【プロセカ】ボカロPに直撃! “雄之助”さんが語る“Vivid BAD SQUAD(ビビバス)”と、オリジナル楽曲『Awake Now』について!【ボカロPインタビュー企画 #25】

雄之助さんの曲作りに迫る!

 2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。

 2021年10月には1周年を祝した特集を展開し、

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 さらに2022年10月には『プロセカ』2周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けている。

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 そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!

 “子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!

 『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!

 そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!

 さて今回ご登場いただくのは、Vivid BAD SQUAD(ビビバス)にオリジナル楽曲『Awake Now』を提供された“雄之助”さんだ。

 『Awake Now』が書き下ろされたイベントストーリー『Bout for Beside You』は当初、別のボカロPが曲を提供する予定だった。しかし、その方が体調不良のためオリジナル楽曲は白紙となり、ストーリーが先に配信されるという異例の展開に。そんな中、新たなボカロPとして白羽の矢が立ったのが雄之助さんであり、後日、ストーリーを追いかける形で『Awake Now』が実装されることになったのである。

 そんな、前例のない流れから生まれた『Awake Now』にはどんな想いが込められているのだろうか? じっくりとお話を伺ったぞ。

※インタビューはオンラインで実施したものです。

タケノコ少年さんへのアンサーも

--雄之助さんは、コロコロオンライン初登場! ということでまずは、簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか。

雄之助 わかりました! 音楽ゲームに楽曲を提供したり、ボカロP活動をしていたりする“雄之助”と申します。活動は、今年でちょうど10周年ですね。よろしくお願いいたします!

--おお、10年なんですね!

雄之助 そうなんです。いま見られるもっとも古い投稿は2014年のものなんですけど、活動自体は2013年に始めました。

--10年となると、ボカロPの中では中堅どころになるんですかね。

雄之助 はい。もしかすると新人のように思われている方がいるかもしれませんが、じつはけっこう長いんです(笑)。

▲2016年に投稿された雄之助さんの代表曲『PaⅢ.SENSATION』。プロセカにも収録されており、2DMVと3DMVで遊べるぞ!

--わかりました! そんな雄之助さんは『プロセカ』にオリジナル楽曲の『Awake Now』を提供されていますが、ここに至るまでの流れがほかのボカロPと違う……というか、かなり特殊な状況だったんですよね。

雄之助 はい、そうなんです。間違いなく、ほかにはないケースだと思います。

--ざっと説明すると、ビビバスのイベントストーリー『Bout for Beside You』に曲を書き下ろすことが発表されていたボカロPは、当初は雄之助さんではない別の方だったんですよね。しかしその方が体調不良のためイベントストーリーの配信に曲が間に合わず、急遽ボカロPの変更が発表になって。それが雄之助さんで、イベントストーリーの配信から数ヵ月後に『Awake Now』が実装されることになった、と。この、非常に目まぐるしかった当時を思い返してみて、いかがですか

雄之助 心から「マジか!!」と思いました。もう、ビックリをいくつ付けても足りないくらい驚いて、連絡をいただいたときは「えっ!!」と言ったまま固まってしまったことを覚えています。僕、じつはまえまえからビビバスが大好きで、彼らに曲を書くことが夢のひとつでもあったんです。それが、まさかこんな巡り合わせで楽曲を提供することになるなんて……。ある意味、奇跡のようなことだと思いましたし、だからこそいままで以上に全力を出して曲を作ろうと思いました。

--状況が状況だけに、プレッシャーも大きかったんじゃないですか?

雄之助 それが、とにかく情熱が先走っていたので、重圧は1グラムも感じていませんでした。というのも、僕自身が『Bout for Beside You』のイベントをリアルタイムでやり込んでいた人間なんです。そのイベントで杏ちゃんの葛藤を目の当たりにしていたし、ボカロPの方が体調不良になられたことも他のプレイヤーといっしょに知った側だったので、余計に「絶対にいいものを作らないと!!」と、気合に拍車が掛かりました。

--そうか。ユーザーと同じ目線で見ていたからこそ、輪をかけて意気に感じられたと……!

