【プロセカ】ボカロPに直撃! “164”さんが語る“Leo/need”(レオニ)と、オリジナル楽曲『「1」』について!【ボカロPインタビュー企画 #14】

164さんの曲作りに迫る!

 2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。

 2021年10月には1周年を祝した特集を展開し、

『プロセカ』1周年記念特集は下記の画像をクリック!!
 

 さらに2022年10月には『プロセカ』2周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けている。

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 そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!

 “子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!

 『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!

 そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!

 さて今回ご登場いただくのは、“Leo/need”(レオニ)のイベントストーリー『Resonate with you』にオリジナル楽曲『1』を提供された“164”(いちろくよん)さんだ。

 『Resonate with you』はレオニのターニングポイントとなる重要な物語。プロを目指す日野森志歩は、自分の夢に仲間を巻き込んでいいのか、日々思い悩んでいる。そんなとき、志歩はメジャーデビューバンドにスカウトされて、心がさらに揺れ動く。この事実を知った一歌たちレオニのメンバーは……!

 概要を書いているだけで切なくなるこの物語に寄り添うように奏でられる『1』は、どのように作られたのか? 

※インタビューはオンラインで実施したものです。

レオニのメンバーが弾ける曲を

--まずはたいへん恐縮なのですが、簡単に自己紹介をお願いできればなと……!

164 わかりました! ボカロPをやっております“164(いちろくよん)”と申します。……『ダッシュ!四駆郎』と『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』世代で、『ビーダマン』も少したしなんでおります! よろしくお願いいたします。

--!!!? ……コロコロコミック編集部の面々がたいへん喜ぶかと思います(笑)。ありがとうございます! ……えー、今回は164さんが『プロセカ』に提供されたオリジナル楽曲『1』についてお話を伺いたいのですが……!

164 はい。

--個人的な感想で恐縮ですが、『「1」』は“プロジェクトセカイ 2nd Anniversary 感謝祭”のライブで披露されていて、それを聴いて感動したばかりなんです。

164 本当ですか!? ありがとうございます!

--ということでまずは……この依頼を受けたときの率直な感想からお聞かせください。

164 (同席したマネージャーに)この案件って、直接僕にメールが届いたんだよね?

マネージャー そうですそうです。

164 そう、運営さんから僕に直接メールが来たんですけど、そのとき僕は『プロセカ』のことを知らなかったんです。ですのでメールをもらった段階では、(なんだか怪しいメールが来たぞ……)と思いました。

--あ、そうなんですか! これまでお話を聞いてきたボカロPの方々と違うパターンだぞ……(笑)。

164 というのも僕はふだん、野球とか車が趣味で、音ゲーに疎いんです。なので(怪しい……)と思ったという(笑)。

--ふだん、ゲームでは遊ばれないんですか?

164 王道のRPGとかは遊んできましたけど、ほかのゲーム好きの人のようにやり込んだりは、あまり……。

--いままでお話を伺ってきたボカロPの皆さんは、「音ゲーがめちゃくちゃ好きで!」って方が多かった印象です。

164 いや、僕はまったく通ってこなかったですねぇ。

--うーん、ちょっと意外。でも、おもしろいですねぇ……。そんな164さんが楽曲を担当したユニットはLeo/needですけど、彼女たちを初めて見たときの印象はいかがでしたか?

164 それぞれルックスも性格もぜんぜん違う、キャラが立った子たちだな……と思いました。加えて、僕も学生時代からずっとバンドをやってきたので、そういう意味では共通点もたくさんあるユニットなんだろうなと感じたことを覚えています。

--『プロセカ』に登場するユニットの中で、もっとも164さんと親和性が高いのがLeo/needかもしれませんね。

164 それは間違いないと思います。節々で揺れ動く彼女たちの気持ち、すごくわかりますもん。

--今回のイベントストーリー『Resonate with you』は、レオニのメンバーの中で唯一明確にプロを目指すと公言している日野森志歩ちゃんが、メジャーデビューが決まっているバンドにスカウトされて逡巡する……という内容ですけど、読んでみていかがでしたか?

164 ……じつは振り返ってみると、昔の僕がまさに志歩ちゃんのポジションにいたんです。

--なんと……!

