歌詞はどのあたりになりますか?

いるかアイス やっぱり一番のサビ、「A Brand New Day 駆け抜けたその先の先」の部分になりますかね。タイトルコールをするサビがすごく好きですし、『Brand New Day』らしい覚えやすくてまっすぐな歌詞になっているので、聴かれた方も口ずさみやすいかな……と思って。なので、お気に入りです。

--あの……! いまおっしゃったサビに入るところ、「A Brand New Day」って言ってるんですよね……?

いるかアイス はい、言ってますね。

--「輝いて」って聞こえるんですけど……!!

いるかアイス あ!! それ、すごく言われます!! 最初は「そうかなぁ」くらいに思っていたんですけど、聴かれた方のコメントでもよく見かけるので、少しずつ気になって……。でもよくよく考えてみたら、たとえ「輝いて」に聴こえたとしてもなんとなく意味は通るし、雰囲気も合っているので、それはそれでおもしろいトピックのひとつかなと思いました(笑)。

--「輝いて」に空耳した者を代表して言わせてもらうと……狙ってやっているのかと思っていました!

いるかアイス いえ、ぜんぜん狙っていなかったです(笑)。言われて初めて、「あ、そう聴こえるんだ!」って思いましたから。自分としては「A Brand New Day」って書いたので、そうとしか聴こえないんですけど……。

--でも、いまおっしゃっられたように、どちらに聴こえたとしても曲のテーマに合っているので、ダブルミーニングとしてそう調声されたんだろうなと勝手に思っていました。

いるかアイス 作ってるときはまったくそんなことは考えていなかったんですけど、そう聴こえたなら……すごくいい空耳ですよね! うん!

--ちなみに僕も『Brand New Day』の歌詞をじっくり読ませてもらったんですけど、個人的には「A Brand New World」から始まる後半の歌詞がすごく響きました。「追いかけたあの未来だって 地図にないあの場所にだって 止まらない速度で 加速したら辿り着けるはずだよ」といいう部分……! 「よくこんなの書けるな!」って、素直に感動しました。

いるかアイス すっごくよく見てくださって、ありがとうございます! うれしいです!

--昔から文章を書くのは得意だったんですか?

いるかアイス 私、作文がすごく苦手だったんです。とくに読書感想文とかって、カチッとした日本語で書くことが求められていた気がしますけど、それがどうしても合わなくて……。でも、詩を書く授業はちょっとだけ好きでした。どこかフワッとしたイメージだけの言葉でも許容されていたし、雰囲気だけでも伝わればいいって感じが肌に合って、「こっちのほうが向いてるな」って子ども心にも思いました。

--なるほど……! いやでも、これほど疾走感のある曲の中で、ここまで響く言葉をくり出せるのは、やっぱり才能なのかなと感じました。

いるかアイス ……そんなに『Brand New Day』の歌詞を褒められたことないので、本当にうれしです。私も、歌詞はその楽曲の魅力の半分を担う要素だと考えているので、そこを褒めていただけるのは感激です!

--歌詞を絞り出すのって、本当にたいへんなことだと思うんです。限られた時間の中で紡がなきゃいけない文学ですし。

いるかアイス はい、そう思います。ですので、いろいろな文章を見たり、歌詞を見たりして日本語探しをするのがクセになっています。「どんな言葉があるだろう」と思って辞書を引いたりもしますし、ゲームのストーリーを見てインスピレーションをもらったこともたびたびですし。

--僕もゲームシナリオを書いたりしますけど、“類語辞典”がバイブルです(笑)。

いるかアイス あー! わかります!! 同じ意味だけど文字数が違う単語……って歌詞を作るときにすごく重要で、ピンポイントでハマるものが欲しくなるんです! 「このメロディーに載せたいけど、3文字だと合わないんだよなぁ……。同じ意味の5文字の単語がないかなぁ……!」なんて悩むことはしょっちゅうなので、類語探しは必須です!

--では、いまの質問と若干カブるのですが、この楽曲の聴きどころをぜひ教えてください。

いるかアイス やっぱりサビのメロディーと歌詞がお気に入りで、そこを中心に全体を通して、“あきらめないでがんばって駆け抜ければ、必ずたどり着ける”と思えるような楽曲になったかなと思います。そういう意味でも、サビの部分をよく聴いてもらえたらうれしいです。

--聴かれた方のコメントを読んでも、「サビのあたりで鳥肌止まらなくなった」、「泣けてきた」など、いるかアイスさんの想いが届いているなと感じました。

いるかアイス そうですね。「この曲を朝に聞いて“がんばろう!”って鼓舞している」という人もいますし、「『Brand New Day』があったから受験をがんばれた!」なんてコメントも拝見しました。自分の作った曲が、たくさんの人の“がんばる糧”になっているのを見ると……やっぱり、たまらなくうれしいですね。