雄之助 もう、本当におっしゃる通りです!

--雄之助さんはそもそも、『プロセカ』が大好きで。

雄之助 大好きです! MASTERフルコン100曲とか、そういうレベルでずっとやり込んでいます。

--そんな『プロセカ』の中でもとくにビビバスがお好きとのことですが、彼らを初めて見たときはどんな印象を持たれましたか?

雄之助 もともと、自分が作る曲はビビバスにハマるなと思っていて、実際にすでに収録されている『PaⅢ.SENSATION』という曲もビビバスが歌唱してくれているんです。じつは『PaⅢ.SENSATION』をビビバスが歌うと決まったときも、「やっぱりな! ビビバスだよな!」と思うくらい、僕の作る曲のタイプと合致していました。僕の好きな音楽とビビバスの目指すところが一致しているし、ユニットのメンバーの気持ちもすごくわかるので、ビビバスは推しなんです。なかでも、こはねちゃんがいちばん好きですね。

--あ、こはね推しなんですね!

雄之助 こはねの★4をひたすらガチャを回して集めて、自分のプロフィールにズラリと並べて表示しています(笑)。

--でも、イベントストーリー『Bout for Beside You』は杏ちゃんがメインなので、ひとまずこはねは置いておいて(笑)。杏ちゃんについては、どんな印象を?

雄之助 このイベントストーリーの杏ちゃんの心情って、おそらくめちゃくちゃ多くの人がシンパシーを感じると思うんです。僕もそのひとりでしたし。

--殻を破ったこはねを見て、相棒としてさまざまな感情が押し寄せてきて翻弄される……という、じつに切なく感じるストーリーですよね。「自分はこはねの相棒のままでいられるのか?」と、自信が揺らいでしまう感じの……。

雄之助 そうなんです。僕も、そんなに自信に満ち溢れているわけではなく、知り合いの飛躍を見て「凄い!!」と感じ、同時に「どこか遠くへ行ってしまうのでは……」という気持ちに苛まれるタイプなんです。なので、イベントストーリーを読んだときもすぐに「杏ちゃんがんばれ!」と思ったし、彰人の背中を押すセリフにも痺れたんですよね。そして杏ちゃんとこはねの、相棒を認め合う言葉のやり取り……! 僕は涙腺が弱いので本気で泣きながら画面を見ていましたし、だからこそ「がんばれ!」というパワーを楽曲に込めました。

--このイベントストーリーって、決して派手な話ではないじゃないですか。でも、心に響くものがあるんですよね……!

雄之助 わかりますわかります!! ビビバスのストーリーではあるんですけど、自分にも当てはめて読んじゃうんですよね。

▲イベント『Bout for Beside You』の書き下ろし楽曲としてリリースされた。

--そこでぜひ、雄之助さんにお話ししたいことがあるんです。

雄之助 はい、なんでしょう?

--じつは先日、ボカロPのタケノコ少年さんにインタビューをしたんです。

雄之助 おおーーー!! リア友ですよ、僕の!

--そうなんですよね。タケノコ少年さんから、雄之助さんは同じ大学の同級生とお聞きしました。

雄之助 そうですそうです!

--タケノコ少年さんは、こう言ってました。「じつは同じ大学の同級生に、雄之助というスゴいボカロPがいます。彼は、僕がやっと1歩近づけたと思ったときには、10歩くらい先に行っちゃうんです」と。それを聞いて、このビビバスのイベントストーリーを思い出したんですよ。杏ちゃんとこはねの立ち位置と、ソックリじゃないですか?

雄之助 !!! なるほど、確かに……!!