164 そのころ、組んでいたバンドではバンドマスターのポジションにいる事が多かったんですけど、レベルや志が低い仲間に苛立って、何度も空中分解するという憂き目を見ているんです。志歩ちゃんと比べると、僕はだいぶ性格が悪かったなぁ……といまになって思いますけど、彼女の心が揺れたり、不安に思ったりする気持ちは痛いほどわかるんです。

--じつはここ、すごく突っ込んでお聞きしたいと思っていたんですけど、『Resonate with you』の志歩ちゃんとレオニのメンバーは、まさに人生のターニングポイントを迎えているわけじゃないですか。音楽の世界で生きていく覚悟ができるのかどうか……という。164さんは、何をきっかけに覚悟を決められたんですか?

164 まだ僕が20代だったころ……ボカロPを始めるほんの直前までバンドをやっていたんですね。でも最終的にそのバンドも、ツアー中だというのに仲間とぶつかって辞めてしまうんですけど、そのときに……(しばし考えて)「ひとりでやったほうが楽だな!」って思ったんです。自分がアレンジを考えていて、それをメンバーに指示していたので。「こんなことだったら、ひとりで活動をしたほうがぜんぜんいいだろ」と気づいて、たまたま始めたボカロで1曲目を作りました。それが意外なほどヒットしたのを見て、「ホラ見たことか!」と思ったんです。……いましゃべっていて思いましたけど、やっぱり志歩ちゃんよりだいぶ性格が悪いですねぇ(苦笑)。

--いやでも、志歩ちゃんとはスタンスが違いますけど、かなり近しい経験ですね……。

164 そうなんです。ですので、彼女の気持ちは本当によくわかります。

--今回の楽曲『「1」』に、その経験とか想いを反映されている、と……!

164 そうです。もう……モロに反映されています!

▲イベント『Resonate with you』の書き下ろし楽曲としてリリースされた。

--ぜひ、『「1」』のコンセプトをお聞かせください!

164 じつは僕、ふつうに会社員として働きながらボカロPの活動を始めたんですよ。しばらくは二足の草鞋(わらじ)でボカロの曲を作ったり、他の方に楽曲提供を行っていたんですけど、あるとき、音楽系の収入が会社員としてもらう給料を逆転してしまったんです。そこでやっぱり、このまま会社員との両立を続けるべきか、それとも音楽1本でやっていくのか……という逡巡が生まれるわけです。僕にとっての、人生のターニングポイントですよね。会社員を辞めるってのはイコール、“退路を断つ”ということ。『「1」』の歌詞にもありますけど、そのときの僕には“戻らない覚悟”がどうしても必要だったのかな……。ですので『「1」』は、この当時のことを思い出しながら書き上げた楽曲になります。

--……いますごく心に響いて震えているんですけど、じつは僕も20年以上勤めた大手出版社を辞め、仲間とたったふたりで小さな編プロを立ち上げて活動をしているんです。いま164さんがおっしゃったことは、まさに僕らが逡巡したことでもあるので、いま改めて自分が『「1」』に惹かれている理由を理解したように思います(笑)。

164 ありがとうございます! そう言っていただけてうれしいです。

--改めて、『「1」』の中でとくにお気に入りの歌詞を教えてください。

164 いままさに言ったところになるんですけど、「もう戻れない覚悟も  ここに居るという証明も 誰も触れない遠い場所で咲いているから」という箇所……。先ほど話した心境が、ここに凝縮されていると思います。そういう意味で、いちばんのお気に入りの歌詞ですね。

--おお、やはり……! 僕も改めて『「1」』の歌詞を何度も読み返しましたけど、いちばん好きなのはこの部分です。

164 ありがとうございます! 恐縮です(笑)。

--何かに踏ん切りをつけて、新しい何かに踏み出した経験がある人は、間違いなく響く歌詞ですよ!

マネージャー すみません、164のマネジメントをしている者なんですが……この曲、コロコロコミックを読まれる少年少女にどう聴かれるかはわからないんですけど、歳を取っていろいろな経験を積んでいる人ほど刺さるんですよね!! もちろん、部活とか勉強をがんばっている学生さんにも響くと思いますけど、なんと言うか……軸があって戦ってきた人たちに刺さりまくる歌詞なんですよねー!!

--わかりますわかります! なんだか泣けちゃいますもん、『「1」』を聴いていると……! そこでぜひお聞きしたいのですが、この『「1」』というタイトルに込めた想いをぜひ……!