--前向きですもんね、『Brand New Day』って。ひらすら前に向かおうとしている感じが全面に押し出されている感じがして。でも気になるのが、この曲の制作過程です。かなり時間をかけて作られたんじゃないかと想像するのですが。

いるかアイス 先ほども言いましたけど、もともとコンテストに向けて作っていたわけじゃなく、CDに収録するために作っていた曲なんですね。でも、そのCDの入稿納期がかなりギリギリだったので、短期間に集中して作り上げた記憶があります。

--ほうほう!

いるかアイス 移動中もメロディーとか歌詞を考えたり、何か思いついたらボイスレコーダーにサッと録音したり……。それを考えると、かなり切羽詰まっていたかもしれません(苦笑)。ちなみにMV(ミュージックビデオ)の動画制作もすごくギリギリで、コンテストの締切の2、3日前になんとかまとめたんです。でも、『Brand New Day』が“もう少しだ”、“がんばれ”と鼓舞する歌詞だったので、それにも大いに励まされながら乗り切ったと思います。

-- そうか……! 動画も全部自分で作るのか……!

いるかアイス そうなんです。コンテストに応募しようと思いついたのがけっこう急で、イラストは仲のいいリアルの友だちになんとかお願いして描いてもらいつつ、それと並行して動画も作っていました。

--ちなみに、ボイスレコーダーに吹き込むっていうのは、メロディーとか歌詞とかですか?

いるかアイス はい。歌詞を思いついたときも録音しちゃいますけど、基本的にはメロディーを鼻歌で歌って吹き込んでいます。

--へーーー!! それは『Brand New Day』のときに限らず、ほかの楽曲を作るときも?

いるかアイス はい。ふと思いつくことがあるので、それを逃さないように。パソコン開いてから考えることももちろんありますけど、思いつくのって急なので、すかさずボイスメモで録音して後から聞いて考え直す……というのがルーチンになっています。

--こう言ってはアレですけど、じつに泥臭いというか、すぐにスイッチが入るようにされているんですね。

いるかアイス 大学の研究室にいたときに、研究内容とか研究アイデアをひねり出さないといけないシーンが多々あったんです。そのときに教授に、「考えようと思って考えるのではなく、日々の生活の中からヒントを得るといい。“これ、不便だな”と思ったことをきっかけに考えてみるといいですよ」と言われて、それ以来、ボイスメモを活用するようになりました。

--先ほどのボカロにハマったきっかけもそうですけど、大学生活がいまの楽曲制作活動に活かされているんですね。

いるかアイス あ、そうですね! いい刺激をたくさんもらえたと思います。

--でも改めて考えてみて、締切があったからこそ完成まで持ってこれた……という部分も?

いるかアイス それは、多分にあります(笑)。もともと、締切があるからこそがんばれる、という性格なので……。

--では、夢のひとつだった、ゲームに実装されたときの感想をお聞かせください。

いるかアイス 自分のiPadの『プロセカ』というアプリから、私の作った曲、私の作ったミクの声が鳴り響く……ってことに、ものすごく感動しましたね。……でも正直、こんな経験をしたことがなかったので、最初は違和感すら覚えました(笑)

--あー。自分のことじゃないみたいな。

いるかアイス そうですそうです。でも、聴いてもらうだけじゃなく、リズムゲームとして楽しんでもらうこともできるという事実は本当に夢のようで、過去最大級の喜びだったと思います。

--でも、そりゃあうれしいよなあ……! もともと音楽ゲームが好きで楽曲制作も始めて、夢が叶って『プロセカ』に収録されているんですもん……! とは言え『Brand New Day』って、高難度な譜面で有名ですよね。この譜面を見たとき、どう思いましたか?

いるかアイス もともと、音楽ゲームの高難度楽曲に憧れがあったんです。というのも、最初にハマったゲームでめちゃくちゃ難しくて速いボス曲を聴いて、こんなに高密度な楽曲を作れる作曲家と、それに食らいついていく音ゲープレイヤーってスゴイな……と衝撃を受けたことがすべての始まりでしたから。『Brand New Day』が実装されたときって、この楽曲を含めてマスター32レベルが3曲くらいしかなかったと思うんです。当時のMAXがレベル33だったので、“準ボス”くらいの立ち位置ですよね。いま言ったように高難度の激ムズ曲は憧れでしたので、そんなポジションにしていただけただけでも感激でした。

--いやあ、これもおもしろい話だなぁ。まさかご自身も高難度の激ムズポジションを求められていたとは……!