--それに当てはめると、タケノコ少年さんから見た雄之助さんは、こはねなんじゃないかな、って。

雄之助 うわあ、それは気づきませんでした! 同級生どころか、僕ら一時期、同じマンションの違う階に住んでいたんですよ。よくタケちゃんが僕の部屋にやってきて、いっしょに遊ぶこともあるくらい仲が良くて。……思い出すなあ。大学の同級生3人でしゃべっていたとき、タケちゃんがポロッと「雄之助はいいな。スゴいな」って言ったことがあって。重い空気……というか、互いがクリエイターであることを思い出す瞬間が、そういうときに降りてくるんです。僕も、いろいろなクリエイターと接しているとスゴさに圧倒されるときがあるので、そのたびにタケちゃんとの会話を思い出すんですよね。

--もう完全に、『Bout for Beside You』じゃないですか!

雄之助 はい、そうかもしれないですね……!

--タケノコ少年さんからこの話を聞いて、そのアンサーを雄之助さんからもらいたいと思っていました。

雄之助 あの……! タケちゃんがコンテストで受賞して、楽曲が『プロセカ』に収録されるって知ったとき、これはマジで言うんですけど、知り合いの中で絶対に僕がいちばん喜んだと思います……!!

--……なんか、その言葉だけでこっちが泣きそうなんですが(苦笑)。

雄之助 タケちゃんとは、それほど頻繁にしゃべるわけじゃないんです。でも、同じところで活動する同志がいるってだけで、めちゃくちゃうれしいものなんですよ。この感情、絶対にタケちゃんも持ってくれていると思いますけど。……こう言ってしまうと語弊があるかもしれませんけど、タケちゃんが追いついてくれて、たとえば『プロセカ』のクリエイターズフェスタ(プロセカに楽曲収録されているボカロPだけが参加できる即売会)にいっしょに出られる……という状況も、僕からしたらとんでもなくうれしい出来事なんです。

--こういう関係性のボカロPって、初めてお会いします。その当事者ふたりに立て続けにインタビューできていることも、我々からすると感激以外のナニモノでもないですよ。

雄之助 ありがとうございます! いやでも、なかなかいないですよね、こういうふたりって(笑)

--タケノコ少年さんは雄之助さんに対して、リスペクトの念を抱いているんだろうなと、話を聞きながら確信しました。

雄之助 うわあ、うれしいな、それは……。

--すみません、これどうしてもお伝えしたかったので長くなってしまいました。

雄之助 いえいえ!! こちらこそありがとうございます!!

※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。

--では改めて、楽曲についてお聞かせください! 『Awake Now』のテーマ、方向性は、どのように決められたのですか?

雄之助 最初から明確なテーマは決めず、どこか漠然としたものから突き詰めていく感じなんです。というのも、作曲は僕、作詞は“牛肉”さんというクリエイターと作業分担して楽曲を作るスタイルを採っていて、今回もふたりでイベントストーリーの内容を整理しつつ、まずは作曲側として僕のぶつけたいサウンドを考えていきました。その際、杏ちゃんの気持ちを引き出せるようなメロディーライン、展開を練って、それをもとにふたりで煮詰めていって、曲全体の構成を組み立てたんです。ですので先ほど言った通り、明確なテーマを最初に作るというよりは、徐々に目指す先を見つけて詰めていく……というスタイルだったように思います。そう考えると、ボカロPの中では珍しいタイプかもしれませんね。ほとんどの方が、すべて自分で作っちゃうと思うので。

--いや、じつに興味深いですね。おっしゃる通り、ボカロPの多くは最初にパキッとテーマを決めて、作詞も作曲もひとりでやってしまう……という印象なので。雄之助さんたちは、非常におもしろいアプローチをされている気がします。

雄之助 僕はビビバスのストーリーやサウンド感はもちろんなんですけど、ビジュアルも、ファッション的な部分も含めて本当に大好きなんですね。よって作曲においても、僕の考える“ビビバスらしさ”をガチガチに表現しようとするわけですけど、ここで役割分担の良さが発揮されると考えるんです。お互いの気持ちを理解しているので、僕が感情の凝り固まった曲を作って牛肉さんに提案すると、「いや、そこは……」という感じでキチッと返してくれます。逆に、牛肉さんが書いてきたフレーズに対して、僕が意見をぶつけることももちろんあります。ふたりでキャッチボールをしながら楽曲を作っている……というスタイルですね。

--作詞担当の牛肉さんとのコンビはいつごろから?