164 この楽曲は、まず曲を作って、その後に歌詞を書いて、最後にタイトルを決めるという流れだったんですけど、歌詞の中に数字がいくつか出てくるんですね。「二欠片」とか「描く未来はただ一つしかないから」とか……。そしてイベントストーリーのレオニも、志歩ちゃん対他の3人……という1対3の構図になっているじゃないですか。そういう、いろいろな数字の意味を内包した“1”になればいいな……と考えました。

 

--では、改めて『「1」』の聴きどころを教えてください。

164 この楽曲、じつはちょっとしたギミックを仕込んであるんです。まあ……投稿した瞬間に光の速さでバレてしまったんですが(苦笑)。そのギミックとは、イントロからしばらくは三拍子で展開するんですけど、サビで四拍子に変化すること。これの意味するところは、今回のイベントストーリーを反映させて“3人から4人になる”ということを表現したわけです。曲の途中で拍子が変わっているのって、音楽に詳しくないとわかりにくいギミックですけど、一度指揮者のマネをして、手を振りながら拍子を数えてみるとおもしろいと思いますよ。

--まさに、タクトを振ったつもりで拍子を数えながら聴いていました(笑)。このギミックは、イベントストーリーを読み込んだからこそ生まれたものなんですよね。

164 そうですそうです。イベントストーリーのプロットをいただいて、しっかりとインプットしてから曲を作っていきましたから。

--もうひとつ、『「1」』を聴いた多くの方が驚いているのが、ベースがすごくかっこいい! ってことです。

164 おお! ありがとうございます!

--イベントストーリーのキーキャラクターである志歩ちゃんがベース奏者ですけど、やはりこれを意識されて?

164 めちゃくちゃ意識しました(笑)。「この物語の楽曲ならば、ベースが目立たないとダメだろう!!」と思いまして……。これにプラスして、Aメロの途中から静かなピアノとギターのアルペジオ(※和音を同時に鳴らすのではなく、1音ずつ順番に連続的に発する演奏方法のこと)が入って、Bメロが盛り上がってくるところからベースも加わってくる……というイメージで作りました。

--これは……『「1」』の答え合わせを聞いているようで、じつに気持ちがいいです(笑)。この曲を好きな人たちが一生懸命考察しているのをよく見るんですけど、答えを届けられてよかった!

164 あははは。『「1」』は、シンプルなバンドサウンドっていうのもよかったかもしれませんね。本当に、ギター、ベース、ピアノ、ドラムしか使っていませんから。生楽器ではないシンセサイザーなどはいっさい入れていないので、聴かれた方が検証や考察をしやすい構造になっているだろうなと思います。

--それだけこだわられたとなると、制作にはかなりの時間がかかったかと思うのですが。

164 難産……ではあったと思います。でも……じつは、僕がよく使う反則技がありまして。

--ほう……!!

164 最初に上がったデモ曲と、「こっちがフル尺です!」って渡すものの内容が違うんです(笑)。具体的に言うと、僕が最初に提出した曲はすべて三拍子で作ったバージョンで、先ほどお話した四拍子に展開するギミックは入っていなかったんです。その後にさらに作り込んでいった結果、「サビは四拍子にしたほうがいいな」と思いついて、後日改めてギミック入りのバージョンを「フル尺です!!」と言って納品した、と……。もちろん、キチンと期日内に収めていますよ!?(笑) とはいえ、作るのに苦労は……したかなあ。

--具体的には、どのあたりで?

164 イベントストーリー自体が、暗い曲に振ればいいのか、それとも明るくしていいのか、微妙な立ち位置にあると思ったんですよね。「これのテーマソングとなると……どっちにすればいいんだ?」と思い悩んで、最終的に、「どっちにも取れないところを攻めよう」と決めたんです。暗すぎはしないけど底抜けに明るいわけでもない、微妙な音を選んで。

--確かに、すごく絶妙なところを突いている音だと思います。

164 その塩梅を探るのに、かなり時間を使ったことを覚えていますね。

--そんな苦労の末に誕生した『「1」』がゲームに実装されたわけですけど、初めて見たときはどう思われましたか?

164 うれしくてうれしくて、何回くり返し見たかわかりません(笑)。プレイ動画も、YouTubeで見まくりました。

--ご自身でプレイはされていないのですか?

164 音ゲー、まったく遊ばないんですよね……。『プロセカ』に限らずですけど……(笑)。

マネージャー その代わり、私がリリース初日にすべての難度でフルコンボを出しました!!

164 マネージャーのほうが圧倒的にプレイしているという(苦笑)。

--実装後に、いろいろな反響があったと思いますが。

164 ありました! ゲームに実装されたタイミングと、僕がボカロバージョンのMV(ミュージックビデオ)を公開した日が近かったので、余計に反響が広がったように思います。

--ボカロバージョンって……あのすべてが実写で録られているMVですよね!?