いるかアイス プレイヤーが必死にあがいて、歯を食いしばってでもがんばる……っていう姿、本当にかっこいいと思っているので、そういう情熱をぶつけられる楽曲を“作る側”になりたいなと思っていましたから。

--じつは弊社の『プロセカ』担当が、「せっかくいるかアイスさんにインタビューできるんだから、『Brand New Day』のマスターランクをクリアーしていないと失礼だ!」と言って、ホントにクリアーしていました(笑)。

いるかアイス ええええ! そうなんですか!? なんか……ありがとうございます(笑)。……スゴいですね!!

--ちなみにいるかアイスさんは、ご自身でプレイされてみていかがですか?

いるかアイス 私も、マスターは回復キャラをたくさん積んでようやくクリアーできるかな……というくらいです。

--うわ、すごいな! クリアーできるんだ!

いるかアイス エキスパートは、フルコンできました(笑)。そりゃあもう意地になって練習して……。マスターもなんとかしたいんですけど、やり込みすぎると筋肉痛になるんですよねぇ(苦笑)。

--そんな凶悪譜面の『Brand New Day』ですけど、ゲーム実装後にいろいろな反響があったんじゃないですか?

いるかアイス はい、たくさんの反応がありました。「曲は明るくて希望に満ち溢れてるのに、譜面で絶望する」とか、「曲は人に寄り添って、背中を押す内容なのに、譜面は鬼」とかとか(笑)。曲調と譜面が相反する……という感想がすごく多くて、おもしろかったです。

--そういう感想が、もっとも多い楽曲かもしれないですね。

いるかアイス プレイヤーの皆さんにいい手応えを感じてもらえたようで、いまだ音ゲー楽曲への憧れが強い私にとっては、そういう反響もとってもうれしいですね。

--では、『Brand New Day』が大好きなファンに向けて、何か一言お願いできればと思うんですが!

いるかアイス いつも『Brand New Day』を聴いていただけてうれしいです。まだクリアーできてないという方はあきらめずにたくさん叩いて、マスターフルコンなど高い目標をもってがんばってください!!

▲MASTER Lv.32の高難易度楽曲となっている『Brand New Day』(作詞・作曲:いるかアイス)。腕に自信のある人は、ぜひ挑戦してくれ!

--ありがとうございます! ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは……いるかアイスさんが、ボカロPになられたきっかけを教えてください!

いるかアイス 私、子どものころはすごく現実を見るタイプで、まったく夢見がちではなかったんです。音楽とか絵を続けられている方は類まれなる才能の持ち主で、それを職業にまでするのはほんの一握りの天才だけだと思っていました。なので私はもっと現実的に理系の道に進んで、プログラミングなどを学んだんですね。

--ほうほう……!

いるかアイス DTM(パソコンを使って音楽制作をすること)を始めたきっかけも、おそらく多くの人は好きなアーティストへの憧れとかだと思うんですけど、私はまったくそんなことはなく……。たまたま身近な友人たちが、サークルでDTMをやったり、絵を描いたりと総合的にコンテンツを作る活動をしていて、オリジナルの楽曲まで作っていると知って衝撃を受けたんです。私の中で“音楽を作る”ということは、一部の飛び抜けた才能を持った天才の仕事だと思っていましたから。「同じ学校で、同じ勉強をしている友だちが、音楽を作ってるの!?」という驚きは、いまでも忘れられません。でもそれをきっかけに、(もしかして……私にもできるのかな?)と思い始めるんです。

--若者の群像劇ですな……!

いるかアイス 同時に、その友だちも「いるかアイスもやってみようよ!」と誘ってくれたのもあって、じゃあ……ということでDTMを始めてみました。最初は歌詞のないインスト音楽を作ってみて、慣れてくるにつれて「歌も入れたいな」と思うようになって……。そこで、真っ先に思い浮かんだのがボカロでした。リアルな誰かに歌ってもらおうか……ということはまったく考えず、「ボカロしかないよね」という自然な感じで『初音ミク』を購入したんです。

--昔から音楽をやっていて、その延長線上にボーカロイドがあった……というわけではないんですね。

いるかアイス そうなんです。音楽自体は小学生のころにエレクトーンをやっていて、好きではあったんですけど、多くのボカロPの方々が経験したであろう吹奏楽部とか、バンド活動とかはいっさいしてきませんでした。本当は、高校、大学で吹奏楽部に入りたいなと思ったんですけど、それまで多くの人といっしょに演奏するという経験がなかったので、なんか……怖くて入れなくて(苦笑)。その点、DTMのサークルはアットホームで優しい感じで、「ここなら入れる!」と……(笑)。