雄之助 2014年くらいからいっしょにやっているので……もう9年になりますねー! 100曲以上はふたりで作っているんじゃないかな……。いまや、雄之助のサウンドに牛肉さんの歌詞はセットみたいなものなので、この『Awake Now』も含めて、何かに楽曲を提供するときはつねに牛肉さんといっしょです。

--『Awake Now』も当然ながら牛肉さんが作詞担当ですけど、サウンドとともに歌詞もすごく評価されている曲です。作曲担当の雄之助さんから見て、とくにお気に入りの歌詞はどのあたりですか?

雄之助 リスナーの皆さんと同じかもしれませんけど、やっぱり「憧れでは終わらない」という箇所。このイベントストーリーを表現する楽曲として、絶対に欠かせないフレーズだと思っています。相棒であるこはねの成長を受けての楽曲なので、杏ちゃんの「最後は自分の気持ちに気づいて、やるしかないんだ!」という複雑な心情を表現できていると考えています。

--全編を通じて、イベントストーリーのことをすごく丁寧に表現している歌詞だなと感じました。雄之助さんはこの歌詞が完成したとき、率直にどう思われたんですか?

雄之助 圧倒された……という感じでしょうか。僕らはふだん、キャッチーなポップスとかクラブミュージックを混ぜたサウンドを作ることが多いんですね。よって、ここまでストーリーと重ねて、誰かの気持ちを明確に表現する楽曲を作ったことはそれほどありませんでした。『Awake Now』の歌詞が完成してから何度も何度も読み返しましたし、そのたびに「本当にありがとう」と牛肉さんに言いました。

--このイベントストーリーが好きな人からすると、何と言うか……うれしい歌詞なんですよね。

雄之助 ああ、わかります。そういう意味では僕もひとりのオタクとして「ありがとう」と伝えたい気持ちになったんでしょうね。そこから、「これが自分の楽曲になるんだ……!」という感情が押し寄せてきて、うれしさとともに恐ろしさすら感じて(笑)。そして最終的に、「この曲、俺たちの最強クオリティーじゃん!」って強く思いました。

--ちなみに僕は個人的に、「気高く綺麗に咲かせるからさ 傍にいると忘れないでね」っていう箇所がめちゃくちゃ好きです。彼女たちの気持ちを、もっともストレートに、端的に表現していて。

雄之助 ああ、確かに! 実際、どの箇所を見てもイベントストーリーのことを思い出しますし、『Awake Now』を聴くといろいろと考えさせられるよな……といまだに思います。


--では、『Awake Now』の聴きどころを、ぜひ教えてください。

雄之助 この楽曲は、細かなところもすごく気を遣って作っているんですね。全体の話ですと、まずあえてメロディーラインのメロディーとは違う動きをするハモリが入っています。……ちょっと説明が難しいんですけど、サビが上っていく中、あえて階段状に下りていくハモリを入れてます。よく聴くとわかると思うので、ぜひ意識して耳を傾けてほしいです。それと歌い分けに関しては、運営サイドと“歌い分けのためだけの相談日”を1日設けたくらいこだわりました(笑)。

--そこ! じつは歌い分けに関して、ぜひお聞きしたいと思っていたんです。ビビバスは男女混成ユニットなので、歌い分けは大きなポイントになりますよね?

雄之助 そうですね! ストーリーを考慮してポイントごとに、「ここは杏ちゃんが歌わないと……!」、「この箇所はこはねで」、「彰人と冬弥の支えを……」と考えなければなりません。もちろん、キーレンジも含めて。頭をフル回転させて、「できればここは、この人に歌ってほしい!」という想いを突き詰めていって、納得できる形に落とし込みました!

--それだけこだわりが詰まっていると、制作日数はたいへんなものになるんじゃないですか?