164 そうですそうです!

▲164さんのマネージャーさんがプロデュースした渾身の実写MV。インタビュー中も楽しい掛け合いを見せてくれたおふたりは、まさに以心伝心で活動している感じを受けた。
※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。

--あのMV……めちゃくちゃインパクトがあって衝撃を受けました。

164 本当ですか!? ありがとうございます! 

--ボカロのMVに実写が使われるのって、すごく珍しいですよね。

164 そうですねー。そのあたりのセッティングは、このマネージャーがすべてやってくれました。

マネージャー 164が作る楽曲って情感にあふれていて、人間ドラマが思い浮かぶものがとても多いんです。その部分を強調し、かつ、名だたるボカロPさんの高クオリティーなアニメーションMVと並んでも埋もれないように、なんとか差別化したいなと考えていました。とくに『「1」』に関してはそれを強く思って、曲調や歌詞を読んだときに、「これは実写で録るしかないな!」と。

164 それと……! 『「1」』って本当に、レオニの志歩ちゃんのことだけを考えて作った曲なので、ボカロに置き換えたアニメ調のMVが僕の頭の中でまったくハマらなかったんですよね。それをマネージャーに話したところ、「よし、任せろ!」と(笑)。ここぞとばかりに、実写で録ってくれました。

--これ、このインタビューを読まれている読者にもぜひ観てほしいんですけど、本当にレオニの実写版って感じのMVなんですよね……! しかも……あれって、本当にボカロが歌っているんですか!? 人間ではなく??

164 ボカロです(笑)。

--信じられない……。あのMVを初めて見たとき、実写仕立てということもあって、「あれ? これ、人間が歌ってるじゃん」って思いましたもん。調声がスゴすぎる……!!

164 ありがとうございます。そこに関しては……熟練の技ですね!(笑)

--では改めて、僕と同じように『「1」』が大好きなファンが大勢いますが、そんな人たちに向けてひと言お願いできますでしょうか?

164 僕が作る他の楽曲を聴いてくれている方はご存知かと思いますけど、ふだんは“レスポール”っていう、太くて派手な音が出るギターを中心に曲を作っているんです。でも今回はレオニに合わせて、彼女たちが使っている楽器とまったく同じ音が出るものをそろえてから音作りを行いました。レオニのみんなが実際に演奏したときにキチンと同じ音になるように調整しているので、そのへんを聴き込んでもらえたらうれしいですね。

--あ……! そうか! つまりレオニの子たちが実在したとして、しっかりと彼女たちで弾ける曲になっているってことか……!!!

164 そうですそうです! ですので速弾きとかは絶対に入れたくないと思いましたし、ドラムもいま言ったように片足で踏めるようになっているんです。ただベースに関しては、あえて難しめにしました。志歩ちゃんだけ、ちょっとレベルが高い子なので(笑)。

--す、凄すぎる……! なんてこだわりなんだ……! これ、レオニファンはもちろんですけど、全プロセカファンが読んで感動するインタビューですよ……!(感動)

164 あ、本当ですか?(笑) そうであれば、うれしいですねー!

--……ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは……164さんが、ボカロPになられたきっかけを教えてください!

164 先ほども言った通り僕はずっとバンド活動をしていたのですが、なんやかんやあった末に「これは全部ひとりでやったほうがいいな」と思って、ボカロの活動に入りました。でも、いま思えばですけど、もしも歌が得意だったらボカロPにはならなかったと思います。というのも、僕がボカロPになったころは、いまの少年少女のように「ボカロPに憧れています!」という想いをきっかけにこの世界に入ってくる人、ほとんどいなかったんじゃないかなと。

--そうなんですか?

164 はい。僕がボカロを始めたのは『初音ミク』が発売された翌年の2008年なんですけど、本当にきっかけは「ひとりでやっていくための運命的なツールに出会った!!」というものでしたから。そういうボカロPの方、きっと少なくないと思うんです。ボカロに初めて触ったときは、まるで惑星すべてが1列に並んでいるのを目の当たりにしたかのような、僕に足りなかったパーツがバーンと目の前に現れたかのような心境になりました。

--ついにこういうツールが出てくれたか……! と?

164 はい。「俺のためにあるツールじゃん!!」って思いました(笑)。

--では、ボカロPになるために必要なスキルがあったら、ぜひ教えていただきたいのですが……!