--では、ボカロPになるために必要なスキルって、何かありますか? いるかアイスさんは理系でプログラミングをやられていた……ということで、パソコンの扱いには一日の長がありそうですが。

いるかアイス あ、そうですね。パソコンを触るのがすごく好きなんです。なんと言うか……自分の秘密基地を作るような作業がすごく性に合っていて、たとえば箱庭系のゲームで延々とレイアウトをしていたり、PCを使って1日中絵を描いていたり、ひたすらWebデザインをしていたり……。“パソコンを使って何かを作る”というクリエイティブなことには馴染みがあったし、ボカロやDTMについて教えてくれる人もまわりにたくさんいたので、楽曲作りもわりとすんなりと手に馴染んだと思います。

--そういう意味では、楽器のスキルがなくとも、ある程度パソコンを使えればなんとかなるんですかね?

いるかアイス はい、そう思います。パソコンが好きとか、何かを作るのが好きとか……。そういうクリエイティブ精神があるのがいちばんじゃないでしょうか。

--ほかのボカロPの方にも聞いてるんですけど、楽器を弾けたり、譜面を読めたりする必要はあると思いますか?

いるかアイス そのスキルがあればよりスムーズに作業に入れる……とは思います。でも、私は一応、エレクトーンやピアノを習ってはいましたけど、コンテストに参加した事などは一度もありませんでした。本当に、ちょっと楽譜が読めて、ちょっと弾けるくらい。スキルはあるに越したことはないと思いますけど、それよりも大事なのは子どものころからたくさんの音楽に触れて、いろいろと聴くことだと思うんです。これまでの人生で聴いてきた楽曲ってすべて自分の引き出しになるし、実際にいま私が作っている楽曲も要所要所で幼いころに聴いた音楽に影響を受けていると思いますし。

--聴いた音楽が武器になる、と!

いるかアイス はい、そう思います。もしも可能であれば、曲を聴く際に“解像度を上げる”ことを意識するといいかなと。

--解像度、ですか。

いるかアイス どういうことかと言うと、「この曲のコード進行はどうなっているんだろう?」とか、「どの部分に自分は惹かれているんだろう?」など、ただ聴くのではなく分析するクセを付けるといいと思うんです。すると少しずつ楽曲の造りがわかってきて、それらはすべて自分の知識になります。この“解像度を上げる”というクセを付けるのにもっとも有効なツールが、じつは『プロセカ』だと感じているんですね。というのも、『プロセカ』ってボカロがベースではありますけど、あらゆるジャンルの曲が入っているライブラリーみたいになっているんです。ロック、エレクトロ系、ミュージカルなどさまざまな曲を知ることができるので、『プロセカ』をやり込むことを強くオススメしたいです!

--これは、運営さんにはたまらない回答ですねえ(笑)。いやしかし、いるかアイスさんてやっぱり理系の人なんだなって思います。冷静に分析されてから行動している感じが。文系はどっちかというと、パッションだけで突っ走る傾向がありますから。

いるかアイス あははは!

▲いるかアイスさんがデザインした、セーラー服がとってもかわいい、いるかモチーフの女の子”ルッカ”ちゃん!

--では改めてお聞きしますが、ボカロPになられてよかったことって、何かありますか?

いるかアイス これまでは単純に音楽を作るだけでしたけど、“ボカロP”という肩書きがついたことで、やれることの幅がすごく広がったなと感じます。私、先ほども言いましたけど秘密基地を作る作業が好きなので、音楽だけに留まらず、絵を描いたり、MVやCDを作ったり、動画配信やゲーム配信などなど、本当に自分の好きなことをやっているんですね。でも、こういうことができているのって間違いなくボカロPになれたおかげで、ボカロにはさまざまな可能性を広げるパワーがあるんだろうなって思います。今回のインタビューで子どもたちに向けて発信できるのも、まさにボカロPになれたおかげですし。いまは、音楽だけじゃなくいろいろなことにアンテナを伸ばして、それについてきてくれる人もたくさんいるので、本当に幸せな立ち回りができていると感じます。

--いるかアイスさんて、本当にさまざまことをされていますよね。以前、このインタビュー企画に参画してくれた市瀬るぽさんと合作で曲作ったりとか。すごく好奇心旺盛に、いろんなことをやられている印象があります。

いるかアイス はい。好奇心って、本当に大事ですよね。これが、子どもたちにもっとも伝えたいことかもしれません。

--昨今は世界規模でいろいろなことが起こるので、なかなか夢を見るのもたいへんな時代ですけど、やっぱり夢や希望は忘れないでほしいですよね。

いるかアイス そうなんです。夢は絶対に見たほうがいいですもん。得意なことや才能がある分野に気付かずに過ごしている人って、いっぱいいると思うんですね。そこでがんばれれば、とてつもない能力が開花したかもしれないのに……という。少しでもたくさんのことに気付くためにも、夢を持ってほしいですよね。

--では、ボカロPの先達として少年少女にエールを送るとしたら?