雄之助 それが、じつは僕、作業がめちゃくちゃ早いほうなんです。『Awake Now』に関しても、僕の担当する部分に関しては……3日くらいで完成したと思います。

--3日!!?

雄之助 それができた理由は、先ほども言った通り1ミリもプレッシャーを感じていなかったことが大きいです。「この巡り合わせは奇跡だ。俺がやらなくて誰がやる」と思えたので、気合の入りかたが違いました。そしてもうひとつ、じつは僕、前々から、「自分がビビバスに曲を書くなら、こんなのがいいな」と頭の中で考えていたことがあるんです。それもあったので、スラスラと作業が進んだんですよね。

--あー!! それは確かに大きいですね!

雄之助 そうなんです。僕の曲を中心に牛肉さんが歌詞を書き、調声担当の“攻”さんが作業をして……という流れで。でも僕だけじゃなく、牛肉さんも攻さんもめちゃくちゃ早くて、だいたい1週間くらいで形になったんじゃないかと記憶しています。冒頭でご説明いただいた通り、この『Bout for Beside You』というイベントはストーリーが先行になって、楽曲が後を追いかける形になったじゃないですか。ゆえに僕もヘビーユーザーのひとりとして、オリジナル楽曲の実装は早ければ早いほどうれしいよな……と感じていたんです。その役目を僕が担うことになった以上、「1日でも早くユーザーさんに届けたい!」という気持ちで熱が入って、本当に爆速で作り上げました。

--では、そんな思い入れの強い楽曲がゲームに実装されたときの感想をお聞かせください。

雄之助 いやもう、言葉にならなかったですねぇ……。ふだんから熱心に遊んでいる『プロセカ』の画面に、自分が考え抜いて作った音だったり、名前が表示されていて……。本当に、信じられない日でした。というのも、“雄之助”というクリエイターネーム、実は本名なんですよ。自分が生まれたときから接している名前が大好きなコンテンツの中に組み込まれるなんて、正直いまだに信じられません(笑)。大げさではなく、ボカロP人生……いや音楽人生において、もっとも大きな転機になったと感じています。

--いろいろなことが重なったうえでの“いま”ですもんね。それ自体がイベントストーリーになるくらい、波乱万丈で。

雄之助 いや、本当にそうですよね。毎日、「こんなことってあるんだなぁ……!」と思いながら作業をしていましたし。

--ゲーム実装後、いろいろな反響があったんじゃないですか?

雄之助 ありました! 信じられないくらい多くの方が自分たちの楽曲に触れてくれたのを見て、改めて、「『プロセカ』って、本当にたくさんの人に愛されているんだなぁ……!」というのを実感しましたし。身近においても、家族や学生時代の友だちから、「『プロセカ』遊んだよ!」って恐ろしいほどたくさんの連絡が来ましたし。

--へーーー!!

雄之助 僕、まわりの人に包み隠さず、ボカロPというクリエイターとして曲を作っていることを言ってあるんです。それもあってたくさんの人に応援してもらっているんですけど、それこそ数年ぶりになる幼馴染からも、「『Awake Now』、かっこいいね!」なんていう声が届いたりしました。

--いやでも、おもしろいなー。自分がボカロPであることを完全に伏せて活動している方も多いので。

雄之助 あ、そうですよね! 僕は本当に音楽が大好きな子どもで、小さいころから「音楽で生きていきたい!」と主張するタイプでした。実際に言葉にして、それを原動力に活動してきた人間ですね。

--言霊とか、引き寄せの法則ですね。

雄之助 そうですね! 「やる!」という決意表明をして、それを目指してがんばるというスタイルなんですけど、昔から家族や友人が熱心に応援してくれました。

--この曲に対するリスナーの反応を追ってみたんですけど、「時を超えてやってきた幻の楽曲」と表現されている方がいて、すごく感動しましたよ。

雄之助 ああー……! ありがたいですね。リスナーさんの多くが「待ってた!」、「ついに来た!」と言ってくれましたけど、待っていた時間すら尊く感じてもらえる楽曲になればいいな……と思って制作していたので、そういったコメントは本当にうれしいし、救われますね。

--では、そんなリスナーに向けてひと言お願いできますでしょうか。

雄之助 『Awake Now』を聴いてくれたこと、心から感謝していますし、リスナーの皆さんにいつも救われています。クリエイターは提供する楽曲で皆さんの手助けをできているのかもしれないですけど、僕は皆さんの反応やコメントに助けられているんです。本当に、ありがとうございます!