164 「ないです」と言いたいところではあるんですけど……。楽譜は読めなくていいし、楽器も……上手に弾ける必要はまったくないと思います。ただ、ある程度の音楽理論がわからないと曲は作れないと思うんですね。

--はい。

164 その理論を感覚的に身に着けるためには、やっぱりギターかピアノには触っておいたほうがいいかなと思います。その上で、とにかく曲を作り始めれば細かなことは自然とわかってくると思うので。ギターかピアノ……つまり和音が出る楽器にチャレンジしてみると勉強になると思います。

--他のボカロPの方々も、もしも楽器をやるんだったらギターかピアノがおすすめです、とおっしゃいますね。

164 ですよね。僕もそうだと思います。

--でも164さんは、ひと通り楽器ができるわけですよね。とくに、ギターを。

164 そうですね。でも、小さいころからやっていたのはドラムなんですよ。

--あ、そうなのですね!

164 はい。ずっとドラムを叩いていたんですけどあまり目立たないので、中学生のころからギターを始めました(笑)。

--そういった経験が、いまのボカロP活動にも活かされている?

164 あ、それは間違いなくそう思いますね。子どものころからドラムを叩いていた事実は、かなりのアドバンテージになったな、と。ですので僕が作る楽曲ってプロのドラマーが聴いたら、「あ、この曲を作った人はドラムが叩けるんだな」とわかると思います。

--ドラムは機材が大きいので置き場所を考える必要があるかもしれないですけど、かっこいいですよね! でもここでは、汎用性が高いピアノかギターがおすすめ、と!

164 はい、そうですね(笑)。それとくり返しになりますが、楽譜が読めるかどうかは大きな問題ではないので、あまり気にしなくていいです。そもそも五線譜って……収録の現場で奏者と打ち合わせをするときの共通言語にするくらいで、制作する上ではほとんど使いませんから。

--お話を聞いていると、「自分も曲を作ってみようかな……!」と思えてきました。

164 ぜひ(笑)。DAW(PCで音楽制作を行うときに使うツールのこと)をずっとやっていたら、なんとなく楽譜の意味もわかってくるようになると思いますしね。それほどハードルが高いものじゃないですよ!

--では、「ボカロPになってよかった」と思うことがありましたら、ぜひ教えてください!

164 たくさんあるんですけど、強烈に印象に残っているのは自分のワンマンライブのときに、お客さんが僕の曲すべてをいっしょに歌っているのを見たとき……! ふだん、僕は部屋にこもって曲を作っているので、基本的に誰ともコミュニケーションを取らないんですよ。つまり、世間から隔絶された環境で仕事をしているわけです。なので、自分の曲がどれだけ知られているのか……という実感もほとんどないんですけど、ひらすら暗い部屋でポチポチと書いた歌詞とかメロディーをお客さん全員が覚えてくれて、しかもいっしょに歌ってくれる姿を見たときは、やたらと感動しました。

--あー……! それは確かに、心に来るものがあるでしょうね……!

164 おそらく、ボカロPはみんなそうだと思うんですけど、基本的に劣等感の塊なんですよ。僕の場合だと、「『天ノ弱』以外、誰も知らないでしょ……」なんて思ったり(苦笑)。そのライブのときも、僕の曲を歌ってくれるアーティストを3人ほどゲストとして招いていたんですが、満員のお客さんを見ても、「ああ、これは3人の歌い手さんを見に来たんだな……」って思いましたし(笑)。でも蓋を開けてみたら、めちゃくちゃマイナーな曲ですら観客の皆さんは知ってくれていて、それを見て初めて、「あ……! みんな僕の曲をちゃんと知っていて来てくれたんだ……!!」って思えたんです。

▲再生回数3900万回を突破した164さんの代表曲『天ノ弱』。プロセカにも収録されており、Leo/needが歌唱している。

--そんなボカロPを目指す少年少女に、ぜひ先達としてひと言いただきたいのですが!

164 まず言いたいのが、「とりあえずやってみろ!」ということ。いまの時代、スマホでも作曲ができると思うので、できた曲を公開するかどうかはべつにして、まずは曲作りに触れてみてほしいです。ほら、よく言うじゃないですか。「まずはこれをそろえて、やり方を勉強してから始めよう」なんていう“やらないための言い訳”。そうではなく、見切り発車でいいから「とりあえずやってみよう!」と強く言いたいですね。いまボカロPとして活躍している人なんて、全員が見切り発車で始めたと思いますもん(笑)。

--他のボカロPの方も、「まずはやってみること!」とおっしゃいますね。

164 でしょう。ボカロに触った瞬間に、「自分はボカロPだ!」って名乗っていいと思いますしね。まずは、最初の1歩を踏み出してみよう!