いるかアイス 楽しむことを第一に、自分の秘密基地を作る気持ちで、まずはいろんなことに挑戦してもらいたいです。そして自分だけで活動せず、まわりの人としゃべったりすることもすごく大事なので、悩むことがあったらまずは誰かに相談して、“自分が挫けないためのケア”も忘れずにやっていってほしいです!

--そういう意味では、ボカロPどうしのつながりって、けっこうあるんですか?

いるかアイス 最近、すごく増えました! 近いジャンルの曲を作っているボカロPの方たちととくに仲良くさせてもらっていて、いっしょにゲームをしたり、先日はマジカルミライ大阪のクリエイターズマーケットがあったので、みんなで旅行気分でくり出したり。頻繁に交流を楽しんでいます。

--青春ですね~……!

いるかアイス はい、青春です(笑)。大学の合宿のようなノリを続けていられるので、いますごく楽しいです。

--その際、ほかのボカロPの方から刺激を受けたりも?

いるかアイス あります! 自分が作れないような作品を作っておられる方がいればお話を聞きにいきますし、逆に自分の曲の感想を聞いてつぎの活動に活かしたりもします。他のボカロPの方たちと意見交換をたくさんすることで、私の創作の幅も広がっていくと感じるんです。

--わかりました! では最後に、『プロセカ』の今後について何かエールなどありましたらお願いします!

いるかアイス 楽曲提供者という立場だけでなく、ひとりのプレイヤーとしてもたくさん楽しませていただいています。収録曲は地道にハードまではAP(オールパーフェクトのこと)したり、フルコンも目指して毎日がんばってプレイしています。『プロセカ』の凄まじい成長に置いてかれないように、私も“真・皆伝”を獲るとか、『Brand New Day』のマスターをフルコンするとか、いろいろと目標を定めて遊び続けさせていただきます!

--本日はお忙しい中、本当にありがとうございました!

いるかアイス

ボカロと音ゲーコンテンツが好き。キラキラしていてハッピーになれる音楽をコンセプトにエレクトロポップやハッピーハードコアなど様々な楽曲を制作。
2021年、プロジェクトセカイの楽曲公募である第1回プロセカNEXT楽曲コンテストにて『Brand New Day』が採用され、ゲーム内で実装中。

ニューアルバム

「iceQuarium -Melon Soda-」

2022.08.13 Release

『いるかアイス feat. 初音ミク』が贈る、キラキラ輝くエレクトロポップなアルバム第4弾!Lovely Kitchen (3R2 Remix) も収録の全10曲!

 

特設サイト:http://onprism-rec.com/iceQuarium4/

 

  1. メロン・メロディ・トロイメライ
  2. Melty Cream Soda
  3. メロンクリーム・スプラッシュ
  4. クロスド・レター
  5. Rainy Step
  6. My Lucky Weekend
  7. Lucky☆Honey☆Pancake
  8. Streaming Love
  9. なないろハピネス
  10. Lovely Kitchen (3R2 Remix)

『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』の関連記事こちらをチェック!!

☆☆ボカロPインタビュー企画☆☆

連載記事

#1:市瀬るぽさん       

#2:R Sound Designさん

#3:ナユタン星人さん

#4:じんさん

#5:すりぃさん                         

#6:OSTER projectさん

#7:40mPさん

#8:八王子Pさん

#9:いるかアイスさん

 

 

☆☆プロセカ一周年特集はこちら☆☆

ボカロPに直撃インタビュー!

#1:DECO*27さん

#2:ピノキオピーさん

#3:Mitchie Mさん

#4:Gigaさん

#5:syudouさん

 

 

衣装カタログ

#1:バーチャル・シンガー編

#2:Leo/need編                        

#3:MORE MORE JUMP!編

#4:Vivid BAD SQUAD編      

#5:ワンダーランズ×ショウタイム編

#6:25時、ナイトコードで。編

 

タイトル概要

プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク

■対応OS:iOS/Android

■App Store URL:https://itunes.apple.com/app/id1489932710

■Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.pjsekai

■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)

■価格:基本無料(アイテム課金あり)

■ジャンル:リズム&アドベンチャー

■メーカー:セガ/ Colorful Palette

■公式Twitter:https://twitter.com/pj_sekai