--ありがとうございます! ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは……雄之助さんが、ボカロPになられたきっかけを教えてください!

雄之助 たぶん、めちゃくちゃ特殊だと思います。

--これは楽しみだ……!

雄之助 高校の入学祝いでDAW(Digital Audio Workstation。PCを使って楽曲制作をするためのツールのこと)を買ってもらって、そこから曲作りを始めたんです。とはいえDAWがあるだけなのでインスト曲(歌詞のない曲のこと)しか作れなかったんですが、あるとき母親に「初音ミクの曲を作ってよ」と言われまして。僕は当時、初音ミクのことはほとんど知らなかったんですけど、母親はかつてPSPの『Project DIVA』をやり込んでいたらしく、その足で家族で楽器屋さんに行ってボカロの『初音ミク』を購入したんです。

--それはじつに素敵なきっかけですね!! 初めてボカロに触ってみて、どうでしたか?

雄之助 めちゃくちゃ楽しかったのはもちろんなんですけど、ボカロの文化も含めて調べていくうちにどんどん深みにハマっていきました(笑)。ふつうの人とは順番が逆なのかもしれないですけど、初音ミクを使うことで自分が形にしたかったものが作れちゃうし、そこから母親が聴いていたというボカロ曲も調べて……! 毎日のようにボカロPさんの楽曲を聴きまくって、日ごとに好きになっていって、気が付けば1日に何曲も初音ミクの楽曲を作っていました(笑)。高校時代はひたすら、ず~~~っとず~~~~~っと初音ミクを触っていたように思います。

--青春は、初音ミクとともにあったと。

雄之助 本当に、その通りなんです(笑)。

--雄之助さんて、子どものころから音楽をやられていたんですか?

雄之助 3歳からピアノを習ってはいたんですけど、じつは僕の音楽体験の源泉は別のところにありまして。

--ほう?

雄之助 子どものころから、CDを集めるのが大好きだったんです。小学校3年生くらいのときかなぁ。昔のCDも中古ショップでどんどん買って、ジャンルも洋楽を含めてなんでもアリで、気づけば3000枚くらいになっていました。とにかく、音楽を聴くことが大好きだったんです。

--では、作曲が本格化したのはボカロの『初音ミク』を買ってから?

雄之助 中学生のころにiPadで少し触ってはいたんですけど、キチンとやり始めたのはDAWを買ってもらってからで、本格化したのは『初音ミク』を手に入れてからですね。

--そんな雄之助さんにぜひお聞きしたいんですけど、ボカロPになるために必要なスキルって、なにかありますかね?

雄之助 ピアノを習っていたことはもちろん役に立ってはいるんですけど、それ以上に大きいと思ったのは、“たくさんの音楽を聴いてきた”こと。正直、「音楽が大好きだ!」という気持ちがあれば、誰でもボカロPになれるんじゃないかと感じます。やっぱり、インプットがたくさんないとアウトプットできないので。僕の場合ですけど、習っていたピアノよりも、たくさん集めたCDのほうが音楽制作の役に立っていると思います。

--曲を作るのが早い……とおっしゃっていましたけど、それはやっぱり、子どものころからたくさんの音楽を聴いてきた蓄積のなせる業なのかもしれないですね。

雄之助 それは、間違いなくあると思います! それも、1個のジャンルを突き詰めて聴いてきたわけじゃなく、それこそ吹奏楽のCDを買ったり、ロシアポップスのCDを聴いてみたりと、雑食にいろいろなものを取り込んできたんですよね。この蓄積が引き出しになって、曲を作る際に役立っているんです。やっぱり無からアイデアを引き出すって難しいので、自分の武器にするためにも、いまも音楽はたくさん聴いています。