--「難しそう」という先入観から、二の足を踏む人もいますよね。

164 わかります。でも、YouTubeや本で勉強してから……という前提こそ時間がもったいないと思うんです。とりあえず、やってみたらすぐにわかるんですもん。音を並べたらボカロが「あ」って言うとかね。アレとコレの間に言葉を入れたら歌詞が変わるぞ……とかとか。確かに1曲を仕上げるのはめちゃくちゃたいへんだと思いますけど、徐々に仕上がっていく充実感と感動は絶対に味わえるはずなので。がんばってください!

--もうひとつ、そうやって完成させた曲も、公開する段階になって、「やっぱり恥ずかしいな……」と思っちゃう子もいるかと思うんです。この恥ずかしさを払拭するには、どうすればいいんですかね?

164 僕は、初投稿のときも恥ずかしいとは思わなかったんですよね。だって、僕のことなんて誰も知らないし(笑)。なので、恥ずかしくて止まってしまう子には、「まだあなたのことは誰も知らないし、失敗したなと思ったら名前を変えてやり直せばいいだけなので、気にしなくていいよ!」と言ってあげたいです。

マネージャー ボカロPとして……ということとはちょっとズレちゃうかもしれませんけど、164さんがステージに立つときの心構えが、そういった子たちに対する強烈なメッセージになると思います。

--おお!! それはぜひお聞きしたいですね!

164 エリック・クラプトンというミュージシャンがいるじゃないですか。彼が言うんです。「ステージに上がったら、自分がいちばんうまいと思え。そして降りたら、自分がいちばん下手だと思え」って……。これ、僕の座右の銘なんですけどね。

--おおお……!!

164 ステージに上がったら、自分が最強です。観客はみんな僕のギターに釘付けで、夢中になって酔いしれている……! そう思うようにしています。まあこれはライブの話ですけど、それくらいの精神状態に持っていかないとステージでのパフォーマンスなんてできないし、曲も発信できないですからね。

--いまおっしゃられたことって、音楽に限らずクリエイティブな活動している人すべてに通じるものがありますね。絵にしても、文章にしても。恥ずかしがっていたら、発表できないですし。

164 まさに!! おっしゃる通りだと思います!

--ありがとうございます……! では最後になりますが、2周年を経てますます盛り上がっている『プロセカ』に、何かひと言いただけますでしょうか!

164 『プロセカ』って、もう文化のひとつになりつつあるんじゃないかと思っているんです。ボカロ文化の、確かなひとつのパーツに。ですので、いつまでも長く続いてほしいですし、なんならお仕事お待ちしています、と(笑)。まだまだ書きたいので、よろしくお願いいたします!

--今後も164さんのご活躍を楽しみにしております! 本日は本当にありがとうございました!

164
山口県出身のギタリスト / ボーカロイドプロデューサー。
2008年9月に発表した「shiningray」でボーカロイドプロデューサーとしての活動を開始。
2011年5月に発表した「天ノ弱」は現在3,200万回以上の再生数を突破し、ボーカロイド史上に残る名作となっている。
ボーカロイドを使用した楽曲を制作する傍ら、様々なアーティストやゲーム等への楽曲提供を積極的に行っており、これまでに7枚のメジャーアルバムをリリース。ライブイベントにも他国内外問わず精力的に出演中。

 

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ボカロPインタビュー連載

#1:市瀬るぽさん       

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#10:DIVELAさん

#11:Ayaseさん    

#12:YASUHIRO(康寛)

 

2周年『衣装カタログ』

#1:バーチャル・シンガー編

#2:Leo/need編    

#3:MORE MORE JUMP!編

#4:Vivid BAD SQUAD編

#5:ワンダーランズ×ショウタイム編

#6:25時、ナイトコードで。編

 

1周年ボカロPインタビュー

#1:DECO*27さん

#2:ピノキオピーさん

#3:Mitchie Mさん

#4:Gigaさん

#5:syudouさん

 

 

タイトル概要

プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク

■対応OS:iOS/Android

■App Store URL:https://itunes.apple.com/app/id1489932710

■Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.pjsekai

■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)

■価格:基本無料(アイテム課金あり)

■ジャンル:リズム&アドベンチャー

■メーカー:セガ/ Colorful Palette

■公式Twitter:https://twitter.com/pj_sekai