--わかりました! ではもうひとつ、ボカロPになってよかったと思うことがあれば、ぜひ教えてください。

雄之助 じつは僕、将来の目標とか夢みたいなものが明確にあるわけではないんです。というのも、ボカロPとして楽曲作りに専念できるいまの環境が本当に大好きで、“曲を作ること”自体が目標になっているようなものなので(笑)。活動を始めて10年経ったいまでも、やりたいことのすべてがここに詰まっているんです。そういう意味では、“大好きなボカロPを続けていられること”が、もっともよかったことかもしれません。

--うーん……! なんてすばらしい若者なんだろう……!!

雄之助 あはは。いやでも、ほかにあるかな……。……『Awake Now』にたくさんの反響をもらって、自分の曲が多くの人に届いているという実感を得られたことで、「もしかしたら俺も、誰かを元気づけられているのかもしれない」と思えたことは、ボカロPになってよかったことのひとつですね。“人のために何かができている”と思えることは、この上ない幸せなことだと感じます。

--お母さんにミクの曲を作りたいと思って始めて、いまは不特定多数の多くの人を元気づけている……! このストーリー、じつにいいですね。

雄之助 そうですねー!! ……とはいえ、いまだに僕の曲をいちばん聴いているのは家族だと思いますが(笑)。

--あ、そうなんですね!

雄之助 めちゃくちゃ仲のいい家族なんですよー。年末年始に実家に帰ったんですけど、2022年12月に発売された『Beat Eater/Awake Now』のシングルのポスターが思いっきり貼られていましたから。まさか実家に、ビビバスのポスターがあるとは思いませんでした(笑)。それくらい家族をあげて情報をチェックしていて、父親から曲の感想のLINEが来たり、妹と弟は『プロセカ』ユーザーなのもあってしょっちゅう連絡がくるし……。家族であり、いちリスナーでもありで、ちょっとおもしろい関係だと思います。

--わかりました! ありがとうございます! では、将来ボカロPを目指す全国の少年少女に、先達としてエールをお願いしたいのですが!

雄之助 「やってみたい!」という想いをもとに行動する能力って、すごく大事だと思います。実際に曲を作って投稿しても、最初はあまり再生されないかもしれません。でもインターネットなんて、いつ誰の目に止まるかわからないじゃないですか。再生数は少なくても、その中で救われている人がいるかもしれないですし。ぜひ、届ける側のひとりとして、たくさんの曲を作ってほしいです。……それにしても、ボカロPが子どもたちの憧れの職業になるという現在の環境、スゴいですよね。僕が始めたころは、まさかこんな世界になるとは夢にも思っていませんでしたけど、ぜひこの環境を活かして、あきらめずにがんばってください!

--では最後に、大好きだという『プロセカ』にもひと言お願いします!

雄之助 いちユーザーとして、もう何が来ても喜びます!!(笑) ですので、作り手の思うままに展開していただければなと……! どこまでもついていきますので、これからもよろしくお願いいたします!!(笑)

--本日は貴重なお話、本当にありがとうございましたー!!

雄之助/Yunosuke

サウンドプロデューサー、作編曲家。
最先端のサウンドメイクを活かして、心に残るポップミュージックを目指して創作している。
音声合成ツールを用いた自身の楽曲のみならず、声優やボーカリスト、ゲームや広告など多岐に渡って楽曲を提供。
また、海外生活での経験を通じて、国境を越えたコライトやコラボレーションも積極的に行っている。

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ボカロPインタビュー連載

 

 

1周年ボカロPインタビュー

 

 

タイトル概要

プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク

■対応OS:iOS/Android

■App Store URL:https://itunes.apple.com/app/id1489932710

■Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.pjsekai

■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)

■価格:基本無料(アイテム課金あり)

■ジャンル:リズム&アドベンチャー

■メーカー:セガ/ Colorful Palette

■公式Twitter:https://twitter.com/pj_sekai